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2004年10〜12月 第17号
■客室乗務員にライセンスを
 
客室乗務員にライセンスを

ITF民間航空部会は12月に世界規模の統一行動日を設定し、政府、業界に客室乗務員のライセンス(免許/認可制度)の導入を求める。シェーン・エンライトがITFの取り組みについて説明する。

全ての客室乗務員が訓練を受けているが、ライセンス(免許)を持っているわけではない。フランス、オーストラリア、米国など、客室乗務員のライセンスが導入されている国もあるが、まだ少数に過ぎない。
ITFは数年前から客室乗務員を保安要員として認識させる運動を展開している。今日、業界内で保安への関心が高まり、機内の安全手続きが強化される中で、客室乗務員の保安要員としての役割を認識させることが一層重要になっているとITFは考えている。
そこで、ITF民間航空部会はITF全体の「安全・保安キャンペーン」の一環として、客室乗務員のライセンスを世界規模で導入させる運動を開始した。
国際民間航空機関(ICAO)にライセンスの国際基準を導入させるとともに、ライセンスの詳細は各国にまかせてしっかりと取り締まりを行ってもらう。併せて国ごとの免許の導入も呼びかる。これがわれわれの運動だ。
各国の要求をどのようにICAOに提出するかは各国の組合が決めればよい。しかしITFとしては、全ての加盟組合がITFのこの国際的な運動に加わり、ICAOにさらなる行動を促すように各国政府に働きかけてほしいと思っている。より具体的には、12月7日に設定されているITFの統一行動日(あるいはその近辺)に担当大臣や政府代表に陳情してほしい。
既に欧州を中心に、多くの組合が客室乗務員の免許制を求める国内運動を展開している。ITFの目的は加盟組合のこのような運動を支援し、客室乗務員のライセンスの問題に対する国際的な関心を高めることにある。
国際的な運動を展開することで、この問題が1ヵ国、あるいは数ヵ国に限られたものではなく、世界中の全ての国に関係することを示すことができる。問題の解決策としてICAOの新規則導入などを目指す場合には当然ながら国際的な圧力が必要となる。ゆえに、加盟組合は各国政府に要求する際、国際的なアプローチの必要性をぜひ強調してほしい。
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ターゲット・グループ
ICAO:国際民間航空機関(ICAO)は航空規制を担当する国際機関。3年に一度開催される総会で活動の優先順位が決まる。本稿執筆時点において、第35回総会がICAO本部(モントリオール)で開催されている。ICAOの基盤である国際民間航空条約(シカゴ条約)の付録15は、運航乗務員(パイロット)はICAOが定める基準・慣行に則って訓練を受けなければならないと定めている。この規定により、航空管制業務員の一部、パイロット、整備士、訓練センターには(当局の)認可が必要とされている。しかし、客室乗務員にその必要はない。そこでITFは客室乗務員にもライセンスを導入するよう、規則の改正を求めている。
各国政府:客室乗務員のライセンスを導入していない政府を対象に加盟組合が行動を起こす。また、ICAOの新規則導入を支持するよう、各国政府に働きかける。
安全当局:客室乗務員のライセンスを導入していない国の航空当局、運輸省に加盟組合がアプローチする。安全監督責任を担う国家当局は味方につけておく必要がある。
航空業界:業界はライセンスに伴う財政上の問題を指摘するが、ライセンス制(標準化を含む)が経済的にプラスであるとの意見もある。この意見を個々の航空会社に訴える。
メディア:放送局、新聞社は大きな味方となる。組合はメディアに問題を説明し、連絡先をしっかりと教えておこう。
世論:乗客の反応が成功のカギ。組合は空港に出向き、なぜ訓練だけでなく免許制が必要なのかを乗客にしっかりと理解してもらおう。
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安全文化の構築

客室乗務員は集中的な安全訓練を受けている。また、2001年の米同時テロ以降は保安要員としての行動が一層求められるようになった。この事実こそもっとしっかり認識されなければならない。たとえ訓練機関が規制されていたとしても、客室乗務員がライセンス制でなければ、個々の訓練内容に対する法的規制は及ばない。
ゆえに、ITFは機材、訓練センター・整備基地、乗務員の全てを認可制(ライセンス制)にすべきであると考える。客室乗務員が免許制でない限り、「安全の三角形」の最後の一辺(乗務員)はもろいままだ。
航空事故の生存率は上がっている。安全を守る任務を負っているのは客室乗務員だ。今日、フライトデッキ(操縦席)へのアクセスは完全に閉ざされているため、事故が発生した場合は客室乗務員が対応しなければならない。ライセンスが導入されている国の客室乗務員は、自分たちが保安要員として認識されていると感じており、実際に保安業務を遂行する際の彼(女)らの権威にもプラスの影響が及んでいると報告している。内外の規制当局、航空会社、乗客がこのような認識を持てば持つほど、客室乗務員の保安業務(事故や迷惑行為への対応を含む)はやり易くなる。
ライセンスが導入されれば訓練内容も充実するだろう。現在は航空会社の裁量が認められているため、保安上不可欠な訓練を省略したり、簡素化したりすることが可能だ。しかし、ライセンスが導入されれば全ての訓練が共通の基準で実施されることとなり、客室乗務員も航空会社の気まぐれに左右されることなく、同じレベルの訓練を受けられるようになる。そうなれば一貫性、一般性も確保される。
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運用方法

それでは、客室乗務員免許の国際基準が導入されるとどうなるか。各国の航空当局は変化する訓練需要に対応しながら、ライセンスを定期的に更新する義務を負うこととなる。
制度の運用コストは航空会社と当局が負担することになるだろう。関連費用も発生するだろう。しかしこれらの費用は国家予算や航空会社の運航コストに比べれば微々たる存在だ。費用以上の利益があることは間違いないのだから。
例えば、ライセンス制が確立していない場合、ベテランの客室乗務員が別の航空会社に転職したり、あるいは解雇後に別の会社に採用されたりした場合、彼(女)は新しい会社で一から訓練し直さなければならない。一方、ライセンス制の下では、航空会社に関係なく、特定の機材に求められる医療、保安、安全業務に応じてライセンスが交付されるため、航空会社としても、既に訓練を積んだプロを採用すれば、8週間の新人訓練の代わりに簡単な再訓練を実施すれば済むわけで、経費削減にもつながるはずだ。また、どの機材に対応する人材を訓練したかどうかもすぐに把握することができる。
さらに、ライセンス制を採用することで、保安に対するプロ意識や責任感を利用客にアピールすることができ、他社との競争上、優位に立つことができる。
航空査察官、管制官、訓練機関、パイロット、整備士、機材は皆、ライセンス/認可制となっている。客室乗務員だけが取り残されれば、保安上の弱点となる。客室乗務員に女性が多いのはこの問題と何ら無関係ではない。女性の仕事は過小評価されがちだ。航空会社は客室乗務員の「女性らしい」サービスを重視するあまり、保安のプロとしての役割を軽視している。
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シェーン・エンライトは前ITF民間航空部長
事例が示す訓練認可の必要性

2001年12月22日、アメリカン航空(AA)63便は大西洋上空3万フィートを飛行していた。すると、客室乗務員の一人がマッチに火がついた時に発生するような硫黄の臭いに気が付いた。乗客の一人、リチャード・レイドという男が自分の靴に仕掛けられた爆弾の導火線に発火しようとしていたのだ。
すぐに客室乗務員2人がこの男を取り押さえにかかり、男の足元に水をかけた。2人は他の乗客の助けも借りながら、ようやく男をベルトで縛り付けることに成功した。その後、AA63便はマサチュセッツ州のボストンに無事に緊急着陸し、男は警察に拘束された。
客室乗務員の保安責任は法律で明確に規定されている。しかし、客室乗務員一人一人にライセンスを交付することで、しっかりとした訓練を受けさせようとする国は少数に過ぎない。
アメリカン航空乗員組合(APA)が公開した訓練用テープ(米放送局のCNNが報道)にAA63便のパイロット3人と客室乗務員2人の会話が録音されている。ここには、惨劇を防ぐために恐怖と危険を克服した客室乗務員の様子がよく示されている。


リチャード・レイドは中央部の通路側に座っていたが、離陸後、空いていた窓側の席に移動した。窓側の方が機材の外壁に近く、爆発時のダメージが大きいからだ。
「男が何かに発火しようとしていたんだけど、それが何だかは分からなかった」
乗客と客室乗務員がリチャード・レイドを取り押さえることに成功したが、決して容易なことではなかった。
医師がリチャード・レイドを落ち着かせている間、AA63便は戦闘機2機に護衛されながら、ボストンへと向かった。
この段階でもリチャード・レイドの靴にしかけられた爆弾に対する恐怖心が客室乗務員から消え去ることはなかった。
靴にしかけられた爆発物はTATPかトリアセトン・トリペロサイドだとの連絡が諜報当局から入った後、客室乗務員は爆発物を後方部に運び、万が一爆発したときの衝撃を和らげるために毛布と枕で包み込んだ。
「乗客が爆発物に近づかないように注意していた。もちろん、機体がちょっとでも揺れると動揺したわ」 ―CNN(2002年6月6日放送「共犯者のいた飛行機爆破未遂事件容疑者」)より抜粋―
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客室乗務員にライセンスを
客室乗務員組合がライセンス制の設立を要求する理由
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