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No.19/2005 |
■ITF活動中 |
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成果をあげたITF実力行動の実例(2004年度)
日給50セント以下の賃金
低賃金は、便宜置籍船(FOC)においては一般的である。しかし、二年間にわたって日給50セント(US$)以下の賃金という例は、まさに最低クラスである。
乗組員からの支援を求めるファックスを受け取った日本の山下昭二ITFコーディネーターが清水港で訪船するまで、錆だらけのバケツさながらのパナマ籍船ルン・ユイン号(Lung Yuin)のビルマ人船員が受け取っていた賃金の実態がこの金額であった。
横浜港の大堀二三男ITFインスペクターが訪船した結果、8人の乗組員全員の基準以下の賃金及び時間外手当が未払いとなっていることが判明した。おまけに、トイレも惨憺たる状態であった。船長は、ITFによる介入について敵対的な態度をとっていた。
船長は、サボタージュ(業務妨害)を理由として乗組員を解雇しようと試みたほか、全員の船員手帳に否定的なコメントを記入すると脅迫していた。ビルマ船員のうち2人は、2年間乗船していたが、この期間中に受け取った賃金はわずか300米ドルだった。
大堀インスペクターが台湾の船主と交渉した結果、船主はITF承認協約に調印し、この協約に基づく未払い賃金71,099米ドルを8人のビルマ人乗組員に支払うことに同意した。また帰国経費の大半も船主が提供することとなった。さらにビルマ人船員が受け取った賃金を回収することを目的に、船主が法的措置を講じることを阻止するため、船員の免責を確認する文書に船主は署名した。
続いて実施されたポートステート・コントロールによる検査によって、本船の防火設備、耐航性、構造及び安全用機器の欠陥が明らかになった。
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3ヶ月間賃金支給なし
ITF本部のアクション・ユニット(行動班)が取り扱う事案の大半は、未払い賃金に関連する問題である。2004年の中頃、行動班のジョン・カニアスは、北朝鮮船籍のアラハンガII号(船齢24年)の乗組員からの電話連絡を受けた。
乗組員の苦情は、3ヶ月間賃金を受け取っていないことと、未払い賃金の総額が72,000米ドルに達しているというものであった。
雇用契約書のコピーを持っている乗組員は、一人もいなかったが、彼らはパキスタンで契約書に署名したと主張していた。アラハンガII号は、一年以上もスリナム(南米)のパラマリボ港に錨泊していたため、乗組員たちは一日でも早く帰国したいと切望していた。
この船は一度沈没した後、再び使用されているという経緯があるため、乗組員は本船を航海可能な状態に保つために仕事を続けていた。現在の船体の状態から考えて、本船はモンスーン(雨季)の厳しい気象条件には耐えられないのではないかと、乗組員たちは懸念していた。本船のエンジンが故障しており、必要に応じてより安全な場所に移動することは不可能であった。おまけに食料や飲料水も尽きかけていた。
ITFのカニアスは、これらの諸問題を指摘する文書をドバイの船舶所有者に送付した。数回の文書のやりとりがあったのち、船舶所有者は、乗組員の賃金を分割払いで支払うことを約束した。本船は一年以上のあいだ航海していないため、全く収益をあげていないので、乗組員の賃金等を一度に支払うことは不可能であるとのが、船主の説明であった。
一ヶ月が経過し、パキスタン人船員6人が、船主の経費負担によって帰国し、乗組員のための第一回分の支払い48,000米ドルがITFに送金された。その後、船内に残っていたパキスタン船員11人と交代するための、ルーマニア人乗組員が到着したが、パキスタン船員が実際に帰国できたのは三週間のちであった。
翌月になって、乗組員のための送金をITFが受け取り、事件は最終的に解決を迎えた。ITFが回収した未払い賃金等の総額は、150,000米ドルに達した。
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バンコク港で遺棄された船員
パナマ国旗を掲げたヘリン号に乗組む多国籍の船員にとって、問題は、未払い賃金に加え、船主によってバンコク港に遺棄された船には食料も殆ど残っていないことだった。船長が自腹を切って飲料水を補給しなかったら、本船には飲料水さえなくなっていたのである。台湾、インド、パキスタン及びインドネシアの乗組員たちは、タイに亡命中のITF加盟組織のビルマ船員組合(SUB)に窮状を訴えた。SUBは、当面の食料などの支給を行ったのちに、ITFに彼らを助けるよう求めた。台湾のITFインスペクターによる船主への圧力が成功し、本船への食料・飲料水の適切な補給が直ちに行われた。さらに一ヶ月のちに、未払いとなっていた25,000米ドルが支払われた。その後、新たな用船者が現れ、ヘリン号はバンコク港を後にした。
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未払い賃金と本国送還を要求
船主が約束した未払い賃金の支払いを確認するため、インドのツチコリン港のスティーブン・フェルナンドITFインスペクターは、パナマ船籍のアメール・ライン号を追ってビサカパトナム港に向かった。本船の乗組員19人のうち船長及びウクライナ人職員2人を含む8人は、未払い賃金と本国送還の要求に関する苦情をツチコリン港で提起していた。このため本船は、ツチコリン港で15日間拘留されていた。
フェルナンドは、船内の食料が欠乏していることを知って、彼の組合から食料を提供した。船主は、本船の貨物の荷揚げが完了したのちに、賃金を支払うと提案した。乗組員の職員と部員は、この提案を受け入れビサカパトナム港まで航海した。そして乗組員たちは、未払いとなっていた155,761米ドル全額をこの港で受け取ることができた。彼等はさらに、帰国のための航空券及び最後の航海についての2日分の賃金を受け取ったのであった。
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無視されたITF労働協約
マルタ船籍のシーライト号の乗組員の中には、トルコの船主から賃金の支払いを受けていない者もいるとの苦情を受けたロンドンのITF本部からの通報により、米国ガルフ沿岸のインスペクターは行動を開始した。ヒューストンのシュウェ・トゥン・オンITFインスペクターは本船を訪船し、ITF協約に基づいて船員の未払い賃金、船主負担による帰国経費を支払うよう請求した。これに加えて、協約上の権利を主張した船員に対し、法的対抗措置を一切講じないよう船主に要求した。
これによって5人の乗組員は、合計55,813米ドルを受け取ったほか、船主の経費負担で帰国した。
その他の乗組員たちはごく短期間しか乗船していなかったため、賃金の要求は望んでいなかった。けれども、シーライト号の船主がITF協約を適正に実施していることを監視するようにとの、その他のITFインスペクターに対してメッセージを発信した。
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賃金は三倍になった
香港船籍のポス・ディグニティー号に乗組む韓国及び中国の船員たちは、スウェーデンのルリア港で石炭の荷揚げを行っていたが、ITFによる査察の結果、乗組員の賃金は三倍に増加した。スウェーデンのITFアシスタント・コーディネーター、ペーター・レクビストによれば、本船の韓国船主は、22人の乗組員の月間平均賃金を、それまでの500米ドルから1,500米ドル以上に引き上げることに同意した。
スウェーデンの港湾労組は、合意が成立するまでのあいだ、本船の移動を拒否していた。
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キャンペーンの事実と数値
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世界の商船隊の8隻につき1隻以上の船舶が、2004年度中にITF特別船員部またはITFインスペクターとの間に何らかの連絡を持った。 |
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世界43カ国の港湾において、129人のITFインスペクターが活動している。 |
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インスペクターは、2004年度に9,500隻を訪船した。 |
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査察の対象となった船舶の80%は、便宜置籍船(FOC)である。査察活動の重点目標は、最も悪質な船籍国及び船舶所有者に向けられている。 |
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2004年度にITF協約の適用を受けている船舶は、8,171隻であった。同年度中に、1,285隻について新規に協約が調印された。 |
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昨年度、ITF団体協約の適用を受けている船員は、187,218人であった。これは2003年度と比較して、10,000人の増加である。 |
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ITFキャンペーンの成果として、乗組員は相当額の配当を給付された。2004年度に関係乗組員が受け取った未払い賃金の総額は、2,500万米ドルを超えている。 |
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四大陸の24カ国の港湾において、ITF加盟組合及びFOC船乗組員は、ITFキャンペーンを支援するためのストライキを実施した。 |
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