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グローバルユニオン

No.17/2003
■最新ニュース
 
多数のクルーズ船は「船員搾取工場」

過度の長時間労働、超低賃金に、昔の搾取工場で見られたような悪辣な経営者が、多くのクルーズ船で一般的であると、ITFおよび英国のキャンペーン団体「貧困との戦い」が共同で出版した報告書は述べている。
この報告書は、「夢の休日」を過ごすためにクルーズ船の1200万人の乗客と乗組員の極めて対照的な経験に焦点をあてている。甲板の下では、重大な人権侵害が日常的に行なわれていることが示されている。
一部のクルーズ船会社は、乗組員の脱走を防ぐため、最初の月給を保証金として取り上げている。このような慣行は、クルーズ船労働者を事実上の奴隷的立場に置くものである。この報告書の著者、セリア・マザーは「週に6日から7日、船内の厨房で、毎日11時間も野菜の皮むきを続けるインド人乗組員や仕事を失いたくないために、上司の性的要求のもとに置かれるペルーやリトアニア出身の受付係や客室係と面接するのは、ショッキングな経験でした」と語っている。
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クルーズ船での仕事を斡旋すると偽るペテン師が
未だに逃亡中であるとITFは求職中の船員に警告する


実在しないクルーズ船での仕事を斡旋すると偽り、「健康診断料」として12万人を超える休職中の船員から数百万ドルを騙し取ったペテン師が未だに逃亡中だ。
ITFは、ムハンマド・アリ・パシャが既に新たな名前の詐欺機構を設立しているのではないかと疑っている。おそらく起訴されなければやめないだろう。
9カ国の船員がこれまで被害にあってきた。ITFのコックロフト書記長は次のように語る。「この手の詐欺をやめさせるには方法は2つある。1つは、詐欺に関わった人間を逮捕し、起訴すること。もう1つは、詐欺の手口を公表し、皆に知れ渡るようにしてこれ以上誰も騙されないようにすることだ」
「この詐欺事件の特徴は、被害者が瞬く間に金を奪われている点だ。世界中の加盟組合に連絡し、アリ・パシャの関与や新たな詐欺の疑いがある場合は一刻も早く報告してくれるように伝えている」
アリ・パシャは、SAムハメド・アリ・パシャあるいはサジャド・アカバという名前を使うこともあり、これまでにケニア、シリア、インドネシア、インド、パキスタン、モロッコなどで希望に満ちた何千人もの船員を騙してきた。ケニアで起きた事件は、ITFが詐欺であることを公表したため2002年5月に幕を閉じた。ITFはその10ヶ月も前からケニア政府に詐欺の疑いがあることを訴えていた。
ケニアで数千人の船員から金を巻き上げた後、パシャの会社はモロッコに移動し、一人につき80米ドルを徴収し2万人の人員を募集した。中には健康診断料(アラブ首長国連邦(UAE)所在でパシャが所有するアル・ナジャト・マリン・シッピング社の地区代理人がでっち上げた違法徴収である)や自国政府が徴収するパスポート発行料などとして最高1,600米ドルを払わされた船員もいる。
多くの船員がクルーズ船に乗船した後、高賃金を約束されていたため所持品を全て売り払ってこれらの料金を支払った。
2002年5月、ITFが初めてアル・ナジャト社の詐欺の手口を暴き、パシャを起訴し、奪われた数千万ドルを回収する努力をするようケニア政府に迫った。しかし、政府自体がアル・ナジャト社をかくまっているか、あるいは同社と結託していた。少なくとも、ケニアやモロッコでパシャの詐欺が成功したのは、各国政府の雇用省が積極的に詐欺行為に協力したためである。2002年5月にケニア政府はアル・ナジャト社が詐欺を働いている事実を認めた。少なくとも1万人のケニア人求職者が50万ドル以上を騙し取られている。
コックロフト書記長は、ケニアとモロッコの各政府がずっと以前に取るべきであった行動を直ちに取り、ムハメド・アリ・パシャの捜索を本格的に開始し、いかにして政府がパシャを庇護することになったのか調査をするように迫った。「パシャを逮捕し、世界中でもっとも無防備な人々が騙し取られた金を回収するまでにはまだ時間がかかるだろう」と書記長はつけ加えた。
「国民のための雇用が多量に創出されるという考えに各国政府が躍り上がって飛びついてしまうのは理解できる。しかし、パシャの詐欺を直ちに摘発するようにと我々が再三忠告してきたにも関わらず、ケニア政府がこれを聞き入れなかったことは遺憾だ」
アル・ナジャトに関する情報は、ITFにより既に国際刑事警察(インターポール)に報告された。パシャがしばしばロンドンでビジネスを行っていることを自慢げに話していたことから、英国の重大詐欺捜査局にも情報が伝えられた。パシャはパキスタンと英国の二重国籍を持つと言われているが、事実は確認されていない。
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リベリア船籍の「腐敗と堕落」

リベリア国旗を掲げた船舶を運航している船舶所有者―その約1/3の実際の国籍はドイツおよびギリシャである―は、船籍制度によって得た資金を犯罪活動に利用している腐敗した経営者に協力している。これはITFだけの見方ではなく、2002年5月にリベリアに対する制裁措置を一年間延長した国連の見解でもある。ITFのジョン・ウィットロー船員部長は、次のように述べた。「リベリア船籍の最後が近づいています。最後のチャンスは、すでに過ぎ去りました。リベリアがあのような混乱と腐敗から、何らかの方法によって清潔な姿に立ち直ることを望んだ人々は、よく言えば素朴であり、悪く言えば共犯者なのです。リベリア船籍制度の処理の透明性を要求する国連の立場は、特に意義深いものです。これは安全保障理事会が、関連資金が犯罪目的に利用されていたと認めたことを意味しています」
リベリアは現在でも、世界第二の船腹量を保有している。第一位は、もう一つの便宜置籍国パナマである。合計1,566隻の船舶がリベリア船籍で運航されている。この60%以上の船舶の実際の所有者は、ギリシャ、日本、米国、ノルウェー、ドイツおよびサウジアラビアである。このうち15.7%は、ドイツ所有であり、国別では最大の割合である。
「一般的な常識が求めているのは、船舶所有者がリベリア船籍から離脱し、腐敗した制度と手を切ることです」とウィットローは語る。
ITFおよび人権運動組織「グローバル・ウイットネス」は、ニューヨークの国際監査法人、デロイト&トゥーシュに対し、リベリア政府との業務関係を断絶するよう説得した。これはリベリア政府と当監査法人の関係が秘密の壁に包まれており、当監査法人の現地スタッフとリベリア政府当局の業務関係のために妥協的に処理されているとの告発に基づくものである。監査法人は、国連安保理事会の命令を遵守するためにリベリアの林業と船舶登録制度による収入を監査するために契約したものであると主張していた。しかし、「グローバル・ウイットネス」とITFが提供した証拠は、リベリアの事業が、西部アフリカ地域を不安定化させている非合法な武器輸入と准軍事組織への資金援助を行なっていることを示しており、この主張は根拠を失っていた。ITFおよび「グローバル・ウイットネス」による働きかけの後、2002年12月に同監査法人はリベリア政府との契約の解除に同意した。
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ビルマ労組の弾圧に反対するITF

ITFは、各国のITF加盟組合に対し、ビルマ政府との経済的、商業的関係を断絶するよう、自国政府および使用者に要求するよう呼びかけた。この呼びかけは、亡命ビルマ船員組合(SUB)を支援するためのものである。SUBは、1999年にメキシコ沿岸で船舶が座礁したため、現地のITF加盟組合の支援を得たビルマ船員に対する制裁を解除するよう、ビルマ当局に要求している。ビルマ海事当局は、これらのビルマ船員がベラクルス港において、殆んど食料、飲料水、医薬品もなく取り残されていたときに、現地の労組から援助を受けたことを理由に、再び海上職場に復帰することを無期限禁止としたのである。彼等は、6ヶ月にわたって賃金が支給されなかったので、生きるために現地労組の援助を求めたのであった。
1993年にビルマ当局は、この必要条件を撤回すると約束したにも拘らず、多くのビルマ船員に対して、現在でも雇用の前提条件として、ITFに連絡しないと約束する文書に署名することを求めている。SUBのコーコー・カイン書記長は次のように語っている。「海外の港に放置されたビルマ船員にとって、現地労組あるいはITFの援助をもとめるのは、本当に最後の手段なのです。なぜなら、この方法を使って帰国した彼等を待っているのは、厳しい罰則だからです」
1991年に結成されたSUBは、厳しい反労組的な軍事政権が存在しているため、亡命組織として活動せざるを得ない状況におかれている。ビルマ政府は1995年に団結権および結社の自由に関するILO条約を批准しているが、SUBは、これらの条約を全面的に実施するよう政府に求めている。
2000年および2001年にタイのバンコク港で放棄された2隻の船舶のビルマ人乗組員は、タイの入国管理当局によって不法滞在(ビザの期限切れ)の容疑で逮捕され監禁された。ビルマ大使館は、関知する問題ではないとして、これらの船員への支援を拒否した。SUBは、やむなく船員らの罰金および帰国旅費を負担したのであった。
ITFは、国際労組(GU)のビルマに関する行動計画に調印している。この計画は、ビルマの強制労働の廃止と労働者の労組への加入権を求める国際行動である。
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賃金、労働条件の交渉機関

このシーフェアラーズ・ブルティンが印刷されている頃、世界の船員のための国際的な交渉機関を設置する計画が進行していた。ITFは、主要な海事関係使用者組織にたいし、船員のITF承認賃金や労働条件についての合意を形成するための、交渉機関を設置するよう強く求めていた。
使用者側が、新たな交渉機関の設置に同意するならば、2003年に予定されているITFベンチマークの引き上げの延期を検討する用意があると、ITFは提案していた。
ITFとの協議に関与している使用者側組織は、日本の国際船員協会(IMMAJ)および国際海運使用者委員会(IMEC)である。
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米国議会でITF証言

ITFは、便宜置籍船(FOC)が国際法を回避しているだけでなく、米国の安全保障にとって危険なものとなっている証拠を、米国議会に提供した。米国議会の聴聞会が開かれた2002年6月当時、NATO諸国もまたアルカイダの支配する便宜置籍船23隻を捜索していることが公表されていた。ITF船員部会のデビッド・ハインデル副議長およびデビッド・コックロフトITF書記長は、口頭および文書で証言し、便宜置籍船制度の存在が、秘密主義や労働、安全、環境保護に関する国際法規の回避を助長していると述べた。また、これらの船舶は、テロリズム、違法薬物密輸、密航幇助などの犯罪を隠蔽する手段としても利用されている。
大多数の便宜置籍船の登録上の所有者は、当該船舶だけを所有するダミー会社であると、コックロフト書記長は語った。登録上の所有者(会社)は、寛容な法律を有する他の国に登記された親会社が恐らく所有している。この方式は、複数の国家支配権にまたがる複雑な網の目を構成しており、その組織の真実の支配者を突き止めるのは困難である。この企業組織は、船舶所有者のみならず犯罪者やテロリストにとっても好都合にできているが、船舶の所有に伴う各種の責務を回避し、所在をくらましてしまう能力を船主に与えるのである。なにか都合の悪いことが発生すれば、その会社は消滅し、一切の情報は得られなくなってしまう。
米国の船員国際労組(SIU)のハインデル書記長兼財務局長は、米国議会に対し次のように主張した。「米国の港湾への外国籍船舶の入港を拒否する権限を、米国の沿岸警備隊(コーストガード)に付与する法律を一方的に制定しても、その船舶の受益船主を明確化するための透明性の向上にはつながらない」
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ITF、トリコ・マリン社に勝利

米国の石油企業、トリコ・マリン社は、自社のすべての米国人労働者にたいし、労働組合に加入する権利があることの通告に同意した。これはITFにとって、重要な勝利である。この意義深い前進は、ノルウェーのNOPEF石油労組がトリコ社に対して提起した訴訟の判決の一部として得られたもので、国際連帯によって達成できることの証拠である。
ITFのコックロフト書記長およびICEM(国際化学エネルギー労連)のフレッド・ヒグス書記長は、この2002年11月の勝利について次のように語った。「諸外国のトリコ社の労働者と同様の労働組合権を求める、米国内のトリコ社の労働者の戦いにとって大きな勝利である。ITF、ICEFおよび世界の海事労組、石油労組は、トリコ社がこの約束を遵守するかどうかを注意深く見守っていく」
2002年7月、トリコ社はロンドン高裁におけるITFに対する訴訟を取り下げた。トリコ社従業員の労働組合権を確保するための米国労組による活動の支援を目的とした、ITFの国際連帯キャンペーンに対する裁判所の差止め命令を、トリコ社は求めていた。ITFのキャンペーンは、違法な行動によってトリコ社に損害を与えるための陰謀にあたると、同社は主張していたが、ITF側の反論が開始されるより前に、訴訟を取り下げたのであった。
「私は当初から、この訴訟は、国際連帯行動および表現の自由に関する基本原則の問題が関連していると言っていた。トリコ社が分別を取り戻して、訴訟の取下げを決定したのは喜ばしい。ひとつだけ残念なのは、我々が何度も対話をよびかけたにも拘らず、彼等が対話に応じなかったことだ」とコックロフト書記長は述べた。
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武装海賊の多発

ITFによれば、世界の貧しい地域に与えるグローバル化の厳しい影響が、船舶のハイジャック、武装強盗団や海賊による船舶乗組員に対する暴力行為の急増に関係している可能性がある。
国際海事局(IMB)が2003年はじめに発表した統計によれば、世界各地で発生した海賊事件は、2001年には335件であったが、2002年には370件が報告されている。ハイジャックおよび海賊事件の集中発生地区として挙げられているのはインドネシアおよびバングラデシュの10の海域で、全体の2/3がこれらの海域で発生している。
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タンパ号に関する電話盗聴への怒り

社会の注目を集めたノルウェー船「タンパ号」に関する豪州政府の行動について、ITFは遺憾の意を表明した。沈没しかかっていたインドネシア船から440人の亡命希望者を救出した「タンパ号」は、そのまま出港させられたのであった。しかし、ハワード政権の汚点は、海上の遭難者に関する国際法や国際条約にたいする明らかな違反だけではない。豪州のデイリーテレグラフ紙によれば、今回の事件の最中にITFの電話が盗聴されていたのである。
2002年7月の新聞報道によれば、国内法に違反して政治的目的のために電話の盗聴が行なわれたとされている。政府による電話の傍受は、「重大な犯罪行為、オーストラリア人の生命と安全あるいは外国勢力の代理としてオーストラリア人が活動している等」の非常事態においてのみ合法とされている。
ITFのコックロフト書記長はオーストラリア海事労組(MUA)とともにこの事件の調査を要求し、次のように語っている。「すべての民主的政府が自国の安全を保護する権利を、我々は支持している。しかし、この報道が事実であるならば、問題は異なってくる。政治的な利益を目的とした、権力の甚だしい濫用である」
オーストラリア政府は、コンテナ船の「タンパ号」が避難民をクリスマス島に上陸させるのを阻止するため、軍隊を使用した。これらの避難民は、最終的には軍用船によってパプアニューギニアおよびナウルに移送された。
豪州政府の行為は、海上人命安全条約(SOLAS)、1979年の海上捜索救助条約および国連海洋法条約(UNCLOS)第98条に対する違反である。
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悪徳海運業者 業界に復帰

1996年に多数の海外港湾に数千人の船員を立ち往生させて汚名を広めた、倒産したアドリアティック・タンカー社の元オーナー、パナジス・ジシマトスが、ギリシャのアズア海運会社の代理人として、ナイジェリア沿岸を基地に船舶を運航し、西アフリカ地域の近海航路輸送に従事しているとの報告がある。7年前に、増えつづける負債に耐えかねて100隻以上の所有船舶を放棄した張本人として、彼の悪名は今も記憶に新しい。ジシマトス帝国の崩壊にともない、ITFは放棄された船員の支援/保護にあたった。
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2002年10月、韓国、釜山港におけるアジア行動週間での韓国とロシアの船員の連帯行動(写真:左)および(写真:右)オーストラリアのシドニー港における太平洋行動週間の開始に当って悪質海運オペレーター(の象徴)がプランクの上を歩かされているところ。(注:17世紀の海賊が捕虜を処刑した方法で、舷側から海上に突き出したプランク(厚板)の上を目隠しして歩かせ、海中に転落させる。)
ITFアジア行動週間は、船員の未払い賃金100万ドルの回収に成功
「インドネシアおよびフィリピンの海事労働者による船員の権利の保護をようきゅうする大集会からロシア船員組合による数十万ドルの回収にいたるまで、すべての参加者がその責務を完遂した)
2002年10月、アジア地域の14カ国で1週間にわたって実施された強力な行動によって、100万米ドルを超える未払い賃金が回収された。今回のアジア行動週間は、協約の調印、集会、デモ行進、ストおよびボイコットを含む一連の目覚しい成功を収めて閉幕した。ラテンアメリカおよび太平洋地域における行動週間は、10月および11月に実施された。各地域のITFインスペクターと加盟組合は、船員に無報酬での就労指示、賃金からの違法な天引き、巨額の未払い賃金、乗組員が脅迫のため口を開かないなど、多くの不正行為や正義に反する慣行を明るみに出した。
ITFのスティーブ・コットン特別船員部長は、査察チームを賞賛して「不正な慣行から犯罪行為にいたるまでの広範な問題に取り組んで意義深い成果を収めた。何物をも恐れず、えこひいきもしない、このような活動こそ、本当に船員の生活の改善につながる行動である」と述べた。
アジア地域では、日本、韓国、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、カンボジア、インド、スリランカ、バングラデシュおよび極東ロシアの各港における電撃作戦が実施され、350隻以上の船舶のITF査察が行なわれた。
ラテンアメリカ地域では、ITF査察チームの目標は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ペルーおよびウルグアイの各港湾、太平洋地域では、オーストラリア、ニュージーランドおよびパプアニューギニアの各港湾であった。
4隻の船舶(ルビー・スター、ダイヤモンド・スター、テル・スターおよびティンバー・スター)は、今後の行動の重点目標となった。その理由は、行動週間中バンコクに滞在したニュージーランドのキャシー・ホイーランITFコーディネーターによる、ティンバー・スターの乗組員の未払い賃金を確保するための交渉が不調に終わったためである。パナマ船籍の貨物船ティンバー・スターに乗組んでいるAB船員の月間賃金の約50%が「積立金」として差し引かれていたが、実際に払い戻しを受けることは不可能であった。その結果、AB船員は一ヶ月に140米ドルしか受け取れず、部員の場合は何ヶ月にもわたって賃金が支給されない場合もあるとホイーランITFコーディネーターは語っている。
タイにおける船主代理人とビルマの船員配乗業者代表が本船に到着し、ITFおよび船員組合には何もできないと船主に告げたため、賃金、過去の未払い賃金およびILOが定めた最低賃金に関する長時間の交渉は、物別れに終わった。
ホイーランは、この交渉の不成功について、極めて遺憾であり、深い悔しさと怒りを感じるとしているが、タイ加盟組合、とりわけ港湾当局のタイ国有企業従業員組合およびビルマ船員組合(SUB)の積極的な協力については、惜しみない賛辞を贈っている。「彼等のキャンペーンへの積極的な関与を見れば、彼等の責任感が伝わってきます」と彼女は語り、こう付け加えた。「40人ばかりのボランティアは、乗船すると船内のすみずみまで手分けして点検を一斉に開始します。彼等の圧倒的な仕事ぶりは印象的でした」
アジアその他の地域からキャンペーンに参加したインスペクターは、予想通り船主と乗組員から賛否入り混じった評価を受けたが、幾つかの勝利を達成した。今回のキャンペーンを東京でコーディネートしたITFのサイモン・デボーは、「インドネシアおよびフィリピンの海事労働者による船員の権利の保護を要求する大集会からロシア船員組合による数十万ドルの回収にいたるまで、すべての参加者がその責務を完遂した」と述べている。
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悪質漁船と海洋汚染者

便宜置籍船と海洋汚染および違法漁船、乗組員の不当な処遇や搾取を関連付けた「さらに荒れる海洋」というタイトルの辛口報告書は、2002年8月、南アフリカのヨハネスブルグで開かれた地球サミットにおいて、ITFおよびグリーンピースによって発表された。
この報告書は、海洋汚染および絶滅に瀕した種の魚類の乱獲と戦うために、より有効な水産業の規制による行動計画を提案している。この報告書は、便宜置籍船が如何に莫大な海洋汚染や多数の海難事故の記録を残しているかを概説している。

かつて船員であった英国のジョン・プレスコット副首相は、この報告書の主張を支持して、「これらの悪徳船舶運航者は、まさに世界の海洋を危険に曝しています。この報告書は、違法、無規制、無報告の漁業および便宜置籍船制度による海洋への脅威に関するタイムリーな警告です」と語っている。
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7ヶ国に船籍登録した密航幇助船者

2002年3月、イタリアに約1,000人の亡命希望者を上陸させた密航幇助船は、過去15年間に7ヶ国に転々と船籍を登録していたことが判明した。イラクから亡命したクルド人とされる928人を乗せたモニカ号は、シシリー島沖に到着した。この船は、3月にはトンガ船籍に登録されていた。同じ月にITFは、トンガ船籍を便宜置籍国リストに編入した。しかし、その2ヵ月後、武器密輸と密航幇助を理由に、トンガ政府は船籍制度を閉鎖したと豪州放送局(ABC)は伝えている。
モニカ号がこれまでに船籍を登録した14カ国は、すべて便宜置籍国(FOC)であるが、レバノン政府当局者は、この船に関連する密航活動への共犯容疑で、ある実業家の逮捕を指示した。
ITFのコックロフト書記長は、便宜置籍船(FOC)の運航はいかがわしい商売であり、FOC制度のために、密航幇助、資金洗浄、武器密輸、違法薬物密輸およびテロリズムなどの活動や関係者の身元などを隠蔽することが容易になっているとするITFの主張を強調した。
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世界海事記念日

2002年9月26日、メキシコのベラクルスで子供達が家族と共に町の広場に集まり、「船員に安全でいる自由を与えよう」のITFのテーマのもとに世界海事記念日を祝った。また、少なくとも世界45カ国においてこの日を記念して労組が集い、安全と組合員の雇用上の懸念事項を発表するなどの行事が行われた。
国際海事機関(IMO)は、海運産業の重要性と安全と環境保護などの問題に焦点を絞り、毎年世界海事記念日を推進している。
世界海事記念日のためにITFが制作したパンフレット(右の写真)は、グローバル化と海運産業における競争の激化が、どのように安全基準の低下を招いているかを明らかにしている。とりわけ便宜置籍船(FOC)においては、劣悪な安全衛生環境や精神的、肉体的な虐待が見られる。
「船員は、安全の専門家として認められ、権限を与えられるべきである。船員は、虐待、ブラックリスト、経済的圧力から自由でなければならない。また、人権および労働組合権を全面的に行使できなければならない」とこのパンフは述べている。
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4年ごとにITF加盟組合は、ITF大会に代表団を派遣し、次の4年間の方針を決定する。以下は、2002年8月、カナダのバンクーバーで開催された第40回ITF大会の船員に関する主要な決定である。

便宜置籍船(FOC)への圧力の継続

便宜置籍船を廃絶させ、船舶所有者または支配者と船籍の間に真実の関係を確立させるため、ITF船員部会は、圧力を維持・継続する。より強力な国内および国際的規制によって、安全で責任を担保した海運産業を創出するため、基準以下船を目標として、ITFポリティカルキャンペーンを促進する。これらは来る4年間のための詳細な活動計画の一部として合意された。また、過度の長時間労働、疲労とストレスに関する問題のほか、国際基準の策定を目的として、母親と父親の権利の促進なども「優先課題」に繰り入れられた。

海賊についての無活動への憤り
ITF船員部会のブライアン・オレル議長によれば、多国籍企業は、海上に働く自社の船員よりも、公道沿いの自社のガソリンスタンドを一層手厚く保護している。
オレル議長は、一部の船舶所有者が乗組員の安全について無関心であると非難し、増大している海賊および武装強盗団の問題に取り組むための措置を講じるよう関係国政府に呼びかけた。暴力的攻撃から乗組員を守るため、船主も一層の責任を負うべきであると、彼は付け加えた。

海賊および武装強盗団の危険性の高い問題港湾については、ITFおよび船員加盟組合、港湾加盟組合の間で情報交換を行い、各地域の特性に応じた安全対策を提案する。
船員部会総会で求められた安全措置は次の通りであった。

●監視用TVカメラ、感知装置と警報機およびその他の保安用電子機器などの、非暴力的保安用機器の積極的利用。
●危険地域における特殊訓練を受けた民間警備員の配置。(必要な場合には、航海の全行程を対象として警備員を乗船させる。)
●海賊および武装強盗団の多発する地域において運航される船舶の乗組み定員を増員する。

荷役作業はお断り

ITF大会は、伝統的に港湾労働者によって行なわれてきた貨物の荷役作業およびその他の業務を船員に強制する海運会社に反対するITFの方針を再確認した。また、大会代議員は、船員配乗業者の活動を国際条約によって規制すべきであると要求した。この種の国際条約によって、合法業務と非合法業務ならびに職業の尊厳と専門意識の最低基準の定義を明確化すべきであるとの点について、大会代議員は合意した。

訓練に関する懸念
大会代議員らは、船員訓練に関する懸念を表明し、全ての船員が「現代の海運産業の安全、環境および技術的必要条件に完全に対応し、かつ海運産業の進化に対応した訓練を船員が受けることを確保するよう適切な国際機関に要求すること」を、ITFに要請した。

ギリシャ政府のスト破り
2002年6月、合法的な4日間のストライキに参加中の船員を徴用したギリシャ政府の行為は、ILO条約に対する明らかな違反であると、ITF大会代議員は合意した。ギリシャ政府は、国家動員令を拒否した場合には、刑務所に入らねばならないとスト参加者を脅迫した。これは団結権に関するILO条約第87号の明白な侵害である。よってITF大会は、ギリシャ政府を非難した。

賃金差別反対
英国の海事鉄道労組(RMT)が提出した決議案は、英国およびその他の数カ国が、自国船籍の船舶に乗り組む低所得国出身の船員と英国船員の間の賃金差別を認めていると非難していた。ITF大会の代議員等は、自国籍の労働者よりも低い賃金を海外の労働者に支払うことを、会社は認められているとの説明を受けた。

安全訓練を要求
ITF大会は、船内で就労するすべての労働者は、安全と健康に関する訓練を受けるべきであると要求した。船舶の安全・健康管理に関連して乗組員の利益を保護するため、すべての船舶は、乗組員の中から安全委員を選任しなければならない。
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米国におけるショアパス制度廃止の恐れ

広範なテロとの戦いの一環として、米国政府がクルー・リスト・ビザ(船員用の一括米国入国査証)を廃止する決定を行ったことを受け、一時上陸する権利を保護するため、緊急行動を取るよう呼びかけた。
現在、米国政府は船会社が船員を雇用する際、船員が高額な米国査証を取得していることを条件として義務づけるようになった。ITFは加盟組合に、米国務省に対し、これに反対する抗議文を送るよう促した。
港の安全確保には賛成だが、船員の自由を犠牲にすることには反対だ。
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世界海運の概況
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船舶保安措置に関する新国際規定の影響
屈辱、空腹、詐欺被害
放棄された船員の運命
にせ船員免状は
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最近の調査は、
偽造船員免状問題の
深刻化を予想
上陸休暇?
これが如何に困難な問題となり得るかを学生たちが体験する
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世界各国の商船隊への船員供給
女性船員および
部員訓練の欠陥
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違法行為
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