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グローバルユニオン

No.17/2003
■遺棄された船員
 
事 実

1999年の船員放棄事件

船種別   隻数
一般貨物船   36
バラ積船   22
仲積み船   11
タンカー   9
コンテナ船   4
RO-RO船   3
浚渫船   2
家畜輸送船   2
旅客船   2
材木輸送船   1
タグ   1
その他   4

船籍別
1999年度に放棄された船舶の約70%は、以下にあげる6カ国に登録されていた。
パナマ(17%)、マルタ(14%)、ロシア(13%)、ホンジュラス(10%)、ベリーズ(7%)、セントビンセント・グレナデン(6%)。

主要事例
1990年代中期以降に、船舶および乗組員の放棄につながる大型企業倒産が海運産業界に続発した。過去7年間における主要倒産事件には以下の企業が含まれている。
アドリアティック・タンカー社(1995−1996)、バルティック・シッピング(1995−1996)、リージェンシー・クルーズ社(1995−1997)、ユニマール・マリタイム・サービス社(1996)、ブラスコ社(1996−1997)、ドラゴニックス社(1997)、ナブロム社、ロムライン社、ペトロミン社(1997−1998)、ルネッサンス社(2001)
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屈辱、空腹、詐欺被害
屈辱を受け、排斥され、破滅させられ、面目を失い、立ち退かされ、空腹に悩み、詐欺被害に遭い、欺かれた。鉱油兼用船、オボ・バサク号のトルコ人乗組員は、通常の航海に出発した。そして得たのが、このような扱いであった。このような予想外で不愉快な展開の連続を経験したあげくに、無遠慮な裁判所執行官の行動が加わった。何ヶ月もの間、貧しさと戦っていた船員の家族の住居から、執行官は家財道具等を運び去ったのである。
屈辱を受け、排斥され、破滅させられ、面目を失い、立ち退かされ、空腹に悩み、詐欺被害に遭い、欺かれた。鉱油兼用船、オボ・バサク号のトルコ人乗組員は、通常の航海に出発した。そして得たのが、このような扱いであった。このような予想外で不愉快な展開の連続を経験したあげくに、無遠慮な裁判所執行官の行動が加わった。何ヶ月もの間、貧しさと戦っていた船員の家族の住居から、執行官は家財道具等を運び去ったのである。
トルコ人船員の処遇に関する裁判は、2003年中に解決を迎える見込みはまだ得られない。この裁判が結審すれば、たとえ船舶売却価格の一部でも、債権者として、彼等の手許に残るか否かがはっきりするであろう。
これら31人のトルコ船員の境遇は、しかしながら、決して例外的な、異常なものではない。彼等は、多数の放棄された乗組員の一例に過ぎないのである。故国から数千キロも離れた場所に放棄された彼等の苦境に関する責任の押し付けあいが、海運会社、船籍国、船員出身国の間でいつまでも続けられる。
乗組員の放棄の原因となる要素および各状況における効果的対策に関する詳細な調査報告書が、2003年4月、船員国際調査センター(SIRC)から発行される。SIRCは、英国のカーディフ大学を本拠地とする機関で、ITFが資金援助を行なっている。
この報告書の計算によれば、約6万人の船員が常に世界のどこかで、政治的、経済的環境によって自活せざるを得ない立場に追い込まれている。1999年には、ITFおよびICMA(国際キリスト教海事協会)の2つの関連機関、すなわちアポストルシップ・オブ・ザ・シーおよびミッション・トゥー・シーフェアラーズは、97件の船員遺棄事件に関与した。ITFとしては、55件について報告を受け、このうち39件について直接対応した。
報告書の著者エロール・カーベシ博士は、基準以下船と乗組員が放棄される可能性の間には相関関係が見られるとして、次のように指摘している。「船員の放棄事件は、世界のどこかで常に発生しており、特定の地域に集中しているわけではなく、ある意味ではグローバルな問題です。このような事件が示しているのは、基準以下船に雇用された船員達が置かれている典型的な状況なのです」。
「全ての基準以下船の船主が、船員を放棄するわけではありませんが、この種の船舶を運航するためには、経済性の限界での経営と運航方式に依存せざるを得ないのです。基準以下船においては、あらゆる経費がきりつめられ、とりわけ規制遵守に必要な経費は節減されています。それゆえに、船体および乗組員が放棄される可能性が高くなっています」とカーベシ博士は続けた。
希薄になった入港国管理(PSC)やPSCが実在しないことがこの問題の一因となっている。
1997年7月、オボ・バサク号がフランスのダンケルク港に到着したとき、これから何年も続く生命にかかわるような悪夢の岸壁に横付けしたとは、職員も部員も気付くはずもなかった。
この船舶の所有者であるトルコのマルティ・シッピング社にたいして、債権者団が共同で提起した訴訟により、オボ・バサク号は差し押さえられてしまったのである。同社はあちこちに負債を累積していたが、遂に行き詰まってしまった。訴訟には参加していなかったが、債権者の中には、それまでの9ヶ月にわたって賃金を受け取っていなかった船員も含まれていた。不足しているのは資金だけでなく、船員の食料も、船の発電機を運転するための燃料も尽きかけていた。

■ ■

マルティ社にたいする船長代行(本来の船長は、マルティ社の指示により脱船逃亡してしまった)の度重なる要請が無視されたのち、乗組員らはやむなく、フランスのテレビ局を通じて、地域社会に支援を求めたのだった。
当地区の船員ミッションは、準備の手配について港湾当局と打ち合わせを行った結果、当局は燃料油と飲料水の経費を負担することとなった。絶望的な数週間を過ごした乗組員は、一般社会に窮状を訴える手紙を作成した。ある機関部員は次のように書いている。「私は、過去6ヶ月間賃金を受け取っていません。家に残した妻と子供達は、苦しい生活にさいなまれています。彼等は、親戚や近所に人々の援助に頼っているのです。私のポケットには、髭を剃るための替刃を買う金もありません。私には、どうすることもできません」
あるAB船員の手紙は、「 過去10ヶ月間、私の家族は送金を受けていません。私の親戚は、これ以上私の家族を養うことはできないと言っています。私は、賃金を受け取って家族のもとへ帰へりたいのです」。彼が書けなかったことは、妻が病院で出産したものの、入院費用を支払うことができないため、病院に「人質」として保留されているという事実である。

ボースンは次のように書いている。「これまでの10ヶ月間に私が受け取ったのは、たったの100米ドルです。私は借家に住んでいます。妻は病気のため多額の費用がかかる治療を受けています。私の息子は、義務としての無給の軍隊勤務に服しています。このような訳で、稼ぎ手は私だけなのです。近所の人たちも、これ以上の援助はできないと言っています。7月7日以来、私達はここに足止めされています。」
「しかし、私達に会いにきた会社の役員は一人もありません。私達は、完全に放棄されてしまったのです。2等航海士を通じて私達に会社が伝えてきたのは、『訴訟を起こしたいのなら、自己負担でやりなさい』ということだけです。彼等は、我々をこんな目にあわせるべきではないのです。私達は、あなた方の支援が必要です。お願いです。どうか助けてください」
オボ・バサク号の当初からの乗組員であった最後の部員は、1997年10月4日、ダンケルクを出発した。帰国旅費はITFが負担したほか、未払い賃金請求訴訟が成功した場合の前払い金として、各船員は2,850英ポンド(4,275米ドル)の現金を受け取った。これらの前払い金は、船員ミッション(200英ポンド/300米ドル)、ITF(900英ポンド/1,350米ドル)およびダンケルク港湾当局(1,750英ポンド/2,625米ドル)などが提供した。
しかし、ドラマはこれで終りではなかった。船主のマルティ社の所有船舶オボ・セリム号から5人の船員が送り込まれてきたのである。オボ・セリム号は、ジブラルタルで債権者に差し押さえられ、海事裁判所によって公売にかけられたのであった。
乗組員は、平均5か月分の未払い賃金を受け取ることなく本国に送還されたのであった。しかし、これらの5人の船員は、会社からオボ・バサク号はこれから出港すると教えられていたのである。すなわち、この船が航海に出てお金を稼ぐようになれば、賃金はすぐに支払われるというのである。この話を信じた5人の船員は、ダンケルク行きを承知し、危機の真っ最中に到着したのであった。
1998年1月、港湾当局によって陸上から供給されていた電力がカットされてしまった。船の発電機の燃料はなく、船の暖房も照明も停止し、冬の季節に船内に残った乗組員の健康にも支障がでてきた。ある乗組員は、病気が悪化しトルコに送還されねばならなくなった。もう一人の船員は、甲板で転倒し負傷したが、適切な治療を受けることができないため、地域のトルコ人団体の支援によって住民票を「借用」し、専門医の治療を受けたのであった。

■ ■

オボ・バサク号は、1998年3月に920万フランス・フラン(153万米ドル)で売却され、港湾当局は、港湾使用料として850万フランを請求した。船舶売却代金は、事実上全額が港湾当局への支払いに充てられた。
故国に帰り着いた乗組員達を待っていたのは、ブラックリストへの記載、第三者やその家族からの借金、家族の精神的問題、恥辱、飢餓などの、惨めな結果であった。一部の者は、執行官によって家財道具を持ち去られたり、住居から立ち退かねばならない者まであった。
これらの船員の留守中に、彼等の妻たちは会社によって屈辱的な扱いを受けた。会社に、家計の苦しさを理解させるために病気の子供を会社に連れて行った妻たちもいた。また、日付を先付けした小切手を渡された妻や家族もいたが、結局は、不渡り小切手であった。
しかしながら、オボ・バサク号の乗組員が遺棄された港の船員厚生組織が、効率的でありかつ豊かな経験を持っていたことは「幸運」であった。トニー・リマー港湾牧師は、関係組織とともに連携プログラムを編成したほか、社会的注目を喚起し、フランスの全国紙の第一面に記事が掲載された。


「放棄された船員とオボ・バサク号事件」は、カーディフの船員国際調査センターから2003年4月に発行される。エロール・カーベシ博士とトニー・リマー港湾牧師による労作である。リマー牧師は、フランスのダンケルク港の港湾牧師としての活動から最近引退した。
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約6万人の船員が常に世界のどこかで政治的、経済的環境によって自活せざるを得ない立場に追い込まれている
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保険会社は、乗組員の救済計画を沈没させた

P&I保険クラブの国際組織のこのような反応によって、船主によって遺棄された乗組員について誰が責任を取るべきかという問題の解決策となるかもしれないとの希望も雲散霧消してしまった。
一方では、国際労働機関(ILO)と国際海事機関(IMO)の合同作業グループが作成した新たなガイドラインが、2002年1月に発効した。ILOおよびIMOの結論は、社会保障制度、保険あるいは国家財政資金などによる、何らかの方式の財政的保障制度が最善の選択肢であるとしている。
国際航路に就航する船舶の所有者は、遺棄された乗組員の経費に関する保険に加入しているとの証明書(請求権取り扱いの責任者等の詳細を明記したもの)を保有すべきであると、ILOおよびIMOは勧告している。
遺棄された船員については、15以上の現行条約、現行協定などに関連条項がすでに組み込まれている。これらはILOあるいはIMOまたはその他の国際協定であるが、その成立年度は、1926年から1999年にわたっている。
しかし、これらの国際規定文書が取り扱っているのは、本国送還のみであり未払い賃金は対象とはなっていない。それゆえに、新たなIMOガイドラインが、特に未払い賃金問題に取り組んでいる点を、ITFは歓迎している。
船舶所有者が乗組員を本国に送還する責務を果たせない場合にのみ、船籍国が責任を負うこととなっている。船籍国がこの責任を果たさなかった場合には、船員の出身国あるいは遺棄された船員が所在する国が、これらの船員を本国に送還し、その経費を船籍国に請求して回収する権利を有することとなっている。
ところが、ニューヨークを中心に活動している船員の権利センターが実施した関係国の本国送還に関する法規に関する調査が示しているのは、船主が船員を送還する責任を果たさなかったという状況とはどのような環境を指すのかを明確に定義づける仕組みが、明らかではないということである。
明らかになったのは、優れた意図のもとに多数の規定の網の目が策定されているが、実際には抜け穴だらけで、その抜け穴から放棄された船員が落ち零れているという現実である。
一部の国々では、この抜け穴を閉鎖するための対策を講じている。ノルウェーの法律は、船舶所有者が、乗組員の本国送還と賃金の支払いに責任を有すると規定している。ノルウェー国際船籍(NIS)への船舶登録に際して、すべての船主は、乗組員の本国送還と8週間分の賃金支払いを保障しなければならない。これらの必要条件を満たすことのできない船舶は、船籍登録を抹消される。シンガポールは、海外で放棄された船員を援助するための基金(シンガポール放棄船員基金)を設立した。
船員国際調査センターのエロール・カーベシ博士は次のような結論を述べている。「これらの規定は貴重なものではあるが、海運産業の国際性から見るならば、船員が必要としているのは、グローバルな認知を受けた放棄船員保護制度である。船員の放棄が、冷血・破廉恥な行為であることは言うまでもない。しかし、船員の放棄は、絶望的な状況から生まれた絶望的な行動でもある。これらの状況は、一般的に言って世界の海運の経済状況と規制方式によって、変化させることが可能である。船員放棄問題は、海運業界が解決しなければならない、構造的問題なのだ。」
問題の根本は、国際法に基づく義務と責任を、多くの船籍国が果たしていないことにある。彼等にとって、登録料の徴収は単なるビジネスであり、船籍国の尊厳や船舶の掲げる国旗が国籍を示していることには、無関心なのである。
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「国際航路に就航する船舶の所有者は、放棄された乗組員の経費に関する保険に加入しているとの証明書を保有すべきであると、ILOおよびIMOは勧告している」
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