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2008年4〜6月 第31号 |
■メキシコの反労組の動き |
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メキシコの反労組の動き
中南米諸国のILO条約違反は、決して珍しいことではない。条約を批准していても、政府や使用者が障害を作り出したり、抜け道をさぐったりすることは多々ある。その一例が、メキシコ航空の従業員の扱いである。ピラー・マンリク・メデリンが報告する。
ILO第98号条約(団結権および団体交渉権)が未批准で、第87号条約(結社の自由)の履行にも消極的なメキシコ政府は、民間航空労働者の結社の自由と団体交渉権の一連の侵害により、非難される立場に立たされている。
2005年、長年にわたって国有企業であったメキシコ航空が民営化され、秘密裏に著名なメキシコ人実業家に買収された。
この民営化のプロセスは、ITF加盟のメキシコ航空客室乗務員組合(ASSA)に代表される労働者にとって、新たな試練となっている。ASSAは、政府の後ろ盾を得た使用者からの攻撃に直面せざるを得なくなっている。政府は、明らかに労働者と、その労働条件に敵意を持っている。
民営化されたメキシコ航空の新経営陣の目的は、全ての労働条件を大幅に変更し、組合が何年もかけて勝ち取ってきた諸給付を減らすことにある。経営側は財政危機を主張し、ASSAに対する「経済的性格の集団紛争」を連邦調停仲裁委員会(JFCyA)に申し立てたところ、JFCyAは露骨に会社寄りの姿勢をとり、ASSAの団体協約に含まれている労働条件の改悪を命じた。 |
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権利の侵害
JFCyAの決定は、ILO第87号条約だけでなく、メキシコの連邦労働法(LFT)の最も基本的な権利をも侵害するものだ、とASSAは主張している。新しい勤務表では、勤務期間が拡大され、休日は減らされ、安全性が違法に阻害されている。そればかりか、JFCyAが命じた雇用契約の変更に伴い、新入社員の給与は、50%近くもカットされた。
JFCyAは違法行為に関わっただけでなく、同時に客室乗務員の労働条件を激しく攻撃した。連邦労働法第19章「経済的性格の集団紛争」には、「申立者は要求を明確に示さなければならない」と書かれているにもかかわらず、会社側はJFCyAに要求をはっきりと示すことはせず、むしろ曖昧かつ否定的な方法で要求をでっち上げようとしている、とASSAは主張している。
新しい条件は2007年8月29日から発効したが、ASSAは11月13日、裁判所による差し止め命令を確保した。現在は、最終判決を待っている段階である。 |
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闘い
ASSAは、会社だけでなく、政府をも相手とする闘いを強いられている。政府は、常に使用者寄りの立場をとってきた。この闘いが、メキシコの全ての労働者にもたらす影響は計り知れないため、ASSAは最高裁を含む裁判に提訴しなければならなくなっている。このまま状況が変わらなければ、使用者は「経済的性格の集団紛争」を行使して、政府を味方につけながら、団体協約の改悪を仕掛けてくるだろう。
われわれは巨大な政治的かつ経済的な利害関係者を相手にしているが、ASSAが組合員のために勝ち取ってきた労働条件を維持するためには、闘い続けるしかない。ここ3年間、連邦政府は「不平等の文化」をはびこらせてきたが、われわれは、航空会社が利益を上げ、労働者が雇用と労働条件を維持できる、「分かち合いの文化」を望んでいる。 |
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ピラー・マンリク・メデリンは、ASSAの労働部長。 |
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