国際運輸労連-ITF
メニュー トランスポート インターナショナル バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

2005年10〜12月 第21号
■成長著しいインテグレーター
 
成長著しいインテグレーター

巨大インテグレーターの成長は著しく、その営業活動は事実上、全世界に及んでいる。インテグレーターとは一体何者か?組合はインテグレーターについて何を知っておくべきか?

以前は無数の地元ベースや全国規模の業者が道路、鉄道、航空による貨物サービスをそれぞれ行っていたが、現在では4大グローバル企業が複合急送事業を独占している。
4大大手とは、DHL、Fedex、TNT、UPSだが、これら大手は、無数の下請け業者と合わせ、全世界で優に100万人以上を雇用している。さらに数万人が他の小さいが成長中の業者で働いている。
2008年までに、いわゆる「インテグレーター」の収益は、計424億ドルに上ると予測されている。これは2003年比で2割の伸びにあたる。熾烈な競争が繰り広げられる中、大手企業は継続的に買収、投資、多角化を進めながら、サプライチェーン・マネージメントなどのより新しい分野へと進出しつつある。どのインテグレーターも、少し名前を挙げればサムソン、トヨタ、BMW、ネッスル、コルゲート・パルモリブ、キャノンなどの大手多国籍企業と契約を結んでおり、顧客が輸送やロジスティックスに関して出してくるどんな要求にも答える用意がある。
4大手はそれぞれの地元では最も力をもっているが、他地域での覇権をめぐって競争を続けている。アジア太平洋地域、中でもとりわけ中国が主要市場であるが、中南米市場にも進出しつつある。
インテグレーター業界の絶え間ない変化と再編成の波の中で、労働者はそれぞれに異なる形でその影響を感じている。
企業主が代われば、仕事にも影響が出る。国内各地域の労働者たちは、遠く離れたところにいる使用者の支配の下で、まるで巨大なグローバル機械にでも飲み込まれるかのような感覚になる。新しい使用者がサービス業務を下請けに出せば、労働組合基盤も分断されてしまう。
インテグレーター企業と労働組合の関係はまちまちだが、米国のUPSとドイツのDHLという例外を除けば、概して、インテグレーターの組織率は低い。良好な労使関係を保っているという報告もあれば、当初は敵対的関係にあったが、それを改善した例も見られる。しかし、常に反組合の立場を崩さない企業もある。
人事については、本部や地域支部から直接指示を受けているため、地元企業には権限がないケースが多いようだ。そうなると、少なくとも理論上は、労働条件や組合の承認について、全社的な政策が存在するはずだ。
組合が海外の同じ企業で働く労働者と国際的に協力したり、連帯したりする場合に、企業の政策決定中枢が組合にとっての格好の標的となる。企業が一般市民が抱く企業イメージに非常に敏感であることも、組合にもう一つの可能性を提供している。一方、時間厳守を迫られるインテグレーター事業は、労働者の圧力に弱いという側面を提示しているのかもしれない。
▲ ページトップへ
労働者の対応を調整する

2005年2月、ITFはロンドンで第1回国際インテグレーター会議を開催し、16カ国から加盟組合が参加した。会議の目的は、国際的な組合間の協力を調整し、それをインテグレーター企業内の組織化運動に役立てようというものだった。また、この問題に関しては、ITFは全世界で郵便事業に従事する労働者を組織している国際産別組織(GUF)の仲間、ユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI)とも協力している。
各国のインテグレーター企業についての経験を共有することで、組合は、ITFの調整をうけて、ネットワークを立ち上げ、インテグレーター産業全体を通じて適用される最低労働基準を共同で設定していくことに合意した。
ITFとインテグレーター企業が国際枠組み協約を締結し、この最低労働基準をその中に盛り込むというのも一つの可能性だろう。そうすれば、国際的な団体交渉を調整する過程で、異なる企業においても国際的な団体協約が確実に実施されることにつながる。
ロンドンのインテグレーター会議の参加者は、この協力の過程に参加することで、同じ企業で働く労働者たちに遥か彼方での労働争議に協力するよう、組合員に呼びかけることができそうだと希望を口にした。参加者はまた、10月10〜16日に実施されるITF路面運輸行動週間の中でも、以前から行ってきた要求を引き続き行うつもりだ。
インテグレーター・ネットワークのメンバーは、11月にワシントンDCで、チームスターズ労組(IBT)をホスト組合として、会合を持つ予定だ。一方、ITFは、インテグレーター企業の経営陣に手紙を送り、各企業の労使関係に関する企業方針を明確にしてくれるように要請した。今日までに届いている労働組合の報告では、企業本部の政策がどうであれ、インテグレーター企業は、各国、各地域で利用できる状況は何でも利用しようというアプローチを取っているようだ。
▲ ページトップへ
上記のデータはポーラ・ハミルトン(ITF・ロンドン大学ロジスティックス・プロジェクト研究員)によるDHL、UPS、FedEx、TNTに関する第一報告書からの抜粋。
インドDHLの不当差別

RDスレッシュ・クマール

DHLはインド最大の企業で、約1,100人が働いている。2回ほど失敗した後、1999年と2002年に地方ベースの小さな従業員組合について、企業側から承認を獲得した。組合は、インドのDHLで働く全従業員をまとめる連合体を設立することに合意した。
すると、経営側は、全国の組合の代表者を不当に差別し始めた。1年のうちに、コインバトール、ムンバイ、バンガロール、チェンナイで組合の支部長が解雇された。2004年にはこのような差別がひどくなり、15人の従業員がコルカタからデリーへ、20人がムンバイからデリーへ、自らの意思に反して、異動させられた。
差別を受けた労働者は全員、この問題を労働裁判所に持ち込み、企業の責任を追及しようとしているが、現在なお、様々な州の労働裁判所で係争中である。
チェンナイでは、企業側と地元の組合の関係が比較的うまくいっているので、幸運と思わなければならない。チェンナイでは労使が交渉できる関係にあり、2003年には、賃上げを約束する文書も調印がされた。しかし、ムンバイをはじめ、会社側が地元の組合との交渉を拒否している州もある。また、組合の設立すらできていない州もあり、そのような州では労働者の辛苦は大きい。
最近、一番問題になっているのが、業務の外部委託だ。外部委託により、組合は力を失い、残された労働者の負担も大きくなる。新規採用はこの7年間凍結されたままだ。
▲ ページトップへ
RDスレッシュ・クマールはDHL従業員組合の書記長
企業概要

TNT
トーマス・ネーションワイド・トランスポート社は1946年にオーストラリアで設立され、当初は急送宅配サービスだけを行っていた。親会社のTNT・NV社は、現在は、2つの主なブランド、TNT(急送サービスとロジスティックス・サービス)とロイヤルTPGポスト(オランダの全国郵便サービス事業、欧州その他の地域でも営業)を統合している。グループ全体では、63カ国で16万人を雇用している。
TNTエクスプレスは欧州最大の統合的な航空道路急送ネットワークをもっており、TNTロジスティックスは、世界第2位のロジスティックス企業。
TNTは、人権、労働権(組合権を含む)、環境保護を尊重し、国連グローバルコンパクトの10原則(www.unglobalcompact.org)を採用し支持していると主張する。
 
FedEx
フェデラル・エクスプレスは、1973年に米国で急送輸送サービスとして設立され、80年代初めにアジア太平洋地域へと拡大を開始した。1989年に貨物輸送機の会社、フライイング・タイガー社を買収し、アジア21カ国への飛行権を獲得した。
現在、従業員数は13万8千人以上。世界の378空港に乗り入れている。
世界220カ国で一日あたり貨物320万個以上を輸送。自称、世界最大の急送輸送企業である。
統合グローバル・ネットワークの中で、営業所数は5万、航空機671機、4万1千の車両を所有している。
他の大手インテグレーターと同様、情報技術に巨額の投資を行っている。また、カラー印刷、インターネットのアクセス提供、テレビ会議など、多角化を進めている。
FedExが反組合的であることは広く知られており、インテグレーター4大手の中でも組織率は一番低い。
 
DHL
2002年以来、DHLはドイツポスト・ワールドネット(欧州最大の郵便サービス提供者で、ドイツポスト・ユーロエクスプレス、ダンザスなど支配下の急送便会社やロジスティックス会社をDHLブランドのもとに全て統合)の完全子会社となった。
創始者のエイドリアン・デスレー、ラリー・ヒルボルム、ロバート・リンが個人的に航空便で書類の輸送に携わっていたのをきっかけとし、1969年にサンフランシスコでDHLが設立された。この経験から、船が港に到着する前に、船荷の税関手続きを行い、港での貨物の待ち時間を低減した。こうした手法から、国際航空急送事業の創始者とされている。
1979年までには、書類に加えて、貨物の輸送も扱うようになった。1988年には、170カ国で事業展開しており、従業員数は1万6千人だった。現在、従業員35万人を雇用し、急送小包サービスに加え、道路、鉄道、航空、海上による貨物輸送、倉庫、配送、サプライチェーン・マネージメント、そのほかのロジスティックス・ソリューションを提供している。
DHLの労使関係は、国によってまちまちだが、米国やインド(前頁の記事を参照)をはじめ、関係が良好とは言えない国もある。得意の下請け委託手法により、雇用や労働組合に関する規則を回避し、コストを削減し、賃上げや組合承認の要求が高まると、単純に雇用契約を打ち切ってしまう。また、DHLは、下請け会社の従業員にも黄色と赤の制服を着用させることで、企業イメージの一貫性を保つことに成功している。
 
UPS
1907年に米国で電信会社として設立された。UPSは現在、米国内で31万7千人、国外で4万人を雇用している。「世界中どこでも商業を可能にする」ことを企業目的としている。自称、世界最大の小包配送会社兼、グローバル・ロジスティックス・プロバイダー。
UPSは、複数の企業倫理評価で、「優良企業」の評価を受けてきた。UPSは、労働組合を承認し、公平な交渉を行うことを全社的な「企業政策」で約束しており、一般的に、組合との関係は良好のようだ。しかし、チームスターズ労組との関係は、組合が強くなると、国際的なキャンペーンを招く可能性もあるということを示すことになった1997年の労使紛争以降、完全には回復していない。
1997年のストライキは、米国内の組合の一般組合員やITFから強力な支援を得た。また、引き続き、UPSの米国以外の市場としては最大である欧州でも強力なキャンペーンが行われた。ベルギー、オランダ、フランス、ドイツの組合が同時ストライキを実施する直前に、UPSが労働者側に有利な契約を承認し、ストライキは終了した。
▲ ページトップへ
 
 
INDEX
ロンドン同時テロ
使命感に燃える地下鉄・バス労働者
難題に立ち向かう
ITF初の試みである航空経済会議について
今こそ立ち上がろう!
破綻したナイジェリア航空の元従業員は未払いの手当てを受け取れるのか?
自由化で公正な土俵が築けるのか?
欧州の鉄道労組が市場開放の影響を考察する
尼崎脱線事故の教訓
事故から学べること
サプライチェーンにおける連帯
国境やサプライチェーンのリンク(繋ぎ目)を越えた連帯の方法を探る
バス民営化の後
ザンビアのバス民営化の影響
成長著しいインテグレーター
インテグレーター企業の考察
チームスターズは我が人生
一般
 
ニュース
 
コメント
 
緊急性を増す公共交通機関のテロ対策
 
ファシズム分析の大著に学ぶ
 
欧州の前進をめざして
読者の声
ロンドン同時テロ
勤労生活
アルゼンチン初の女性船長
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.