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グローバルユニオン
No.24/2010
■海事労働条約(MLC)
 
船員のための新たな権利章典が制定された

海事労働条約(MLC)2006は、実際に実施可能な船員の権利を規定している。以下は、この条約が船員にとってどのような意味があるのかを要約した、簡略な手引きである。

国際労働機関(ILO)の海事労働条約(MLC)2006、または船員権利章典と呼ばれる文書が、労働条件に与える実質的な利益を、船員はまもなく実感するであろう。
この条約は、世界の船員の職場における包括的な権利と保護を規定している。
最も重要な点は、その船舶の船籍国が条約を批准していない場合でも、当該船舶に総合的に強制する実施システムを、この条約が持っている、ということである。
このILO条約の策定過程において大きな役割を果たしたのは、ITFとITF加盟組合であった。
「この条約は、海事産業における変化のための真の手段であり、改善のための道具である」と語るのは、ITFのジョン・ウィットロー船員部長である。「我々は、条約上の船員の権利について、一行ごと、一項目ごとに闘ってきた。これからは、船員が権利を認められない場合に苦情を申し立てることによって、この条約を活用することを希望する。」
MLC-2006は、世界船腹量(総トン数)の33%以上を所有するILO加盟国30カ国以上が批准したのち、12カ月を経過した時点で発効することになっている。現時点でMLCの批准手続きを完了したのは、バハマ、リベリア、マーシャル群島、ナイジェリアおよびパナマの5カ国である。(訳注:ILOサイトでは、2010年2月8日現在、バハマ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、リベリア、マーシャル群島、ノルウェー、パナマ、スペインの8カ国が批准手続きを完了している。)
ILOによれば、実際の変革を海事部門において達成するため、名目だけの批准にならないよう、高い水準の発効要件を設定したのである。世界の商船隊における諸条件の管理責任を負っている主要諸国は、条約の諸基準を国内においても実施する必要がある。
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1.原則

この条約が適用される船舶で雇用され、または契約によって業務に従事する全ての個人は、船内における地位・資格とは関係なく、全て船員として定義される。船員には、移動修理チームやクルーズ客船の供食(ケータリング)スタッフなどの乗組員も含まれる。
この条約は、明白に規定されたものを除き、全ての船舶に適用される。適用除外となる主要な船舶は、内陸水運専用船、漁船、軍艦、海軍補助艦船、ダウまたはジャンクのような伝統的な構造の船などである。
船員は、16歳以上でなければならない。また、全ての船員は、船内勤務に適した健康状態にあることが医学的に証明されなければならない。
この条約は、雇用条件、居住設備、レクリエーション施設、食材と調理、健康保護、医療、福祉および社会保障を規定している。
MLCは、全ての関係者に対して、労働に関連する一定の基本的権利が守られるべきであることを想起させる。これらは、以下を含む。
結社の自由の権利―自己の選択する労働組合に加入する権利。
団体交渉権の事実上の承認―乗組員を代表する労働組合が団体協約を交渉する権利。
要約すれば、船員には安全で保障された職場を持つ権利があり、その職場は安全基準を満たし、公正な雇用条件や妥当な居住・労働条件のもとで、医療、健康保護および福祉などの社会的保護が供与されなければならない。
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2.船員の権利

賃金
船員は、雇用契約または団体協約に基づき、少なくとも1カ月ごとに、定期的に賃金の全額を支給される権利がある。使用者は、月例賃金の明細書を用意しなければならない。時間外労働の記録は、船長が作成し、少なくとも月一回は当該船員によって確認されなければならない。使用者は、船員がその収入の全額または一部を家族に送金できるよう確保しなければならない。このようなサービスに関連して、船員は不当な料金を負担させられるべきではない。
船員の権利には、以下のものが含まれる。
雇用契約の満了に際して、船員は全ての賃金・諸手当の未払い分の支給を受けるべきである。
国内法によって明白に承認され、または団体協約において合意されたものを除き、船員が雇用を得るための費用を含めて、賃金からの控除は一切してはならない。

労働時間と休息時間
通常の労働時間は1日当たり8時間とし、1週につき1日の休息を原則とする。
労働時間の最大限度および休息時間の最小限度は、船籍国が定めることができる。

労働時間の最大限度
船員は、24時間につき、14時間以上就労してはならない。
船員は、7日間につき、72時間以上就労してはならない。

休息時間の最小限度
船員は、24時間につき、少なくとも10時間以上の休息を取らなければならない。
船員は、7日間につき、少なくとも77時間以上の休息を取らなければならない。
休息時間は、2回を越えて分割してはならず、そのうちの1回は少なくとも6時間以上でなければならない。また、休息を取ることなく、14時間を越えて継続勤務してはならない。しかしながら、船舶または乗組員が危険に瀕している場合や、遭難した他船あるいは人々の救助活動などの非常事態に際しては、非常事態が解除されるまで、船長は作業計画を一時停止することができる。

作業配置
全ての船舶は、船内作業配置表を、船内で使用される作業用語および英語で船内に掲示しなければならない。作業配置表には、次の事項が含まれなければならない。
海上および入港中の業務計画。
法律または適用される団体協約に基づく、最大労働時間または最低休息時間。
この規則の遵守を確認するため、労働時間および休息時間の記録を保存しなければならない。船員は、自己の労働/休息時間に関する確認済みの写しを受け取らなければならない。

休暇の権利
船員は、年次有給休暇および一時上陸を取得する権利がある。最低年次有給休暇日数は、雇用期間中の1歴月につき2.5日を基礎として計算される。

本国送還
船員は、自己負担なく本国に送還される権利を有する。船主負担により本国へ送還される権利の行使は、乗船勤務期間12カ月以内とする。

居住設備とレクリエーション施設
船籍国は、自国に登録する船舶に対し、一定の基準を満たすよう義務付けるための法律・規則を制定しなければならない。この基準の遵守を確認するため、いかなる船舶も検査を受けなければならない。

食料と調理
全ての船舶は、乗組員の雇用期間を通じて、十分な量の良質な食糧と飲料水を無料で供給しなければならない。また、宗教的および文化的相違も考慮に入れなければならない。船舶の料理人は、適正な訓練を受け、資格を持たなければならない。ただし、乗組員数が10人未満、あるいは航海期間が1カ月以下の場合を除く。

健康と安全の保護および事故防止
船員は、安全と健康の文化が積極的に推進されている、安全で衛生的な環境において生活し、勤務する権利を有する。乗組員が5人以上の船舶においては、乗組員を代表して船内安全委員会に参加する安全委員を選出または任命しなければならない。

船内および陸上における医療
乗船中の船員は、自己の健康を守るため、必要に応じ、歯科を含む医療を、迅速に受けることができなければならない。
海上勤務者が、陸上勤務者よりも不利であってはならない。この規定は、船員が必要とする医薬品、医療器具、診断および治療に必要な施設、医学情報および専門的技術などを迅速に入手・利用できなければならないことを意味している。
100人以上が乗船し、3日間以上の国際航海に従事する船舶には、資格を有する医師が乗船しなければならない。

船主責任
船主は、船員の雇用契約が発効する日から本国送還手続きにより本国に到着する日までの期間、雇用に伴う疾病、負傷、死亡によって発生する全ての経費に責任を有する。また、船員は、保険/補償制度に基づく医療給付を請求することができる。
船員が医薬品または医療・治療のための入院が必要となった場合には、回復するまでの期間または永久的な身体障害のために解雇されるまでの期間、船主が全ての経費を負担しなければならない。これらの経費を船主が負担しなければならない期間について国内法規に明記されている場合は、傷病の発生した日から16週間を限度とすることができる。船員が病気/負傷のために勤務できなくなった場合でも、乗船中は賃金を全額支給されるべきである。自宅に帰還したのちは、適用される国内法あるいは団体協約の規定に基づき、賃金の全額または一部あるいは一時金が支給される。これらの賃金または一時金について、船主が負担しなければならない期間が国内法規に明記されている場合には、傷病発生日から16週間を限度とすることができる。

陸上の福利施設の利用
乗船勤務する全ての船員は、健康と福利を確保するため、陸上の施設を利用すべきである。これらの施設は、船員の国籍、人種、皮膚の色、性別、宗教、政治的信条、社会的階級および船籍国とは無関係に、容易に利用可能とすべきである。
船主は、可能な限り、一時上陸を許可しなければならない。これは、港湾管理当局の検査義務とはしない。

社会保障
船員とその家族は、社会保障保護を受ける権利を有する。政府は、少なくとも3種類の社会保障を供与しなければならない。勧告される社会保障の種類は、医療給付、疾病給付および労働災害給付である。
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3.船員の募集、配乗および雇用契約

船員募集業務に従事する船員配乗代理業者は、職業紹介の経費を船員に請求してはならない。船員に負担を求めることができる経費は、政府が定めた法律に基づく健康証明書、船員身分証明書、パスポートまたは個人の旅行用書類などを取得するための費用のみである。ビザ(査証)を取得するための費用は、船主が負担しなければならない。

船員の雇用契約
船員は、船内における一定水準の生活条件および労働条件を規定した、公正な雇用協定または雇用契約の適用を受ける権利を有する。この協定または契約は、船員と使用者によって調印され、容易に理解可能で、かつ法律上の強制力を持たなければならない。使用者側は、船主、船主代理人または当該船舶の運航にともなう義務と責任を有する個人によって、調印されうるものとする。
団体協約を含む雇用条件に関する全ての情報は、全員が自由に見ることができるため、かつ港湾における検査のために船内に提示しなければならない。

船員の雇用契約の必須項目は?
船員の氏名、生年月日、年齢、出生地。
船主の名前と所在地。
雇用契約の調印場所と日付。
船内における職名:(例)3等機関士、AB船員、コックなど。
賃金(金額)と計算基準。
年次有給休暇の総計。
無期限の雇用契約の場合には、予告期間を含む雇用契約解除の要件。
契約の満了日。契約に有効期間がある場合には、船員は解雇(下船)の日を知らされる権利がある。
目的地(仕向け港)-雇用契約が特定の航海のためである場合には、到着の何日後に解雇されるのかを知らされるべきである。
船主の供与する医療給付および社会保障給付。
本国送還にともなう船員の権利。
適切な場合には、団体協約への言及。
国内法に規定される、その他の詳細。
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船員がこれらの権利を認められなかったら、どうするか?

船員は、船内において、上司、船長、船主または船籍国に対し、苦情を提起することができる。また、港湾管理局の検査官/労働検査官に苦情を提起することも可能である。船員自身が直接提起しなくても、例えばITFインスペクターや福利施設の職員などの第三者が代行して苦情を提起することも可能である。
船籍国、寄港国および労働(船員)供給国など、全ての関係国は、MLCの要件の遵守と実施を確保する責任を有する。

船内の苦情手続き
一定の生活条件および労働条件を享受する船員の権利ならびにMLCの規定に対する侵害について、船員が船内で苦情を提起する手続きが定められていなければならない。
苦情は原則として可能な限り現場レベルにおいて解決に努力すべきであるが、船員は直接、船長あるいは船籍国代表などの外部機関に苦情を提起する権利を有する。船員は乗組員代表または仲間の船員の同行を求めることができるが、いかなる場合においても苦情を提起したために処罰されることがあってはならない。船内において苦情を解決できない場合には、船員はその苦情を船主、寄港国、船籍国あるいは船員出身国の当局など、陸上の当局・機関に付託すべきである。船員は乗船したとき、船内苦情手続きのコピーを直ちに取得すべきである。
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条約遵守

各船籍国は、MLCをどのように遵守するかを各自で決定することになっているため、諸条件が船籍国によって相違することとなる。当該船舶が船籍国の基準およびMLCの要件を満たしていることが海事労働遵守宣言(DMLC)に詳細に述べられているなら、この諸条件は認められる。
国際海域または異なる国家に属する港湾間に就航する500総トン以上の全ての船舶は、DMLCに加えて海事労働証明書を所持しなければならない。この証明書は、当該船舶がMLC条約の要件を遵守していることを証明するものである。
●詳細については、次のサイトを参照のこと。www.itfseafarers.org
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MLC要約

海事労働条約(MLC)は、ITFとITF加盟組合が闘い取った船員の権利章典である。
MLCは、基本的権利と職場における保護を船員に提供する。
MLCは、船員の権利を次のように規定している。
●安全で安定した職場
●公正な雇用条件
●妥当な生活環境および労働条件
●医療、健康保護および福祉などの社会的保護
この条約は包括的な実施制度を備えているが、この制度を機能させるために必要なのは、船員による問題の提起である。
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ITF(国際運輸労連)とMLC(海事労働条約)

“これらの権利は、関係諸国の政府によって我々に与えられたものではなく、我々が闘争によって勝ち取ったものだ。容易に獲得したものではない。多くの労働組合が団結して闘った結果、この権利憲章を手にすることができたのだ。”

ジョン・ウィットロー
ITFは、全てのMLCに関連する交渉に、深く関与してきた。ILO条約としては革新的なものであり、従来の条約に比べ、極めて詳細に規定されている。
我々は、条約の遵守と実施について長い時間を費やしたが、三者合意を必要とする条約としては、可能な限り最善に近いものができた、と考えている。国際海域または異なる国家に属する港湾の間で就航する500総トンを超える全ての船舶は、海事労働証明書を所持しなければならない。これが意味することは、世界の船舶の大半が証明書の所持を必要とする、と云うことである。
歴史上初めて、グローバルな社会的権利および労働に関する権利の定期検査が行われることになった。また、証明書を持たない船舶でさえも、検査できることになった。しかし、船員もまた、その役割を果たさなければならない。船員は、自己の権利が侵害されたら苦情を提起し、自己の権利を行使するために立ち上がって闘うよう、我々は求めている。反労組条項、賃金不払い、二重帳簿などが船員から報告された場合に初めて、この条約に基づく寄港国検査(PSC)の対象となる。
便宜置籍船(FOC)に依存する海運企業は、船員の社会的権利や労働者の権利を無視してきた。これらの権利は、これまで国際法規のもとでの義務にすぎなかったが、この条約によって強制可能な法規となった。これらの権利は、関係諸国の政府によって我々に与えられたものではなく、我々が闘争によって勝ち取ったものである。容易に獲得したものではない。多くの労働組合が団結して闘った結果、この権利憲章を手にすることができたのである。また、労働組合は、最低限の社会的基準と労働者の権利を改善するために闘ってきた。それゆえ、現行の諸権利を引き下げる手段として、MLCを利用させることはできない。適切に活用することができれば、この条約は船員にとって強力な武器となりうる。
MLCに関するITFの活動は、現在も続いている。我々が各国の船員組合とともに、条約批准を促進するためのロビー活動に努力している。我々は、この条約が広範な諸国の批准を得られる、との見通しをもっている。我々は、ITFインスペクターの訓練を実施しているほか、簡略化されたガイドラインとデータ表の作成に当っている。船員の権利行使について、鍵を握っているのは船員である。それゆえ船員は、ITFインスペクターに積極的に接触すべきである。この条約の成功の目安となるのは、この条約が現場の人々に究極的にどのような影響を与えるか、この条約が現実の世界において何を達成できるか、にかかっている。
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私にとってのMLCの意義

ITFインスペクター
フィンランド海員組合、ITFインスペクター、イルポ・ミンキネン

国内の法律制度に関する政府や経営者側との多くの会合に、私は出席してきた。MLC2006を批准し、実施するために、わが国の法律制度を変更する必要があった。
私が船主や政府代表らに留意するよう求めたことは、MLC2006は最低基準に過ぎないものであり、我々は国内法によって、これを改善することが常に可能である、という点だ。その例は、居住設備、レクリエーション施設、食料と調理・供食である。私はフィンランド国籍船を訪問し、これらに関する乗組員、安全委員、船内委員などに意見を聞いた。
私の心配は、船主側がMLC2006を、最低基準ではなく最高基準であると考えていることにある。ITF承認団体協約が適用されていないある船舶に、ILO最低基準の雇用契約と賃金しか適用されていない場合、我々は便宜置籍船(FOC)でも国籍船でも、これを正当とは認めていない。けれども寄港国検査(PSC)では、これを容認している。我々が懸念しているのは、このような問題が明るみに出た場合、寄港国がどのような処置をとるのか、ということである。
結局のところ、ITFインスペクターとしての私の仕事は、MLC2006が発効してからも変わらないのではないか、と思っている。フィンランドの労組は強力であり、船員の妥当な賃金と労働条件を確保するためのFOCキャンペーンにおいて、今後も成功を勝ち取ろうと考えている。
フィンランド国籍船の乗組員にとって、大きな変化はない。けれども、FOC船乗組員に関しては、MLC2006に関連する問題について、フィンランドのPSC検査官の支援を要請する機会があると思われる。FOC船乗組員が、特に賃金に関して我々の支援を求めてくるのは確実である。我々は、最善の努力をすることを約束する。
いずれにしても、船員たちは強力な労働組合を必要とし、彼らの基本的権利を守るために、ITFの強力な支援を必要としている、と確信している。

福利施設職員
船員福利国際委員会(ICSW)、ロジャー・ハリス

MLC2006は、船員の福利に対する社会の注意を喚起し、海事産業が取り組むべき課題を提起する絶好の機会となっている。MLCの福利関連項目の十分な理解と履行を確実なものとするため、ICSWの仕事が大幅に増加することを意味している。もう一つの意味は、この強制的な規則が遵守され、自発的なガイドラインが採択される建設的な協力関係を、船主、船舶管理者、労働組合、港湾、政府および福利組織の間に確立することである。これは、私の仕事が増えることを意味している。すなわち、MLCの福利関連規則とガイドラインの実施において、ICSWが指導的な役割を確実に果たすようにするのが、私の仕事となる。
MLCは、船員の「健康保護、医療、福利措置およびその他の社会的保護」を受ける権利を確立させた。MLCはまた、他の条約よりも一歩進んだ条約であり、非批准国を含む全ての国に適用される。これは一般の船員にとって、福利サービスとその施設が利用しやすくなることを意味している。
船員が福利を享受する権利を持った人間であり、この権利が尊重され、促進されるべきものであることを明確に認知している点において、この条約は極めて重要である。また、福利サービスとその施設を船内および陸上において提供することと、この期待に応えるための組織を発展させることの重要性を、この条約は認識している。

寄港国(PSC)検査官
イタリア港湾管理局検査官、ルイジ・ジァルディノ

MLC条約が本格的な実施段階に入れば、政労使代表の対等な活動の場が確立され、政府(船籍国)、船主および船員にとって、共に利益となるであろう。全ての船員が妥当な雇用条件を獲得できるよう、海事社会と労使双方が、これまで以上に密接に作業を行うための時宜を得た措置である。
これまでは、多くの既存海事関連条約があったため、諸国の政府にとって、全ての条約の基準を満たし、実施するのは困難であった。多くの基準は時代遅れであり、現代の船舶の労働条件および居住環境を反映したものではなくなっていた。基準以下船の一掃を促進するために必要なことは、一段と実効性のある強制可能な制度を作ることである。さらに、国際海事機関(IMO)が採択した船舶の安全、保安および環境保護に関する国際基準を実施するための、実効性のある国際組織の枠内で活動することが必要である。
全ての船舶は、MLCが要求する国際原則を満たしている、との証明書を持たなければならない。この規定によって、検査すべき船舶の特定が容易になることを、我々は期待している。
船籍国の当局が発行した適正な証明書を所持しているなら、その船舶が検査の対象となる機会は少なくなる。寄港国検査の対象は、基準以下または一見して基準以下と思われる船舶に焦点を合わせることになる。この場合、船籍国がこの条約を批准していないために証明書を所持していない船舶も、検査の対象に含まれることになる。

船員組合の幹部
チリのホアン・ルイス・ビジャロンITFインスペクター

チリ国内において我々は、MLC条約の策定段階で大きな役割を果たした。このほど我々は、海事関係労組、労組連合組織、大学、船舶職員および船舶部員などの協議機関である「商船・海事労働者評議会」を立ち上げた。労働者としての我々は、要求や問題点について交渉し、起草段階にある新たな法律について協議を受けるための一元的な機会を持つこととなった。
政治的側面としては、チリ政府による条約批准の動向について、ILOは以前から強い関心を示してきた。
我が国の政府は、MLCに関する三者協議機関の発足を決定した。ILOは、この動きをラテンアメリカで条約批准を促進するための絶好の機会ととらえ、ILO小地域事務所でセミナーを開催した。
全ての関係者は議題とすべき問題点を検討し、安全定員と運航定員、船舶における供食部門の重要性、労働時間、居住設備および資格証明などについて意見を交換した。この会議では、チリ国籍船も課題として取り上げられた。
この会議に出席したのは、多くの当局者、すなわち労働省、労働監督局(検査部門)、海事部次長、健康衛生部長、海事当局、船主協会および労働組合であった。
我々は、この問題の検討に、できるだけ多方面の人々を参加させるため、関係当局や船主などに働きかけた。
協議を始めるために、ひとつの素案が、報告書として作成された。これが、政府当局および船主団体との一連の公式交渉の第一段階となった。
年間を通して、MLCの実施に関連するあらゆる問題、とりわけ労働法典、国内版STCW、船内労働規則、航海規則などを含む国内法規の改正問題が取り上げられた。
全ての関係者が合意した最終報告書が、ILOに送付された。我々は現在、バルバドスで開かれるMLCに関する地域会議に向けた報告書の準備に当たっており、私は労働者代表として、それを支援している。
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