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2004年10〜12月 第17号 |
■今月のニュース |
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海運
ウクライナ人船員の未払賃金回収
ロシア船籍の「ユリー・ドルグルッキィ号」のウクライナ人乗組員はITFの介入のおかげで総額12万ドルの未払い賃金を取り戻した。
ITFインスペクターのヴァディム・モスチェンコが乗組員からの要請を受け、弁護士ともにクリミア半島のケルチ港で訪船したところ、乗組員は7ヵ月間の賃金を受け取っておらず、船主が2ヵ月前から飲料水と食糧の供給をストップしていることが分かった。
乗組員が船主を相手に訴訟を起こしたため、本船はケルチ港で拘束された。その後、ITF加盟のウクライナ海事運輸労組とロシア船員組合の支援を受け、ITFはウクライナ外務省と合意に達することができた。ユリー・ドルグルッキィ号の傭船主、ケルチ・ブリッジ社のステークホルダー(関係当事者)として交渉に加わったロシア政府も問題解決に重要な役割を果たした。 |
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ISPSコード発効
海運労働者の権利保護で一定の成果
船舶および港湾施設の保安措置を当局に義務付ける国際規約、「船舶および港湾施設の国際保安(ISPS)コード」が7月1日に発効した。
これにより、許可されていない船舶や港湾施設へのアクセスの禁止や、船舶保安計画の策定、船舶保安職員の配置などが当局に義務付けられる。
ISPSコードがIMOで議論されたとき、ITFは船員の人権および労働組合権の保護条項を提案した。その結果、海事労働者の基本的権利・自由(港湾労働者の労働組合権を含む)は保護されなければならないとする、明確な規定が盛り込まれた。
港湾保安計画にも、船員福利団体や労働組合の訪船の確保が求められている。港湾労組やITFインスペクターが港湾ターミナルへアクセスする際にもこの規定が適用される。
「海事保安強化の必要性は理解しているが、バランスのとれた措置が必要だ。また、海賊などの長年の懸案事項にも対処していく必要がある。新たな措置によって、既に超過ぎみの船員の業務量がさらに増えるようなことがあってはならない。船員の基本的権利・自由・尊厳を保護することも不可欠だ」とITFのジョン・ウィットロー船員部長は言う。
ITF加盟港湾労組も港湾保安という大義を支持し、ISPSコードの厳守を訴えている。と同時に、ISPSコードを口実に日雇い労働や船員荷役を導入してはならないと警告を発している。7月にシンガポールで開催されたITF港湾部会総会で採択された決議は、ISPSコードへの支持を表明するとともに、いくつかの懸念事項を指摘している。
組合が団体交渉で勝ち取った労働条件を改悪させるためにISPSコードが利用されたり、保安基準を満たさない日雇い労働者の使用につながったり、船員に荷役させるためにITFインスペクターや港湾労働者の船へのアクセスを禁じたりする可能性に警戒の声があがった。
空コンテナもしっかり検査しないと保安リスクになることも確認された。
「テロリストのターゲットとして港湾は魅力的な存在だ。港湾で働く人たちはテロ防止のために日夜全力を尽くしている。港湾保安は組合潰しや船員荷役の口実に使うにはあまりにも重要すぎる」とITFのケース・マーギス港湾部長は語った。
国際マリタイムデー
世界海事機関(IMO)は今年の国際マリタイムデー(9月30日)のテーマを海事保安に決めた。
この日、船員、使用者、船員組合が合同で政府に船員の上陸許可を要求する。また、米政府を中心に各国政府に対して、海の保安強化は協力によって実現できるのであり、船員を犯罪者扱いすることは問題解決につながらないと主張する。
「無実の船員が犯罪者扱いされているという事実に世界の海運界全体が懸念を募らせている。奇妙なことに、このような動きは、ISPSコードによって、海の保安における船員の果たす役割の重要性に対する認識が高まったのと同じタイミングで生じてきた。上陸許可は船員の心身の健康のためだけでなく、海の安全、海洋環境保護のためにも必要不可欠だ。米国の懸念は理解できる。しかし、ITFは米国に対し、船員の上陸を歓迎し、船員が保安面で新たな役割を担っている事実を歓迎する方が国のためになることを説得していく」とITFコックロフト書記長は述べた。 |
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インド港湾労働者職場復帰を勝ち取る
インド南部のチェンナイ港で発生した港湾労働者のストライキが6月5日に終結し、経営側は解雇された4名の組合指導者の復職を約束した。
チェンナイ・コンテナターミナル社(CCTL)で働くCCTL企業職員組合の組合員約300人は、賃金交渉の最中に組合の委員長など組合指導者4名が停職処分を受けたため、4人の復職を求め、5月末から10日間に及ぶストライキを実施していた。
ITFのマーギス港湾部会部長やオーストラリア海事組合(MUA)のクラムリン書記長は、CCTLを所有するP&Oの経営者に抗議文を送り、ITFは今回の紛争を「組合潰し」の事例と見なしていると訴えた。
6月初旬に韓国の釜山で開催されたアジア太平洋地域港湾労働者会議の参加者も、CCTL経営陣の行動を激しく非難した。 |
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船員を犯罪人扱いするな!
EU領海内の海洋汚染事故における重過失罪導入の動きに対して、ITFの欧州組織、欧州運輸労連(ETF)は、船員の犯罪人扱いにつながるとして、反対運動を強化している。
問題となっているEU指令案は、IMOのMARPOL条約とは別個のもので、6月中旬にルクセンブルクで開催されたEU閣僚会議で既に合意されている。この指令案が欧州議会で採択されると、個々の船員や船主は、海洋汚染事故の際、過失が認められれば、刑事訴追の対象となる。
「無責任な行為を擁護する気は全くないが、この指令により、海のプロである船員たちが“犯人扱い”されることを懸念している。船員を目指す若者たちの意欲をもくじくものだ。既に船長や航海士などが海難事故の“スケープゴート”にされる傾向があるが、この指令はその傾向をさらに悪化させるものだ」とETFのエドゥアルド・チャガス海運部長は述べた。 |
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