国際運輸労連-ITF
メニュー トランスポート インターナショナル バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

2007年1〜3月 第26号
■承認されざるものを代表して
 
承認されざるものを代表して

ベニンのオートバイ・タクシー業界は、インフォーマルな交通運輸産業部門で活動する組合の挑戦についての豊かな事例となっていることをモウサ・ギビゲイは報告する。

最近の数十年間で多くの開発途上国は急激な人口増と都市化の進展を経験してきている。このことは、都市部の地理的な拡大とあいまって電化された交通運輸への需要を増大させてきた。何千人もの人々が毎日家から長距離を通勤して仕事へと向かい、また帰宅しなければならないからである。
ベニンでは、手ぬるい規制の中で需要を満たすためにインフォーマルな(非公認の)交通運輸産業が繁栄してきている。そのため隣国ナイジェリアからの中古のオートバイや低価格の燃料とスペアパーツの輸入が横行することとなった。
1980年代の経済危機と失業の加速の後、資格のあるなしにかかわらず多くの労働者が職にありつくためにこの拡大しつつあるしかし過酷で払いの悪い運輸産業部門に参入することとなった。ベニンでは経済的就業人口のうちおよそ95%までがインフォーマル部門で働いており、うちオートバイ・タクシー業は生み出している職の数と社会的経済的役割において重要な部分を構成している。
オートバイ・タクシー(ゼミジャンとして知られる)運転手を組織化した労働組合は今やいくつかもあるが、そのうち産別組合の組合員であるのは10〜15%に過ぎなく、しかも組合の力は弱く不確実である。しかしこれら組合は政府に対して圧力をかけて問題を解決させたり、生活条件を改善させる能力がある。さらにそのうちのいくつかは組合員を代表して主張を訴えていくのに重要なまた多様な役割を果たしてきている。
▲ ページトップへ
運転手の横顔

ほとんど全てのゼミジャンの運転手は男性でありほとんどが文盲であるが、小学校から高等教育まで幅はあるとはいえ、一部には教育を受けているものもいる。
運転手には、就職しそこなった大学卒業生か、解雇者、学生がおり、最近増えてきているのは現職の公務員である。しかしほとんどが農村地域から着いたばかりの農夫か徒弟修業を終えたばかりの職人であり、自ら起業する財産のない人たちである。
この仕事で長くやっていこうという運転手はほとんどなく、むしろこの仕事をバネにしてより良い生活を目指そうとしている。よって団体や組合に関与していこうとする気持ちはなく、もしあったとしても問題がある。
1989年以来、ゼミジャンの職の規制は運輸当局が繰り返し課題としてきた。しかし皮肉なことにはオートバイ・タクシー運転手の組合を支援するのに役立つことは何ら行われてこなかった。
この運輸部門は雇用の重要な源であり、無くなれば10万人の職が失われる。しかし当局は現状維持を続けようとし、しかもその一方でベニンを襲っている社会的危機が解決するのを待ち望んでいる。
雇われ運転手は、公務員であったり商店経営者であるオートバイ所有者との契約で自由に車両を使い、平均3万CFA フランスフラン(約60米ドル)の月収である。オーナードライバーは自らのために働いている。彼らは組織の中でまた労働時間においてより柔軟でいられる。彼らは通常日曜には休暇をとり、車のメンテを行う。
しかしいずれの範疇の運転手も乏しい社会福祉、休息の不足、無休暇、一定しない賃金など問題を抱えている。彼らは大気汚染から来る健康問題や保険の手当てのない頻繁な交通事故や警官による嫌がらせを経験している。
▲ ページトップへ
抗議行動

シナゼブ運転手組合のような労組がよく使う武器は街頭に出て抗議の行進を行うことであり、しばしばたとえば警察による組合員の逮捕とか犯罪者による組合員の殺害の後で行われる。これらの場合、当局が問題解決のために組合役員と会おうとすることもある。
シナゼブはダッサ・コミューン(コトノーからおよそ200キロ離れたところにある)で2005年9月に組合員の一人が犯罪者によって殺害されたことを受けて抗議の行進を行った。シナゼブは強力な路面大型トラック運転手組合であるUNACOBを含む他の組合の協力を得て、この町でゼネスト宣言に値する強い態度を取った。
オートバイ・タクシー、都市タクシーと都市間をつなぐタクシーを含む全てのタクシー運転手がその日は労働を拒否した。幹線道路は2時間にわたって封鎖された。保安隊はシナゼブと交渉せざるを得なくなり、基本的な要求は満たされ、組合員が利用できるオートバイの大型駐車場が創設されることが決まった。
これは組合の勝利である。当局が譲歩することなどめったにないし、ましてやオートバイ・タクシー運転手に対しては特にそうであるからである。
▲ ページトップへ
シナゼブ運転手組合の活動

組合の主要な業績の一つに相互預金制度と信用制度の運営がある。資金は今や70万フランスCFAフラン(およそ1,500米ドル)になる。組合員には毎月700フランスCFAフランの支払いが求められる。制度は連帯基金のように機能し、困難な状況にある組合員のたとえばオートバイの修理代、購入代金、学校の機材の購入代金や小規模農業・食糧生産業に従事する女性の利益増強の補助に充てられる。
そのほか実際的な機能として組合員同志が締結する契約やオートバイ契約の証人となり、またその契約の写しをとっておくことがある。一般的に運転手たちはフランス語の読み書きができないため、自らがオートバイ所有者との間で締結する契約の内容については承知していない。所有者たちはこの状況を利用して、時に契約で定められているより長時間にわたり運転手たちを働かせたりする。組合はこのような形の劣悪な慣行と闘うために、今までにすでに200に及ぶ契約に立ち会ってきている。
またこのほかHIV/エイズや他のセックスを媒介に伝染する病気について教育目的の会合やイベントが毎年開催されるし、道路での安全に関して訓練・広報活動が行われる。組合の基底には連帯があり組合員に対し特に死亡、病気、争議、配転に際して実際的な支援が与えられることでこの連帯が示される。組合はまたNGOも含む民間からのオートバイ購入に際しても助力する。
▲ ページトップへ
女性と収入増加活動

一般にベニンには女性のオートバイ・タクシー運転手は少なく、労働組合員に至ってはもっと少ない。中央執行役員に女性一人を抱えるシナゼブは例外といえる。組合の1,000人の組合員のうち15人の女性組合員がいる。彼女たちのほとんどはオートバイを持っており、小規模で未登録であるが自らの会社を持っている。
中央執行役員の女性は組合の女性担当役員であり、主としてジェンダーの問題に関する訓練や女性部の問題を扱う。彼女は全国的レベルのNGOの力を借りて近頃訓練活動を開始したが、そこには5人組合員が参加している。そのほかにも会計と収入増加活動に関する訓練計画を立ち上げており、目下これらに対する資金援助を待っているところである。
組合が直面する財政的な問題の規模が大きいので指導者たちは利益を上げるための代替法を模索している。たとえば家庭から出る廃棄物の収集もそのひとつだが、この問題は市当局にとって頭痛の種であり廃棄物の量が多いコトノーでは特にそれがいえる。こうした状況に鑑み、シナゼブは月当たり1家庭につき1,000フランスCFAフラン(2米ドル)の対価で収集を行うサービスを提案しているところである。
シナゼブはさらにまた女性の生活協同組合を作りキャッサバの粉をつくるため根と塊茎を加工している。この生協はダッサで2004年12月以来稼動してきている。
▲ ページトップへ
警察との協力

オートバイ・タクシーの商売ではインフォーマルの運輸業が被る諸問題に対処しなければならない。最大の問題は盗難、殺人、道路上の事故であり、その結果オートバイが失われることもある。
警察は訴えを聞くと組合にその件を委ねる。組合には運転手とオートバイの所有者との間で何がしかの決着を図ることが期待されている。道路事故の場合、組合は運転手に対し彼が組合費を滞納していない限り、一定の金を支払い診療代やオートバイの修理代を賄うのを支援する。
▲ ページトップへ
障害と挑戦

組合運営を組合員による分担金支払いにのみ頼っているため、最大の問題は財政問題である。当局は時にシナゼブと交渉することを拒否するがそれは産別組合としての基本的な能力に欠けていることに起因する。組合はまたインフォーマル産業部門で働く労働者の権利と義務に関する法があちこちで無視されることや、組合員が利用できる社会福祉が不足している問題にも取り組まなければならない。
シナゼブは今生命保険会社との交渉を続けており、労働者が抱える諸問題に解決策を見出し、彼らがある日社会福祉制度のメリットを享受したうえで引退するという望みが実現するよう努力してきている。組合は疾病・死亡に対する保険給付との見返りに10年間毎日100フランスCFAフラン支払う仕組みについて提案している。
シナゼブ自身にはベニンの労働法を変える力はない。そのため他の組合に働きかけつつ、例えば政府に圧力をかけ年間の助成を得ようとしている。公認された産業部門ではこの助成は既に与えられており、毎年およそ40万米ドル相当の助成がある。
シナゼブが作り上げた財政・信用組合などの支援制度は中間部門の好例である。組合はこの部門で行われつつある制度が当局により承認され法的に認められることを望んでいる。
▲ ページトップへ
インフォーマル産業における組合組織化に関するITFのグローバル調査プロジェクトで取り上げられた4件の組合事例研究のひとつを要約したものである。
モウサ・ギビゲイはベニンの地域社会研究所(LARES)の研究員である。
ベニンにおけるインフォーマル産業部門の雇用状況

航空部門

ベニンには国際級の空港が1箇所ある。正規雇用の公務員(民間及び軍の)に加え関連業務のためインフォーマル部門に251人が雇用されている。主に到着したばかりの外国人客のためのハイヤー運転手や主として女性が従事する小規模な屋外食料品店、手荷物運搬人などのサービス業である。
公務員は全国航空産業労組に入っているが、インフォーマル部門で働く労働者のほとんどは組合に所属していない。

海員及び河川の運輸労働者

コトノーは西アフリカ地域における最もダイナミックな港のひとつである。同港はおよそ3,509人の労働者が働いており、ラゴス(ナイジェリア)、テマ(ガーナ)、アビジャン(コートジボワール)、ダカールについで5番目に大きな港である。
港の利用と管理はいくつかの大手官庁が担っている。ほかに海貨業者、港湾業者、ポインター、仲介業者、クーリエ業者、荷受人、その他各種輸送業者が働いているが、彼らは未登録で業務を行っている。
河川運輸はそれほど発達してはおらず、主にノクエ湖中心に行われている。湖周辺で生活する人とコトノーの国際市場とをつなぐ商売を成り立たせている。これらの商売の担い手は主として女性であるが、その正確な人数を掴むことは至難の業である。彼らはシャトルサービスを提供するボートの持ち主である。
港湾労働者とポインターと違い、これらの労働者に組合はない。ただし彼らの組合は政治的に支配され、あまり活発とはいえない。

鉄道

鉄道は438キロ長であり、コトノーとパラコーを結んでいる。多国籍の鉄道で(ベニン、ニジェール)、年間の貨物輸送能力は60万トンである。
鉄道の開発と共にあらゆるサービス業が出現することとなった。仕出し業、民芸品、宝石、伝統的薬品売りなどである。これらサービスは列車の乗客や駅の乗客に提供されるものである。
鉄道が建設されたとき、現在も運航されている唯一の車線であるコトノー・パラコー路線に沿っておよそ25箇所の駅が作られた。周辺の村々のほとんど全ての女性たちがこれらの駅でインフォーマルビジネスに携わるようになった
鉄道労働者自身が推定したところでは5,000〜10,000人がこれらの仕事についている。これら労働者には産別組合など全くない。しかし彼らには協会の形をとった社会的性格を有する貯金・信用組合(トンチン年金)があり、組合長が組織のルールが守られているかを監視し、また書記が組織の書類を扱っているし、会計係もいる。
この部門の常任の職員は二つの競合しあう国民から選ばれるので、この組織は決して強い団結力をもつことはない。産別組合の一つかもしれないが、主として社会的な問題のせいでほとんど力はない。

路面交通

乗客と貨物を運ぶ主な手段は陸路である。政府運輸省の数字によれば、過去10年間の間に、アスファルトの道路では8〜9%の輸送増加があり、アスファルト舗装されていない道路では5〜6%の増加があった。全国の道路網は全長3,425キロあり、そのうち35%がアスファルト舗装されている。この部門には貨物輸送と乗客輸送があるが、いずれも多くがインフォーマルとなっている。
▲ ページトップへ
ゼムコンフォートの計画

キリスト教預金信用組合(CCEC)とオートバイ・タクシー運転手グループとの連携でシナゼブはゼム・コンフォートと称する協会を作っている。主な目的はゼム会員の労働条件を改善しかつ利益のある他の活動に向けて組合員を訓練することにある。活動は次の二つの要素からなる。

健康問題
オートバイ・タクシー運転手は毎月25,000フランスCFAフランを支払うことの見返りに、低い料金で彼らと妻子の健康管理の必要性を満たす医師や看護士のサービスを受けることができる。
小規模金融
ゼム会員が開発パートナーと寄付提供者からの財政的支援を受けられるよう保証基金を設置しようというのがその基本的考え方である。基金は来年中に設立されると見込まれる。その翌年には仕事を変えたがっているゼム会員に対するプロジェクト策定が行われる予定である。

オートバイ・タクシー運転手は毎日最低100フランスCFAフランを負担するか、毎週最低500フランスCFAフランを負担することが求められている。
ゼム基金はゼム会員運転手協会の管理評議会会長とCCEC会長の管理下にある市中銀行に預金されている。この基金に対して銀行は金利を支払うが、会員に対しては基金設立後一年経てば、預金証書が発行される。金利の支払いはこの証書を保持する者に対して各会計年度末に行われる。
▲ ページトップへ
 
 
INDEX
承認されざるものを代表して
インフォーマル運輸産業における状況
解体の極限
船舶解体業において進められる人命を守る取り組みについて
全ての女性に勝利を
組合が女性の問題に真剣に取り組むべき理由とは
ドイツ鉄道の将来は保障された
ストレスを抱えながら
民間航空産業労働者の疲労問題
権利を求める闘い、大前進
インテグレーター企業の組織化について
国際運転手の抱える問題
国際運転手救済の新たな動き
待ち望まれること
レバノンの港の新たな出発のために
オルグのこつを伝授
オーストラリアのある組織化担当の活動
一般
ニュース
コメント
 共にジェンダーの壁を越えよう
読者の声
産別組合の女性たち
勤労生活
英国の40トントラック運転手
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.