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2004年4月 第15号
■ガス欠寸前
 
ガス欠寸前

バス運転手の賃上げ闘争で、ある組合が展開したコミュニケーション戦略がナショナルセンターから称賛された。綿密な計画に基づき、低コストでハイテクを駆使したメディア戦略についてアレックス・ガラヘールが報告する。

アデレードの公共バス産業は、ここ数年間で七変化をとげている。2000年までは、業界の大部分が公営で、従業員の賃金や労働条件もそこそこだったが、自由党が政権に就いた後、バス路線の民営化を開始し、路線ネットワークが5つのグループに分断され、各路線の経営が入札にかけられた。
外国勢や地元企業など、種々雑多な企業が入札を勝ち取り、人員整理プログラムなどもスタートした。ほとんどの運転手がそのまま新しい経営者のもとで働き続けたが、労働条件は悪化した。2003年に入り、一部の企業で3年間の団体協約期限が終了し、運転手らはそろそろ公正な賃金を取り戻す時期が来たと感じ始めていた。
しかし、組合に幻滅し、組合には経営陣に影響を及ぼし得る力などないと考える運転手も多かった。
オーストラリア運輸労組(TWU)は殆ど有名無実化していたが、一方で組合員の目には巨大で異質な「自分とはかけ離れた」存在に映っていた。
TWUはバス産業の労働条件改善に意欲的で、組織率の向上のための長期計画を練ってきていた。次の協約交渉まで2年が迫ったある日、一人の元バス運転手がオルグに抜擢され、オルグ活動は徐々にではあるが着実に成功し、バス運転手の組合員数が増加したが、一方で様子見の態度を取る労働者も多数いた。
新たな協約締結を目前に、TWUは各企業内に交渉委員会を設立し、組合員を対象とした調査を行い、組合に期待することと、自分たちに何ができるのかを答えてもらった。組合員の研修も盛んに行い、組合員とのコミュニケーションも盛んになった。またキャンペーン・ニュースレターを作成するなど、プロらしい手法を取り入れることで、組合員の間に期待感が生まれ始めた。
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成功の秘訣

基幹産業のストにはマスコミも非常に批判的になる可能性が高く、マスコミは労使紛争の勝敗を左右する重要な要素と言える。
そのため、TWUの職場代表と役員は、キャンペーンを開始する前に何度も会議を行い、組合員や一般大衆の感覚に目線を合わせようと努力してきた。
職場代表が意見を寄せて「ガス欠寸前」というスローガンを編み出した。組合員が自分の給料袋に対して抱くあの感覚をよく表現している。運輸にも関連しているし、ガソリン切れで走るバスにも掛けている。良いスローガンだ。職場代表が議論に加わったからこそ、「借り物でない」ぴったりのスローガンが出来上がった。
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マスコミへ向けたメッセージ

背中にキャンペーンの中心項目を箇条書きにしたTシャツや車のステッカー、ラジオを通した宣伝活動などを前々から準備し、キャンペーンに臨んだ。こうした資材により、組織的なキャンペーンに参加しているという帰属感が組合員の間で深まった。
実力行動を決めた時、このスローガンが正にぴったりだと改めて痛感した。組合員がラジオのトークバックシステムのような非公式ネットワークを使って、終始一貫したメッセージを発信できたのもこのスローガンがあったからだ。
実際、Tシャツは非常に好評で、労働者が各職場で作業停止を行った際にこの「ガス欠寸前」Tシャツを身に着けたため、一つの戦略としても役立った。
携帯電話を持っている職場代表や役員ほぼ全員の間で進行状況について取り交わされたメッセージの数は数千に上り、常に情報交換を絶やさなかった。通信技術がこの労使紛争の勝利をもたらしたのだ。大集会で行ったパワーポイントのプレゼンテーションも大盛況で、共通の目的のために闘う連帯感を組合員の間に生み出した。組合の洗練されたプロっぽい情報交換ノウハウに感激したと述べる組合員もいた。
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思い切った行動

TWUは、長らく実力行使に出る可能性を匂わせていたが、企業側は2社とも全く譲歩する様子を示さなかった。公共交通機関が打ったストに対して厳しい批判が寄せられた前例があるため、会社側は組合がはったりを言っているだけで、最終的には折れると見込んでいた。
組合は、サッカーの試合やロイヤル・ショー(パースで毎年9月下旬に行われる農業際)などに影響を及ぼすため、経済被害が大きくなると思われる路線で5日間のストを決行する計画でいた。ピケラインも組合員はもとより一般からも支持を得ていた。それでも会社側は譲歩しなかったが、組合員はこのストはやる価値があると感じていた。
さらにスト決行の攻勢をかけることで、結局、会社側を労働委員会での交渉のテーブルに引き出すことに成功した。この紛争を通じて、政労使は絶えず互いに反目してきたため、組合側は明確なマスコミ戦略を取る必要があると考えていた。
バス会社2社は、思いがけず洗練された組合のキャンペーン手法に不意打ちを食らうかたちになった。企業側が取ったどう見ても旧式で高圧的な態度はもはや彼らの有利には働かなかった。一方、組合側はあくまでも控えめなメッセージに徹し、乗客に迷惑をかけざるを得ない点と、バスの運転手の賃金は低く、家族を支えるために実力行使に訴えざるを得ない点を強調した。
この記事を執筆中の現在、争議はまだ解決していない。すでにキャンペーンは長期にわたっているが、運転手らはキャンペーンが地域社会から支持されているという事実に励まされている。前回の紛争時とは異なり、運転手らは高度な組合スキルと綿密な計画に基づいたコミュニケーション戦略に支えられた職場代表制度の強力さを痛感している。
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アレックス・ガラヘールはオーストラリア交通運輸労組(TWU)の南オーストラリア・ノーザンテリトリー支部の書記。この記事は、オーストラリア労組会議(ACTU)の2003年「組織化賞」のベスト・コミュニケーション戦略賞を受賞した。賞の授与は2004年1月に行われた。
キャンペーン活動が組合強化につながる

ITF内陸運輸部会副部長、エディー・ディクソン

交通運輸産業の規制緩和と国際化が進む中、組織化対策をどうするのかいうのは、万国の交通運輸労組が抱えている問題だろう。
政府が規制緩和を推進し、交通運輸プロセスのロジスティックス面がより強調されるようになると、従来の労働組合のいわゆる「階級」に着目した活動が揺らぎ始める。国営企業の企業組合は民間資本に脅かされるようになり、運輸事業者はロジスティックス企業や倉庫会社に成長し、多数の大手企業が国際展開し、鉄道会社はトラック事業に進出し、旅客輸送事業は分断されていく。
各国の各組合がこうした問題に様々な方法で対処しようとしているが、状況の厳しい組合にとって、組合員の減少は今後も深刻な脅威となるだろう。
「ガス欠寸前」キャンペーンを通じて、TWUは交通運輸産業の組織率再活性化のために使い古されてきた技術と近代的な手法を併用した。
まだ問題は全て解決したわけではないとTWUは言うが、既に高い組合スキルと計画的なコミュニケーション戦略に支えられた職場代表制度によって組合が強化されたと実感している。
また、TWUはトラック運転手の待ち時間に対する賃金支払いを要求する新しいキャンペーンの準備も進めている。ジャストインタイム輸送方式の需要が高まるにつれ、トラック運転手が荷積みをする際の待機時間は益々長時間化する傾向にある。TWUは、問題の深刻さと労働者の意見を確かめるため、運転手にアンケートを配布することからキャンペーンをスタートさせた。
賃上げ要求に加え、世界中の運転手が理解している極めて単純な安全基準も要求事項に含まれている。つまり、待ち時間が長時間に及ぶことで労働時間も長時間化し、次の配送先に向かうために運転手が疲労したり、法定速度に違反したりすることにつながるという問題だ。キャンペーンの目的が明白であればあるほど、組合員の結束を高める大きなチャンスを生み出すことができる。
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INDEX
民営化の弊害に立ち向かう南アフリカの労働者
ガス欠寸前
戦略的アプローチでバス運転手の賃上げキャンペーン成功
妊娠はご法度
スリランカの客室乗務員組合の闘い
安全を取り戻せ
国際安全基準決定に港湾労働者が参加
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