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2008年4〜6月 第31号 |
■フランス鉄道労働者の闘争 |
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サルコジ改革に反旗を翻すフランス鉄道労働者の闘争
昨年末にフランスの交通システムを麻痺させた大規模ストの背景を、ヘンリー・ワシンが説明する。
2007年の大統領選でニコラス・サルコジ候補は、社会福祉制度を食い物にしている一部の“特権”産業の労働者は、やがていなくなるだろう、と語っていた。あらゆる種類の労働者−失業者、公務員、早期退職を選択した人、病気中の人−が、このカテゴリーに分類される。
サルコジ候補は、現代社会が直面している真の問題(社会の結束、環境、経済成長等)に立ち向かうことなく、大衆受けしやすい「分割支配」の伝統的手法で選挙運動を展開した。
マスコミにも頻繁に取り上げられたこの戦略は、早起きして働く勇気ある人々と、他の労働者を食い物にして暴利を貪っている人々との対決を想定していた。
“ベルルスコーニズム”の大爆発のなかで、サルコジは、「もっと働き、もっと稼ぐ」環境の整備、「財政の健全化」、「最低限のサービス保障」を公約に掲げた。これは、勤労をフランスの経済・社会の中心に据えるための3つの政策だ。そして、公共交通部門のスト権を制限し、社会運動の力を弱めることを、政府の優先課題の1つとした。
しかし、フランス国民は、すぐに現実に目を覚まされた。サルコジが打ち出した財政政策は、主に大規模地主に恩恵を与え、最富裕の2千世帯に14億ユーロをプレゼントするものだった。
2007年の夏に実施された、これらの最初の政策に続いて、同年9月18日、サルコジは社会福祉に関するコンセプトを発表し、政策実施の方向性を打ち出した。ここには、60歳で引退する権利への疑問、雇用契約で守られている権利への攻撃、医療費の被保険者負担、失業者に対する抑圧、民間の健康保険への依存、特別年金制度の改革等が盛り込まれていた。
これらの政策は、フランスの社会福祉制度への挑戦だった。労働組合は、すぐに政策の弊害を訴えた。
サルコジの特別年金制度改革の公約は、1993年および2003年の年金改革の論理的帰結といえるもので、鉄道労働者を真っ向から攻撃するこの改革は、労働者の防衛線を打ち破り、保守派が期待する労働者の「分断」を呼び起こそうとする戦略の一環だった。サルコジの狙いは明らかに、拠出年金制度を見直し、最低勤続年数を41年間に引き上げることだった。
ここには、自分たちのために立ち上がることを過去に示してきた公共部門の労働者に対する攻撃という、象徴的な要素が強く含まれていた。さらに、与党議員の中には、1995年にシラク政権が同様の社会福祉制度の改悪を断念した時の復讐を果したい、と考えている者もいた。
鉄道労働者を、「特権」が与えられた「裕福」で「わがまま」な存在であると位置づけ、世論の反感を煽ろうとする政府の戦略は明らかだった。
一方、これに対抗するフランス労働総同盟(CGT)の戦略は、4つの要素に基づいていた。
■企業体の中の高位のポストに食い込む
■労組の団結を強化する
■特別年金制度改悪の影響を被る他の企業体と協力し、行動を広げる
■利用者や国民に要求を伝え、支持を得る
2007年10月18日、最初のストが実施され、過去最多の鉄道労働者(職員の75%以上、管理職の半数以上)が参加した。
10月22日には労組の合同会議が開かれ、フランス国鉄(SNCF)の労働者を組織する8つの労連が交渉を要求する共同声明を発表した。
この共同声明と合同スト通告が出された直後、SNCFは自ら交渉を提案し、政府は最低勤続年数の引き下げを発表した。
しかし、政府とSNCFが、より幅広い交渉を行うことを拒否したため、11月13日の午後8時に再度、ストが実施された。
スト初日は職員の65%が動員され、その後も高いレベルの動員(30%)が続いた。
政府は当初の予定に反して、11月中旬になっても、改革の枠組みを明確に示す法令を出せずにいた。
ストの結束力や交渉の要求が邪魔をして、政府は鉄道労働者に対する世論を味方に付けることができなかった。
11月20日の火曜日、スト参加者の数が増えた。(前日の26%から30%に。)この日は、公務員のストが実施された日だった。
11月21日、第1回目の三者交渉が実施され、全ての要求項目を対象とする交渉プロセスが開始された。
この日、年金受給者を含む、全ての国鉄職員の年金にとって、プラスとなる措置を勝ち取った。
その後、SNCFから、FRET(貨物部門)の将来に関する交渉につく、との書簡を受け取った。
交渉を見守るためにストは中止されたが、労働者は交渉中も警戒を怠らなかった。
そして、労働省との協議の後、2週間以内に法令を出すという政府の宣戦布告ともいえる通告や、スト後の状況を考慮し、われわれの運動を評価する時期に来ている。
しかし、依然として、数多くの微妙な問題が、労使双方にのしかかっている。
SNCF経営陣が提唱するFRETの再編と貨物の自由化も、労働条件にマイナスの影響を及ぼし始めている。
われわれは、鉄道部門の社会保障を崩壊させようとする試みに対して、これまで以上に警戒していく必要がある。
現段階では、われわれの戦略は、いくつかの点において成功を収めている。強気を維持し、これから争点となる問題についても、要求を突き付けることができている。
われわれは引き続き、今の力を維持し、全ての罠や策略を回避するために、明快な考え方を持ち続けなければならない。戦闘的な行動と戦略が鉄道労働者に理解され、大いに感謝されたことにより、われわれの決意は固まった。
FRETと雇用、賃金を守るため、現在、行われている交渉に影響を及ぼすべく、1月22日から声を上げる。 |
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ヘンリー・ワシンは、CGT鉄道部門国際局の職員。 |
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