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グローバルユニオン

No.17/2003
■ロシア船員
 
ウラジオストックを活動拠点とするITFインスペクターのピョートル・オシチャンスキーは、便宜置籍船(FOC)の厳しい現実に直面して感じる問題について記述している。ここに掲載する記事は、オシチャンスキーの著作「FOC船上のロシア船員」
 
市場経済の下での生き方

ロシア船員は、どうすれば野蛮な市場で生き残る方法を学ぶことができるだろうか?一例をあげれば、何よりも必要なのは、我々は優秀であるという神話と幻想を捨てることだ。我々は、世界で最も優秀な船員ではないということを自覚しなければならない。ロシア船員への需要は多いとはいうものの、フィリピン、中国、インドおよびその他の国々の船員への需要は、一段と強いのである。
その上に、世界船員市場でのロシア船員の魅力を減少させているのは、彼らのアルコール好きと貧弱な英語能力である。ある船員斡旋業企業の支配人から聞いた話では、海外企業の職場を斡旋した船長の3人に1人は、飲酒をコントロールすることができないために責務を遂行することが不可能であった。ある船長は、大手海運会社の二等航海士として招かれたが、二週間後に自宅に帰されてしまった。その理由は、彼が英語の会話を理解できず、船内業務について受けた指示を理解できなかったことであった。
部員について言えば、大部分は英語を全然知らない。ある小さな水産会社のオーナーは、ロシア人船舶部員の飲酒癖、粗暴さ、技能の低さにはあきれ果てていた。
私自身は、ある極東の海運会社の船舶を何度か訪船して、もう一つの神話の崩壊を経験した。この会社では、船長の賃金は500米ドル、部員(OS)の賃金は150米ドルであった。
ロシア船員を形成しているのは、ロシア集団主義の神話である。自己の権利についての意識的な理解というよりも自暴自棄的な行動として、彼らは最後の手段としてストライキを選択するのである。団結し、陣営を築くが、ストライキによって目的を達成すると直ちに、習慣的な居心地の良い政治的無関心の状態に逆戻りしてしまう。
私は、ある船の一航士に尋ねたことがある。彼の一ヶ月分の賃金総額は、400米ドルであった。「どうして何もしようとしないのですか?」
彼は答えて言う。「何のためにですか?何が起ころうとも私はここから去って行きます。この船には、時間外手当もありません。賃金は低く、その賃金の支払いも2ヶ月から3ヶ月遅れです。私が何か問題を起こした場合に、賃金を差し押さえるために賃金の支払いを保留しているのです」「しかし、他にどこへ行くのですか?この船に残って、組合とともに問題を解決し、正当な賃金を獲得したほうが良いのではありませんか?」
彼は、意識を回復したように、私に質問した。「いや、そんなことはない。ところで、君は一体何者なんだ?」
「ITFインスペクターです」
「I-T-Fだって?それならば、私にも皆と同じ賃金が支給されるようにして下さいよ」と彼は求めた。
何でもできる全知全能のITF。これがもう一つの神話なのだ。私がしばしば経験した船員たちの要求は、次のようなものが多い。「私達が6か月分の賃金を獲得できるように援助してください。ただし、貴方に連絡したことは内緒にしておいてください」または「私達にITF賃金が支給されるようにしてください。しかし、私達がITFに連絡したという形跡は残さないで下さい」
これらは、全くの思い違いである。正当な賃金を獲得するためには、その目的に向けて戦う方法を学ぶべきである。ITFの支援を受けることによって、このことは一層容易に達成できることとなるのだ。ITFの使命は、闘う船員のために組織的、実際的、法律的な援助を提供することにある。ITFは、100年以上にわたって労働者の権利のために闘ってきた経験を持っている。しかし、船員が闘いに全く参加することなしに、幸福が向こうからやってくるはずはない。これは馬鹿げた考えにすぎない。ITFは、そのような立場にはない。
船員たちは、私の事務所に電話をかけてくる。そして、普通の人ならば結論とするところから話を始める。「貴方が最後の頼みの綱なのです。検察官の所にも、労働基準監督署にも行って来ました。でも、何の役にも立ちません」このような船員は、裁判所の判決文を手にしている場合もしばしば見られる。そして、裁判所の執行官は、判決の執行を迅速に行なってくれないと苦情を言う。しかし、私に何ができるというのだろうか?ITFは、暴力団組織ではない。ITFは世界各国において、船員を援助するために、国際法および国内法に基づいて活動しているのだ。
「法律の風は、吹きたい方向に向かって吹く」このロシアの諺は、我々が数十年間、いや数百年間にわたって生きてきた社会の現象を生き生きと表現している。それは即ち、司法機構にたいする一般的信頼の欠如である。それには理由があることを誰も否定しないであろう。しかし、これも一つの神話なのだ。今日においては、ロシアの裁判所において労使紛争を解決することが可能であると断言できる。この種の紛争を法廷において解決することが絶対に必要である。これによって初めて、紛争を裁判によって解決するという伝統が根付くのである。
我々は、長期にわたって民主的制度を熱望してきた。そして、遂に民主的制度の成果を享受することが可能となった。しかし、実際にはそんなに簡単ではないことも分かってきたのである。
例えば、失業の問題である。ソビエト共産主義時代には、失業という概念は存在しなかった。あらゆる種類の社会的欠陥はあったとしても、失業はなかったのである。これによって、仕事がなくなることはなく、一切れのパイを得るために争う必要はないという信念がうまれたのである。しかし、パイに近づき過ぎた人が排除されることはあった。
この信念は、今も生きつづけている。これは依存性という神話以上のものではない。しかし、仕事がなければ生きてゆけないという厳しい現実が、いつのまにか忍び寄ってきている。しかし、極めて多くの人々が、この現実を理解し、受け入れることを拒んでいることが明らかになっている。
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「正当な賃金を獲得するためには、その目的に向けて戦う方法を学ぶべきである。ITFの支援を受けることによって、このことは一層容易に達成できることとなるのだ」
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