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グローバルユニオン

2007年1〜3月 第26号
■解体の極限
 
解体の極限

アジアの船舶解体業はきつく、きたなく、死に至る危険性もある職業であるとはいえ、何万人いや何十万人の人々にとっては手に入る唯一の仕事である。サム・ドーソンはさらに多くの人命が失われてしまわないうちにこの業界を浄化しようとする試みについて報告する。

三人の労働者がロンドンに出向き、国際海事機関(IMO)に対してアジアの船舶解体業の実態を訴えたが、その際一行は彼らが代表する何万人もの仲間が毎日直面している劣悪でしばしば死にさえいたる労働環境について証拠を携えていった。使用者側の隠蔽工作にもかかわらず、代表団―船舶解体作業員二人と産別労組の書記―は仕事は必要だとしつつも、そのために犠牲を払うつもりはないことをビデオフィルムや写真で示したのである。
ITFとIMF(国際金属労働組合連盟)の支援で彼らは10月にロンドンに赴き、人命を救うためにもこの産業での改革のスピードを加速させるようIMOと英国政府に対し訴えた。国際組織の支援のおかげで、かれらは密かに撮影したビデオフィルムを聞き手や国際メディアに公表することが出来た。そこには裸足の14歳の少年が想像しうる限り最も原始的な状況の中で、マスクも手袋も作業着もつけずに素手でくずれる何層ものアスベストを取り外す様子が写っていた。
発表の直前一行は、ほとんど無規制の産業内で生じた、1年に何百人という怪我、病気、環境悪化の結果亡くなった人々の冥福を祈ってテームズ川へ花束を投げ入れた。この儀式はIMOの建物のちょうど反対岸で行われたが、建物内では船舶のリサイクルに関する規制の国際合意について協議が進行中であった。しかし規制の採択は2009年まで見込めず、それが適切に実施されるのは良くて2015年になる。
船舶解体作業に携わる作業員は、世界で最も危険で不潔で大部分規制されていない産業に携わり、船舶をリサイクルする作業の中で、何千人もが死亡したり、怪我をしたり、病気になったりする。古い船舶の95%までがバングラデシュ、インド、中国、パキスタン、トルコで解体されリサイクルされている。最も驚くべき状況では1日当たり一ドルの稼ぎにもならないというのに、船舶解体作業員は火事、爆発、高所からの落下、アスベスト、重金属、PVCへの暴露などの危険に曝されている。
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進むのはただ作業のみ

代表の一員でムンバイ港湾信用・一般労働組合の書記であるビディアダール・レーンはIMO加盟国に対し、明快な基準を定めた拘束力のある一連の規制を作り上げ、船舶解体作業員の命を即刻守るよう呼びかけた。「人々は作業用めがねもヘルメットもマスクも安全長靴ももっていない。多くの人々はどんな種類のものであってもそもそも長靴なんか持っていない。仕事は必要だ。しかし安全な仕事の確保に妥協があってはならない。私は船舶をアジアに送ってくる先進国に対してそれなりの責任をとり、人命を救うよう訴える」と彼は話す。
IMFのマルチェロ・マレンタッキ書記長は次のように述べる;「多くの国では、船舶解体業の実態がスキャンダルに近いことなど皆知っている。しかし産業を閉鎖することが問題の解決ではない。そんなことをしたらこの産業を必要とする他に職が無い何万人もの人々がいるという事実を無視する結果になる。真の解決は改革を進め、訓練し、支援することにある」。
ITFのデビッド・コックロフト書記長は次のようにコメントする;「このひどい問題に取り組んでいるIMOを我々全てが支援している。しかし10年は長すぎる。この業界で働く多くの労働者は男性、女性、子供であろうとそんなに長くは生きながらえることは出来ない。おおよそ400隻と見積もられるEU域内国籍船だけでも、リサイクルには2010年までかかる。問題解決を遅らせることは選択肢にはならない」。
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奴隷状態に近い状況のスナップ写真

ロンドンでのスピーチの結果、代表団は彼らや他の国にいるその仲間の直面している辛い状況について生々しい、時に驚くべき状況を描き出すことに成功した。深い崩れ落ちそうな穴の中を掘り起こしている人々の写真を指し示しながらビディアダール・レーンは「他に仕事がないと人々がやることはこんなことなのです。解体作業中には見過ごされた微細なスクラップのかけら−金属の鋲や破片を探そうと穴掘りを行っているのです。売って1ドル稼ぐのに十分な量を集めるには3日はかかります。ただし地元マフィアがこの新たな収入源に気がつき、収入の半額をよこせと言わない限りはですがね」と話す。
彼は組合が認識し、継続的に闘ってきた状況について説明する。ムンバイとアーランで組合を作ろうとしたときには船舶解体業には66,000人が雇用されていた。「組合活動を始めてみるとさまざまな問題があることに気付いた。政府の無関心、マフィアのあらゆる場面での関与。当初は飲み水さえなかった。そこでその提供を始めたが、水がそこに労働者の権利としてあってもそれを飲むにはマフィアに対して金を払う必要が何箇所かであった。緊急に我々が取り組むことのできる優先事項としては他に、怪我を防ぐための安全情報の提供と怪我の際の支援だった。セントジョーンズ・アンビュランス(英国の救急関係チャリティー)の救急車と赤十字の助けを得て何がしかの救急支援と健康安全の訓練を施すことができた。
労働者たちが窮状をIMOに訴えた後、英国政府国際開発庁長官ヒラリー・ベンとの協議が行われたが、これを終えたレーンはIMO並びに英国政府と話ができたことは両方とも重要な成果があったと話している。「IMOに労働者の命を救ってほしいと訴えた上、さらにヒラリー・ベンと話し合いがもてたことは大変建設的だった。今回のロンドン訪問では話に耳を傾けてもらうことに成功した。」
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目下の実情と変革への前進

IMFは66,000人のインド人船舶解体業者のうち15%がアスベストの暴露の影響を受けていると推定している。アーランで行われた調査によればそこで働く6万人のほとんどが毎日1米ドル以下の稼ぎしか得られない。
   
グローバルな船舶解体産業における死亡、怪我、職業病の発生について、正確な数字は無い。しかし国際労働機関(ILO)により同産業は最も危険の多い職業の一つに指定されている。
   
インド、グジュラートの産業安全健康局によれば、アーランの船舶解体業における過去10年間(1995〜2005)の死亡事故データでは死亡事故の割合は年間1,000人に対し2人である一方、インド全体の数字と比較した場合、最も危険の多い分野と見なされている鉱業部門でも年間1,000人に対し0.34人に過ぎない。
   
船舶の中に使われている有害物質や廃棄物にはアスベスト、有害重金属、内容物では鉛、水銀、カドミウム、乾電池、照明用液体、PCBおよび圧縮ガスなどがある。そのほか、作業員は火事、爆発、高所からの落下、密閉された場所での酸素不足、個人用防護機器の不足といった別の危険にも直面する。
   
IMOの海洋環境保護委員会では安全でかつ環境にとって健全な「船舶リサイクル」に関して拘束力のあるグローバルな協定の枠組み作りを交渉中である。
   
海運産業ではもう何年かにわたり、リサイクルする船舶の最低基準を作る必要性が認識されてきているし、船舶解体現場の劣悪な労働環境についても十分記録が残されてきた。船舶を解体現場に持ってくるまでのブローカーの複雑な仕組みも現場労働者にかかわるさまざまな関係者たちの責任体制も対立の多いものとなっている。しかしこの10年で進展が見られるようになってきた。
   
ILOへの働きかけに関してITFはIMFを支援してきた。ILOは船舶解体における健康と安全のガイドラインをアジア諸国とトルコに関して作成している。
   
ITFはさらにまた海運産業フォーラムで船舶のリサイクルに関して緊密な連携をとってきており、有害物質を特定するグリーン・パスポートの概念を導入して解体場に運ばれる前に適用される船舶に関する船主と乗組員向けガイドラインを策定している。
   
IMOの2005年総会はリサイクルのガイドラインと船舶リサイクルに関し法的拘束力を有する新たな国際的取り決めを求める決議A.981(24)を採択した。その上でILOとベーゼル条約事務局に三者作業グループを設置した。この新たな取り決めでは船舶解体現場における健康と安全部会が設置されることが計画されており、2009年の採択を見込んでいる。なお批准は2015年までかかるだろうとされている。
   
ITFとIMFはIMOの作業を支援しており、ILOとの全面的協力関係により作業が行われている場合は特に強い支援を行っている。また法的拘束力のある国際的取り決めの策定を歓迎している。しかし次の10年間はこの取り組みは現場で働く労働者にとって何ら助けにならないこと、また業界からも健康安全問題に対する緊急な取り組みが現状以上にはないことに懸念を抱いている。
   
不幸なことに、ある環境グループの行動が解体作業場の閉鎖に繋がり、その結果必要度の高いとされている多くの仕事が失われることとなった。労働者とその組合が要求として掲げているのはまともな仕事というもっと基本的なことであり、安全な作業行為とか防護服、有毒物質から守る安全措置といったものである。
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詳細はIMFのウェブサイトへwww.imfmetal.org/shipbreaking
 
 
INDEX
承認されざるものを代表して
インフォーマル運輸産業における状況
解体の極限
船舶解体業において進められる人命を守る取り組みについて
全ての女性に勝利を
組合が女性の問題に真剣に取り組むべき理由とは
ドイツ鉄道の将来は保障された
ストレスを抱えながら
民間航空産業労働者の疲労問題
権利を求める闘い、大前進
インテグレーター企業の組織化について
国際運転手の抱える問題
国際運転手救済の新たな動き
待ち望まれること
レバノンの港の新たな出発のために
オルグのこつを伝授
オーストラリアのある組織化担当の活動
一般
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