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2004年10〜12月 第17号
■乗り換えです
 
乗り換えです

アメリカの鉄道コンサルタントの助言に基づき、15年前に分割されて以来、オーストラリアの鉄道は絶えず売却と再編の歴史を繰り返してきた。その中で、組合は常に安全を重視してきたとロジャー・ジョエットは言う。

1990年代、オーストラリアの鉄道は、他国の鉄道産業と同様、構造・所有・安全文化の面で急激な変化をとげた。100年近く上下一体型の6つの鉄道公社が発展を続けてきたが、元来、そうした伝統的産業構造は、1788年以降、オーストラリア大陸の6つの旧英国植民地で発達した農業、牧畜、工業生産を支えるためのものだった。 
1854年に開通したオーストラリア初の鉄道は、メルボルン港とメルボルンを結ぶものだった。
1990年代初頭には、既に米国の鉄道コンサルタントの助言を受けた政府の政策や決定事項という形で、この産業構造に構造改革の圧力がかかり始めていた。まず、先延ばしになっていた技術面の近代化が行われ、人員が大幅に削減された。さらに、政府の役割縮小に関してネオリベラル(新自由主義的)政策も導入され、それにより、政府の助成を受けていた一部鉄道サービスが廃止されることになった。
1993年にニューサウスウェールズ鉄道安全法が採択されて以来、改革の速度は加速していった。同法は、複数の鉄道オペレーターが、国営鉄道ネットワークに参入することを許すもので、これにより、鉄道の安全に対する認識が当然考慮されるべき問題から、自己規制に基づいた近代的リスク管理の問題へと変化していった。
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国家競争政策(NCP)

1993年末、オーストラリア政府は、国家競争政策(NPC)に関する報告書を採択し、NPCは1995年半ばまでに法律に盛り込まれた。その後8年間、鉄道産業に多大な影響を与えることになった競争の原則に関する合意が全ての州政府の間で結ばれた。
NCPにより、鉄道ネットワークが第三者に開放されることになり、公有鉄道会社の構造改革が検討されるようになった。必ずしも民営化や外注化は必須条件ではなかったが、NCPは、保守的な州政府や連邦政府が、鉄道サービスの民営化を強行していくゴーサインを事実上出すことになった。
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全国鉄道公社(NRC)−第一の犠牲者

競争導入により、公共部門の鉄道改革における最後の取り組み、すなわち、1991年に設立され、1993年から営業を開始した全国鉄道公社(NRC)の設立計画も大幅に縮小していくことになった。当初の構想では、NRCは独占的かつ上下一体型の州際鉄道貨物輸送公社になる予定で、その主な目的は、州際鉄道貨物輸送事業の大幅赤字を削減し、世界に通用する全国鉄道貨物輸送システムを構築することだった。 
1995年になると、NRCは今度は鉄道事業者と定義づけされ、第三者オペレーターが州際貨物輸送の主要幹線に参入できるようになった。こうした状況下、NRCは蓄積されてきた歴史的赤字の削減に成功し、収支とんとんまで業績を改善したものの、利益を出すまでには至らず、新規参入した第三者に利益を奪われていった。
95年以降は、民営化、外注化、上下分離、第三者の参入などにより、鉄道産業と鉄道の安全にますます大きな圧力がかかるようになっていった。同時に、鉄道労働者による賠償請求件数もこの時期から大きく増加している。
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分割民営化

ニューサウスウェールズ州(NSW)鉄道に占める公共投資の割合は依然として大きかったが、1996年7月、遂にコスト削減しか念頭にない4つの独立事業体に分割された。これと並行して、安全面で懸念を起こさせる事故が発生している。鉄道員の死亡事故は1998〜1999年に急増し、99年12月には、シドニー近くのグレンブルックで衝突事故が発生し、乗客が死亡した。シドニー近くのウォーターフォールで2003年1月に発生した脱線事故でも、乗客が死亡している。
一方で、こうした事故をきっかけに、オーストラリアでは、その後数年にわたり鉄道の安全に関する徹底的な見直しが行われることになった。安全文化を取り戻そうという重要な提案がなされ、鉄道産業への国家競争政策(NCP)の導入のマイナス面についても重大な批判がなされた。ウォーターフォール事故の審問は現在も続いている。
グレンブルック事故の審問の結果、公共鉄道4事業体のうちの2局、つまり、鉄道線路事業公社(RAC)とレールサービス・オーストラリア(保守・整備事業担当)が再合併し、鉄道インフラ公社(RIC)となった。さらに、ニューサウスウェールズ州運輸局内に、鉄道安全規制局が設けられ、以前よりも力をもつようになった。
ウォーターフォール事故の審問が行われる中、ニューサウスウェールズ州政府は、鉄道インフラ公社(RIC)と、96年の分割の結果生まれた残り2つの鉄道事業体を再統合する決定をし、NRC導入により96年以降続いていた分離分割の動きを大きく逆転させることになった。その結果、RICはニューサウスウェールズ州営鉄道(SRA)と再合併することになり、上下統合の鉄道公社に完全に逆戻りし、現在は都市鉄道サービスと州際鉄道サービスを主な業務としている。
1997年、当時、タスマニアと南オーストラリアで短距離貨物輸送と長距離州際旅客輸送を運営していた国営鉄道が民営化された。その結果、タスレールの運営はウィスコンシン・セントラル・トランスポーテーション社に、南オーストラリア貨物鉄道はジェネシー&ワイオミング社に、旅客サービスは英国の公共セクター企業体のセルコに売却された。
1999年、Vライン旅客鉄道会社が民営化され、上下分離の末、インフラはリース契約でレール・アメリカ社に、運営はフレート・オーストラリア社に任されることになった。99年末には、西オーストラリア州公営貨物鉄道が民営化され、ジェネシー&ワイオミング社と地元の農業関連企業体、ウェストファーマー社の合弁企業に売却された。両社は、オーストラリア鉄道グループという名前で営業している。新たに開通したアリススプリング・ダーウィン間鉄道の大株主であり、同鉄道の運営に中心的な役割を果たすことが予想される。
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反組合主義と雇用不安

2002年2月、ニューサウスウェールズ州のフレイト・コープと全国鉄道公社の両社が共同で売りに出された際、名乗りを上げたのは、パシフィック・ナショナル社と名乗るオーストラリアの合弁企業だった。パシフィック・ナショナルの株式は、パトリック・ステベドアとトール・ホールディングが50パーセントずつ所有している。パトリック社はオーストラリアの大手港湾荷役業者で、トール・ホールディングは、大手貨物運送業者だ。両社ともに貨物ロジスティックスに大きな関心を寄せており、2社が共同でパシフィック・ナショナルを設立したことは、オーストラリアの鉄道貨物輸送史上、大きな意味をもつ。
パトリック社は、国内線専門の格安航空会社、バージン・ブルーにも投資しており、破綻したアンセット航空から航空機の整備施設を買い取った。パトリック社はまた、1998年前半にオーストラリア海事組合(MUA)を潰そうとした企業としても知られており、依然として労働組合に対する敵対姿勢を崩していない。
一方で、2002年から2003年にかけて、オーストラリア連邦政府は、向こう60年間の州際主要幹線のリース計画およびハンター渓谷炭鉱線のリース計画などについて、連邦の所有企業、オーストラリア・レールトラック・コープ社の代理で、ニューサウスウェールズ州政府と集中的に交渉を行った。これらリース計画は、ニューサウスウェールズ州の各地でインフラ保守に従事している労働者にとっては雇用喪失の大きな脅威であった。現段階では、ニューサウスウェールズ州政府はリース計画案を受け入れていないが、もし受け入れることになれば、州政府はニューサウスウェールズ州の鉄道貨物輸送事業から撤退することになり、根本的な鉄道路線の開発の問題を連邦政府の手に委ねることになる。
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市場原理の失敗

2002年の初めにウィスコンシン・セントラルはカナディアン・パシフィックに買収され、その売買契約により、ウィスコンシン・セントラルが北米地域以外に所有する全資産が、市場で入札にかけられることが決定した。タスレールは2002年から2003年にかけて入札にかけられたが、トール社とパトリック社のロジスティック・チェーンを補完するため、2004年にパシフィック・ナショナルがこれを買う公算が高い。
2003年には、トール・ホールディングが、ウィスコンシン社がニュージーランドに所有している資産の買収にかかり、現在、株式を9割以上取得している。
レール・アメリカが所有するフレート・オーストラリアは新たに民営化された鉄道貨物輸送業者の中で最も脆弱で、現在入札にかけられている。オーストラリア鉄道産業の大改造は、これから進んでいくことになるだろう。売買の契約は今年末までに行われる予定で、ここでもまた、パシフィック・ナショナルが買い手企業として有力候補に上がっている。
2002年12月、Vライン旅客鉄道会社、メルボルンMトラム、ナショナル・エクスプレス・グループ(ベイサイド保守事業を担当)が2億オーストラリアドルの負債を抱え、財産管理下に置かれることになり、これらの路線の経営は、ビクトリア州政府に移管された。オーストラリアの鉄道民営化後、初の市場原理の失敗例ということができる。
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北部準州(ノーザンテリトリー)の鉄道リンク完成

2001年8月、アジア太平洋運輸企業体がアリススプリング・ダーウィン間の鉄道建設のための資金調達に成功し、遂に建設を開始した。1,410キロに及ぶ標準軌の建設には、13億ドルかかるが、その内、政府からの助成金が5億5千万ドルを占める。同鉄道は既に完成し、貨物輸送事業は2004年1月から、旅客輸送事業は2月より運行を開始した。
さらに、連邦政府は、タルクール・ダーウィン間に新たな路線を建設するために、タルクール・アリススプリング間の標準軌830キロを寄付した。
オーストラリア鉄道グループ(ジェネシー&ワイオミングとウェストファーマーの合弁企業)は、米国のケロッグ・ブラウン&ルート・エンジニアリング社、オーストラリアに本拠を置く建設会社のジョン・ホランド社とともに同鉄道を運営する共同企業体に属している。
鉄道業界には、ダーウィン鉄道が商業ベースで運営されるという噂があり、助成金が利用量の多いメルボルン・シドニー・ブリスベン間の路線に投入されなかったことに対する怒りの声も上がっている。
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産業の構造改革は続く

鉄道インフラの保守・整備は、クィーンズランド州とNSW州以外でも民営化・合理化され、オーストラリアのトランスフィールド社とドイツ人が所有するジョン・ホランド建設会社の2社により、独占的に買収された。
こうした産業構造の変化がオーストラリア鉄道バス労組(RTBU)の組合員に及ぼした影響は計り知れない。現在では組合員の約33パーセントが外国資本あるいは国内の大手企業に雇われている。
2003年末の時点で、州政府が鉄道システムを完全に所有している州は、クイーンズランド州だけだ。クイーンズランド・レールは、上下一体型の構造を取っている。
概して、オーストラリアの鉄道産業の歴史は、所有構造、意思決定、責任と報告システムの分断の歴史と見ることができる。多数ある部門の中には、既得権ゆえに、他の部門との協力に消極的な部門もある。
鉄道の民営化により、労働組合の力が弱体化する中、RTBUは、多額の資金を投入し、鉄道の安全と団体協約の締結に力を注いでいる。RTBUは引き続き、鉄道の安全に関わる政策の策定に影響力をもてるよう努力し、労働者に有利な協約の締結を目指していく。
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ロジャー・ジョエットは、オーストラリア鉄道バス労組(RTBU)の全国書記長。
 
 
INDEX
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