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グローバルユニオン

No.18/2004
■クルーズ船の内幕
 
クルーズ船勤務の精神的重圧と肉体的負担

30年前のアメリカの陽気なテレビ番組「ラブボート」は、クルーズ船上の明るい太陽、楽しさ、ロマンスを描き出していた。その後のクルーズ船は一層巨大化し、豪華さを競いながら、主として北アメリカや西ヨーロッパの3000人近い旅客を乗せる海上のホテルとして世界中を航海している。
この20年間に懐の豊かな乗客は、クルーズ船産業を世界の海運産業のなかでも最大の成長産業(平均年率9.6%)に育て上げた。今では1,000総トン以上のクルーズ船約250隻が世界の海を巡っている。
しかし、至れり尽くせりのサービスを楽しむ乗客は、そのサービスを提供してくれている乗組員の環境については何も知らされていない。乗組員の労働条件には大きな格差が見られる。一部の乗組員は労働組合やITFが承認した労働協約で保護されているが、このような好運に恵まれない多数の乗組員がいる。一方で、クルーズ船運航企業が乗客一人あたりの乗組員数を削減しているため、クルーズ船乗組員の負担がますます増大している。しかし、生きてゆくためには、彼らは微笑みを絶やすわけにはいかない。
ITF労働協約は、クルーズ船のサービス部門に勤務する船員が受け取るチップを通常の賃金構成の一部として認めている。しかし、常に微笑を絶やさず、乗客を満足させることができなければ、チップを受け取ることはできない。クルーズ船企業経営者はこのしくみを最大限に活用して、乗組員が肉体的エネルギーのみならず精神的エネルギーも一滴残らず提供して、企業の顧客、すなわち乗客のもてなしに精一杯努力するように仕向けている。
採用の決定は、どの人種、国籍の人間が最も親切で、陽気で、もてなし上手かというステレオタイプの先入観に基づいて行われる。
しかし、いくら微笑んでも、ホテルやレストラン部門のいわゆる「船底部屋」労働者と呼ばれる乗組員たちが、役職や高い賃金を得ることは決してない。かつての大西洋航路就航船の郷愁を呼び起こすイメージを作り上げるため、ヨーロッパの先進諸国出身のスタッフを「船底部屋」から支えるのが彼らの役割である。
クルーズ船業界による精神的労働の商品化は、英国カーディフ大学の船員国際調査センター(SIRC)の調査報告のテーマとして取り上げられている。SIRCの副所長チャオ・ミンファ博士は、クルーズ船に勤務する女性船員の労働・生活条件について調査を実施した。精神的労働は当初の調査事項には含まれていなかったが、チャオ博士は、現代のクルーズ船企業が、低い賃金や疲労に耐え、幸せそうな笑顔や表情を常に保つ能力を船員に求めている事実に気が付いた。
「笑顔は、クルーズ船会社がレジャーを楽しむ顧客の要求を満たすために約束する商品の不可欠な要素なのだ。旅行代理店の店頭ポスター、クルーズ船のパンフレット、新聞の広告やクルーズ航海を紹介するテレビ番組、どれを見ても船員の笑顔が満ち溢れている」
「船員の笑顔は、船旅のレジャーを楽しむ旅客たちと同様に、クルーズ船で働く船員たちも、仕事を楽しんでいるというイメージとメッセージを伝えている。ある大手クルーズ船企業のテレビコマーシャルは、『ほんとの天国だ!別世界だ!』というキャッチフレーズを使っている」。
「しかし、現実のクルーズ船は、船員にとって極めて厳しい労働が求められる職場である。この点についてだけは、労働組合と船舶所有者の意見が一致するだろう。労働組合の出版物にも、船員雇用斡旋業者やクルーズ船企業のパンフレットなどにもクルーズ船のホテル・レストラン部門乗組員の勤務について『1日12時間、週7日間の勤務が求められる。一年の大部分を家族や友人と遠く離れた船内という閉ざされた空間で就労しなくてはならない』と描写している」
クルーズ船企業の船員雇用責任者は、一定の国籍や人種に属する人々を特に好んで雇用するのは、彼らが常に笑顔を絶やさないという特別な才能に恵まれているからだと認めている。ある雇用責任者はチャオ博士に次のように語った。「面談は、応募者の性格や人当たりの良さを評価するための絶好の機会となります。とりわけ重視しているのが笑顔であることは言うまでもありません。結局のところ、クルーズ船はサービス産業なのです。顧客は笑顔で応対されることを期待しています。弊社の船ではインド人が多数働いていますが、インド人は勤勉で常に微笑みを絶やしません。これは本当です」。
もう一人の船員雇用担当者も、「どういうわけか、アジア人船員、特にフィリピン人の笑顔は非常に好ましいのです。彼らは生まれつきサービス精神を持っているようです。フィリピン人は、常にすすんで乗客に挨拶し、笑顔を見せます。しかもごく自然にそうするのです。そういう船員は、顧客からの評判も非常に良いものです。9ヶ月を超える海上勤務を続けた後でも、常に活力に満ち、積極的で陽気です。一方、欧州の船員は疲れやすいようで、疲労がすぐに顔に出てしまいます。乗客だって疲れ果てて、笑顔を忘れてしまった乗組員からサービスを受けたいとは思わないでしょう」。
先入観には逆の側面も見られる。クルーズ船経営者は、東欧諸国の国民は陰気であると堅く信じ込んでいる。チャオ博士によれば、「経営者は東欧諸国出身の船員について『笑顔がない』とか『いつも厳粛過ぎる』と批判的だ。多くの経営者が、東欧とアジアの両地域の船員が同等の賃金で採用できるとすれば、アジア人船員を優先的に採用したいと述べている。この種の偏見を船主が捨てることができるのは、例えば、船舶が欧州のドックに入っているため、アジア人船員を雇用するには航空運賃がかかりすぎて収益に悪影響が出るような場合だけである。「船客の人気を博すのが目的の『適正』なサービスを遂行するために、アジア船員は懸命に努力して感情を押し殺している」。
どんなに輝くような笑顔を持ち、忍耐強く、仕事ができても、乗客と接触する機会が最も多い「重要部署」の職種への昇進に関しては、一定の人種や国籍の船員には、あまりチャンスはないというのが現実だ。チャオ博士の報告書は、クルーズ船支配人の次のようなコメントを引用している。「支配人クラスは白人男性が圧倒的大多数を占め、接客サービス産業で経験を積んだアジア人船員を、ウェイターやウェイトレスとして雇い入れることが一段と増加している。支配人が特に好むのが、タイ人の男性である。タイの男性は業務の経験に加え、『自然』な笑顔を作る能力に恵まれている。さらに、生まれつき『サービス精神』が旺盛なため、船客の人気が高い」。
「しかし、船内のバーやレストランの業務運営の観察や、サービス部門の乗組員との詳細な面接調査を通じて浮かび上がってきた事実は、アジア人船員は、船客の好意的評価を得るための『適正』なサービスを行うため、感情を一層強く抑圧せざるを得ないということである」と報告書は伝えている。
サムという名のタイ出身のヘッドウェイター(給仕長)がいい例だ。サムは乗組員のうちでも最も船客の評判のよい船員の一人で、毎回のクルーズ航海の終わりには、チップを一番多く受け取る。その他のウェイターやウェイトレスと同様に、彼は職場のメイン・レストランで一日11〜12時間、週に7日働いていた。サムの存在を際立たせているのは、『優れた記憶力』と『満面の笑顔』であった。彼はいつもレストランの入り口に立ち、船客の一人一人に『おはようございます』、『いらっしゃいませ』と元気な声をかけていた。全ての船客の名前や好みを記憶しており、船客の家族のことを訊ねたり、時には女性客と冗談を交わすこともあった。
しかし、静かなブリッジの下の事務室での2時間ばかりの面接調査が進行するにつれ、活力に満ち、溢れるような微笑みの陽気なヘッドウェイターは、全くの別人に変貌してしまったと、チャオ博士は語る。SIRC調査員に対し、サムはこう述べた。「厳しい業務です。一日の仕事を終えて船室に帰ると、いつも疲れ果てているように感じます。
あなたがたはサービス産業の本質をご存知ないかもしれませんが、あのレストランはショーのステージ(舞台)で、私は役者なのです。信じられないでしょうけど、船客らと挨拶や会話を交わし、笑顔を見せるなどの仕事をするだけで、全く疲れ果ててしまうのです。私はアジア人なので一段と勤勉に働かねばなりません。お客様に喜んでいただくために一層の努力が求められているのです。時には、ご婦人たちに冗談を言ったほうがよいと思われるときもあります。これもご機嫌をとるためなのです。気にいってもらえれば、乗客は気前が良くなります」。
サムともう一人のタイ出身のヘッドウェイターは、メイン・レストランで最も人気のある船員で、チップの稼ぎも全船員の中で最高であり、所属する部門では「月間最優秀船員」に何度も選出されていた。ところが、レストラン支配人が空席となった際、昇進したのは、ヨーロッパ人のヘッドウェイターだった。
チャオ博士は、次のように指摘する。「1990年代から船主は競ってクルーズ船の大型化を始めた。乗客一人当りの運航コストや資本コストは、船型の大型化にともない急速に低下する。しかし、大型化による乗組員コストの増加は最小限度に抑えられる。
同時期に、船の大型化に伴い、乗組員数に対する乗客数の比率も拡大を続けた。従来の典型的な比率は、クルーズ船市場における当該船舶の位置付けによって異なるが、1:2から1:2. 5であった。しかし、現在、大部分のクルーズ船でこの比率が1:3から1:4になっており、それ以上の場合もある。つまり、1人の乗組員が清掃を担当する船室数は増加し、名前を記憶し、笑顔を見せるべき乗客数も増大するということだ」。
こうした船員労働の強化は巧妙に、徐々に導入されてきたとチャオ博士は言う。「1980年代初頭と比較して、現在に見られる最も大きな相違点は、ノルウェー人船員や先進国出身の船員に接客されることが非常に少なくなったことだ。今では、アジア、東欧、中南米などの途上国出身の船員が接客を行っている。彼らは乗客との接点が最も大きな重要な仕事につきつつも、船員組織では最下層に位置し、世界海運の再構築の矢面に立たされている」。
● チャオ・ミンファ博士による報告書「クルーズ船乗組員:グローバル化した労働市場における感情労働者」は、SIRC(船員国際調査センター)が実施したクルーズ船の労働・生活環境に関する調査プロジェクトから得たデータに基づいて作成された。
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「一定の国籍や人種に属する人々を特に好んで雇用するのは、彼らが常に笑顔を絶やさないという特別の才能に恵まれているためであることを、クルーズ船企業の船員雇用責任者は認めている」
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「船客の人気を博すのが目的の『適正』なサービスを遂行するために、アジア船員は懸命に努力して感情を押し殺している」
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クルーズ船産業の基準改善:
I T Fクルーズ船キャンペーン


ITFは、クルーズ船乗組員を支援するためのキャンペーンを行っている。クルーズ船の船員は、特有の問題を抱えており、国籍もまちまちで、雇い主も同一ではない。大部分の船員が収入をチップに依存している。労働組合の協約が適用されている船員も多いが、世界中で15万人のクルーズ船乗組員が協約の適用外におかれている。
ITFインスペクターは、賃金の未払いや不当な解雇などに直面し、援助を必要としている乗組員に労働組合のサービスを提供するため、クルーズ船を訪船している。
また、便宜置籍国に登録されたクルーズ船に適用するための労働協約のガイドラインを用意しており、これには労働条件、賃金の最低保証、補償給付などが規定されている。
同様に重要な活動として、ITFは、各国政府や国際規制組織を動かして、クルーズ船産業における適正な労働条件の適用と実施を確立させる取り組みも行っている。
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我々が実施を求めるのは:

労働条件、採用、訓練および海上における安全などに関するグローバルな基準を策定する国際機関に対しても、ITFは船員を代表して活動している。その中心的組織が、国際海事機関(IMO)と国際労働機関(ILO)だ。IMOは、主として船舶の安全および航海関連事項を扱っている。ILOは、ILO条約によって雇用に関する国際最低基準を設定している。ILO条約には、特に船員に適用される多くの条約が含まれている。
これらの国際最低基準が、関係各国の国内法に取り入れられるよう、ITFはILO条約の批准促進キャンペーンを行っているほか、最低基準適用の監視ならびに強制措置の実施を関係国政府や国際規制組織に要求している。
ITFがクルーズ船への強制適用を求めている主要なILO国際条約は以下の通り;

ILO条約第179号:船員の募集及び職業紹介

本条約の締結国は、船員の募集手続きにおいて一切の料金を請求することのないよう担保しなければならない。船員雇用斡旋業者は、監督と規制のもとに置かれるとともに、労働組合権を尊重しなければならない。この条約が適正に実施されるならば、クルーズ船への雇用斡旋業界で活動している詐欺業者を閉め出すことができる。

ILO条約第180号:船員の労働時間及び船舶の定員

船員の労働時間は、連続する24時間につき14時間または連続する7日間につき72時間を超えてはならない。休憩時間は、連続する24時間につき10時間以上または連続する7日間につき77時間以上でなければならない。

ILO条約第183号:母性保護

女性の出産休暇は、14週間を下回ってはならない。

ILO条約第178号:労働監督

各国政府は、船員の労働条件及び生活条件に関する監督制度を設けなければならない。

ILO条約第166号:船員の本国送還

船員雇用契約の満了、解約、発病、負傷、難破、戦争、倒産、売船または船籍登録の変更などに際して船員は、経費を負担することなく本国に送還される権利を有する。

ILO条約第165号:社会保障

政府は、船員が社会保障、医療、健康保険、失業保険、老齢年金、労働災害保険、家族・出産・障害・遺族給付などによって保護されていることを確認しなければならない。

ILO条約第164号:健康の保護及び医療

国内法または規則によって、船主は船内の適正な安全・衛生環境を維持する責任を有するとともに、入港時には遅滞なく医師を訪問する船員の権利を保障し、無料で医療を供与しなければならない。

ILO条約第147号:商船における最低基準

各国政府は、自国に船籍を登録する船舶に乗組む船員に関する安全、資格、労働時間、乗組定員、雇用条件、居住設備などの最低基準を規定した法律または規則を持たなければならない。この条約は政府に対し、船舶の査察および基準以下船の拘留を要請している。

ILO条約第146号:船員の年次有給休暇

船員は、祝祭日を除き、最低年間30日の有給休暇の権利を有する。
さらにILO条約第87号及び第98号は、労働組合に所属する権利を保障しているほか、第111号条約は、性別や人種に基づく差別を禁止している。100号条約は、同種あるいは類似の職場に勤務する男性及び女性には同等の賃金の支給を規定している。
理論上は、クルーズ船に勤務する全ての船員は少なくとも、これらの諸条約の規定に基づく保護や最低基準によって守られるべきである。しかしながら、現実のクルーズ船乗組員は、世界的にみても最も弱い立場にあり、搾取の対象となりやすい船員グループに属している。関係船主、船員配乗業者、関係各国政府に対し、ITFと各国加盟組合が全力をあげてキャンペーンを行っているのはこのためだ。
● ITFクルーズ船キャンペーンの詳細については、下記に連絡してください。

ITFクルーズ船キャンペーン事務所
ITF Cruise Ship Campaign Office
399 Challenger Road, Suite 103,
Cape Canaveral, Florida 32920
U. S. A.
Telephone: +1 321 799 2994
Fax: +1 321 799 9282
Email: itfcruiseship@aol. com
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