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グローバルユニオン
No.23/2009
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ロシア船員の賃金と帰国旅費

英国のリバプール港に遺棄された乗組員は、未払い賃金と帰国旅費を獲得するために闘い、勝利した。
ロシア企業サハリン・モル・トランス社の所有するスターリングラード号の乗組員14人の賃金は4カ月も支払われていなかった。その総額は約85,000ユーロ(約113,000ドル)に達していた。この船舶は賃金未払いで差し押さえられていた。
主要債権者であるダン・バンカリング社は、本船の公売を申し立てていた。同社は、当初の支払い分として、乗組員の帰国旅費にあてるための5万ユーロを支払い、未払い賃金については、裁判所が支払い可能金額を決定後に、14日以内に清算すると約束した。
「乗組員らにとっては良い成果が得られた。これは乗組員のために働いてくれた弁護士のすばらしい手腕によって得られたものだ」とITFインスペクターのトミー・マロイは述べた。
「乗組員は基本的な生活費も与えられずに遺棄されていたので、この地域の幾つかのグループが、食糧や飲料水などの生活必需品に必要な資金を拠出するなどの支援を行った」とマロイ・インスペクターは続けた。
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未払い賃金獲得でコッコラ港事件解決

バルト地域行動週間の組合の合同行動によって、関係乗組員は約10万ドルの賃上げを獲得した。
今回の行動週間において、コッコラ港(フィンランド)の船舶査察チームは、香港船籍のアイデフレックス・バルカー号を訪船し、24人の乗組員全員がいかなる団体協約も適用されていないことを発見した。デンマークの船社が所有または用船している、この船舶の管理は、香港のコスコ・ウォレム社に委託されていた。
フィンランド海員組合(FSU)は、ウォレム社に対し、ITF標準協約を調印し、この協約に基づく賃金を支払うよう要求した。ウォレム社は団体協約が適用されていないことを認めたが、団体協約は香港の労組との間で調印すると述べた。FSUは香港労組と協議した後に、香港労組との協約締結は認めないと回答した。
強い雨が続き、積み荷の荷役が遅れたため、幸いにして交渉の時間が十分あった。また、新たに積み込む木材の到着も予定されていた。しかし、2週間が経過しても満足すべき結果は得られなかったため、FSUは本船をボイコットするしかないと決断した。フィンランド運輸労組(AKT)の組合員であるコッコラ港の港湾労働者は、本船の荷役を中止して乗組員への支援を表明した。
このボイコット行動は直ちに効果をあげ、船主側はITF標準協約の調印と、乗組員の未払い賃金99,289ドルの支払いに同意した。
協約の調印が2008年10月23日に行われた結果、港湾労組の支援を得たFSUは、23日の正午にボイコットを解除したため、午後には荷役が再開された。支払に当てるための資金が10月27日に到着し、未払い賃金は今回のケースに最初から関与したITFインスペクターのヤン・オルンと同僚のシモ・ヌルミの面前で、乗組員へ支払われた。
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エストニア人船員に賃金協約

エストニアの船員組合と多国籍フェリー会社との長期交渉の末、3年間の賃金協約が締結され、約2千人の船員が恩恵を被ることとなった。
タリンク・グループの乗組員を組織するエストニア船員独立組合(ESIU)は、2008年1月から続いていた労使交渉で協約締結を達成した。協約の内容は、2008年9月に25%の賃上げ、2009年に9%の賃上げ、2010年にさらに6%の賃上げというものである。さらに、勤続4年以上および9年以上の船員は、2009年4月1日から、それぞれ5%と10%の年功加俸を受け取る。
協約締結に先立ち、8月4日に1時間の警告ストが実施され、エストニアの首都、タリンでフェリー5隻の運航が停止された。ヘルシンキ(フィンランド)やストックホルム(スウェーデン)の港湾でも、現地の組合が連帯行動をとった。
「今後3年間、雇用と賃金を安定させようとする会社側の意思を評価する。今回の賃上げは乗組員のモチベーションを上げ、仕事の質を向上させるものだ。また、年功加俸制度はベテランの労働者の技術を認めるものだ。会社側はESIUが交渉の中で提起した他の問題についても、解決を模索することを約束した。これは我々全員にとっての勝利だ」とESIUのカイア・バスク議長は述べた。
ITFのスティーブ・コットン海事コーディネーターは「労使双方の成果だ。ESIUが組合員に勝利をもたらしただけでなく、交渉中に組合員の数を大幅に増やしたこともうれしく思う」と述べた。
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ベネディクト号のストライキで賃金獲得

ITFの助言によってストライキを決行したウクライナ人船員たちは、未払い賃金を獲得することができた。トルコのムザファ・チベレクITFインスペクターがその経緯を語る

●2008年6月3日:ダーダネルス海峡をロシアに向かって航行中の貨物船ベネディクト号の一等航海士がITFに連絡してきた。一航士は、船内にはウクライナ人船員13人が乗り組んでいるが、4カ月間の賃金(合計約10万ドル)が支払われていないのでITFの援助を求めたいと語った。我々は本船がイスタンブールに到着するまで連絡を続け、乗組員にはボスポラス海峡を通過しないで、錨泊するよう助言した。

●6月7日:本船はイスタンブールに到着し、錨泊した。マネージャーは航行を続けるよう要求したが、乗組員は私の訪船を待って、それを拒否していた。

●6月10日:悪天候が3日間続いたのち、私は弁護士とともに訪船し、乗組員チームと会談した。ウクライナ領事も通訳支援のために来船した。私は問題の解決策を説明した。乗組員らはしばらく考えたのち、ストライキの実施を決断した。現地の弁護士は、裁判所に本船の差押えを申請するために必要な書類を入手した。

●6月11日:船主代理人が現れて、出港してくれれば金を支払うと乗組員に申し出たが、乗組員は代理人の乗船を拒否した。代理人は乗船したいので私の援助を求めてきた。そこで私は代理人とともに訪船し、船長に5万ドルを手渡した。船長はこの現金を金庫に納めて鍵をかけ、乗組員はこれを確認した。

●6月12日:船長が私に電話をかけてきて、マネージャーが残りの金額をロシアに到着次第に支払うので、ロシアに向けて直ちに出港するよう圧力をかけてきている、と連絡してきた。私は用船者に電話をいれたが、彼らはマネージャーとの契約を解約したと言った。用船者は、未払い賃金の支払い計画を乗組員に提案した。その提案は、乗組員が本船をロシアに回航するならば、用船者はロシア港において船内で賃金を現金で支払うというものであった。我々はこの提案について議論したのち、代案を提示した。乗組員は、未払い賃金の全額を現金で、イスタンブールで支払うことを要求した。さらに、会社側が翌月の賃金の支払いを保証する文書を出すならば、乗組員は本船をロシアまで回航するとしていた。
これに対し、会社側の回答はなかった。私は、本船の差押えを裁判所に申請するための準備を進めざるを得ないが、裁判手続きには数か月が必要である、と会社側に警告した。

●6月14日:本船の新たな代理人が電話をかけてきた。未払い賃金98,478ドルを支払う用意ができたとのことであった。船長と乗組員は、船主からの保証書も受け取った。これによって乗組員は、本船をロシアに回航することに同意した。三日後に、乗組員数人が私に電話連絡をしてきた。約束通り、彼らは残りの賃金をロシア到着後に、船内で現金で受け取ったとのことであった。
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海賊にハイジャックされた乗組員解放される

昨年、ソマリア沖で海賊にハイジャックされたストルト・バロー(Stolt Valor)号の乗組員22人が解放された。22人のうち、18人がインド人だった。
ITFに加盟するインド船員組合(NUSI)とインド海事組合(MUI)は合同で、乗組員の解放のために、デモ行進、政府への陳情、メディアへのブリーフィング等を行ってきた。
22人は2ヶ月間の拘束の後、2008年11月下旬に解放された。インド人乗組員のうち5人がムンバイで家族との再会を果たし、残りの13人も、そのすぐ後にデリーに到着した。東南アジアの他の国の乗組員も無事に帰国した。
NUSIのアブドゥラガニ・セラング書記長は「乗組員全員が解放されて嬉しい。インド海運界全体が一丸となって、乗組員に示した連帯は賞賛に値する」と述べた。
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フィリピン人船員未払い賃金獲得

シルバー・コンステレーション号のフィリピン人乗組員は、未払い賃金獲得のための長期間の闘いに勝ち抜き、賃金を受け取って、英国のコーンウォールから帰国した。2009年2月16日、ITFは彼らの最終賃金交渉を支援した。
乗組員はスコットランド沖で2か月にわたるストライキに入った。その後、本船はイングランドのファルマス沖に係船されていたが、乗組員は、毎日減ってゆく食糧を気にしつつ、賃金の未払い分と帰国旅費について交渉を続けていた。乗組員の食糧はファルマス沖にいる間に尽きてしまったが、地域の船員ミッション(福祉組織)からの緊急援助を受けていた。
英国・アイルランド地域担当ITFコーディネーターのノリー・マクビカーも、会社側の説得を続けた結果、2008年7月以降の未払い賃金約204,000ドルの清算が、2月16日に実施された。
シルバー・コンステレーション号には、新たにインド人乗組員21人が乗船し、修理のためにファルマスに残ることになった。一方、香港のITF加盟組合はITF承認労働協約を本船に適用するための交渉を続けている。
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船員のための教訓

ITFは船員の要求に応えて、数多くの成功を収めているが、我々だけでは解決できない問題もある。例えば、あるフィリピン船員の未亡人が、ITFに支援を求めてきたケースである。彼女の夫は、9か月の契約で乗船していたが、4か月目に入って体調を崩してしまった。彼は自分の健康状態について一等航海士に告げるとともに、契約期間の短縮を求めた。しかし、彼の要求は見過ごされた。一航士が彼の体調が危険な状態にあるとは思わなかったのか、あるいは彼が強く要求を続けなかったのであろう。
その後、その船員は一度も健康検査を受けることもなく、契約を満了した。帰宅した翌日、彼は近在の病院に直行した。診断は甲状腺機能亢進症であった。治療中に他の病気を併発したため、下船後2か月以内に死亡してしまった。治療費および葬儀費用などのすべての経費は、船員とその遺族の負担となった。ITFはフィリピンのITF加盟組合とともに、当該海運会社との交渉に臨み、未亡人と遺族のために、好意的な扱いを要請したが、何も得られなかった。
このケースから得られる船員にとっての教訓は、体調が悪い時には、医師の診断・治療が必要だと主張しなければならないということである。公式に要求し、文書を提出することである。このケースにおいても、船員から文書による要求が提出されていれば、会社側の怠慢による損害について追及することが可能となる。文書がなければ、会社側の怠慢を証明することは極めて困難となる。会社側にとっては、船員から医療あるいは本国送還の要求はなかったと主張すれば済むのである。
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なぜ船舶のチェックを常に行うべきなのか……

船員は乗船前に船舶の現状をチェックすべきである。このことを痛感させる事件について、日本の大堀二三男ITFインスペクターが報告する。
2008年1月1日、日本の最北部にある小島の沖で、船舶の座礁事故が発生した。この地域では吹雪になれば気温は氷点下20度以下になる。乗組員は船舶を離礁させようと努めたが不可能であった。
日本の海上保安庁は、乗組員の死傷者がいないことを確認し、乗組員に船体を放棄するよう勧告した。けれども乗組員は船内に留まり、さらに離礁を試みると主張した。彼らは海上保安庁に対し、食糧と水の提供を求めた。2月6日になって、彼らは船体の放棄を受け入れ、北海道の網走に到着した。
彼らの帰国や未払い賃金の清算を手助けするため、私は網走で彼らと面会した。私が会ったのは、ウクライナ人船員4人とロシア人船員10人だった。ここで私が知ったのは、船名はデルベント号で船籍国がないという事実であった。カンボジア船籍を持っていたが、6か月前に失効していたのである。本船はこの状態のままで韓国とロシアの間を航海し、生鮮魚類とカニの輸送に従事していた。
ウクライナ人船員は、賃金14カ月分(約65,000ドル)が未払いとなっており、日本で未払い分を受け取ってから帰国したいと主張していた。ロシア人船員の賃金も数か月分が未払いとなっていることが確認された。
彼らが稚内の公共施設に滞在している間に、日本のITFインスペクターチームは、キエフ(ウクライナ)にある船員雇用斡旋会社、駐日ウクライナ大使館、駐日ロシア大使館、日本における船主代理人、海上保安庁さらにはウクライナおよび韓国のITFインスペクター、ITFロンドン本部などと連絡をとった。
船主のVアンドV社(モスクワ)やオペレーターのTテックス・トレーディング社(韓国)などの連絡先も判明したので、我々は乗組員の未払い賃金の清算と本国送還費用を支払うよう求めた。ところが、船主は倒産に瀕しているため、船舶を救助する経費、船舶代理店費用、乗組員の滞在費、未払い賃金などの支払いは不可能であると述べ、所在地も日本訪問の予定も明らかにしなかった。オペレーターは、すべては船主の責任であり、オペレーターに責任はないと繰り返すのみであった。
海上保安庁も政府を通じて、乗組員を帰国させる方法を模索していた。座礁した本船から燃料の石油を抜き取る経費も含めて、日本側の負担額はすでに20万ドルを超えていた。日本の制度では、これらの経費は地方自治体の負担となるため、小さな地方自治体としては、これ以上の負担には消極的であった。
これとは別に、私は東京のロシア大使館およびウクライナ大使館に手紙を書き、乗組員の未払い賃金と帰国旅費、船舶の救出(離礁)作業の経費を船主に負担させるよう要請した。
これらの努力の結果、2月14日、ウクライナ政府によってウクライナ人船員は帰国し、ロシア人船員は海上保安庁の巡視船で2月19日に送還された。
その後、私は船主への連絡を試みたが、反応はなかった。デルベント号は座礁したまま残された。船体の離礁作業と清掃作業の経費は、すべて地方自治体住民が納める税金でまかなわれることとなる。
今回のケースが示しているのは、すべての船員は乗船する前に、EquasisあるいはITF船員ウェブサイトにアクセスし、その船舶についてチェックしておくべきだという教訓である。これによって、当該船舶の建造年度(船齢)、総トン数、船種、船名、船主、船舶管理会社、ポートステート・コントロール(PSC)記録、乗組員数、国籍およびその船舶にITF承認協約が適用されているか否かなどを確認することができる。
船名またはIMOナンバーをPCに入力するだけで、その船の危険度や良好な労働条件が期待できないことなどが判断できるのだ。
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●ITF船員ウェブサイト:www.equasis.orgまたはwww.itfseafarers.orgの“Look Up a Ship”へ
オンライン船舶情報(無料)

自分が乗っている船舶の情報を知りたいですか?
自分の船に、ITF承認協約が適用されているかどうか、確認したいですか?
自分の船の詳細な安全記録を入手したいですか?

上記のような場合には、無料のオンライン船舶情報(www.equasis.org)にアクセスしてください。
このウェブサイトでは、船舶所有者の詳細情報や、ポート・ステート・コントロール(PSC)の査察記録などの船舶情報を検索することができます。また、その船に適用されているITF協約の有無、最新のクルー・リスト、ITFの査察を受けた最近の日付と港湾名などの情報も入手できます。
このサイトを利用するためには、簡単な無料登録手続きが必要です。

登録方法
まず、www.equasis.orgに接続します。
次に、右上のメニューから、Registration(登録)を選択します。
提示された諸条件に同意する場合は、下端のAccept(承認)を選択します。
表示された登録用紙に、ユーザー名、パスワード、氏名、住所、Eメール・アドレス、その他の情報を入力します。
この手続きの後、手続きの完了を確認するメールが届きます。これにより、船舶検索サービスが利用可能となります。

サービスの活用方法
船舶の検索は、船名、コール・サインまたはIMO登録番号から行うことができます。先ず、検索された船舶のメイン・ページが表示されます。
●船舶情報−船名、船種、船籍、建造年
●管理−所有者の詳細
●船級協会
●安全・管理
●P&I保険情報
さらに、トップ・メニューから、以下の情報に接続できます。
●証書
●査察と配乗−PSCの査察、PSCによる人的要素、ILO条約、ITF情報
●履歴−船籍、船舶所有者の履歴など。
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海賊増加 取締り不能

昨年来増加を続ける海賊の活動によって、船員の生命と生活は脅かされている。
本稿執筆時点において、2008年度に国際海事局(IMB)海賊報告センターが集計した海賊事件は、約200件にのぼっている。この数字は、海賊事件の大幅な増加を示しているが、ソマリア、ナイジェリアおよびインドネシア海域が危険海域であることに変わりはない。
2008年度における海賊行為のうち、侵入された船舶は115隻、乗っ取られた船舶は31隻、銃撃を受けた船舶は23隻であった。合計581人の乗組員が人質に取られたが、そのうち9人が殺害され、7人が行方不明または死亡と推定されている。
IMB事務局長のポテンガル・ムクンダン船長は言う。「海賊行為の頻発と増加ならびに破壊力の増大は、海運業界とすべての船員にとっての深刻な懸念を生んでいる。攻撃の形態、攻撃に使用される武器、人質の人数、船舶を解放させるための身代金の金額などは、大幅に増加している」
海賊による被害は、船員に大きな影響を及ぼしている。身代金のための人質となる危険のほかにも、船主の負担経費の増大によって、船員の雇用や賃金へのしわよせも予想される。一部の船舶は、海賊の多発海域を避けるため、コストの増加する遠回りの航路をあえて選択している。海上保険料も上昇している。増大したコストの一部は、消費者の負担ともなっているが、船員にも何らかの負担が回ってくる可能性がある。
昨年度、ITFは多くの船員の労働条件について交渉し、海賊多発海域のアデン湾の通過中の特別手当や、船員が死亡した場合の遺族補償などの権利を確保した。とはいえ、海賊行為の連鎖は、根源的な対策が必要だ。このためITFは、海賊問題に取り組むための軍隊による断固たる行動を要請した。単なる防御的措置に依存するよりも、ITFが求めているのは、海賊が攻撃用ボートを発進させる母船を、海軍艦艇によって捜索することにある。
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ITF船員ウェブサイト使用言語が増加

ITF船員ウェブサイト(www.itfseafarers.org)に3カ国語が新たに加わった。2009年末までに、英語版に加えて中国語、ロシア語およびスペイン語での閲覧が可能となる。
このサイトは、「船員のすべてに対応できるサイト」として誕生した。コンピューターの達人でも初心者でも、使用しているPCが旧式でも最新型でも、どこからでもアクセスできる。
新たな言語版の導入によって、世界の船員は、一段と容易に情報を入手したり、相互に情報を交換したりすることができる。
ITF船員ウェブサイトの詳細はこちらへ。
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障害補償金76,000ドル獲得

日本とチリのITF加盟組合の連携活動によって、ある船員は高額の身体障害補償金を獲得することができた。
2008年1月、山下昭二ITFコーディネーターは、チリのバルパライソ港で活動するホアン・ルイス・ビラロンITFインスペクターからの緊急電話連絡を受けた。日本船籍の漁船「新高丸」のチリ人乗組員ニバルド・レオンが船内で負傷したとの連絡であった。レオンは乗組員の職を失ったことについては、医師からの報告をうけていたが、船主の日水船舶からは何も連絡を受けていなかった。ITFは全日本海員組合(JSU)水産部と協議し、レオンを支援することを決めた。山下は、ビラロンを通じて、すべての情報をレオンに提供した。
レオンと日水船舶の交渉は2008年1月28日にチリで行われたが、残念なことに、この交渉は不成功に終わった。交渉に参加した弁護士も交渉を続ける一方、JSUも日水船舶との交渉を強力に行った。2008年8月28日、日本における交渉の合意に基づき、問題の早期解決のために、弁護士による交渉をチリで開始することとなった。
この交渉は合意に達しなかったため、レオンの弁護士は裁判による判決を求める準備を始めた。ITFは日水船舶との交渉を強力に促進した。そして、2008年12月2日、日水船舶はレオンの身体障害による就業不能について、76,000ドルを支払うことに同意した。彼はこの決定を受け入れ、ITFの援助に感謝した。
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幸福な船

ITFインスペクターは常に問題と隣り合わせというわけではない。ニュージーランド南島のティマル港でIVSナイチンゲール号を訪船したときがその例だ。インスペクターが8月に本船を査察したが、舷梯の安全ネットの修理が必要だったことを除いては、賃金や労働条件等に問題はなかった。
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5年の戦いで補償金を獲得

長期間の法廷闘争で、従業員補償条例による補償が認められた

フィリピン人機関士が5年前に受けた目の負傷について補償金を得られることになった。パキートは2003年に、香港籍の一般貨物船に二等機関士として乗り組んでいたときに負傷した。2003年9月3日、彼は機関長と共に右舷側の舷梯を修理するよう、船長から指示を受けた。機関長が舷梯の変形した部分を修復するために大ハンマーで叩いた時、金属の破片が彼の目に飛び込んだため、右目の視力を完全に失った。当時、54歳だった。
パキートの契約書は、フィリピン人船員の権利の保護を目的としたフィリピン海外雇用庁(POEA)の標準契約であった。このことは、フィリピンの法律によって契約関係が決定されること、および紛争の解決はフィリピンにおける調停によることを意味していた。また、船員が負傷または死亡した場合の補償最低額も規定されていた。パキートの雇用契約書には、POEAの「遠洋航海就航船舶に乗り組むフィリピン船員の雇用に関する標準条件と規定」が組み入れられていた。
フィリピン人船員について、船主が二通りの協約に調印することは珍しいことではなかった。一つはフィリピンにおける要件を満たすためのPOEA公認の形式、二つ目は、その他の法律上の要件を満たすための契約である。パキートの場合、フィリピンで作成されたPOEAの契約書とは別に、香港の法律に基づいて、「協約と乗組員リスト」と呼ばれる雇用契約書が船主とパキートとの間に締結されていた。従って、パキートの雇用契約の諸条件は、POEAの契約書と香港の契約書に規定されていた。

補償請求

2003年11月5日、パキートは自身の視力の喪失および精神的苦痛に対する補償請求のために、まず、フィリピンの労使関係委員会での調停手続きを開始した。これに続いて、2003年12月30日、彼はシンガポールでレインボー・ジョイ号を相手取って海事(対物)訴訟を提起した。
2004年1月15日、パキートはフィリピンにおける請求を取り下げた。一方、船主側は幾つかの根拠に基づいてシンガポールにおける訴訟の停止を申し立てた。シンガポールの補助裁判官は、この申し立てを受け入れた。パキートはこの裁定について控訴したが、高裁によって却下された。彼は控訴院に提訴したが、補助裁判官の裁定への支持は変わらなかった。
けれども、パキートは諦めなかった。2005年8月、彼は香港において従業員補償請求の手続きを開始した。一方、船主は2005年9月23日、フィリピンで調停手続きを開始した。パキートは、財政的に困難な状態にあったので、香港当局に申請し、法律援助部の法的支援を供与されることとなった。香港のITF加盟組合も彼の代理人として活動し、支援した。

船主は訴訟中止を要求

パキートの補償請求について、船主側は手続きの中止を求めた。また、船員の請求は、調停機関に移管すべきであると主張した。POEAの契約書には「この契約に関して発生した請求または紛争について、団体協約の当事者双方は、本来の排他的管轄権を持つ任意の調停者または調停委員会に請求または紛争を提出すべきである」との規定があるからだ。
しかし、地裁の判事は、この船員による請求は「従業員補償条例/ECO」に基づくものであって、雇用によって発生したものではない。言葉をかえれば、雇用契約に基づく請求ではない、と指摘した。
ECOに基づく補償は、雇用されていた者が負傷した場合に支払われるべきであり、今回の事故は彼の雇用中に発生したものである。この事例における船員の請求は、調停の規定にあてはまらず、従業員である彼がECOによって授与された権利の行使である。従って、雇用主が、調停規則にもとづいて手続きの中止を求めるのは、誤りである。
2006年6月、裁判官は、当事者間の調停に関する協定の有無とは関係なく、地裁はECOに関する請求について排他的管轄権を有していると判断した。ECOに関する請求は地裁によって判断されねばならないとの特殊性のために、ECOに関する請求は調停にはなじまない。それゆえに、船員の請求の中止または調停に移管すべきではない。
しかしながら、会社側は係争の継続を選択し、地裁判事の判断に対抗して、高裁への控訴を申し立てた。
高裁の裁判官は、控訴を認めて地裁の判決を差し止めた。裁判官は2007年2月、この訴訟手続きを中止し、船員の請求をPOEAの契約書に基づいて調停に付託するよう命じた。
パキートは控訴審で再び敗れたが、最終的控訴の道が残されていた。香港の法律援助部は船員の支援を断固として継続する方針を変更せず、結局は、最終的控訴審に上訴することを承認した。
控訴審の審問は、ECOの手続きよりも調停手続きを優先させる権限は、裁判所にはないとの判断を支持した。法廷は2008年4月、調停に関する協定および排他的管轄権の問題に関しては、船員にとって有利な裁定が行われなければならないと結論した。この裁定の意味するものは、パキートはECOに基づいて補償を受ける権利があることであり、良識と船員の権利の勝利である。
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イタリアで港湾スト死亡事故多発に抗議

イタリアの港湾労組は、港湾での死亡事故の多発に抗議し、安全性の確保を訴えるために、全国の港湾でストを実施した。
ストはイタリアの主要港湾労組でITFにも加盟しているFilt Cgil, Fit Cisl, Uiltrasportiが呼びかけた。イタリアの港湾では、死亡事故が多発しており、2009年1月に、ラ・スペジアで港湾労働者のギリアノ・フェネリがクレーン車に押しつぶされて死亡した他、同月に2人の犠牲者が発生している。
3労組は、声明を発表し、「我々は非常事態に直面している。これらの事故には、はっきりした原因がある。安全対策を講じることが何年も前から約束されていながら、実施されてこなかった」と訴えた。
ITFのフランク・レイ港湾部長は「港湾およびターミナルにおいては、危険な労働慣行・労働条件を一切許さないという方針が必要だ。国内法や国際条約が果たす役割も大きい。各国は、港湾の安全・衛生に関するILO第152号条約や実施基準を批准、実施しなければならない。ITFとその欧州地域組織である欧州運輸労連(ETF)は、引き続きILOやIMO等の国際機関やグローバル・オペレーターと協力しながら、港湾の安全確保に取り組んでいく」と述べた。
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ロシア船員のために7万ドルを勝ち取る

ITFが介入するまで、ロシア人乗組員は支給されるべき賃金を受け取っていなかった。
2007年1月、APライト号のロシア人機関長から、本船の安全性に疑問があること、および乗組員の賃金が支払われていないとの連絡がITFに入った。ITF行動チームは、スロベニア港湾国検査当局(PSC)に電話を入れ、この船を検査するよう要請した。
本船には、多数の欠陥が発見されたため、港湾当局によって拘留されることとなった。船主は、本船を造船所に入れて修理するための手配を行った。それと同時に、ITFは機関長の賃金の支払いと本国送還を求めて、船主と交渉した。機関長以外の乗組員は、機関長と行動を共にしないことを決定し、本船に残留することとなった。
2008年1月になって、本船の乗組員から、5か月間賃金が支払われていないとの連絡があった。APライト号が、スロベニアの造船所に入ってからすでに1年が経過していた。会社は、深刻な財政状態に陥っていた。APライト号と同じように、乗組員の賃金未払い問題で、この会社の他の船舶がトルコで拘留されていた。
同じ理由でトルコのITF加盟組合が取った措置によって、もう一隻がすでに売船されていた。
ITF行動チームのドンリ・ハーが、たくみな駆け引きを使った交渉をロシア船主と行った結果、未払い賃金総額の約3分の1に相当する22,000ドルを獲得することができた。
ITF協約交渉部のブランコ・クルズナリッチ部長は、休暇中に乗組員9人(ロシア人8人とウクライナ人1人)を訪問したが、彼らは食料がなくなったために、魚釣りをして飢えをしのいでいることが判明した。ブランコは、記者会見を開き、地元のマスコミの関心を喚起した。その結果、地元社会から、乗組員に対する大きな支援が寄せられた。数日のうちに住民から寄付された食糧品は、優に1カ月分を超える量となった。
船主は賃金の残りを支払うことを望んだが、船舶の修繕費として造船所側が130万ユーロを要求しているため、不可能であった。ITFは、船舶の買取り希望者および造船所との交渉を続けた。
最終的に、造船所は当初の請求金額から約50%減額し、63万ユーロを請求することで同意した。2008年7月に、本船の売却は成立し、乗組員全員は賃金を受け取り、本国に送還された。回収された未払い賃金総額は7万ドルだった。
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●争議行為を起こそうと思っていますか?
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ITFは、便宜置籍船に乗り組む船員が、正当な賃金と適正な団体協約の適用を受けられるよう、支援することを約束しています。
時には船員が、現地の裁判所に提訴しなければならないこともあります。場合によっては、船舶に対するボイコット行動も必要です。どのような手段が適切かは、国または場所によっても異なります。ある国では適切な行動が、他の国においては全く不適切なこともあります。
最初に採るべき行動は、先ず、現地のITF代表に連絡することです。このITFシーフェアラーズ・ブルテンに記載されている住所と電話番号等を参照してください。何らかの行動を採る前に、現地の助言を必ず得てください。
一部の国においては、船舶の乗組員によるストライキが、違法行為となることもあります。そのような場合には、現地のITF加盟組合の代表が、状況を説明します。
多くの国において、労使紛争での勝利の鍵を握るのは、ストライキ行動です。この場合にも、現地の助言に基づいて行動する必要があることは言うまでもありません。多くの国で、船員には、航行中を除き、入港中のストライキ権が法律上、認められています。
あらゆるストライキ行動において重要なことは、規律と安全を守り、団結を維持することです。多くの国で、ストライキ権は基本的人権の一部として、法律あるいは憲法により保障されています。
どのような行動を選択するにせよ、事前に現地のITF代表に連絡することを決して忘れないでください。お互いに協力することによって、我々は正義と基本的権利の闘いに勝利することができるのです。
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ITF便宜置籍船(FOC)・基準以下船反対キャンペーン
2008年の実績


ITFインスペクターが訪船した船舶は9,580隻。
世界31カ国でITF協約を締結。
ITF・FOCキャンペーンによって回収した船員の未払い賃金・補償金の合計額は$1880万ドル。
世界45カ国の港湾で125人のITFインスペクターが活動。
ITF加盟船員労組とFOC船乗組員がFOCキャンペーンを支援するために世界4大陸、21カ国でストを含む実力行動を実施。
ITFが実施した船舶査察の82%は便宜置籍船(FOC)(FOC船リスト参照)。過去に劣悪な実績を残した船舶に特に注意が払われた。
ITF協約の適用を受けた船員は232,946人(2007年は209,950人)。
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INDEX
短信
ITFはどのように船員を支援しているか
経済危機
世界経済危機は船員にとって、どのような意味を持つか
接触禁止
ここ5年間、ISPSコードは船員の「自由」にどのような影響を与えているか
活発化するインド船員の運動
船舶査察に向けた船員の訓練を目指すアジアの新プロジェクト
ITFインスペクター
世界のインスペクターの連絡先
FOCリスト(最新版)(PDF)
世界船腹統計
海上の殺人
ビルマ人移民労働者と人権侵害に関する特別報告
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インド人船員が犯罪者に仕立てられるまで
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ITF船員トラスト船員支援プロジェクトの現状報告
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