国際運輸労連-ITF
メニュー シーフェアラーズ ブルテン バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

No.19/2005
■運命共同体
 
テロリストや犯罪人扱いされる船員

船員の労働条件について船主と船員組合の意見が一致することはあまりないが、両者は各国政府、特に米国政府に対し、港に到着した船員を犯罪人扱いするのをやめるように共同で呼びかけている。
船員組合と船主は、国際マリタイムデーに米国政府に共同で抗議し、続いて国際労働機関(ILO)が策定し、2003年6月に採択された船員の身分証明書に関する新しいILO条約を批准するよう、各国政府にロビー活動した。
この新しいILO条約は、2001年9月の同時多発テロ以降に世界中で懸念が圧倒的な高まりを見せた中で、策定され、船員の身分証明書をより確実なものにすることを規定している。一方で、同条約によっても、船員の上陸や移動は許可されるべきであることを港湾国が認識しなくてはならないという原則は変わらない。
一般に、新しいIDを所持している船員には、出身国で事前にビザを取得することを求めるべきではない。船員の新しいIDには、指紋、指名、性別、生年月日、出生地、国籍、身体的特徴、デジタルまたはアナログの写真、署名などの生体認証レンプレートが記載されている。
しかし、米国はあくまで、米国に寄稿する全ての船員が入国前に個人的にビザを申請すべきだと主張する。
ITFのデビッド・コックロフト書記長、国際海運連盟のクリス・ホロックス事務局長は、これにより船会社や船員が実質的な問題を抱えるだけでなく、この新しいILO条約を批准しようとする他国の意思をくじくことになると指摘する。
「我々は力を合わせ、海で働く者の基本的権利を支援し、米国と他国の政府に対し、保安は協力によってこそ達成でき、対立からは守れないことを伝えていく」とコックロフト書記長は語った。

ホロックス事務局長もこの意見を支持し、「我々は皆、保安を強化する決意があるが、各国政府、特に米国政府は、保安は米国を訪れる船員をテロリスト扱いすることでは強化できないことを認識してほしい。皆が力を合わせることこそ必要だ」と述べた。
「使用者も船員組合も、船員の上陸を理不尽に制限することは、逆効果だと確信している。そんなことをすれば、船舶と港湾施設の保安確保に重要な役割を担っている者たちの間に怒りを生むだけだ」
米国港湾の保安検査が厳しすぎるという報告は数え切れないほどなされている。「海運関係者に状況を尋ねてみて欲しい。誰もが口をそろえて、追放、不当処罰、イスラム教圏出身の船員の解雇について話すだろう。武器を持った警備員がギャングウェイに立ちはだかり、数週間から数ヶ月も海上で生活してきた船員が船から降りないように見張っている。公衆電話まで歩いて家に電話をかけることすら許されない」とコックロフト書記長は述べる。
イスラム教徒の船員に対しては、特に不当な差別が行われている。スカンジナビアのタンカーでオペレーターをしていたジョー・タンカーズは、「イスラム教徒の船員をこのまま雇い続けると、運行の遅れにつながり、保安コストも高くつくと会社が判断した結果、インドネシア人船員がフィリピン人船員に置き換えられている」と語っている。
2004年7月より、ISPSコードが導入されたにも関わらず、船員の犯罪人扱いは今も続いている。IMOが策定した国際規則であるISPSコードにより、船舶と港湾施設の保安確保のための措置を講じることが各国当局に義務付けられた。

これには、船や港湾施設への許可されないアクセスを禁じる義務も含まれる。また、必須の船舶保安計画の作成と、船に保安担当官を配置することも求められている。
ITFは、ISPSコードに、港湾労働者の労働組合権を含む海事労働者の基本的権利と自由は守られなければならないという明確な規定が盛り込まれるよう、懸命に努力した。また、訪問者や船員のための福祉団体や労働関係団体が船へ円滑にアクセスできるようにするため、港湾保安計画も義務付けられている。港湾労組の代表やITFインスペクターによる港湾ターミナルへのアクセスもこの規定のもとに許可されるべきだ。
▲ ページトップへ
ISPSコード発効海運労働者の権利保護で一定の成果

船舶および港湾施設の保安措置を当局に義務付ける国際規約、「船舶および港湾施設の国際保安(ISPS)コード」が7月1日に発効した。
これにより、許可されていない船舶や港湾施設へのアクセスの禁止や、船舶保安計画の策定、船舶保安職員の配置などが当局に義務付けられる。
ISPSコードがIMOで議論されたとき、ITFは船員の人権および労働組合権の保護条項を提案した。その結果、海事労働者の基本的権利・自由(港湾労働者の労働組合権を含む)は保護されなければならないとする、明確な規定が盛り込まれた。
港湾保安計画にも、船員福利団体や労働組合の訪船の確保が求められている。港湾労組やITFインスペクターが港湾ターミナルへアクセスする際にもこの規定が適用される。
「海事保安強化の必要性は理解しているが、バランスのとれた措置が必要だ。また、海賊などの長年の懸案事項にも対処していく必要がある。新たな措置によって、既に超過ぎみの船員の業務量がさらに増えるようなことがあってはならない。船員の基本的権利・自由・尊厳を保護することも不可欠だ」とのジョン・ウィットロー船員部長は言う。
ITF加盟港湾労組も港湾保安という大義を支持し、ISPSコードの厳守を訴えている。と同時に、ISPSコードを口実に日雇い労働や船員荷役を導入してはならないと警告を発している。7月にシンガポールで開催されたITF 港湾部会総会で採択された決議は、ISPSコードへの支持を表明するとともに、いくつかの懸念事項を指摘している。
▲ ページトップへ
ケーススタディ:上陸権を守るためのスロベニアの取り組み

スロベニアのコパーの元ITFインスペクター、ブランコ・クルズナリクは現在、ロンドンのITF本部でITF協約ユニットの部長を務める。

2004年7月1日、スロベニア警察庁は海事警察にスロベニアに立ち寄る船員に新たな制約を設けるよう指示した。これは、ILO第108号条約(船員の身分証明書に関する条約)を批准していない国で船員登録し、スロベニアへの入国にビザを必要とする全ての船員を対象とするものだ。お金を払ってビザを申請しなければ彼らの上陸は許可されない。
残念ながら、この制約が設けられてから1ヵ月後に、あるスロベニア人ジャーナリストから聞くまでは、私はそのような指示が出されていたことを知らなかった。私はすぐさま警察庁に書簡を送り、スロベニアは船員の上陸にビザは必要ないと定めたIMOの国際海上交通の簡略化に関する条約(1965年FAL)をすでに批准していると伝えた。また、同条約には、船の停泊中は、外国人船員の上陸は当局により許可されると明記されている。
警察庁の代表者と電話で話をしながら、彼らがIMO条約について何一つ知らないことに驚かされた。私はダルコ・アンゼリ警察庁長官から書簡を受け取ったが、そこにはスロベニア政府は現行の政策を変更しなくてはならない国際的義務は負っていないと書かれていた。
もちろん、私はこの意見に同意できない。そこで、オンブズマンとスロベニアのヤネズ・ドルノウジュク大統領に書簡を送り、30以上の関係当局にもEメールを送付した。すると、スロベニアの一般市民やマスコミから支持が寄せられた。その中には、退職した船員のヴィンコ・グルジックの手紙も含まれていた。グルジックは、現役中、20以上の国籍をもつ仲間とともに通信士として働いていた。そのため、国籍や国が発行する文書によって船員を差別することの馬鹿らしさがよく分かっている。
また、スロベニアのコペル港でビザが無いことを理由に自分の船の乗組員が上陸を拒否されたという船長も手厳しい抗議文を送ってきた。誤解がないようにしたいのは、コペル港の管理者も海事産業団体も船員の上陸権を全面的に支持しているということだ。
8月20日、ついに前向きな反応を得た。スロベニアのマルコ・パヴィリハ運輸大臣は、運輸大臣、内務大臣、外務大臣の三者会合を組織し、私の主張を認め、スロベニアはIMOの国際海上交通の簡略化に関する条約を尊重すべきだとはっきりと述べた。この会議の席上で、コペル港はビザを携帯しない船員にも上陸を許可することが決定された。
警察庁は、海事警察に対する指示内容を変更したが、私には少し期待外れだった。新たな指示により、船員が有効パスポートを所持していれば、ビザを持たなくても上陸が許可されることになった。しかし、有効パスポートを携帯していない場合(例えば、期限切れなど)、ILO108号条約の批准国で船員登録した船員のみ上陸を許される。
ILO108号条約の未批准国の船員にも上陸は許可されるべきだと私は考える。ILO108号条約を批准していない国は多い。私の記憶が正しければ、米国、ドイツ、日本のいずれも未批准だ。実際、同条約を批准しているのは世界のわずか62ヵ国に過ぎない。
ゆえに私のスロベニア警察庁との闘いも続く。ある国がIMOのFAL1965条約に調印しており、船員の身分証明書が条項3−10−1(身分証明書に関する基本的要件)に従っている限り、その船員の身分証明書は有効であり、ILO108号条約は適用されなくなると私は考える。
私はこれまで10年以上、機関士として働いてきた。だから船員にとって上陸することがどれほど重要か分かる。上陸は船員の心身の健康に不可欠だ。
▲ ページトップへ
汚染原因者及びテロリストと見なされる危険があるため、犯罪人として訴追されないような法的保護を船員が要求する可能性がある

船員を犯罪者扱いするのは新しいことではない。多数の船長や上級職員が海洋汚染事故によって告訴され、刑務所に送られた。しかし、2001年9月以来の海上安全保障の強化および海洋汚染に関する新たな措置によって、刑法上の制裁が追加されている。名目だけの社名を掲げた真鍮の表札や便宜置籍の複雑な組織を隠れ蓑とする船舶所有者と異なり、船員は事故が発生した場合の責任を問われる弱い立場にある。海洋汚染、海上保安、安全航海、武器密輸、密航幇助、船員への暴力行為などで、船員は逮捕される可能性がある。
2003年7月、ルタ船籍の原油タンカー・タスマンスピリット号がカラチ港口で座礁したとき、乗組員はパキスタンに9ヶ月にわたって人質として留まることになるとは予想していなかった。バハマ船籍のプレスティージ号のアポストロス・マングーラス船長は、船の破損の結果、スペインで二年間過ごすことになろうとは思ってもいなかった。
この二つの事件によって、事故の補償と責任の比率に関する政治的係争に巻き込まれた船員が、不当かつ不必要に拘留される危険性が明らかとなった。大規模な海洋汚染事故に起因する経済的損失や社会的関心の高まりゆえに、政府には何らかの行動を起すようにとの圧力がかかる。同時に、船籍国が国際的責務を履行しなかったことが、この圧力を強めることとなる。例えば、ポートステート・コントロール制度の主要な原動力となっているのは、いわゆる「錆びたバケツ」と呼ばれる基準以下船をなくし、自国の港湾に入る外国船はすべて安全、社会、環境に関する国際基準を満たしていることを担保するという沿岸国の努力と活動である。
▲ ページトップへ
犯罪人

一般社会の生活と同様に、船員を職業とする人間の中にも、自分の意思で、あるいは故意に犯罪行為に関与する者がいる。しかし、船内で生活し、勤務しているという環境から、犯罪者を訴追しようという国家の意向によって、船員がしばしば不利な立場にあるということを忘れてはならない。船員は犯行現場にいるため、法律の執行者にとって手近な存在であることから、最善の手続きが決定されるまでの間、拘留されやすい。
海運産業においては、基準以下の船主らはダミー会社や擬装法人を利用して責任を回避し、手がかりを残さずに姿を消してしまうために、無実の船員にすべての責任が押し付けられる。海運業界では、受益船主は常に不透明であることを理由として、船長あるいは乗組員が逮捕されているのが実情である。船舶所有者が発見された場合ですら、当該企業は大抵、地球の反対側に所在しているため、企業責任者が逮捕されることはほとんど無いのが現状だ。
これに加えて、便宜置籍国政府は、基準以下のいかがわしい船主が債務負担を回避するための便宜を図ることはあっても、船員が最も必要としている時に、外交的な保護を提供することはないことが記録によって示されている。
プレスティージ号(バハマ船籍)及びタスマン・スピリット号(マルタ船籍)の事例から印象的だったのは、バハマ政府もマルタ政府も、国際法に定められた旗国の権利を行使して、自国船の乗組員の即時釈放を要求するため、海洋法の国際審判手続きを取ろうとしなかったことである。船員釈放の申請は、船籍国政府のみが行えることとなっている。便宜置籍国に登録されている船舶数を考えると、この問題は、船員が直面している最大の問題である。
その他にも、船員は、私たちの多くが当然の権利と考えている法手続き上の諸権利を否定されている。これらの権利は、逮捕前や逮捕に際しての適正な手続き、拘留期間中の人道的処遇、法律上の助言と代表、公正な裁判と国際間の犯罪人引渡しのための適正な手続きなどを確保するためのセーフガードとなっている。こうした諸権利についても、船籍国、船主、保険会社は、船員の福祉や法律的必要を満たす役割を果たすべきだ。
▲ ページトップへ
意図的行為

船員の意図的行為と非意図的行為の相違は、以前から認識されている。犯罪行為をおこなうためには、一般的に意図と犯行に関する知識が必要である。
しかし、現在提案されている欧州連合(EU)の海洋汚染に関する新たな規定により、過失による汚染でも犯罪行為と見なされ得る可能性が出てくる。
一方、船員が認識と意図をもって犯罪行為を行った場合には、起訴されることを予測すべきである。しかし、全ての事件が明確とは限らない。船員たちは場合によっては、法律を無視せよとの巨大な圧力のもとに置かれることもあり、違法な行動を阻止する権限・能力が限定されている場合もある。選択肢は、法律に違反するか、失業するかのいずれかである。こうした状況は、起訴及び判決に関する判断を下す際の情状酌量の要素となるであろう。
海上の重大事故の調査に関連して、船員は古くからの伝統として、関係各国の海事損害調査官などと率直に協力してきている。しかし、現行法の規定は、このような捜査によって得られた情報が、後になってから犯罪訴追手続きに利用されることはないと保証していないため、情報を提供した船員が自らを犯罪人に仕立てるというリスクを抱えている。
一部のITF加盟組合及び法律専門家は、事故調査官の質問に応じる条件として、船員が経費を負担することなく、独立の法律専門家(弁護人)を用意するとの規定を要求するべき時ではないかと述べている。
犯罪者扱いの是非は、複雑な問題である。関係国政府及び海運関係者が、基準以下船舶の排除のような基本的問題にまともに取り組むならば、この問題は緩和へと向かうであろう。
船員たちは、テロとの闘いと海洋環境保護活動の最前線に置かれている。しかし、無実が証明されるまでは、潜在的なテロリストならびに海洋汚染原因者として扱われていると船員は感じている。
▲ ページトップへ
 
 
INDEX
ニュース
世界で見られる動向
協約にサインする前にこれを読もう
船員に勧めるITFの15のアドバイス
ITF活動中
FOCキャンペーン
労働組合
なぜ組合に加入する必要があるのか。
ロシア人船員と組合加盟人員に関する特別報告
ITFインスペクター
新任インスペクターの素顔
便宜置籍船
ITFの便宜置籍船指定ガイドライン
海運産業概観
最新の数値と統計
国際海事機関
事務局長の報告
運命共同体
テロリストや犯罪人扱いされる船員
ウォーターフロントの結束
荷役は港湾労働者に任せたほうがいい
連絡先リスト
ITFインスペクターの連絡先
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.