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グローバルユニオン
No.23/2009
■ヘベイ・スピリット号
 
ヘベイ・スピリット号の二人を支援しよう

2人を解放するためにITFと海運業界が協力してきたが、この運動はまだ終わっていないとニコラ・スミスは言う。

ジャスプリット・チャウラ船長とサイヤム・チェタン一等航海士は、誰が見てもひどすぎる一年を過ごした。この2人の船舶職員は、一般的に彼らの責任ではないとされている石油流出事故が理由で、2007年12月から韓国に留置されている。2人の容疑は晴れ、一旦は釈放されたが、検察側の控訴により再び収容されてしまい、2度目の公判では有罪となった。関係方面からの多くの非難にも拘わらず、韓国当局は2人を拘禁し、家族との面会も許さなかった。
ITFと海運業界による2人の船舶職員の釈放を求める共同キャンペーンは、前例のないほどの盛り上がりをみせている。2人を雇用しているVシップス社は、拘留期間中を通じて援助を継続している。ITF、海運産業関係機関、インド船員労組など、すべての関係団体が、韓国裁判所の決定に反対を表明している。多くの労働組合関係者らも抗議しているが、インターネットのブログでも嫌悪感を表している。さらにユーチューブに投稿されたビデオは、2人の船員の有罪の理由とされた説明が、根拠のない滑稽なものであることを示している。
ITFと海運業界の圧力によって、韓国政府はついに、最高裁の裁判官が決定を下すまでの間、ヘベイ号の2人の保釈を認めた。本誌の作成段階では、まだ判決が下されていないため、2人の釈放を求めるITFキャンペーンは継続中である。事件の経過は次の通りだ。
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地獄の15ヵ月

2007年12月7日:タグボートに曳航さていれたクレーン付きのはしけ(サムスン重工業所有)の曳航用ケーブルが悪天候のために切断され、停泊していた超大型原油タンカー(VLCC)のヘベイ・スピリット号にはしけが衝突した。この事故による死傷者はなかったが、衝突によってVLCCの原油タンク5槽のうち3つのタンクに穴があき、積荷の原油約10,800トンが漏出した。ヘベイ・スピリット号の船舶職員2人は、裁判の結果が出るまで韓国に拘留されることになった。

2008年6月24日:裁判は結審し、ヘベイ・スピリット号の職員2人の容疑は晴れた。はしけの乗組員は解放されたが、タグボートの船長2人は有罪となり、サムスン重工業には罰金が科せられた。容疑が晴れたにも拘わらず、ヘベイ・スピリット号の船長と一等航海士の韓国での拘留は解除されなかった。その理由は、判決を不服とする検察側が控訴し、上級審の判断を求めたためである。

2008年7月7日:ITFは韓国当局に対し、2人の船員の帰国を認めるよう要請した。Vシップス社の援助のもと、2人の船舶職員は次回の裁判に出席することを保証した。
ITFのスティーブ・コットン海事コーディネーターは、次のように話している。「チャウラ船長とチェタン一航士の帰国を認めるよう要請した。彼らの帰国を認めない理由など、我々から見れば全くない」
ITFは、国際海運会議所、バルチック国際海運評議会(BIMCO)、国際海運連盟(ISF)、インターカーゴ(国際貨物船主協会)、インタータンコ(国際タンカー船主協会)、P&I保険国際グループ、香港船主協会などの海運関係団体とともに強力な抗議行動を行った。
これらの団体は、韓国裁判所が予想外の決定を下したことに深い懸念を表明した。この決定は不当かつ不合理なものであり、人権に対する侵害である、との共同声明を発表し、今後とも2人の船員の釈放を求めるキャンペーンを続けることを明確にした。国家主権への干渉を嫌うため、従来はこの種の問題への干渉を避けてきた海運関係の諸団体による行動としては、今回の共同声明は極めて異例である。

2008年7月〜11月:韓国の法廷には何の動きもなく、2人の船員はインドの自宅や家族から遠く離れた場所に留置されたままだった。祖国の人々がこのニュースを聞いて取った行動や、これ以上拘禁期間が長引くことに家族が耐えられるかどうかについても、2人は心配を募らせた。チェタンは、息子の初めての誕生日を家で迎えることができなかった。
無実の2人は、例え故郷に帰ることを許されても、その後の生活はどうなるだろうか、と心配になり始めていたが、韓国裁判所の不当な措置により、大きな犠牲を強いられることになった。
一方では、各組織の抗議行動が続いていた。2人の船舶職員のために、ITFのコックロフト書記長はソウルの司法省の役員と面談した。
インドでは、いくつかの船員労組がムンバイで合同の抗議デモを行った。これらの抗議行動によって、インド政府は船員の困難な実情を韓国政府ならびに国際海事機関(IMO)に提起することを約束したほか、在インド韓国領事もこの問題をソウルの政府に伝達することを約束した。インド海員組合(NUSI)のアブドゥルガニ・セラン書記長は、その他のインド船員関係組織の仲間とともに、この案件を世界の関係労組の優先議題として取り組んで行くことを確認した。

2008年11月19日:ITF船員部会は、「ヘベイ・スピリット号の船長及び一等航海士を即時釈放させるため、また2人に対する不公正処遇を止めさせるために、あらゆる努力を行う」との決議を採択した。
11月の後半には、海事関係労組と海運会社が、2人の船舶職員の留置ならびに不当な処遇についての共同声明を発表し、2人の解放を勝ち取るために可能な限りの措置をとることを誓約した。両団体は、この衝突事故と、その結果生じた油の流出の責任を船舶職員の怠慢に求めることは不可能であり、2人の船員が無罪であることは、すでに韓国の法律によって証明されていることを指摘し、2人に対する処遇は不当、違法であり、彼らの人権に対する侵害であると訴えた。

2008年11月26日:ITFは、ロンドンで開かれたIMO(国際海事機関)海上安全委員会の冒頭において、拘束されているインド、香港及び中国の船舶職員を支援するために行われている強力な活動を支持し、次のように述べた。「ITFは、韓国における石油流出の被害者に同情しているが、昨年12月の石油流出事故の原因について、チャウラ船長とチェタン一航士は無罪であるとの判決が出たことを強く認識している。韓国政府が司法機構に介入することはできないことを承知しているが、関係船員の帰国を実現させるため、あらゆる可能な方策を講じるよう要請する。全世界の船員と船員組織の代表が、ヘベイ・スピリット号の当該船員に対する不当な処遇について重大な関心を持っている」

2008年12月10日:裁判の判決が出た。判決が出るまでの期間中に、全世界の海事関係労組は、各国の韓国大使館に出向き、韓国政府ならびに関係当局に対する抗議文を提出することで、拘留中の船員に対する支援を誓約した。韓国大使館前でデモを行った組合もあった。
これらの支援活動の甲斐もなく、チャウラ船長とチェタン一航士は有罪となり、それぞれ懲役18か月と8か月の判決を受けた。
この判決に対して、猛烈な非難が寄せられた。ITFのコットン海事コーディネーターは語る。「これは正義ではない。正義からは程遠いものだ。今日我々が目の当たりにしているのは『身代わりの罪人』であり、より広範な証拠を検討することを拒絶することにより、裁判そのものの正当性・妥当性に疑念を生じさせている。今回の判決は、全く理解できない。報復的な判決だ」

2009年1月14日:ITFと海運関係団体は、韓国政府に対し、さらに圧力をかけることを決定した。国際的な外交活動やキャンペーンを行うとともに、ロンドンで合同の抗議集会を実施する予定についても発表した。集会の開催が発表された翌日、韓国の最高裁判所は、2人の船員の保釈を認めた。

2009年2月:チャウラ船長は保釈の直後、次のように述べた。「保釈されて、ほっとしている。外に出られるのは大変ありがたいことだ」2人の船員は、インド海事関係労組、インド政府、ITF、加盟組合などが実施した解放キャンペーンについて耳にしていた。「現在も続いている皆さんの支援に心から感謝している。この間の皆さんの支援から、大きな勇気をもらった。皆さんの援助がなければ、困難を克服できなかったかもしれない」
この記事を作成している現在、2人はまだ帰国していないが、今後も引き続き、全世界が韓国に注目し続け、その圧力から韓国の最高裁が2人の船員を無罪放免し、帰国できるよう、正しい判断を下すことを全世界の関係者が期待している。チャウラ船長は次のように語った。「帰国して家族と再会することだけを望んでいる」
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●ニコラ・スミスは、ITF海事オペレーション協約班の次長。
 
 
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