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グローバルユニオン

2007年1〜3月 第26号
■ストレスを抱えながら
 
ストレスを抱えながら

ITFが新たに取り組む大規模な調査を通じて、世界中の航空労働者が経験しているストレスと疲労の問題に対する認識をいかに高めていくか。インゴ・マロスキーが解説する。

2005年にロンドンで開催されたITF航空経済会議に参加した労働組合は、組合員の最大の関心は、つまるところ、1つか2つの問題に帰着するという結論に達した。すなわち、激化する国際競争、合併、アライアンス形成、コスト効率戦略など、自由化がもたらした様々な影響の中でも、特に精神的ストレスと疲労こそ、組合員が抱える最大の問題であるとの結論が出され、ITFに精神的ストレスと疲労の問題に優先的に取り組むよう要請した。
客室乗務員の場合、ストレスと疲労は異なる時間帯を頻繁に行き来することで悪化する。地上勤務者(グランドスタッフ)や管制官の場合は、便数が増えることで、シフトが24時間制になる。グランドスタッフの場合、文字通り、取り扱う荷物の量が過剰に増えてしまう。航空管制官の場合は、安全確保という重要な任務の一環として、監視する航空機の数が増えることになる。
現在、ITFは、これら3種の非常に異なる職種の労働者が感じる精神的ストレスと疲労の原因に関して調査活動を実施することに力を注いでいる。
専門の研究者と相談し、世界中の優れた大学とも協力して、ITFが間もなくアンケートを作成・配信し、グランドスタッフ、管制官、客室乗務員の代表者を集めた座談会を開催したり、様々なITF行事の合間にインタビューを実施したりする予定だ。第1回目のワークショップは2006年5月にマルタで行われた。
既にたくさんの組合が業界の動向に関する調査活動に参加しているが、ITFの調査からグローバルキャンペーンの基礎となる有益なデータを引き出すためには、全ての加盟組合が調査に参加し、もてる資源を結集することが不可欠だ。
調査活動は12ヵ月間実施する予定で、集められた情報やそれに基づく勧告は、ITFの国際会議で発表されたり、回状の形で加盟組合に提供されたりすることになる。
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キャンペーンを計画する

調査結果をもとに、キャンペーンを計画していくことになるが、このキャンペーンは加盟組合が力を合わせて推進し、行動日や行動週間、それに関連する諸活動などの形をとることになろう。
既に多くの組合がストレスと疲労の問題に国内で取り組んでいる。ITFの新しいキャンペーンは加盟組合が国内で展開しているキャンペーンを支援し、それをより多くの国に広げていくことを目的としている。また、世界的なキャンペーンを実施することで、各国のキャンペーンがよりよいものになるといった効果も期待している。
ITFは、ストレスと疲労の問題は一部の国や地域に特有のものではないことを示そうとしている。ストレスと疲労は、あらゆる国、あらゆる地域で見られ、しかるべき最低基準の設立などの解決策が不可欠な問題である。
一部職種に関して最長勤務時間を規制している安全規制当局などを対象にキャンペーンを実施していくことになる。また、各国政府には、法の抜け穴を塞ぎ、法の施行と司法機関により、時限法の実施を確実に監視することと、違反があった場合に効果的な対応を取ることを求めていく。
航空会社、グランドハンドリング業者、空港運営会社、管制サービス提供業者に対しても、企業慣行と行動を改善するためのロビー活動を行う。最後に、最も重要な点であるが、一般市民に対しても意識向上キャンペーンを展開していく。結局のところ、労働者の疲労に起因する事故の犠牲者となる可能性が高いのは、乗客である一般市民だからだ。
各国政府や航空会社に疲労のリスクを最小限に抑えるための防御政策を策定させることができれば、キャンペーンは成功したと言えるだろう。つまり、関係する労働者に疲労を管理し、防ぐための訓練を受けさせること、疲労が原因の事故に起因する心的外傷に苦しむ労働者への事故後の支援などを確立することが必要である。また、労働者をストレスや疲労から守るための規則に違反する企業や個人に対しては、制裁が取れるようにするしくみも必要になろう。
このキャンペーンを実施することで、航空労働者のストレスや疲労の問題に対する社会的な認識レベルが高まり、乗客から絶えず支持を受けるようにしなければならない。
航空労働者全般に関するキャンペーンの成功の可能性については、2000年に実施した「エアレイジ(迷惑行為防止)キャンペーン」によって実証されている。エアレイジ・キャンペーンの結果、手に負えない乗客の危険から労働者を守るための手段を主要航空規制者に講じさせることに成功した。また、ITF路面運輸部会が無規制労働に反対して実施し、今年で10周年を迎える「疲労は命取り」キャンペーンの経験を生かすこともできる。
新しいITFキャンペーンを通じ、国際民間航空機関(ICAO)、国際航空運送協会(IATA)、国際空港協議会(ACI)、民間航空ナビゲーションサービス組織(CANSO)、航空各社、空港管理当局、そしてもちろんITF加盟組合の合意のもと、グローバルレベル、各国レベルでの政策の転換を導くことができればと願っている。
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インゴ・マロスキーはITFの民間航空部長。
客室乗務員

仕事中の居眠り
ある客室乗務員の忠告によると、休息時間を最短に押え、通常の業務を最大日数続けた場合、保安関連の業務の遂行レベルが許容できるレベルを下回って悪化する。この乗務員は、8時間の最短休息時間と10〜14時間の勤務を組み合わせるという現行のガイドラインのもとでは安全は確保できないと考えている。彼女は以前、航空機がゲートの内外をタクシングしている際中に補助いすの上で居眠りしてしまったことがあるという。
「離陸時のドアモードの変更や非常口付近の乗客に対する安全指導などの簡単な作業すら忘れてしまうことがある」あまりにも疲れ果てていたため、保安上必要とされている乗客の不審な行動の監視などできなかったという。

休息時間規則の違反
救急医療の発生により休息時間が乱れると、客室乗務員の休息時間はさらに短くなる。また到着地変更や到着地での降機の遅れなどによっても休息時間は乱れる。
ある客室乗務員はシフト管理課に勤務時間の違法性について電話で訴えた際、次のフライトについてはホテルから再度連絡するように言われた。ホテルに到着後、シフト管理課に電話をし、次の勤務スケジュールを告げられた。あまりにも疲れていたために、法定休息時間を与えられずにいたことに気づかなかったと述べる。本来は14時間30分勤務した場合、最低でも10時間の休息時間を取れるはずだが、実際は16時間連続勤務していた。実情は、書類上は8時間27分の休息を取ったことになっており、5時間の睡眠も含まれていたが、依然としてこれも違法であることには、翌日の12時間のフライトに勤務するまで気づかなかったという。36時間の行路のうち、28時間勤務し、しかも夜行便だった。

乗客を管理できなくなって
ある客室乗務員は、旅客機が進路を変えて駐機している間に、乗客を管理できなくなったと話している。この航空機の飛行中には、病人が発生したため、手当てが必要になったり、乗客がフラッシュライトを盗もうとする事件が発生したり、天候が悪化したり、食事が足りなくなるなどの不備が発生したりしていた。乗務員は17時間勤務を余儀なくされ、さらに夜行便であった。

9日間連続勤務の後、不安に駆られ
ある客室乗務員は、わずか6分の差で合法ではあったものの、カレンダー通りの休日も与えられず9日間連続勤務したと報告する。彼女はその後、飛ぶのが恐くなったと言っている。勤務時間は違法ではないものの、彼女は極度の疲れから、機内における任務を遂行する能力に支障が出たと訴えている
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上記のケーススタディは、米航空宇宙局(NASA)エイムズリサーチセンター(カリフォルニア州)が作成した報告書「客室乗務員の疲労」からの抜粋
荷物ハンドラー

ブレンドン・ゴールドが荷物ハンドラーの感じるプレッシャーを語る
ハンドラーたちは自分たちの責任を明確に承知している。ヒースロー空港のある職場委員の言葉がそれをよく物語っている。「ニューヨークに到着した後、荷物だけバーレーンに行ってしまったと知らされることほど不愉快なことはない。自分たちの仕事をわきまえているし、もてる能力を尽くして努力している」
しかし、航空会社同士の競争の激化から、ターンアラウンドタイムの短縮傾向がますます高まり、荷物ハンドラーを含む一般の地上勤務労働者は、作業スピードを上げつつ、かつこれまで以上に質の高い作業をしなければならなくなる。短時間に合計数百キロもの荷物を扱うことから来る肉体的負担は大きい。組合員は、背中、首、腕に怪我を負うリスクに常にさらされている。ハンドラーの負傷率はターンアラウンドタイムの短縮率の上昇に比例して上昇する。「ガトウィック憲章」設立の立役者の一人である、ある組合員は端的にこう語る。「小さめの象を一人で担がなければならない感じだ。健康には自信があるが、求められているような短期間では不可能だ」8月にヒースロー空港で発生した大混乱をきっかけに、システム全体が精査されるようになった。行方不明になる荷物が生じるということは、ハンドラーたちが最善の努力をしてもシステムが機能しないことがあるということを示している。短期間に大量のスーツケースを移動させるには、計画、チームワーク、協力が不可欠だ。運輸一般労組(TGWU)の組合員は、任務を遂行する心構えは万端だが、あるガトウィック空港のハンドラーはこう述べている。「航空会社が荷物を積めば積むほど利益が跳ね上がるという考え方を止めれば、システムも意味のあるものになるだろう。乗客から休暇が台無しになったとか、出張で散々な目に遭ったと責められたくはないからね。しかし、それが現実であり、それがハンドラーが負っているリスクなんだ」
TGWUは、8月にガトウィック空港でのより安全な労働慣行の確立を目指し、9項目から成るガトウィック憲章を作成したが、その項目の一つとして、最短ターンアラウンドと荷物一つにつき23キロの重量制限の設定を求めている。このキャンペーンの詳細は、www.tgwu.org.ukで閲覧できる。
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ブレンドン・ゴールドは英国運輸一般労組(TGWU)の民間航空部全国書記長
地上勤務労働者

不安と危険:数々の証言
だいたい1時間に航空機1機を扱っていて、スケジュールはめまぐるしい。ベルトコンベヤーから荷物を引き上げなければならないことも多く、合計すると1日に航空機1機分の荷物を引き上げているといっても過言ではない。私のように助けを求めたり、ベルトコンベヤーを止めて荷物を取っている労働者は他にいない。とても重い荷持つが多く、しかも動いているコンベアが相手だ。
A空港労働者
会社は労働者の安全衛生がどう保護されているかを説明してくれない。情報提供を求めても、回答は決してもらえない。私は背中を痛めてしまった。柵などもないため、カーペットの継ぎ目にあたるだけでスーツケースはベルトコンベヤーから落ちてしまう。その度に落ちたスーツケースを拾って、コンベヤーにも戻さなければならない。
勤務中に座る椅子もきちんとした背もたれがついていないため、快適なものではない。空港の片側の室温は問題ないが、ドアの近くは非常に寒い。騒音も問題。搭乗券発券機の音もうるさく、周りには常に騒音がある。また、空港一帯の照明が明るすぎる。
安全衛生委員会は存在するが、効果的に機能していない。今年始め、一人の労働者が滑走路で後退してきたハイリフトローダーに轢かれて死亡した。周囲がうるさかったため、この労働者はバックしてくるハイリフトローダーの音に気づかなかったのだ。皆がこの事件にもっと関心を寄せるべきだった。事件が起きても何も変わっていない。
C空港労働者
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上述の証言は、国際労働期間(ILO)発行の「地上サービス:空港チェックインカウンター労働者の職業安全衛生」からの抜粋
航空管制官

欧州運輸労連(ETF)の航空管制サービス顧問、ジョー・マギーが航空管制官のストレスについて述べる。
この10年で空の交通量は2倍に増えた。管制官のほとんどが、今よりも交通量がずっと少なかった70年代や80年代に編み出されたシフトに従って勤務している。昔は遅れが朝発生しても、管制官は数時間のうちに遅れを取り戻すことができた。しかし、今日、最も交通量の多い空港では、ほぼ1日中問題がつきない。夕方のピークが始まるまでに朝発生した問題が解決していない場合もある。同時に、航空ナビゲーションサービスの提供事業者もコストを削減しているため、従業員は減らされ、残業時間が増える。しかも、ほとんどがサービス残業だ。
エンジニアリング部門の場合、従業員数の減少により、会社に残った従業員への圧力が高まっている。多くの国で、エンジニアは事故を防ぐための整備をするというよりは、修理が必要な場合に呼ばれて作業をすることが多い。コスト削減策の一環として、残業代を支払わず、代わりに残業時間分の代休を与える使用者が増えているが、こうした慣行は労働者の感じるプレッシャーを高めるばかりだ。
欧州の航空会社は、スケジュールの遅れを防ぐための圧力を大幅に高めている。従業員が機材の故障に関して頻繁に報告をしなければならない国が多い。ほんの少しの故障でも遅れにつながり、従業員のプレシャーを高めることになる。
2004年6月、英国でコンピュータシステムが2時間故障したが、航空会社によると、その波及的影響は数日間続いたという。ロジスティックスでは非常に詳細な調整が必要だ。貨物機は次にエディンバラへ行く予定で、パイロットの次の予定地はマドリッド、客室乗務員はオスロへ向かうといった具合である。したがって、一つの遅れから生じる波及効果により、その後のあらゆるフライトが遅れることになる。かくして、管制官はとてつもないプレッシャーを感じることになる。
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INDEX
承認されざるものを代表して
インフォーマル運輸産業における状況
解体の極限
船舶解体業において進められる人命を守る取り組みについて
全ての女性に勝利を
組合が女性の問題に真剣に取り組むべき理由とは
ドイツ鉄道の将来は保障された
ストレスを抱えながら
民間航空産業労働者の疲労問題
権利を求める闘い、大前進
インテグレーター企業の組織化について
国際運転手の抱える問題
国際運転手救済の新たな動き
待ち望まれること
レバノンの港の新たな出発のために
オルグのこつを伝授
オーストラリアのある組織化担当の活動
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