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No.24/2010
■便宜置籍船キャンペーン
 
未払い賃金闘争で、エジプト人船員がストを先導

ビルマ船員組合アウン・トゥ・ヤの報告

2009年6月24日、商船ミカイル・アルハンゲロス号がタイ国のレム・チャバンに入港したとき、乗組員は既に4カ月にわたって賃金を支払われていなかった。オペレーターのシーウインド・マリタイム社は、責任を不況のせいにするだけだった。この状況に不満を持った乗組員は、ストライキに入るとともに、ITFに支援を求めた。1カ月もたたないうちに合意がまとまり、乗組員は未払い賃金、59,200米ドルを受け取った。
タイ国チョンブリ県のスリラチャ港の船員センターは、バンコクのITF代表アウン・トゥ・ヤに連絡した。彼は、ミカイル・アルハンゲロス号を訪船して状況を調べるよう、国際船員支援ネットワーク(ISAN)が求めていることを知らされた。アウン・トゥ・ヤは三等機関士と会い、賃金、食料、飲料水および本船の基本的な安全に関する諸問題を確認した。乗組員は多国籍で、ロシア人2名、インド人1名、ペルー人1名、バングラデシュ人6名、エジプト人8名、ギリシャ人2名およびビルマ人3名(合計23名)が乗り組んでいた。
ITF代表は、ギリシャのピレウス港に本拠を持つこの船のオペレーターと、ITF東京事務所に連絡を取った。オペレーターは、乗組員、とりわけエジプト人乗組員を非難した。彼は、積荷がないため賃金を支払えなかったと言ったが、これらの問題が発生する前から賃金を支払っていなかったことを認めた。
この頃までに、船内の事態は悪化し、エジプト人船員の主導によって乗組員はストライキに突入した。貨物積み込み区画のハッチカバーがないことが、紛争の原因となっていた。
ITF海事活動部門、豪州のマット・パーセルITFインスペクター、ITF東京事務所の連携行動の結果、オペレーターはそれまでの強硬な姿勢を改め、現実対応に取り組み始めた。彼は、エジプト人船員7名の賃金を清算し、タイ国で下船させることを受け入れた。彼はさらに、本船の次の目的地のマレーシアの港で、残りの乗組員の最終的な清算をするための予定日を提案した。
この間、アウン・トゥ・ヤは、事態の進展を図るために乗組員を集めた。オペレーターは、乗組員に対する脅迫も行っていたため、乗組員の安全も懸念されていた。ITF代表は、「団結と規律を保ち、常に平和的に行動すべきである」と、乗組員を激励した。
乗組員の雇用契約書は、労働組合への関与とストライキの禁止を定めていた。けれども、乗組員は処遇の悪さと搾取を理由に、何が何でもストに突入する決心をした。定期的な賃金の支給もなく、劣悪な労働条件と不十分な食糧や清水しかない彼らにとって、失うものは何もなかった。
アウン・トゥ・ヤは、オペレーターが約束を守るだろう、と乗組員を説得しようとしたが、ほとんど全員がオペレーターを完全に信頼しなくなっていた。交渉が最終的に決着してオペレーターが未払い賃金を全額清算し、乗組員が帰国するための航空券の手配を完了したら、乗組員はストライキを解除する、との合意が成立した。その後の交渉により、オペレーターの代表が現地に派遣されることになった。代表は、2009年7月20日に本船に到着した。アウン・トゥ・ヤは乗組員らと再び協議し、全員の決定を代表に伝えた。代表は、エジプト人7名の賃金と帰国のための航空券を支給する、と語った。アウン・トゥ・ヤは、それは不公正な処遇である、と抗議した。その結果、交渉が再開され、オペレーターの代表は、バングラデシュ人乗組員の賃金を支払い、彼らをマレーシアで下船させる、との契約に調印することに同意した。エジプト人乗組員には、要求通り、総額36,500米ドルの賃金と帰国のための航空券が支給され、彼らは翌日帰国した。バングラデシュ人およびビルマ人船員は合意を受け入れ、未払い賃金22,700米ドルを受け取り、マレーシアでの下船に同意した。
アウン・トゥ・ヤがビルマ人一等航海士から受けた報告によれば、本船がマレーシアの港に到着し、荷揚げが終わった後、契約は全て実行された。ソマリアに向けて出港する前に下船することとなっていた一部の乗組員だけが、本船に残った。
アウン・トゥ・ヤは、ミハイル・アルハンゲロス号乗組員の一人から、ITFに対する感謝を述べた手紙を受け取った。
「彼らの事件が平和的な解決を迎えたことを喜ぶとともに、彼らの権利を守る闘いのための団結と努力に対し、心からの敬意を表したい。しかし、将来の彼らの立場を改善するために、彼らが自国の組合に加入するよう希望する」と、アウン・トゥ・ヤは語った。
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ITF行動週間

東南アジアの成功

2009年11月の最終週に開催されたITFの東南アジア行動週間により、同地域で悪辣な船主や船員の搾取に取り組むことが必要であるとの認識が高まった。総計73隻が査察され、タイでセミナーや記者会見が開催されたことから、マレーシアやインドネシアでマスコミの関心を集めた。またフィリピンやシンガポールでも連帯行動が実施された。
ITF東京事務所の職員で、今回の行動週間をまとめた本間純子は、「東南アジア地域における調整されたFOCキャンペーンの取り組みが今年、明確な対象と目的を持ったことで、一層強力的かつ戦略的になった」と述べた。
模範的な勤勉さと調整活動が奏功し、高麗海運(KMTC)に、便宜置籍船(3船)に関するITF承認協約を韓国海員組合連盟(FKSU)と結ばせることができた。KMTCが所有する船舶、KMTC、Shanghaiは、行動週間中、2回(シンガポール、インドネシアで各1回)査察を受けた。インドネシアのITFインスペクターチームは、地元労組の支援を受けて、会社側に交渉に入るよう、圧力をかけることができた。
会社側との交渉を成功裏に主導したITFのFOCキャンペーン・アドバイザーであるジョン・ウッドは、「KMTCがFKSUとITF協約を初めて締結したことは、大きな前進である」と述べた。
行動週間の間に開始された交渉はまだ継続しており、ITF承認協約がさらに締結される期待が高まっている。日本のITFインスペクターチームとマレーシア船員組合(NUSPM)は、マレーシア籍船3隻について、団体交渉協約締結に向け、ウィルヘルムセン船舶管理会社と交渉に入った。全日本海員組合(JSU)が、日本所有の数隻のFOCに関して、ITF協約締結に向けて交渉した。
インドネシアの船員組合(KPI)の委員長で、ITFアジア・太平洋地域議長のハナフィ・ルスタンディは、次のようにコメントしている。「東南アジアの行動週間の間、『FOCの隠れる場所などどこにもない』というITFのメッセージは再確認された。船員の搾取はどのようなものであれ容認できない。このキャンペーンが成功した理由は、我々の取り組みが全域、全部門に及んだからだ。東南アジアの船員は、彼らの安全と労働条件は、ITFにとって非常に重要であり、いつでも安心して連絡できると、心強く思うことができる。」
行動週間の成功は、東南・東アジア地域の全てのITF加盟組織とITFのインスペクターの協力受け、実現した。
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ITF行動週間

バルト海沿岸の船舶の追跡は、港湾労働者による支援の重要性を際立たせた。

ドイツ、ヴェルディ労組海事部、ディーター・ベンツェ

昨年、ITFは、例年のバルト海行動週間において、通常よりも果敢に行動した。バルト海沿岸諸国の船員労組は、毎年9月にバルト海域で行われる各種の活動に参加している。今回は、ITF協約が期限切れとなっているデネブ号を発見し、関係組合が協力して、この船をハンブルグ港まで追跡した。ハンブルグ港では港湾労働者が支援のために荷役を拒否し、ITF代表はデネブ号の船主を説得して新たな協約に調印させることができた。アンチグア船籍に登録しているデネブ号の事件により船主が気付かされたことは、ITF承認協約を締結していない便宜置籍船(FOC)は、バルト海域での就航を認められない、という事実であった。
行動週間の第2日目に、ドイツのキール/ホルテナウ運河の閘門で組合員がデネブ号を発見し、調べた結果、デネブ号の船主がITF協約を破棄していることが明らかになった。翌日の朝、リューベックを基地とする勇敢なITF行動チームが、船内の状況を査察するためハンブルグに向かった。
彼らは、デネブ号が出港する寸前に現地に到着した。ハンブルグの港湾労働者には、事前にITFチームの訪問が伝えられていた。船員への連帯と自らの利益を守るため、ヨーロッパの基準を遵守せず、劣悪かつ強制力のない労働基準の国から来た労働者を悪用するソーシャル・ダンピングを、彼らは拒否したのである。港湾労組からの呼び掛けに応じ、ターミナルの港湾組合員は、貨物を8個だけ船内に残して荷役作業を中止した。
しかし、船主は譲歩を拒み、ITF協約を更新しない、との立場を変えなかった。港湾労組は、貨物が船内に留まっていることと、デネブ号がバーチャード埠頭に移動することをITFチームに通報した。この埠頭においても荷役が行われないことを知った船主は、遂に考えを変えて、2009年6月に遡って協約を更新することに同意した。船主は、あと2隻の船舶についても、ITF協約を調印することを約束した。
行動週間の目標は、関係労組が船内および港内における労働条件および生活条件を広範かつ詳細に検証し、FOCキャンペーンの前進を図ることにあった。バルト海沿岸10カ国のITFインスペクターは、年間を通じて、この海域を航行するFOC船を監視していた。けれども、これまでに彼らは、数隻の船を個別に摘発することができたに過ぎなかった。行動週間の利点は、全てのバルト海諸国の港湾において、全ての船舶を随時、訪問できることである。
このような行動週間を毎年実施することは、ITFキャンペーンにとって極めて重要かつ有益である。今年のスローガンは「団結と前進」であったが、デネブ号の成功例は、団結を実際の行動に移すことができるITFの能力を証明する事例となった。
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バングラデシュ船員の争議、中国港湾で画期的勝利

ロンドン本部、ITF海事活動部門、ドンリ・ハー

香港のITF便宜置籍船事務所のティン・カムユエン所長は、サイカット・ウインド号の乗組員とバングラデシュ船主との間の込み入った紛争を解決に導いた。彼は、また、164,893米ドルの賃金の取り立てに成功した。このトーゴ船籍船には、13名のバングラデシュ人船員が乗り組んでいた。ITFが介入するまでの数カ月にわたって、乗組員は賃金を受け取っていなかった。一部の乗組員には、14カ月間も賃金が支給されていなかった。サイカット・ウインド号は、中国広西チワン族自治区の白海(ベイハイ)港外に錨泊していた。乗組員が現地の裁判所に対して申し立てを行った際、裁判所は、この事例を扱うことを拒否し、供託金の支払いがなければ船舶の差し押さえもできない、と言った。
現地の港湾管理当局(PSC)は、本件が単なる雇用関係の紛争で、PSCは関与できない、と言った。船主が、食糧や他の重要物資の供給を継続していたため、乗組員はSOSを発信することができなかった。さらに状況を悪化させたのは、バングラデシュ船主が乗組員の命令不服従を理由に、訴訟を起したことであった。船主の主張する求償額は、乗組員に対する未払い賃金と一致していた。
カムユエンは、熟練した交渉術を駆使し、永年にわたる船員の雇用紛争処理経験の蓄積を示した。彼は、乗組員のために、成功報酬の支払いを条件として、中国の弁護士に依頼したばかりでなく、白海裁判所を説得して、供託金規定の適用なしで船舶の差し押さえを可能とした。今回の勝利は、法律や労組による十分な保護を受けずに劣悪な条件のもとで働くことを余儀なくされている中国船員に希望を与えるものであり、世界の船員にとっても画期的な成功で、現状打破を期待させるものであった。
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韓国で飢餓に瀕した船員を、ITFが援助

韓国のITFコーディネーター、キム・ヘキョン(金 恵Q)

ITFは2009年4月、韓国の平澤(ピョンテク)港の船舶から連絡を受けた。この船の乗組員の1人が、本船には食料も飲料水もない、と連絡してきた。中国・大連の船主、オリエンタル・デベロプメント社からの連絡が途絶えており、乗組員は賃金も受け取っていなかった。
この船は、貨物が損傷していたため、第三者により、3月に差し押さえられていた。
ITFは、船主と連絡を取ろうとしたが、成功しなかった。ソウルの中国大使館は、韓国によって本船が差し押さえられているため、未払い賃金、食料、飲料水の供給など、全ての問題は韓国側が処理すべきである、と支援を拒否した。
インスペクターは乗組員を訪問し、未払い賃金および帰国旅費に関する法的手続きを開始した。同時に、キム・ヘキョンITFコーディネーターは、ITF海事活動部門に連絡するとともに、問題解決のため、中国大使館と話し合った。
ITFと会うことを船主は遂に受け入れたが、問題の解決には同意しなかった。彼らの主要な関心事は乗組員ではなく、船舶にあった。彼らは、食料と飲料水の供給を拒否し、乗組員と会うことさえ拒否した。
乗組員は飢えに瀕している、とITFに伝えられたため、韓国の組合が250米ドル相当の食糧と飲料水を提供した。船主は、数回にわたり韓国を訪問していたにもかかわらず、何の措置も支援も提供しなかった。そのため、韓国のインスペクターは、法的手続きの決着を待たずに、船員たちを帰国させることとした。
韓国海員労組連盟(FKSU)のバン・ドンシク委員長と乗組員の話合いの中で、ITFは9人の乗組員の帰国旅費を負担することに同意した。9人のうちの7人は帰国することを決めたが、船長と機関員は船内に残った。未払い賃金を手にするのは容易ではないと思われるが、ITFは現在、法的措置の結果を待っている。
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英国に放置された船員の賃金をITFが回収

マルタ船籍のコンテナ船ビリーバー号の乗組員14人は、未払い賃金65,000ユーロ(97,740米ドル)を勝ち取った。英国のトミー・モロイITFインスペクターは、銀行が船主であるスキップス・クリスティン社への貸出しを停止したため、船主と交渉して未払い賃金を支払わせることに成功した。4人の乗組員は支払いを受けずに帰国してしまったが、残りの10人は賃金の未払い分を回収するために船内に残っていた。
強力な交渉の後、リバプールからきたモロイITFインスペクターは、乗組員全員に9月分の賃金を支払う、との合意を取り付けた。これに加え、契約の繰り上げ解約の補償として、乗組員に対する基本給2カ月分の支給を確保した。これは、本船に適用されていたITFトータルクルーコスト(TCC)協約の規定に基づくものであった。
モロイは、ビリーバー号の新しいオペレーターであるポーランド企業のベストランド・マリーン社と交渉し、合意された賃金に基づく短期契約に調印させた。これは、ビリーバー号をグダニスク港まで回航するための契約である。
船主が支払いを遅らせようと画策したにもかかわらず、船員たちは賃金を受け取ることができた。ある日、モロイが本船に到着すると、バンカー・バージが横付けしていた。用船者が以前に補給したバンカーを、バージに移し替えようとしているところだった。船長によれば、本船の差し押さえを回避するために燃料を抜き取るよう、銀行のブローカーから「指示」を受けた、とのことであった。
モロイは乗組員と話し合い、乗組員の雇い主ではない者からの「指示」には従わないことを決めた。賃金を支給するのが誰なのかを知らないままで燃料を抜き取ることはできない、と乗組員は言った。こうして、バンカー・バージは去って行った。その後、用船者を代理する弁護士がモロイに電話をかけてきて、乗組員がストライキを行った理由を質問した。乗組員には使用者が存在していないので、ストライキをする理由がない、とモロイは指摘した。
また、ある時は、ノルウェーまで本船を回航してくれるなら、到着次第、賃金を清算する、と先のブローカーが乗組員の説得を試みた。けれども乗組員は、用船者と港湾への支払いが出港前にできるなら、どうして乗組員だけが、ノルウェーにビリーバー号が着くまで待たねばならないのか理解できなかった。彼らはITFの助言を受け入れ、ブローカーの提案を拒否した。
幸運なことに、まもなく新たな本船の買い手がつき、乗組員は未払い賃金を回収するための法的な差し押さえを行う必要がなくなった。これに伴い、法定費用の負担も不要となった。このような状況に置かれた乗組員にとって重要なことは、自己の利益を守るためには、できるだけ早期にITFの関与を確保することである。
ノルウェーおよびポーランドのITF加盟組合も一定の役割を果たし、その結果、関係する全ての船員が満足できる成果を得ることができた。
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賃金未払いの船舶が、ドイツで20日間足止め

約4カ月間にわたり賃金の支払いを受けていなかった乗組員のために、ITFは56,000米ドル(39,000ユーロ)を回収した。ITFは、さらに、極度に劣悪な労働条件の改善にも取り組んだ。
ITFの支援を求める連絡が、オランダのフラッシングに入港中のクラマトルスク号のウクライナ人乗組員から入った。ITFは、2人の港湾管理局の検査官とともに訪船し、未払い賃金があることに加えて、適正な作業用器具およびマットレスが劣悪な状態にあることも発見した。
会社側は、わずかな期間内に現金を用意することはできない、と言った。乗組員は、次の目的港のブレーメンまで本船を回航することに同意し、現地で未払い賃金を受け取り、帰国することになった。
ブレーメン港は、オランダとドイツのITFコーディネーターであるルード・トウエンの監督下にある。ウクライナ船籍のクラマトルスク号が入港すると、通報を受けたPSC検査官が改めて査察を実施した。ITFコーディネーターが未払い賃金をPSC検査官に報告した結果、この問題も本船の欠陥項目リストに加えられることになった。検査の結果、合計22件の欠陥が見つかったため、クラマトルスク号は約20日間、港内に拘留されることになった。
未払い賃金問題の他、船長の態度と行動について、乗組員は問題を提起した。例えば、適切に海面まで下ろすことのできない救命いかだが、安全に関する深刻な懸念となっていた。船長は、この状況について、ほとんど関心がなく、質問された際、全く問題はない、との見解だった。彼は一貫して非協力的で、乗船から2カ月間は賃金を受け取らないとの契約書に乗組員が署名しているので、苦情を提起する資格はない、と主張していた。
最終的には、本船の全ての欠陥は改善され、出港することができた。それは、合計56,000米ドルの未払い賃金を乗組員が受けとった後のことだった。
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トルコ人船員が、パナマで未払い賃金を確保

昨年4月に本国に送還された14名のトルコ人船員は、数カ月間にわたる法廷闘争の末、彼らが要求する未払い賃金を勝ち取ることができた。
パナマ船籍のメヴルート・ドヴ号は、ブラジルのリオデジャネイロ港を経由してペルーのカヤオ港に向かう途中で機関故障を起こし、パナマのクリストバル港で乗組員を船内に残したまま放棄された。本船が錨をおろしたのは、2008年11月のことだった。その後、船内に残されたトルコ人船員は、パナマのITFインスペクターやITF加盟労組の拠出による食糧を頼りに、換気の不十分な船室で数カ月間、耐え抜いた。ITF関係組織は、船員の帰国旅費についても援助した。
ルイス・フルトITFインスペクターとオルメド・アロチャ弁護士の介入により、この事件はパナマの第2海事法廷に移され、船舶の売却と売却代金からの船員賃金の支払いが決定された。2009年11月に、未払い賃金約160,000米ドルがトルコに送金された。
「パナマの新大統領、リカルド・マルティネリの政府およびパナマ海事当局は、パナマ船籍船が労働者としての乗組員の権利を尊重していることを示すため、この問題に協力することを望んでいた。これに加え、港湾と船員の要請を受けた海事当局は、船員福祉委員会およびITFインスペクターのパナマ港湾への自由な出入りを許可するよう指示した」と、ルイス・フルトは語った。
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未払い賃金確保をめざすロシア人船員の闘争

オランダのルード・トウエンITFコーディネーターの努力の結果、放置されていた5名のロシア人乗組員は、未払いとなっていた賃金35,000ユーロ(50,390米ドル)を受け取った。マイク号の船主は、乗組員を乗せたまま、同船をドイツのデュイスブルグ港に放棄した。その時点での未払い賃金は、19,000ユーロ(27,350米ドル)であった。彼らの所属する労組に代わって、トウエンは乗組員に次のように提案した。船主は、乗組員が要求する未払い賃金として40%を現金で支払い、帰国のための航空券を各船員に支給するつもりだ。もし、乗組員が本船をオランダまで回航するなら、ロッテルダムで本船を公売にかけるための差し押さえを、ITFは援助することができる。
これらの手続きは、次の週に完了できることも乗組員は理解した。けれども、乗組員は賃金の支払いがさらに遅れることを心配し、全て前払いで受け取ることを選択した。彼ら自身で弁護士に交渉を委託したが、即時支払いの合意を得ることはできなかった。
そこで、ITFが再び介入することになった。トウエンは、船主および船舶管理者との交渉を再開した。この頃には、乗組員の債権額は、弁護士費用も含めて42,000ユーロ(60,430米ドル)に増加していた。
長時間の交渉の後、遂に決着がついた。合意された金額は35,000ユーロで、帰国旅費と弁護士費用は乗組員の負担となった。ロシア人船員は、この決着を受け入れ、全員、帰国の途についた。
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ITFが、インドで海難に遭遇した船員の帰国を援助

インドのオリッサ州沖で沈没した貨物船から救出された乗組員26人は、海難事件の調査が2カ月にわたって行われている間、立ち往生させられていたが、ITFの介入によって本国に送還された。
2009年9月9日、モンゴル船籍のブラックローズ号が沈没してしまったため、その乗組員(バングラデシュ:17人、ロシア:3人、ウクライナ:6人)は、オリッサ州パラディップ港に取り残されていた。ウクライナ出身の機関長は、この事故によって死亡した。海運省の公式出国許可が下りるのを待っていた乗組員を支援するため、ITFが介入することになった。
インド海事労組も、乗組員の未払い賃金の取り立てを援助した。
セルゲイ・カマロフ船長は、「我々は帰国できることになって喜んでいる。ITFおよび入国管理局の支援に心から感謝する」と述べた。彼らは2009年11月10日、本国に送還された。
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ITFは、ウクライナにおいて契約書のない船員の闘争を勝利に導いた。

2009年3月、ITF代表は、ロタス号のトルコ船主/船舶管理会社と合意に達した。この合意は、全乗組員が如何なる形の契約書も持っていなかったにもかかわらず、未払い賃金の支払い、一人の船員の航空券の支給を確認する内容であった。
船員はITF承認団体協約の適用を常に要求すべきであるが、遺憾なことに、東欧諸国とシリアおよび一部のアジア諸国の船員は、契約書なしで乗船することが一般的である。文書がまったく存在しなかったために、交渉を始めた段階ではITFの立場は強くなかったが、乗組員は交渉中、断固とした態度を維持した。
ウクライナのナタリヤ・イェフリメンコITFインスペクターが、ウクライナでチャーターされたロタス号の乗組員から最初の電話を受けたのは、3月22日であった。ロタス号の出港予定が翌日であったため、状況を把握してから会社と交渉を始める時間的余裕があった。
船内で発見された、いくつかの欠陥のために、ロタス号は拘留されていた。11人の乗組員のうちの6人は、会社側が彼らに対する約束を再三にわたって守らないので就労を拒否する、と言っていた。船主が乗船前の乗組員に口頭で約束した賃金レベルは、国際労働機関(ILO)が勧告する最低基準より、かなり低いものだった。
このような状況にもかかわらず、トルコの船主/船舶管理会社から受け取った最初の回答では、さらに低い金額が提示されていた。6人の乗組員は、船主/管理会社が雇用契約に反して2008年12月から2009年2月までの賃金を支給しないため、下船して本国に送還されることを望んだ。
この交渉にはウクライナの用船者も参加したが、これは有益であった。乗組員が最初に電話してきたときから僅か5日後に、船員と会社側との間に取り決めが成立した。この取り決めは、1人の船員の賃金の清算とウクライナから本国への送還手配を約束していた。また、その他の5人の船員の2008年12月から2009年3月までの賃金を、現金で支給することにも同意していた。この賃金は、ILO勧告の賃金表に基づいて計算されることになっていた。残りの5人の乗組員は、本船をイスタンブールまで回航し、現地でトルコ人船員と交代することに同意していた。
苦情を提起した6人の帰国旅費も合意金額に含まれており、ウクライナで支払われた。船員に支払われた賃金を船主が取り返そうとする企てを阻止するため、ロタス号がトルコに向けて出港する前に、ほぼ全額が船員の家族あてに送金された。ナタリヤ・イェフリメンコは、次のように言う。「船員は期待していた以上の金額を手にした。また、船主が学んだことは、双方が署名した契約書がない場合でも、船主が得をするとは限らない、ということだった。今回の経験によって、重要なのは何なのかを船員が学ぶことを希望する。」
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トリポリに13カ月間、放置された後に帰国

13カ月間に及んだスイフト・スピンドリフト号の乗組員の悲惨な経験が終わりを迎えたのは、彼らの祖国であるビルマへの帰国の実現にITFが成功した、2009年10月のことだった。彼らは1年以上にわたって、リビアのトリポリ港沖に放置されていた。
船主を説得して乗組員の本国への送還費用を負担させるため、6カ国の労働組合とITF代表らが参加する国際行動が必要であった。
1年の間、乗組員は船長の保証を信用していた。けれども、彼らは遂に支援を求めるため、ITFに連絡することを決意したのだった。
とりわけ、6カ月前から賃金の支給が停止されたため、彼らは絶望的になっていた。水や食料などの必需品が乏しくなり、長い間、バースに着くことも許されていなかったため、乗組員らの陸上との接触は限られていた。
乗組員をこのような窮状に陥れた原因は、いろいろな用船契約の間の紛争であった。便宜置籍船(FOC)であるために、スイフト・スピンドリフト号の船主と船舶管理会社を突き止めることは困難であったが、これらの企業はニューヨークおよびデリーを本拠地として活動しているグレースライン社の関連企業であると思われた。
ITFロンドン本部のスタッフによる調整のもと、ITFの国際活動チームが活動を開始した。米国のニューヨークではリック・エソパITFコーディネーターがグレースラインに接触し、ITFデリー事務所のマヘンドラ・シャルマがグレースライン社のインド代表に連絡した。
けれども、これらのITF活動の成功の鍵は、現地の海事当局ならびに労働組合との話し合いのために、代表者をトリポリに来させることだった。
スペインのITF加盟組合ELAは、ビルバオを基地として活動するITFインスペクターのモハメド・アラチェディをリビアに派遣することに同意した。さらに、ヨルダンのアンマンITF地域事務所のビラル・マルカウィは、アラブ運輸・通信労組連盟の指導者らと連絡をとり、効果的な支援を確保した。
アラチェディは、乗組員の本国送還を実現するため、現地の弁護士、船舶代理人およびリビア海事当局などとの交渉を行い、トリポリに22日間、滞在した。彼は、このほか、数カ月ぶりに本船を埠頭に横付けするための承認を取り付けた。
この間にITFロンドン本部は、スピンドリフト号の船主代理人であるニューヨークおよびロンドンの弁護士事務所と交渉し、乗組員の帰国旅費を船主負担とするための取り決めをまとめ上げた。
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乗組員のストライキを、アフリカの加盟組合が支援

正義を求めるベレケット号乗組員の決意は、2009年10月、未払い賃金の支給という成果を上げ、全員本国に送還された。彼らの闘いの成功は、トルコのITFインスペクターとITF加盟組織であるタンザニア船員組合(TSU)の協力によって可能となった。
ザンジバル沖に停泊中の本船の14人の乗組員は、賃金の支払いを拒否している船主、ウザクラ・ダニザイリク・サナイ・ヴェティカレット社に対して、ストライキを開始することを決めた。トルコのムザファール・シベレクITFインスペクターが、未払い賃金に関する交渉を申し入れてから、そこに至るまでに既に3カ月が経過していた。
船主は、それ以前から、ケニアのITF地域事務所に連絡したことを理由に、乗組員を解雇する、と脅していた。
乗組員は、さらに、TSUのアブドルラーマン・チャンデとも連絡を取っていた。彼は、直ちに、現地の港湾管理当局に通報した。これに応じて、船舶査察が実施された結果、「賃金紛争で乗組員が雇用の継続を拒否しているため、定員不足になっている」との理由で、本船は出港差し止め処分を受けた。
紛争が解決し、乗組員が賃金を受け取るまで本船の出港は認められないであろう、とインスペクターは語った。
ベレケット号の運航が不可能になったため、遂に船主はシベレクとの交渉に応じ、未払い賃金の清算と本国送還に合意した。
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