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グローバルユニオン

No.17/2003
■世界の商船隊への船員配乗
 
船舶部員および女性船員の訓練に関する調査の主要な結果
ここに報告するのは、船舶部員および女性船員の海上勤務に向けた訓練の重大な欠陥を明るみに出した二つの新たな調査である。
● 世界の海上に約430,500人の船舶部員が就労している。(休暇中、失業中、海上勤務不適となった者は除く)
● 貨物船の船種別の分類では、最大のグループは一般貨物船の部員で、106,000人、次いでオイルタンカーが85,000人、ドライバルク船が70,000人、コンテナ船が28,000人となっている。
● 世界の船舶部員の大多数は、中高年グループ(平均46歳以上)に属しており、海運産業は、若年者の海運産業への誘致を図るため、部員教育訓練に一層の投資を行なうべきである。
● クルーズ船部門の部員数は、66,800人と推定される。その約半数(47%)はアジア諸国の出身者である。ラテンアメリカは、23%、東部ヨーロッパは、14%、先進諸国(主にイタリア、ドイツ、ギリシャ、ポルトガル、オーストリア、英国、フランス)の出身者は、13%、アフリカおよび島嶼国の出身者は、3%である。
● 出身国トップ10の中で最大はフィリピンで、全部員の約1/3がフィリピンから供給されている。
● 調査の対象となった船員訓練施設の訓練生の総数は6,500人で、その10%が女性であった。また、男女の機会均等方針を持っている施設は、4ヶ所に過ぎなかった。
● 船舶部員が必要とする技能についての国際的な定義はない。
● 船舶部員の偽造海技免状は、大きな問題である。不正行為が極めて多いため、多数の新入訓練生は、人命救助や船内業務の訓練を受けていない。また、当直資格証明書も適正に発給されていないことが多い。
● 貨物船における職員数と部員数の通常の比率は、2:3である。ドライバルク貨物船および小型一般貨物船では、1:1となっている。
● 東部ヨーロッパの主要船員供給国は、ポーランド、ウクライナおよびロシアである。
● クルーズ船乗組員(船舶職員を除く)の87%は、ホテル部門(料理、飲み物、バー、厨房、一般サービス、カジノおよび芸能)に雇用されている。その他の部員は、甲板部および機関部に勤務している。
● クルーズ船に乗組んでいる部員の88%以上は、男性である。(1980年代には、96%が男性であったが、現在は減少した)
SIRC資料による。
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訓練

船舶部員:訓練は変化に対応していない


世界の商船隊への船員配乗に関する最初の本格的調査の報告書は、海運産業のグローバル化のために、多年にわたって船舶部員の教育は無視され続けてきたと述べている。自国船籍からの離脱によって、海運産業の労働市場に関する規制や共通の基準は最小限となり、訓練や教育の共通基準が消失してしまった。
船員国際調査センター(SIRC)の報告書は、この結果として、他産業の進歩と変革に海運産業は遅れを取ってしまったと述べている。国際海運連盟(ISF)やバルチック国際海事評議会(BIMCO)などが行なった数回の調査は、部員の過剰を示唆しているが、これらの部員を計算に入れるためには、「適正な技能」の所有者でなければならないとすれば、過剰は、事実よりも外見に過ぎないのではないかと思われる。
「船舶部員としての雇用を求めている人員数よりも職場の数が少ないという事実を疑う理由はないが、これらの求職者がすべて海上勤務のために適切な訓練と経験を所有しているか否かについて疑問を持つ十分な根拠がある」とSIRCの報告書は結論している。
SIRCの推定によれば、ある時点において世界の商船46,000隻に乗組んでいる部員数は、430,500人である。このうちの66,800人は、クルーズ船部門に所属している。主要な船員出身国(香港を除く)のなかで最大の国は、フィリピンである。東ヨーロッパの主要船員供給国は、ポーランド、ウクライナおよびロシアである。
部員訓練制度は、つぎはぎの制度であり、国家が所有する船員訓練施設および民間の教育訓練企業があり、公式に認知された訓練過程と公式ではない過程があり、ある部員が系統的な教育コースを修了したか、あるいは修了しなかったか明確ではない。クルーズ船のホテル部門や厨房部門で勤務している部員の多くは、基礎的な安全訓練しか受けていない。
日本やノルウェーのように、船舶部員が職員に昇進することを可能としている国もある。しかし、部員には職員としての公式参入資格が与えられていないなどの、障害が設けられている場合もある。

デンマーク、ノルウェーおよびルーマニア(一定の範囲内では南アフリカ)においては、船舶部員の訓練は、国家の産業教育制度の一環として行なわれており、船舶での勤務を目指す学生は、その他の産業を目指す学生と共通の教育課程を修了する。
船舶に巨額の投資を行なった船主にとって、船舶の効率的運航を最大限に保障するのは、労働力への投資であると、調査関係者は指摘している。「この保障を確実にするための最善の方法は、訓練、職務内容、労働条件などを適正なレベルに設定することである。これによって、船員職業が充分な魅力を持つものとなり、投資に見合った収益が得られるまで、労働力を海運産業に留保することが可能となる。」
報告書によれば、資金の不足に悩まされている船員供給国の部員訓練制度が、伝統的海運国の制度より劣っていることを示す証拠はない。
この調査で明らかとなった最も意外な結果の一つは、伝統的海運国の経験とは異なる、労働力の年齢構成である。大多数は、46歳以上のグループに集中しており、部員10人のうち4人は、41歳以上であった。この理由としては、新しい労働者供給国の労働市場に参入するためには経費が必要であること、そして若年者とその両親が充分な資金を持っていないことなどが考えられる。充分な蓄えや借金の担保を持っている中高年齢者のみが、市場に参入できるのであろう。
「今や海運産業は、組織の整備が進みつつあるグローバルな労働市場に依存しており、船舶乗組員の人種混合または多国籍化も進行している。この観点からも、STCW―95条約(訓練・資格・当直要件条約)の最低要件に基づく各国の訓練制度の調和・統合が不可欠となっている」と報告書は結論の中で述べている。
「国際労働機関(ILO)および国際海事機関(IMO)にたいし、小規模な専門家による委員会を設置し、貨物船およびクルーズ船における労働力の社会的、技術的分割について批判的に考察し、部員および職員の教育訓練に関する実際的な最善モデル(ベスト・プラクティス)を策定するよう、我々は勧告する」
「自国籍船に多数の外国人船員を雇用している船籍国は、訓練税または船員供給国の訓練費用とするための類似制度を導入すべきである。関係国政府および船主団体は、資金を拠出する。これらの拠出金は、船員労働組合組織との協議のもとに、適正に調整し、系統的に利用される」
「適正に訓練された船舶部員のグローバルな供給の研究(ISBN 1-900174-15-4)」は、英国、ウエールスのカーディフ大学、船員国際調査センター(SIRC)のトニー・レーン教授およびハイメ・ベイガ博士によって制作された。
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「今や海運産業は、組織の整備が進みつつあるグローバルな労働市場に依存しており、船舶乗組員の人種混合または多国籍化も進行している」
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主な出来事

■1945年以降―貨物船に女性船員が乗組み始めた。特に、スウェーデン船の通信士、コック、スチュワーデスなど。
■1960年代―欧州では、若い男性の募集が困難となり、計画的に女子船舶職員実習生が募集された。
■ 1970年代―偶然の一致と思われるが、文化革命のさなかに、世界最初(恐らく唯一隻)の全員女性職員が乗組む中国の貨物船が就航した。しかし、この海運会社は、1980年代に貨物船への女性船員の配乗を中止した。
■ 1980年代中期から約15年間、海運業界は女性船員の採用への関心を失った。その理由は、便宜置籍船化(海外移籍)、船腹過剰、海上運賃の下落、アジアおよび欧州の新たな男性船員の供給源などである。
■ 現在−熟練職員の不足が予測され(2010年には職員の割合が全乗組員の12パーセントに上昇すると予測される)、女性船員の需要も高まる可能性がある。クルーズ船の従業員の18パーセント以上を女性が占めており(2000年調査)、国籍にかかわらずその大部分がホテルスタッフとして就労している。
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訓練

さまざまな障害に直面する女性船員


以前に比べて、今ほど多数の女性が海上を目指している時代はない。彼女等の能力は、時には男性船員をしのぐほど優れていると言う使用者もいるほどである。けれども、訓練段階から採用過程にいたるまで、すべての段階において偏見と差別が今でも行なわれている。
国際労働機関(ILO)の委託により船員国際調査センターが実施した調査プロジェクトに基づく詳細な報告書は、このように伝えている。
これには政治問題は、全く関係していない。女性船員を採用し、海上の職場に保有することには、少なくとも二つの利点がある。第一には、これによって船舶職員の不足が軽減される。(現在の船舶職員の不足数は、16,000人または4%であるが、この数字は2010年には、46,000人または12%に増大すると見積もられている)。第二には、現在の練習生の不足によって、閉鎖の危機にある世界の船員養成機関の本来の使命が活用されることである。
しかしながら、文化を変えるのは、容易なことではない。女性を海上の職場に導入することは、政府、船舶所有者、運航者等の利益ともなるにもかかわらず、彼等も抵抗グループの一員となっている。一例をあげれば、インド大陸の多数の海事教育訓練期間(MET)は、航海科への女性の入学を認めていない。あるアジアの国には、31校の海事教育機関(MET)と巨大な労働力の供給能力を持っているが、中央政府の法規は、女性乗組員の養成を許可していない。多くの欧州諸国においては、採用された実習生は、企業の負担で船舶職員養成機関を終了する。
SIRCの調査の対象となった17ヶ所の海事教育機関(MET)において、海上勤務のための訓練を受けていた学生は6,518人で、そのうち女性は10%(647人)であった。女子学生の採用に関連して、男女機会均等方針を定めていたのは、4校に過ぎなかった。入学した後に、女子学生は、理論的にはいずれの学科も女性に解放されているにもかかわらず、機関学科よりも航海学科を選択する傾向が見られた。調査対象の17校に在籍中の女子学生の僅か3%が、機関学科で訓練を受けていたに過ぎない。
このような偏向の理由について質問された学校当局者は、しばしば機関室の労働条件を引き合いに出し、「船舶機関学科は、女性にふさわしい学問ではありません」と断言し、こう付け加えた。「暑くて汚いだけでなく、(機関室は)女性がセクハラの対象になりやすい場所です」
ごく少数のケースでは学校当局者自身が、女子学生が船員を志望している理由を理解できず、彼女らの教育に乗り気ではなかった。一般的に彼らは、海事教育を女子学生に奨励する意気込みを、殆んど示さなかった。
一部のMETでは、女子学生に追加学習単位の履修を求めている。その第一の目的は、陸上職場に就職する女子学生の訓練を行なうためである。ある回答者はこう述べている。「私たちは、彼女達が船員として就職する機会があることを、純粋に希望しています。また、それが困難な望みであることも理解しています。しかし、私達は、彼女達の未来に責任を持たなければなりません」「私達は、彼女達が船員として成功することを、心から望んでいます。しかし、それが不調に終わったときに、海事に関連した職場で働くことができるよう、準備をしておかなくてはなりません」。
ところが、これらの追加学習は必修科目であるため、女子学生の負担額は、海事教育課程の通常の学費の二倍となる。従って、この海事教育機関自体が、女性に対する差別行為を行なっていることとなる。調査対象となった海事教育機関には、性差別問題を主要教育科目に組み入れているところは皆無であった。ある学校では「学生は、問題が発生する前に、その問題について教育を受けるべきではありません」と説明している。
世界各地域に女子学生の入学に関する制約があるにもかかわらず、女子訓練生の入学は数倍に増加している。より多くの女子学生を入学させようとする圧力は、学生を供給する側からのものである。即ち、海上職域への男性の募集がますます困難になってきていることが原因となっている。
SIRC−ILOの調査はその結論として、クルーズ船とフェリー船部門を例外として、その他のすべての部門において、女性の比率は著しく均衡を欠いていると述べている。「大多数の企業は、特に女性の雇用に関する方針を作成していない。一部の企業は、女性船員からの求職申し込みは拒否するとの非公式な戦略を持っている。また、証拠が示唆していることは、企業内の方針によって、女性船員は特定の管理職(機関長および甲板長など)から除外されているということである」
多くの障害を克服した女性船員が、海運企業の常用船舶職員として雇用された場合には、その海運企業が男性船員と同様の将来の可能性を、女性船舶職員にも提供する用意があることを見出す場合もあり得ると、報告書は述べている。しかし、そのような方針を持つ企業は少なく、昇進が他の企業への移動を伴う場合には、新たな企業の偏見や見えない障壁に直面する女性が多い。
長い経験を持った女性船員が、たとえ最高の職位に就いたとしても、性差別問題は消え去ることを拒むであろう。ある女性船舶職員は、しばしば女性に命令されることに抵抗感をもつ男性船員とともに仕事をしたと語っている。経験を積んだある女性船長は、香港港からの出航に際して、パイロットの支援を受けることができないこともあった。香港港のパイロットは、水先人として乗りこんだ船が、女性船長に指揮されていることを見て、自分の目を信じることを拒否し、下船することを望んだのだった。
SIRCの報告書は、女性の将来の見込みを改善するために、直ちに何等かの措置がとられるべきであると結論付けている。この報告書は、そのほか次のように勧告している。
■ 多くの企業による、女性船員について肯定的な経験を、広く周知させる努力をするべきである。
■ 海運企業および船員教育機関は、新入レベルの女子学生の教育促進を重点とすべきである。
■ 女子船舶職員実習生を採用した海運企業は、上位職に女性船舶職員(できれば女性船長)が乗組んでいる船舶に、これらの女子実習生を配乗するよう努力すべきである。
■ 海運業界全体として、セクハラに関する方針を策定すべきである。
■ 男性にとっても女性にとっても、船員が生涯の職業として適切な仕事となるよう、一層の努力が必要である。?

「女性船員:海上におけるグローバル雇用方針とその実態」は、今年の夏ごろに国際労働機関(ILO)から出版される予定。この報告書は、政府当局者、海事教育機関の講師、責任者、船舶管理業者、船舶所有者、労組役員、女性船員などとの面談、聞取り調査に基づいたものである。
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ある女性船舶職員は、しばしば女性に命令されることに抵抗感をもつ男性船員とともに仕事をしたと語っている。
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