国際運輸労連-ITF
メニュー トランスポート インターナショナル バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

2005年10〜12月 第21号
■自由化で公正な土俵が築けるのか?
 
カギは鉄道利用の拡大

競争は公平かつ新しい鉄道市場を生み出すものでなければならないとドイツのTRANSNETのクラウディア・メーンアルミン・デューテインは言う。

ドイツの鉄道改革は、東西ドイツ統一のプロセスから生じたいくつか要因をきっかけとして10年余前にスタートした。欧州の法律や自由化の波だけが改革推進の原因ではない。ドイツの鉄道改革は現在、最終の第3段階にある。ドイツ鉄道は、様々な義務を果たしつつ、近く株式公開も予定している。一方、開放された市場には200社以上の業者が自由にアクセスでき、ヴェオリア環境社(コネックス)などの海外の多国籍企業がドイツ参入への関心をますます高めている。
鉄道マルチメディア・サービス関連労組(トランスネット)は、原則として、鉄道市場の競争激化に反対しているわけではないが、競争は平等かつ公正に行われるべきであり、何よりも、鉄道利用の拡大をもたらすものでなければならないと考える。
鉄道は他の交通手段に比べ、大幅に不利な状況に置かれている。環境面、衛生面、保安面のコストが比較的低いという鉄道の大きな利点が市価にもっと反映されるべきだ。また、ドイツでは、鉄道の収益と燃料費には税金がフルに課せられるが、航空業者の燃料費と国境を越えた営業費は免税対象になっている。このように歪曲した競争条件が中期的に正されることがなければ、鉄道改革の当初の成功も水の泡と化すだろう。
トランスネットの見解としては、政府や企業の政策はコスト削減一辺倒であり、営業部門やカスタマーサービス部門では、従業員の配置が不適切となっている。
これがもたらす結果は深刻だ。従業員が減れば、サービスが低減し、カスタマーサービスの質が低下すれば、客も減り、客が減れば、収益が下がり、収益が下がると投資が減り、業績も下がる。このような下方スパイラルは、鉄道利用の拡大を促進する政策の採用と、新しいサービスの提供や新しい市場開拓など、これまでとは異なる積極的な企業文化を構築することによってのみ断ち切ることができる。
ドイツ鉄道が予定通り株式を公開するのであれば、労組にとっては鉄道インフラと運行の一体性確保が極めて重要になってくる。特に、従業員の現実的配置計画について具体的な合意を求めていくことになる。営業上の理由で行われているレイオフ計画やさらなる外部委託、社会的ダンピングの原則には断固として反対する。また、労働者参加が団体協約に明記されるよう求める。
政治的な意思決定者とドイツ鉄道の経営者がこれらの要求に応じるのであれば、トランスネットは鉄道改革の最終段階において建設的な役割を果たす用意がある。公正な協力を選ぶのか、厳しい対立を取るのか、選択肢は二つに一つだ。組合側は、どちらの状況にも対応する準備ができている。
▲ ページトップへ
市場開放と社会ルール

労働者の保護システムが発達する前に自由化が進んでしまっているとヴェルディ労組のステファン・ハイムリッヒは言う。

IBMとフンボルト大学が共同で行った研究によると、鉄道市場の開放に関して、ドイツは他のEU諸国に大きく先行している。
しかし、市場開放は、一交通輸送手段である鉄道にとって良い機会であるとヴェルディ労組は見ている。現在は、旅客輸送も貨物輸送も各EU諸国の国境地帯で一旦止められており、EU全体レベルでの有機化が必要だからだ。
鉄道の第一の競争相手は路面輸送だ。鉄道産業について見れば、鉄道ネットワークを利用したサービスへの公正なアクセスを確保するため、EUレベルで競争のための公正な条件を統合する必要がある。ドイツ鉄道が株式公開するのであれば、英国の鉄道ネットワーク(すなわちインフラ)の民営化の失敗を繰り返さないようにしなくてはならない。
鉄道改革第3パッケージを採択する前に、第1、第2パッケージによる自由化が鉄道貨物事業に及ぼした影響を評価する必要があると我々は考える。
労働者の利益を守るための統一システムの構築を待たずに、市場開放が実施されてしまったとヴェルディは見ている。労働者の賃金と労働条件は保護されなければならない。そのためにも、ヴェルディは欧州運輸労連(ETF)の加盟組合として、国境をまたいだサービスに従事する労働者の労働条件を管理する規則の設立と、欧州列車運転士ライセンスの導入を目指し、努力している。
市場開放よりも常に安全が優先されるべきだ。欧州諸国の鉄道は現在、5つの異なる電力供給システムのもとに運行され、15の異なる列車制御システムが存在する。中期的には、有資格の労働者を活用し、こうした技術的な障壁を乗り越える必要があるが、長期的には、技術の違いをなくしていく必要がある。EUはそのための財政面のインセンティブを設ける必要がある。
▲ ページトップへ
公共サービスの終わりか?

鉄道の自由化は乗客と労働者を苦しめるとジーン・イブ・プティ(フランス、CGT)は言う。

CGTは、国際鉄道旅客輸送の自由化は公共サービスとしての旅客輸送に悪影響を及ぼすと予測している。地域レベルのサービスでも、全国レベルのサービスでも同じだが、特に中小規模の国家では自由化の影響が大きい。鉄道産業の人員削減や労働条件の悪化は今後も続くだろう。
「市場」の開放と競争の導入は、鉄道事業者どうしの協力の上に成り立ってきた現行の鉄道システムを破壊するだろう。
旅客鉄道が国境を越えたサービスを開始してから一世紀以上経つが、その一世紀の間に、欧州の首都と大都市が鉄道網で結ばれていった。国際旅客鉄道は、これまで競争というよりは、各鉄道会社の協力のもとに運営されてきた。こうした企業間の協力があったからこそ、鉄道は欧州の開発計画に大きく貢献することができた。そのような貢献は、競争と分断の文化の中では不可能であったことは明白だ。
乗客は鉄道(加えてバス、タクシーなどの公共交通全体)を一貫したサービスと見なしている。乗客が望むのは、シンプルで安全、かつ柔軟な交通である。欧州委員会の提案には、このような鉄道旅客輸送の戦略的な利点を守るための方策が全く盛り込まれていない。
競争的な市場では、情報こそが企業にとっての戦略的利点となる。各社は独自の情報システムをもつようになり、サービスはもはや補完的ではなくなり、一貫性もなくなっていく。
これまでは運賃も統一され、予測可能だった。予約、予約内容や日時の変更なども自由にでき、柔軟性に富んでいた。しかし、現在は、各社が独自の運賃や予約システムを運用するようになったため、乗客は非常に複雑かつ、まるで航空機に乗る際のような融通の利かないシステムと格闘しなければならなくなった。
鉄道輸送は、現在、特に乗り継ぎの面で、国際レベル、全国レベル、地域レベルで整合性があり、相互補完的でもある。サービスは柔軟性に富んでいるが、列車の運行間隔は一定している。事故が起きても、サービスが完全に止まってしまうことはない。しかし、現在提出されている提案に従えば、各社は、採算性に基づいて独自の輸送計画を立てることになる。この結果、乗客の公共交通へのアクセスは不安定になる。
欧州レベルの自由化がなくても、鉄道はすでに多くの問題を抱えている。政府は鉄道から資本を引き揚ようとしているが、鉄道には政府の助成が必要だ。インフラのコストは今でも非常に高いが、さらに上昇を続けている。外部コストの内包化に関しては、交通モード間、つまり、鉄道と路面輸送の間に不平等が存在する。さらに、インフラと従業員についても、必要な投資がなされていない。
3月7日、欧州12カ国以上の鉄道労働者がストラスブールで会合し、欧州の鉄道自由化への反対意見を述べ合った。このようにフランスでは自由化反対の声が高いことが、欧州憲法をめぐる5月29日の国民投票でフランス国民が反対票を投じた一因でもある。我々は、公共サービスの重要性を認識できる社会主義的な欧州であって欲しいと願っている。鉄道労働者は今後も行動を起こしていく。6月13日、フランスの鉄道労働者は、民間会社(コネックス)が運行を開始した路線で始発列車の運行を妨害した。我々は鉄道労働者に社会的な配慮をした規則の設立を要求している。
▲ ページトップへ
スピードアップは不可欠

鉄道が路面運輸や航空と競争するためには、国の助成が必要だとノルウェー鉄道労組のオイステン・アスラクセンは言う。

ノルウェーを出発し、スウェーデン、デンマークまで走る国際旅客列車は、2つのカテゴリーに分類される。一つは、州政府や中央政府の助成を受けている地域サービスで、もう一つは、商業ベースで運行される長距離サービスだ。
オスロ−ストックホルム間、オスロ−コペンハーゲン間(イェーテボリ経由)の国際長距離サービスは、昨年まで、ノルウェー国営鉄道とスウェーデン国営鉄道が50%ずつ株式所有する「リンクス社」により運行されていた。しかし、政府の助成金なくこの路線の運行を商業ベースで維持することは不可能と判断されたため、リンクス社は解体され、サービスも閉鎖された。現在の保守政権下のノルウェーでは、路線再開のための助成を再開しようという政治的意思は全く見られない。
ノルウェー国営鉄道は、オスロ−イェーテボリ(スウェーデン)間でサービスを再開した。このサービスはノルウェー国内では、地域サービスと認識されるため、政府の助成の対象になる。スウェーデン国営鉄道は、夜間列車サービスを開始し、この事業の生き残りを希望している。
これらの国際サービスが財政難に苦しんでいる主な原因は、インフラへの投資不足だ。一つの路線を除いて、ノルウェー側(ほとんどが単線)では、列車の最高速度が時速130キロから80キロに引き下げられた。同時に、道路システムが大きく発展し、高速道路も過剰に建設されている。
つまり、所要時間の面で、鉄道は高速バスと競争できないことになる。また、運賃的にも高速バスの方が通常安い。航空サービスもサービス頻度が高く、また比較的安価でもある。
このような状況の中、鉄道はどうすればいいのか?自由化がその答えでないことは明らかだ。鉄道システムの脱線を正すためには、ノルウェーとスウェーデンの両国が、鉄道の平均速度を上げることを基本的な目的に据え、鉄道インフラに相当の投資を行う必要がある。合計所要時間を少なくとも4割は削減しなくてはならない。
一方、ノルウェー、スウェーデンの両国の国営鉄道がサービスを調整する必要もある。さらに、十分な本数のサービスを提供し、その他の水準も改善して、旅行者の要求に答えていけるようにサービスの助成を行う必要もある。
今の状況では民営化や自由化によって何の問題も解決しない。したがって、ノルウェーの組合は自由化や民営化に強く反対する。
ノルウェーは欧州経済地域に参加しているため、ブリュッセルで採択される様々な指令の影響を強く受けるが、欧州運輸労連(ETF)が組織する反対運動の中で、我が組合も積極的な役割を果たしていく。ノルウェーの組合は、3月にストラスブールで行われた、鉄道の第3パッケージの自由化に反対するデモ集会にも参加した。
▲ ページトップへ
欧州の鉄道サービスは、他の交通モードとの熾烈な競争など、難題を抱えてきた。鉄道産業がこうした難題を解決していく上で改革は必要だ。だが、自由化が問題を解決する鍵なのか?欧州委員会はそう考えているようだ。欧州委員会は、欧州統一鉄道と、それによる鉄道の運輸市場シェアの拡大という目標達成のための第一歩を踏み出した。EU3カ国の労働組合指導者がこの動きをどう見ているのか、聞いてみた。
▲ ページトップへ
市場のさらなる開放

2005年3月に欧州議会の運輸委員会が合意した鉄道の「第3パッケージ(第3改革計画)」は、第1、第2の改革計画の結果、実現した自由化をさらに進めるためのもので、今回は旅客輸送を対象としている。
欧州議会の運輸委員会の意見を認める方向で最終的な決定がなされるなら、欧州の国際鉄道旅客市場は2008年から、国内の鉄道旅客市場(カボタージュを含む)については2010年からそれぞれ開放されることになる。貨物輸送に関しては2003年にすでに自由化されており、2006〜2007年までには、欧州内での物の輸送については障壁が完全に取り除かれることになる。
現段階では、運輸委員会は、欧州運輸閣僚理事会とは異なり、パッケージの4本柱のうちの一要素に関して欧州運輸労連(ETF:ITFの欧州組織)が出した主な要求事項を受け入れている。ETFの要求とはつまり、列車の乗務員のための欧州共通のライセンス制を確立するための指令の草案を作成するというものだ。欧州議会・運輸委員会は、国内路線、国際路線を問わず、保安に責任を負っている運転手をはじめとする全乗務員のライセンス制確立に賛成する決定をした。しかし、第3パッケージの該当する条項を見てみると、加盟国が選択的にこれに従わない自由も残されており、さらに、手続き上の問題からこの条項の制定に関しては先延ばしとなってしまった。
欧州の社会的対話が明確な勝利を収めた例としては、国境を越えて乗務する労働者の最低労働条件を確立することができた実績が挙げられる。この労働基準は、運輸閣僚委員会の指令として実施されることになろう。
ETFのサビーン・トリエール鉄道部長は、「国境を越えて乗務する鉄道労働者のための運転・休息時間に関する共通の最低基準を設立することは、鉄道市場が開放される今、不可欠である。最低基準の設定は、終わりのない底辺への競争と労働条件などの社会的水準の悪化を食い止めるための唯一の道である。基準の設定により、労働者の安全衛生だけでなく、鉄道の安全が保障される。
それにも関わらず、全欧州の鉄道労組は、雇用保障と業務内容の面で大きな問題に直面している。鉄道会社が国境を越え、既存の企業や新興企業との競争を余儀なくさる中、人員は減少し、業務は外注され、労働者は労働強化とより柔軟な働き方を求められている。
▲ ページトップへ
 
 
INDEX
ロンドン同時テロ
使命感に燃える地下鉄・バス労働者
難題に立ち向かう
ITF初の試みである航空経済会議について
今こそ立ち上がろう!
破綻したナイジェリア航空の元従業員は未払いの手当てを受け取れるのか?
自由化で公正な土俵が築けるのか?
欧州の鉄道労組が市場開放の影響を考察する
尼崎脱線事故の教訓
事故から学べること
サプライチェーンにおける連帯
国境やサプライチェーンのリンク(繋ぎ目)を越えた連帯の方法を探る
バス民営化の後
ザンビアのバス民営化の影響
成長著しいインテグレーター
インテグレーター企業の考察
チームスターズは我が人生
一般
 
ニュース
 
コメント
 
緊急性を増す公共交通機関のテロ対策
 
ファシズム分析の大著に学ぶ
 
欧州の前進をめざして
読者の声
ロンドン同時テロ
勤労生活
アルゼンチン初の女性船長
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.