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グローバルユニオン

2004年4月 第15号
■知っておこう
 
持続可能な交通

先進国首脳がパリに集まる4月の経済協力開発機構(OECD)の会議では、環境問題が高官たちによって再び議論されよう。交通運輸産業は、公害、交通渋滞、気候変動など、差し迫った環境問題に関連している。そのため、この会議で編み出される対策であれ、各国政府の今後の取り組みであれ、含意される環境対策は交通運輸部門の雇用に大きな影響をもたらすことになる。組合にとっての課題は、この過程で、ディーセントワーク(人間らしい仕事)の役割についての認知を高めていくことと、より持続可能な交通づくりへの労働者の参加を確実にすることだ。

持続可能な交通とは?

持続可能な開発とは、一般に「現在の要求を満たしつつ、次の世代がその要求を満たし得る能力を奪わない開発(ブルントブラント委員会報告書)」と定義される。つまり、全ての人間の要求を考慮した開発だ。本質的に、持続可能な開発では、社会、環境、経済の全ての分野に平等な配慮がなされる。
この原則は、持続可能な交通にも当てはまらなければならない。残念なことに、これまで交通の議論で労働問題が取り上げられることはあまりなかった。政府も国会議員も、一般的に環境と地域社会の安全や競争力の維持などの問題には関心を寄せるが、労働者の権利という重要な点を見落としがちになる。
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グローバル化は持続可能性にどう影響するのか?

世界経済のグローバル化は、交通と通信の技術面および組織面の能力に依存している。近代交通サービスなくしてグローバル経済システムは機能し得ない。また、交通運輸の単価が劇的に下がったことにより、新しいパターンの生産や流通が可能になった。その結果、今ではアジアで組み立てた製品を北米で販売するのが費用効果の高い生産形態になった。コスト削減は、一部には技術革新に拠るが、大部分は実際の交通コストを労働者や環境に振り替えたことに拠っている。このようなやり方は長期的に見て持続不可能だ。
現在の交通需要の牽引役は、大手グローバル企業の貨物運送である。企業は、より低い単価コストと柔軟性と信頼性に富んだドア・ツー・ドアーサービスを提供することを求めている。在庫を減らそうとする経済的圧力により、多くの産業がジャストインタイム方式を採用するようになった。こうした進展により、労働者に多大な圧力がかけられ、賃金と労働条件は悪化の一途をたどることになった。持続可能な交通のための戦略を練る際には、環境保全とともにこうした問題も考えていく必要がある。
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交通における主な環境問題とは?

交通サービスのエネルギー消費と排出ガスの量は部門ごとに異なるが、総合的に見れば、エネルギー消費、大気汚染、騒音、交通渋滞の大部分が陸海の交通に起因していることは紛れもない事実である。そしておそらく、我々が最も危機感を持つべき事実だが、運輸産業は地球の温暖化を促進するいわゆる「温室効果ガス」を排出することにより、気候変動の一因になっている。地球が温暖化すると、気候変動、異常気象、海面上昇、砂漠化の進行、気候の変動に順応できない動植物・生態系の破壊などの様々な問題が生じてくる。
政府、OECDなどの政府間組織、圧力団体なども陸上輸送に焦点をあてた交通・環境面の取り組みを行ってきた。陸上輸送は、OECD諸国の交通関連の全エネルギー消費のうち、5分の4を占めており、環境への影響が大きい。しかし、大部分が自家用車によるエネルギー消費である。
航空輸送も温室効果ガスの排出を促進していることから、航空産業もまた注目を集めている。グローバル経済の成長により、さらに交通の需要が増すことや、海運など、他の輸送手段の利用が増加することなども考えられる。しかし、ほとんど先進国において、最も環境負荷の少ない輸送手段である鉄道の利用は減少している。
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環境問題の対策は?

長期的な視野に立ち、人々の行動パターンを変化させ、環境にやさしい交通を実現するための技術革新と経済政策を推進し、消費者を啓蒙するなど、幾つかの戦略が練られている。重要な概念として「外部コスト」という言葉がある。これは経済活動のコスト(例えば環境コストや社会的コストなど)を意味する経済用語で、通常、このコストは企業ではなく、社会全体が負担している。交通運輸産業に当てはめると、交通システムコストの中で、財務諸表や消費者が支払う料金などには反映されないものがこれにあたる。
今、こうした外部コストを内部化すべきだという考え方が流行している。これによって、交通機関の利用者や企業が、交通の環境や社会に及ぼす影響の対価を支払うようにするという考えだ。交通運輸部門の主な外部コストとしては、大気汚染、騒音、渋滞、事故の4つが挙げられる。ロンドン、シンガポール、オスロ、メルボルンなど、一部の大都市で徴収されている混雑税も外部コストの内部化の一例と考えられる。
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こうした対策は交通運輸労働者に影響を及ぼすのか?

環境政策の変化により、最終的には生産方法とサービス産業のあり方も変化していくだろう。環境負荷の少ない新技術や生産パターンの導入を奨励する政策も作られている。こうした対策により、産業分野や地域によっては雇用が創出されるところもあるが、逆に雇用が削減される可能性もある。
上述の4つのコストを内部化していく過程では、交通運輸産業にも勝ち組と負け組が生じてくるだろう。十分な社会的セーフガードの整備なしに税金や追加料金といった経済手段を講じれば、企業側がその分のコストを労働者に転嫁してくる可能性が高い。企業は賃金を下げ、労働時間を延長し、下請け化を促進することでこれに対抗しようとする可能性がある。すでにそのような手段に出た企業も多く、今後はますます顕著になっていくだろう。概して、今取られている対策は企業や株主のニーズを満たすことばかりで、労働者の保護には配慮しない傾向が強い。
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持続可能な交通に対するITFの見解は?

ITFは、持続可能な交通の実現のためにはこれまでと全く異なるアプローチが必要だと考える。労働権、移動の自由、貧困削減などの社会問題にも、環境問題や経済問題と同等のウェイトが置かれるべきであり、国レベルおよび国際レベルの政策にも同等に織り込まれるべきだ。雇用機会の縮小、労働条件の切り下げなどといった形で、環境回復のコストが労働者に転嫁されるべきではない。労働者が環境保護と雇用の維持のどちらかを選択しなくてならないような立場に立たされるべきではない。両者ともに労働者の幸福に不可欠なものだ。人員整理がやむを得ない場合は、労働者やその家族の経済面の打撃を和らげる補償を提供し、効果的な再訓練プログラムの実施と再就職の支援を確実に行なうようにしなくてはならない。労働者や労働組合は、持続可能な交通を推進するための仲間であり、交通運輸労働者の実地の経験は貴重な資源であると考えられるべきだ。
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各国政府は労働者の不安を考慮してくれているのか?

各産業で影響を受ける労働者のための「公正な過渡期」が必要であると認識を深めている国もあるが、それでもまだ多くの政策立案者が労働問題の基本的知識と認識を欠いており、いわゆる「持続可能な交通」プログラムに労働問題を組み込むに至っていない。近年、各国政府は持続可能な開発を推進しているが、交通計画で持続可能なアプローチを取るまでには至っていない。
多くの国が、環境問題に対処する場合、市場原理に基づいた解決策に重点を置きすぎてしまう。技術改善や、公共交通の利用促進が重要な戦略であるということはよく認識されている。しかし、考え方の根本には、依然として市場原理があり、技術革新を進めるための競争と公共交通整備における民間部門の役割の拡大に重点が置かれている。
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市場原理に基づく対策では不十分なのは何故か?

交通運輸部門で生じている複雑な問題は、市場原理だけでは解決できない。人、物、サービスへのアクセスは国民経済の発展に不可欠なだけでなく、社会に必要な基本要素であり、生活の質にも影響を及ぼす。公共の管理のもとに置かれ、競争原理のみならず、社会的問題や環境問題にも重点を置いた公共交通こそが移動の需要を最善の形で満たすことができる。
土地の無償提供や環境にやさしい交通手段の開発など、政府が政治的に参画することは持続可能な交通システムを推進する上で基本となる。特に、自家用車の使用を公共交通に転換していくことを一つの目的とする統合交通戦略の利点に注目すべきだ。公的機関による所有、地元民間企業による所有、あるいは両者の組み合わせなどを問わず、交通運輸産業に国家がある程度関わっていくことは不可欠であり、そうすることで効率の良い交通計画と規制を設け、多くの交通手段間の連携が可能になる。
国際的な労働・安全・環境面の基準の実施と同様に、効果的な運営が肝要だ。労働衛生と安全基準を満たすことや、適切な従業員数を保つことも基本として求められている。交通運輸労働者の疲労が事故の大きな原因になっている。こうした問題に対処しなければ、持続可能性も空論に終わってしまう。持続可能な交通は、労働者が職場の改革を通して、目標とされている変革を実現できるかにかかっている。労働者も解決の鍵を握る存在だが、同時に相応の権限を与えられるべきだ。
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労組は活動の焦点をそこに絞るべきか?

環境問題は明らかに人間の幸福に影響を及ぼす重要な問題だ。しかし、労働者が「生活を取るべきか、環境を取るべきか」といったジレンマに陥るのは避けるべきだし、避けることは十分可能だ。今、根本的な変革が求められている。労働問題とその他の社会問題を統合し、持続可能な交通システムへの移行過程で生じる負荷と利益が確実に公平に分配されるようにするためには、長期的な政府の参画が不可欠である。まだ方向性は定まらないが、将来必ずや交通運輸産業に大きな影響をもたらすはずの議論が進行している。労働組合がこの議論に参加し、影響を及ぼしていくことが絶対に必要である。
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ロンドンのITF本部の海事局・主任研究員、シャロン・ジェームズ
 
 
INDEX
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