2004年10〜12月 第17号 |
■危険!
正体不明の貨物 |
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危険!正体不明の貨物
海上コンテナ陸上輸送で事故を起こした場合、誰の責任が問われるべきか?日本では、海上コンテナトラックの運転手が積荷の中身を知らされていない場合でも、運転手や運送業者が自動的に責任を負わされる。全国港湾の町田正作が全輸送モードにあてはまる国際安全基準の確立を訴える。
日本では、海上コンテナトラックの運転手は積荷の中身や重さを知らされないまま運送していることが多い。走行中片荷で横転しない様、完全な固縛措置が行われているかも分からない、危険・有害物にはどんな事故予防と、発生したときの二次災害防止措置を、どうすればよいのかも一切知らされていない。
にもかかわらず、事故が起きた場合の責任は、海上コンテナ運送業者と運転手に全面的に負わされる。
海上コンテナ貨物の積荷情報(品名・重量・危険物・ラッシング状態など)は、海上輸送・港湾(コンテナターミナル)までは伝達されるが、港湾から最終目的地まで陸上輸送する海上コンテナ運送業者と運転手には伝達されない。海上コンテナ内に何がどのように積みつけられているかの基本的な情報まで「封印」されている。
アメリカでは、海上コンテナ輸送(陸送)の安全を確保するための安全運送法がある。この法律は、重量証明、貨物情報の明記、安全固縛証明を義務づけ、荷主の積み付け責任と、輸送者の責任範囲などを包括している。
一方、日本でも1995年に製造者責任法(PL法)が施行されたが、海上コンテナ輸送にまでその法律が適用されるに及んでいない。そのため、全国港湾は、荷主責任を明確にした安全運行を確保することを目指した法律の制定に取り組んでいる。
海上コンテナ輸送がはじまって30余年を経て、貨物輸送の定期船ではほとんどがコンテナ化され、「国際複合一貫輸送」が定着しているにもかかわらず、各国の海上コンテナ輸送(陸送)の安全を確保する総合的な法体系がないことは重大な問題であり、これからは国際的な法・基準による統一した規制が必要だと考える。 |
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正体不明の貨物の危険性
日本では海上コンテナ輸送に関する多くの事故が発生しているが、そのほとんどが、片荷、過積載や内容証明の省略、危険・有害物に起因している。
過去10年間(1991〜2000)の横転事故件数は64件で、その内6件が一般市民を巻き込む死亡事故となっている。ただし、この数値は組合が現場から得た報告にもとづくもので、実際の数値はこれを上回るものと予想される。 |
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保安問題
船舶や港湾の保安強化目指す新たな国際規制が設立され、海上コンテナ輸送が注目を浴びる中、船員、港湾労働者、トラック運転手も自分たちが扱う海上コンテナの安全確保という共通の目的を抱えるようになった。船舶・港湾保安に関する新しい国際規制が各国でしっかりと履行されることが望まれるが、港湾から陸上への連絡体制の整備という面は、日本をはじめとする国々や、国際レベルでも認識が不足している。また、港湾における空コン検査などの未解決の問題もある。アメリカは貿易相手国に対してさまざまな保安措置を厳しく要求しているにもかかわらず、空コン検査の問題はないがしろにされ続けている。
一方、海上コンテナを使った密入国も増加の一途をたどっている。港でコンテナを開封したら密入国者がコンテナ内に入っていたという事例が何件もある。これは、コンテナを使ったテロリストの移動も簡単にできる事を示しており、積地・船舶への積み付け作業時で積荷証明と貨物が一致していることをチェックできていないために起こる。
海上コンテナは、税関立ち会いのもとでしか日本では開封できない。したがって、港湾作業中や陸上輸送中に片荷などの異常を察知しても、開封して固縛のやり直し等で対応することができない仕組みになっている。異常を税関に通告して開封を依頼しようとしても、港湾作業や納品期日の遅延を理由に何の措置もしないまま輸送され、その結果、横転事故となる。
過去10年間(1991〜2000)、規制緩和とコスト削減圧力のなかで貨物の数量的証明や貨物情報を省略、削減、あるいは隠蔽される傾向がある。コンテナ強度以上の重量の貨物が積み込まれていたためにコンテナの底板が抜けるという事故が発生したこともある。港運事業者に届けられた重量と実際の重量が大きく異なっていたために起きたと考えられる。
私たちの経験から言って、貨物情報が故意に隠蔽されてしまうと、海上コンテナ輸送事業者としては手の施しようがない。法的強制力が必要である。
また、海上コンテナ輸送事業者が過積を察知しても荷主にそれを指摘して基準通りに戻すことは困難である。仮に、荷主に積み替えを要請すれば、事業者の変更を言い渡されるだけである。 |
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危険・有害貨物
日本の消防法では、積み込まれた貨物に「危険物」の表示をすれば陸上輸送可能で、コンテナ本体への表示は必要がない。貨物の種類に関わりなく一般貨物となってしまうのだ。運転手はどのような貨物がコンテナに積載されているかを知らされないまま輸送している。
有害・危険物と指定することによって、港湾運送と陸上運送に特別の対策とそれに伴う経費がかかり、消防その他の関係官庁への届け出などの手続きが煩雑になる。荷主はこれを回避しようとする傾向がある。また、輸出国と輸入国の国内法規や諸手続の違いによって危険物と扱われたり、扱われなかったりといった問題もある。
海上運送における危険物処理の国際ルールは確立されているが、日本の陸上輸送では国際ルールが確立しておらず、海上輸送中のコンテナに危険物表示があっても、日本で揚げられる時に危険物表示をはずすといった無謀なケースもある。
こうしたことから、たとえば発火したら水で消化していいのかどうか(水によって発火を促進する危険品もある)など、対処方法も判らないといった事態が発生する。
したがって、危険・有害物の種類、量など必要な外部表示を荷主の責任でコンテナに危険物の国連番号を表示すること、運転手に危険品の情報を明記した商品安全データシート(MSDS)の携行をさせることを義務づけることが必要である。 |
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コンテナ輸送の安全確保
国際複合一貫輸送にふさわしく貨物情報も戸口から戸口まで一貫して各輸送モードの当事者が把握できるようにすべきである。
海上コンテナ貨物の内容を把握しているのは船社と荷主であり、この二者が湾湾運送、海上コンテナ運送事業者に正確で詳細な情報を出すことが第一義である。その情報の正確性と客観性を第三者機関(検数・検定)が証明することで安全確保が可能となる。
貨物情報の発信元である、荷主・船社の責任と義務を明確にするシステムをつくることが重要である。
日本の規制が欧米のように徹底した社会的責任を義務づけられていないことが問題である。陸上輸送業者に対して優位的地位に立つ荷主の法違反を厳しくする措置と罰則が必要である。国際複合輸送にふさわしい国際海上コンテナ陸上輸送における国際安全基準の確立が求められている。 |
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町田正作は全国港湾の海コン部会・事務局長。 |
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貨物積載訓練
輸送安全ステーション(TSS)
スウェーデンの運輸職業訓練労働環境協議会(TYA)が労働組合(STFなど)やドイツ、オランダ、デンマーク、エストニアの関係団体と協力して、訓練目的の輸送安全ステーション(TSS)を設立した。
TSSは運輸会社や研修機関を通じてトラックの貨物積載の実地訓練を提供する。一般的に貨物輸送分野における訓練レベルは低く、その結果、コンテナ事故が多発し、毎年、貴重な生命が奪われ、何十億ドルものコストが発生している。
TSSは2つの要素から成っている。特別安全装置を備えた傾斜フレームと、貨物固縛装置を備えた、横から開閉可能なコンテナだ。
TSSを使って訓練生はコンテナ貨物積載をシュミレーションできる。 |
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訓練生はコンテナに貨物を積載、固縛する。 |
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傾斜フレームを使ってコンテナ全体を傾けてみる。傾斜フレームの許容重量は約6トン。後方60度、左右40度まで傾けることができる。こうすることで、輸送中に実際に貨物にかかる圧力を想定できる。 |
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片荷を原因とする事故例 |
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コンテナの床部分に油性物質を塗って墓石を滑らせてバンニングした模様で、ラッシングがしっかりとされていなかったために、海上輸送中に油性物質が潤滑油となって墓石が動き片荷になった。その結果、陸上輸送中のカーブでコンテナの横転を誘発した。 |
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この機械の断面は、ちょうど凸型を180度反転させたような形状で、上部に重心がかかるためにコンテナの横転を誘発した。 |
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球体や側面が湾曲している貨物を積み併せた場合は、コンテナ内に空間が生まれる。この空白をきちっと埋める固縛がやられていなかったためコンテナ内で貨物が移動し、片荷なったために横転事故を誘発した。 |
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液体の詰まったドラム缶が輸送中に転がり、トラックの横転を招いた。 |
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2000年に発生した、危険・有害物に起因する事故例 |
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オーストラリアの新法で責任範囲拡大
路面運輸改革法案には、連鎖責任に関する条項、すなわち、ロジスティックス・チェーンに関わる全ての参加者が、路面輸送質量・貨物積載法に則り、貨物の道路輸送中も責任を負う内容を含んでいる。これにより、実際に路面運輸にかかわる組織の負担が軽減され、ひいては法令遵守の改善とより安全な道路の実現につながっていく。
この法案は、ドライバーや輸送業者が貨物に関する誤った情報に惑わされないように確認するという特別任務を負った「責任者」の創設も視野に入れている。「責任者」は、当局の問い合わせに応じ、貨物情報や当該ロジスティックス・チェーンの全参加者に関する情報を提供する義務も負う。
オーストラリア(各州および準州)の現行法では、「無過失責任」あるいは、(少なくとも一州においては)「厳格責任」を採用している。つまり、ドライバーやトラックの所有者が知らずに過積載をしてしまった場合、あるいは過積載しようという意図がなかった場合でも、彼らが責任を追及されていた。新法案でもこの点は変わらない。
しかし、新法案は、チェーンの全参加者の役割と責任に見合った、新たな防御措置を導入することで、公正を期している。
全豪路面運輸委員会(NRTC)が2003年に作成したファクトシートから抜粋。路面運輸改革法は2005年7月から実施される。
「オーストラリア運輸労組(TWU)は10年ほど前から“連鎖責任”の法制化を求めてロビー活動を開始した。長い闘いだったが成果はあった。路面運輸改革法により、今や輸送チェーンの全当事者が責任を負うようになった。これまでは、全責任が運転手に押し付けられていた。たとえ会社の指示に従った場合でもだ」
ージョン・アラン |
(TWU中央書記) |
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