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グローバルユニオン

No.20/2006
■法律と船員
 
法律の迷路から抜け出す方法

海上で船員が法律上の権利を行使するのは、混乱のもとでもあり困難でもある。ITF法律部のクラウディア・ベネットがその理由を解説する。

「船乗り稼業は刑務所にいるのと同じだ。溺れ死ぬ危険が余分にあるだけだ」という古い船員のことわざを聞いたことは?
アポストロス・マングラス船長は、2002年のオイルタンカー「プレステージ号」の沈没に関連して、スペイン当局によって83日間留置され、そののち2004年11月までスペインに拘留されたときに、この「ことわざ」について考えたかもしれない。同様に、2003年の「タスマン・スピリット号」の沈没にともなってパキスタンに拘留されることとなった「カラチの8人組」の船員や、その他の海難事故に関連する裁判所の不手際の被害者となった船員についても言える。
海上の船舶をとりまく複雑な業務上および法律上の環境は、船員が直面しているその他多くの問題の一部でしかない。しかしながら、法律の関連において特に船員が非難・攻撃の目標となりやすいのは何故だろうか?その答えは、海運産業が持つ多国籍的性質にあると言える。
船員は、遠い港を目的地とする航海に従事することが多い。その途中で多くの危険にさらされることもある。船内で負傷することもあれば、色々な理由で外国の港に取り残されることもある。航海中の船舶は、毎日のように幾つもの国の領海(異なる主権のもとにある)を通過する。
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どの国の法律で?

船員が苦情を提起する場合に、関係する国際的な要素をよく検討し、どの国の法律に基づいて提起するかを確定する必要がある。当該船舶および紛争当事者の国籍、その事件が発生した際に船舶が航海していた領海の主権国、雇用契約の調印国などが、まず確認すべき要素の一部である。
一般的に、船員は乗組んでいる船舶の国籍(旗国)の法律のもとに置かれている。従って、船内における出産、死亡、結婚などは船籍国で発生した出来事として扱われる。自国籍船による海運産業が一般的であった時代には、船員の国籍、勤務する船舶の国籍、船舶所有者の国籍などの間に明確な関係が見られた。これらの国籍が同一であった時代には、(法律による)保護を必要とする際に、船員は自分の国の法律を参照すれば済んだのである。けれども現代はそのような時代ではなくなった。世界海運における便宜置籍船の大幅な増加がその理由である。
自国籍船隊の場合においても、第二船籍制度の増加につれて、自国籍船に雇用される外国人船員が増加している。しかし、関係海運国の国内法はこのような環境の変化に十分に対応しているとはいえない。立法関係者らは、外国人の船員を保護するために法律を改正することには、消極的であることが多い。さらに、船員と雇用主の関係に影響を与える法規の大多数は、労働法規ではなく海事関係法規や関連規則である。
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つぎはぎの法規

歴史的な理由から、多くの国家において陸上の労働者に適用される労働法は、船員を明白に除外している。そのために国内法は、統一を欠いた、つぎはぎの法律しかないために、海運業界の基準以下の要素によって網の目をくぐることが可能になるのが現状である。
国際労働機関(ILO) や国際海事機関(IMO)は、船員の権利を保護するために、多くの規則や勧告を策定してきたが、国際法(条約など)にも弱点がある。第一に、国際法は関係国によって批准(受諾と承認)されなければならない。第二に、規則の強制は、各批准国の特権となっていることである。それゆえに、国際条約の有効性は、条約の規則の強制についての批准国の政治的意思に依存している。
まだ発効には至っていないが、2006年に採択された海事統合条約がこの問題点の解消に役立つと思われる。しかし、現在は、この国内法や国際法の管轄権という幾重にもからみあった法規の網の目に、我々は動きがとれなくなっている。
知る人もない外国の港で、船主から遺棄された場合を考えてみよう。賃金は何ヶ月も受け取っていないし、言葉も全く通じない。このような状況を経験した船員は、賃金の請求や苦情の提起の方法がわからないことが、いかに気力をくじけさせるかを知っている。弁護士の援助を求めることも可能かもしれないが、現実には、安価な弁護士などはいないのである。
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いったい誰の責任なのか?

他にも実際的な困難がある。表面的には、船員が苦情を提起する相手、すなわち雇い主である「船舶所有者」を確認することは容易なことのように見える。しかし、海運業界の慣行により、当該船舶に複数の企業が関与する仕組みが開発されており、実際の船舶所有者を追跡・捕捉することは極めて困難である。船員と雇用者である船舶所有者(船主)の中間に何人もの仲介者(代理人)、すなわち配乗業者や船舶管理業者が存在する。これら業者も船主との直接交渉を阻む存在となる恐れがある。
船籍書類に登録された船舶所有者が手がかりとなる場合もあるが、現実には、登録された会社は登録された一隻の船舶以外には目ぼしい財産を持たない、いわゆる「一杯船主」である場合が多い。その「一杯船主」は、世間を欺くために設立された架空の子会社で、その背後に多くの資産を抱えた親企業が隠れていることが少なくない。
このような訳で、仮に(未払い賃金などの)請求訴訟の被告人を確認して、訴訟に持ち込んだとしても、かち取った裁判所の決定を強制的に執行するのは極めて困難である。
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変化の到来

幸い、船員の置かれている状況についての国際社会の認識は、今では大きく変わりつつある。国際海運業界における監督方式に関する全般的な怠慢と失敗こそ、現在の国際海運業界が直面している全ての重大な問題の根源的要因であることが、今や広く認識されている。さらに、旗国や船舶所有者は、国際社会、海洋の自然環境及び船員に対する責務を完全に履行する必要があるとの認識が一層高まりつつあるという背景も認められる。
船員の利益を目的として、前述の海事労働条約を中心とする国際法規を強化するための大規模な努力が注がれてきた。変化を具体化するために、国内及び国際レベルにおける改善の努力とともに必要なことは、海運業界の民間(企業)関係者の責任体制の強化ならびに労使紛争解決のための機構の改善である。
海上における安全と質の改善の鍵となるのは、海運産業における経済要素および社会的要素の一体化ならびに、海運産業にとっての最も重要な資産、すなわち船員の処遇の改善である。その他の産業界においては、世界の企業はこの点を十分に理解し、その役割を達成している。海運産業もこれまでの遅れを回復し、他産業とのバランスを追求すべき時である。
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船員配乗業者:消えた大金

船員配乗業者は船員を船主(雇い主)に斡旋して手数料を得ているが、一部の悪徳業者は、船員からも斡旋料を取り立てている。

国際労働基準は、仕事を斡旋する船員配乗代理業者(マンニング業者)に対し、船員は手数料を支払うべきではないと定めている。各国政府の定めるガイドラインも、これらの斡旋業者は船員の雇用主から手数料の支払いを受けると定めており、労働者から手数料を徴収することを禁止している。しかしながら、船員から料金を徴収するという不法行為は、広範に行われているのが実態である。多くのITFインスペクターの体験から、数千人もの船員が自分の雇用契約を確保するために料金を支払っていることが明らかになった。
多数の船員が、漠然とした、または実態のない管理サービスの経費を負担させられているほか、実現しなかった雇用について手数料を支払わされているケースさえある。
読者の皆さんがこの次に雇用契約にサインする場合には、手数料を要求する船員配乗業者には用心しよう。雇用契約にサインする前に、雇用の斡旋に関する政府のガイドラインをチェックして、手数料を要求しない配乗代理業者を探すことにしよう。経費の支払いを要求する配乗業者しかない場合には、以下を実行するよう努めよう。
職場を(あてもなく)探すだけの手数料を配乗業者に支払うことは決してしない。
雇用契約にサインする前に、手数料の支払いはしない。
領収書がなければ、手数料または経費を支払わない。
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職を得るためにお金をはらいましたか?

配乗業者への料金支払いの有無に関する調査において、船員から得られた回答の一部:

「私は良い仕事を得るために配乗業者にUS$600ドル支払いました」

ユーリ、ウクライナ出身、AB船員、バラ積み船勤務。


「今回は支払っていません。けれども、ウクライナでは皆が支払っています。単に他の人に話さないだけです」

匿名、ウクライナ出身、電気技師、クルーズ船勤務。


「現在の職については支払っていませんが、過去には、職を得るために配乗業者に支払っていました」
ロニー、フィリピン出身、AB船員、バラ積み船勤務。


「私は船主にUS$300ドル支払いました」

フェルナンド、インド出身、二等航海士、バラ積み船勤務。


「当社(日本企業)に勤務して20年になりますが、職のために金を支払ったことはありません」

バンバン・セトヨ、インドネシア出身、二等航海士、一般貨物船勤務。


「私は支払っていません。私が契約しているフィリピンの配乗業者はすべての手配を電話ですませます。マニラまで出かける時間と費用を節約するためです」

匿名、フィリピン出身、甲板員、コンテナ船勤務。


「私が最後に支払ったのは、2001年3月でした。でも、会社はこのことを知っています。定期的に会社側と協議をしています。私が支払ったのはUS$1500ドルで、一ヶ月の賃金の半分です。私の町では少なくとも三社の配乗業者が乗組員から賃金の10%に相当する料金を徴収しています」

アナトリー、ロシア出身、船長、一般貨物船勤務。
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巧妙な取引

二人のITFインスペクターがマンニング業者に関する印象を語る。:

「ロシアの極東地方では、数百社のマンニング業者が営業しており、その大部分は賄賂(あるいは手数料)と引き換えに職場を斡旋している。高級職員や高度技能を持つ船員を除く大多数の船員は、手数料を支払わねばならない。料金は、US$200ドルからUS$500ドルだ。ドミトリーという名の三等航海士は、国立極東商船大学を卒業したのち、便宜置籍船(FOC)のタンカーに好条件で職を得たが、一か月分の賃金に相当する斡旋料を支払った。電気技師のアレクセイは、漁船に乗船するためUS$400ドルを支払った。
船員から料金を取るには多くの方法がある。詐欺に遭う船員は後を絶たない。手数料を支払ったからといって、職が得られるわけではない。船員が支払った金額の領収書を受け取っていないことも多い。一部の斡旋業者は、営業許可すら持っていない」

ピョートル・オシチャンスキー、ITFインスペクター、
ロシア船員組合(SIU)、ウラジオストック。


「ベニス港でグルジア籍船の船長と三等航海士の話を聞いた。二人とも国立職場斡旋機関に料金を支払ったことは否定した。しかし、インタビューから、ウクライナに約200社ある船員配乗業者のうち、一部は闇市場(ブラックマーケット)で営業しており、船長や機関長の偽造免状や証明書が発行されていることが明らかになった」

アントニオ E. ブラッシ、ITFインスペクター、FILTCGIL、ベニス。

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非難される海難救助

2005年9月、シチリア島の南岸沖で11人の死体が発見された。この11人はリビアからイタリアへ向けて出航した移民希望者だったと言われている。
非常に悲劇的ではあるが、珍しい事件ではない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の調べでは、これまでリビアからイタリアへ渡る途中に溺れ死んだ難民希望者の数は2千人を超える。しかし、彼らもまた、毎年、違法入国を目指して海を渡り、海難事故に遭遇する何千人もの犠牲者のほんの一部に過ぎない。
北アフリカと南欧の間に細長く位置する地中海には、そうした移民希望者や、最初スペイン、イタリア、ギリシアなどに渡り、そこからさらに欧州の別の国への亡命を希望する亡命希望者が多く行き交う。しかし、国際テロへの警戒から、特に西欧諸国で保安体制が厳格化している現在、移民希望者の渡航はますます困難になってきている。こうした移民希望者の大半が最終的に密航業者の手中に落ち、密航斡旋のために金銭を支払わされた後、危険な状態にある船上に遺棄される。そこには熟練した船員もおらず、十分な燃料もなく、通信や航海用の適切な機器もないため、目的地に行くこともできない。その他、何千人という死に物狂いの人々が商船のコンテンナの中に隠れて密航しようとして自らの命を危険にさらしていると言われている。
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拒否された安全地帯

各国政府は、移民や亡命者の受け入れにはますます消極的になってきている。警察や沿岸警察による移民希望者の拿捕や、海難事故が増える中、「人道の危機」が生じているとUNHCRは言う。そして、この「危機」に直接対応しなければならない船長もまた、大きな犠牲を強いられている。この問題が一般市民の関心を呼んだのは2001年のことだ。オーストラリア政府が、ノルウェー籍船「タンパ号」に救助された430人のアフガニスタン難民を一時的に上陸させることすら拒否したため、世界中から非難を浴びた。この事件の後、国連の海事関係局である国際海事機関(IMO)は、商船による海難救助を促進するため、海上における捜索および救助に関する国際条約(SAR条約)や海上人命安全条約(SOLAS条約)などの海事関係法の見直しを開始すると発表した。
2006年7月に発効が予定されている改正法により、締約国は、船長と協力して海難事故の生存者が安全な場所に上陸できるように努力する義務を負うことになる。しかし、何カ国がこれに調印するのか、また、救助のどの段階で安全な場所を特定すべきなのかなど、不明な点も多い。2005年9月にアテネで開催された拿捕と救助に関する専門家会議では、IMO、UNHCR、ITFを含むその他のパートナー組織から集まった代表者がこうした問題について話し合った。
会議の参加者は、法制面でいかなる変化があっても、密航者や海難の犠牲者を救助し、上陸させた船長や船主を処罰しないことと、生存者を当該船舶の予定寄港地で迅速に下船させることを保障する実践的なシステムを導入すべきという点で合意した。また、沿岸国が船長や乗組員を救済された人々に対する責任から速やかに開放すべきだという点も合意された。しかし、陸上で適用される明確な政策の策定や、ガイドラインをうまく機能させるための活動調整などの面で具体的な進展がなかったことにITFは落胆した。
「IMOは海難事故の被救助者の上陸のためのガイドラインを設立した。これが拘束力をもつものであれば、なお良かった。しかし、UNHCRの努力にも関わらず、難民や亡命希望者を正当に処遇することと、彼らを安全な場所に速やかに上陸させることを担保する上で必要な二国間(あるいは多国間)協定を沿岸国と欧州連合(EU)が前進させられなかったことは残念だ」と同専門家会議に参加したITFのジョン・ベインブリッジは語った。
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救済のリスク

海で人を救助すれば、商船の船員もまた、危険かつ精神的外傷を引き起こしかねない責任を急に背負うことになる。救助を円滑化するため、大型船を小さなボートに横付けする場合、通常、乗組員はライフボートに乗り組み荒波の中に出て行かなければならない。屋根つきのモダンなライフボートを積んでいるヘリの高い船が救助を行う場合、救援のプロセスはさらに困難で危険なものになる。
船員は全く知らない人間のために、こうした個人的リスクを負わなければならない。しかし、船員は、これまでこうしたリスクを、救助活動を行った結果、航行や納品が遅れたために生じる収入面での損失のリスクとともに、船員という職種にまつわるリスクとして受け入れてきた。迅速な輸送と荷役時間の短縮化がますます重視される今日、困った人を助けるという船員の人間的な直感が、深刻な経済的圧力にさらされている。船長の身柄が港から港へとたらいまわしにされ、欧州各国の制限的な移民法の裁きを受ける中、既に自明のこうしたリスクがさらに高まっている。自らの生命をも危険にさらし、大きな危険性をはらんだ救助活動を行った船長が人身売買の罪に問われることすら起こりかねない。このような状況では、救助の精神が今後守られていくかも定かではない。
2001年のタンパ号の失態に続き発生した様々な事件の後、各国が難民や移民希望者の安全な上陸を確保できなかった、あるいは正当な亡命手続きを許可できなかった例は跡を絶たない。2004年10月、ドイツ所有のコンテナ船、リディア・オルデンドルフ号のコンテナ内部に隠れていた2人の密航者が発見され、同船はマルタ沖で一週間拘束された。その後、次の予定寄港地、ヴァレッタ港で、貨物の積み下ろしのため係留を許可されたが、そこでも亡命希望者には上陸が許可されなかった。この事件により、船主は貨物の納品の遅れから生じた損失を被る一方で、船内の状況は亡命希望者にとっても、また乗組員にとっても緊迫していった。その後、最終的に同船はイタリアで係留を許可された。
同じく2004年、ドイツ籍のキャップ・アナムール号(同名の援助団体が所有する)の船長が、いかだに乗って地中海を漂っていた37人のスーダン難民の救助を命じたことを理由に、一時イタリアで投獄された。米国の新たな保安計画では、「生死に関わる」状況と判断される場合を除き、商船がいかなる移民を乗船させることも禁じられている。それどころか、移民を目撃した商船は、米沿岸警察に連絡し、移民の拿捕に協力することを奨励されている。毎年、ドミニカ、キューバ、ハイチからの何千人という移民が米沿岸警察に拿捕され、本国へ送還されている。
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責任を取る

2005年6月、デンマークのコンテナ船クレメンタイン・マースク号の乗組員は、航路を変更して主にソマリア人からなる27人の亡命希望者を救助し、UNHCRから賞賛された。救助された時、37人は地中海を1週間にわたり漂っていた。UNHCRのスポークスマンは、「常に効率化やコスト削減を要求される時代だが、それでも今後も、船長が海上で危険な目に遭っている人々(難民であれ、いかなる窮状にある人たちであれ)を助ける手間を取ることが極めて重要だ」と述べる。
UNHCRはまた、クレメンタイン・マースク号の次の寄港地だった英国のフィーリックストウ当局が船に乗り込み、難民希望者と難民申請手続きの第1次面談をし、彼らの上陸を許可した際の迅速な行動についても賞賛した。残念ながら、このような前向きな対応は珍しい。このソマリアからの亡命希望者は幸運だった。しかし、彼らの話では、地中海に漂流していた間に複数の大型船が横を通過して行ったということだ。これらの船は彼らを完全に無視するか、あるいは、救援をよこすと約束をして姿を消した。もちろん、救援など来なかった。人間らしい文明社会を目指すため、あらゆる人間が、経済的な問題や政治上の便宜よりも人間の生命に価値を置く環境を築いていく責任を負っている。人道的な行動を取ることにまつわる艱難辛苦が船長の頭をわずかであってもよぎるようなことがあってはならない。
こうした問題の存在が知られるようになって数年が経つが、海運産業がSAR条約やSOLAS条約を通じて幾分前進してきている今ですら、各国政府が依然として責任逃れ主義に固執していることは非常に残念だ。各国政府は、よく調整のとれた機能的な亡命希望者や移民の受け入れシステムを構築できずにいるため、責任を果たすこともできない。船員は、難民を助けても断罪され、助けなくても非難されるという非常に辛い立場に立たせられている。
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公正なシステムの構築を目指して

各国政府が二国間または多国間でやるべきこと

海上で救助された人々の上陸を迅速に許可するための協定づくり
捜索・救助コーディネーターに合意に基づく手続きと適切な通信・サポート・ネットワークへのアクセスを提供する。
人権に関する国際的な義務と矛盾しない方法で、地域の負担分担問題に対応する。
捜索・救助の原則の整合性を確保するため、SOLASの捜索・救助面の改正の採択を実施する。
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