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グローバルユニオン

2004年10〜12月 第17号
■コールセンターの組織化
 
コールセンターの組織化

コールセンター(顧客電話サービスセンター)は、ハイテクを駆使した、一見特に女性の間で人気の高い職場だが、高い転職率に注目すれば、違う側面が見えてくる。組織化が難しいという問題もあるとセリア・メイザーが報告する。

数字が全てを物語っている。アメリカではコールセンター(顧客電話サービスセンター)で働く労働者の数は既に労働人口の3パーセントを占めていると言われている。ヨーロッパでは、この割合は1.3パーセントで、オーストラリアでは、約35万人がコールセンターに雇用されている。これらの国では、コールセンターの新規雇用件数が年率20〜25パーセントの割合で増加している。
コールセンターにおける雇用拡大は一部の途上国にも見られる。多量の業務が先進国から途上国へ移転されているからだ。英語での対応が必要な業務はインドや南アフリカへ、フランス語なら北アフリカ、スペイン語なら中南米、ドイツ語は東欧へそれぞれ外注される。一方で、複数言語の業務処理能力を備えたコールセンターも各国で増えてきた。最先端のグローバル通信技術もまた、顧客サービスを海外へ「逃避」させるのに一役買っている。ちょうど少し前に製造業が海外へ逃げていったのと全く同じだ。
コールセンターが提供するサービスは実に幅広い。私は英国に住んでいるが、自分の銀行口座の残高を調べようと思えば、インドのハイデラバードにいる人間と電話で話すことになるだろう。先日、自宅から目と鼻の先にある、ある企業の電話番号を調べる必要があったのだが、南アフリカのヨハネスブルクに勤務する従業員と話をしていたことが分かった。
失業率が高く、平均年収の低い地域にコールセンターをもっていくことで、企業は労働コストを大幅に削減することができる。インドでは、コールセンターで働く労働者の数が2008年には100万人を超えるという指摘もある。インドは、スキルを備え、高等教育を受けた、英語が話せる労働力の宝庫で、しかもそのような労働者を英国と比較して15パーセント以下の賃金で雇うことができる。さらに、インドの方が労働時間も一週間につき6時間長い。
多くの国で、コールセンターの労働力に女性が占める割合は高く、通常は5割から7割を女性が占めている。年齢的に見ると、30歳未満の女性が大半だ。しかし、サービスの内容によっても女性の割合は異なる。直接一般市民に応対するタイプのコールセンターでは、従業員の大部分を女性が占めるが、コンピュータのソフトウェア・サポートサービスなどでは、企業は男性を主に雇用する傾向が強い。
女性はほとんどのコールセンターが採用する柔軟なシフト制とパート労働という働き方が育児との両立に向いていると期待してコールセンターの仕事を選ぶが、英国で行われた調査から明らかになったように、労働者が直前にシフトを変更できる、あるいは託児所を備えたコールセンターは多くはない。
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交通運輸産業の動向

アメリカン航空とブリティッシュ・エアウェイズは、1980年代末に世界に先駆けて事務部門と発券業務を低コスト国に移転した。
最近の動向としては、民営化された鉄道産業が、発券や案内サービスを外注している。フランスのSNCF(フランス国有鉄道)の中央予約システムは現在、ヴィヴェンディ・グループのセジェタル社がモロッコから運用している。2004年2月には、ロンドンの地下鉄の案内サービス業務がインドに移管し、ロンドンのコールセンターで一日7,000〜10,000件の問い合わせを処理していた約80人の従業員が失業に追い込まれるかもしれないという噂が広まった。このニュースは、英国鉄道の案内業務のインドへの移転計画の直後に出てきた。
しかし、国外移転されているのは、発券業務や情報サービスばかりではない。多くの企業が給与計算、データ入力、請求書作成、文書処理、ソフトウェア・プログラミングなど、多岐に渡る業務を外注している。コールセンターで働く労働者の総数には、そういったあらゆる種類の業務につく労働者が含まれている。
全ての業務が下請け会社に外注されるわけではない。中には、ある業務を再編した上、同じ企業内のコールセンターに移管する場合もある。例えば、ドイツのルフトハンザ航空は、コールセンター業務専門の子会社、グローバル・テレセールスに世界8ヵ国のコールセンター業務を任せており、そこからルフトハンザ航空の予約・発券業務はもちろん、スターアライアンスに属する他の航空会社へのサービスも提供している。
海運産業では、ヨーロッパのP&Oフェリーが各地のコールセンターを閉鎖し、業務をオランダのユーロポートと英国のドーバーの2箇所に集中させ、800人を雇用している。
ウェブサイト、音声、テキストによる通信を統合する、ウェブ対応のコールセンター(WECCs)の出現が次のステップになるだろう。これにより、雇用の面ではまた大きな影響が出てくることになる。
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コンピュータ人間

コールセンターの職場はどんな様子だろうか?2001年に英国のナショナルセンター、TUC(労働組合会議)が国内のコールセンターの労働条件を調査する電話サービスを開始した際、電話が殺到した。最も多かった苦情は、いじめ、長時間労働、達成不可能なノルマ、一般的な満足度の低さに関するものだった。「90年代の工場労働に似ている。仕事の8割が機械的作業で、次から次へと電話を取らなければならない。そのうちに、まるで自分がコンピュータ人間ででもあるかのように感じられてくる」とある英国人女性が調査員に語ったという。
コールセンターは「ニューエコノミーの工場」と呼ばれてきた。その形態は製造工場がそれぞれ異なるのと同様に様々だ。2千人もの従業員を抱える巨大センターもあれば、5人しか従業員がいないセンターもあり、その他、両者の中間の様々な規模のセンターが存在する。
典型的な、仕切りのないオフィス環境は若者には好まれるかもしれないが、現実には、従業員どうしがおしゃべりをする時間などほとんど無い。何時間も孤立して業務にあたり、一人一人に与えられる業務の幅は狭い。一方で、従業員はソフトウェアにより一日中監視されている。一本の電話に2分以上費やした場合、売上率が低い場合、電話が鳴ってから6秒以内に受話器を取らなかった場合などには、アラームが作動するようになっていることもある。労働者の話では、応対の質よりも、時間的なことばかり重視されることが大きなストレスになり、やる気を失わせるという。さらに、一日中コンピュータの前に座っているため、目の痛み、腰の痛みなどが激しく、次第に「ただただ電話から解放されたい」という欲求が頂点に達していくという。
もっと悪いことに、抑圧的な管理体制の報告も多数、労組に寄せられている。従業員がトイレに行く前に許可を求めることを要求したり、退出時間を記録するような使用者もいる。オーストラリアのステラー・コールセンターに勤務していた妊娠中のダイアナ・イワノスブスキは、勤務中に頻繁にトイレへ行ったことを理由に、2ヵ月間100ドルを給与から差し引かれた。イワノスブスキは、組合(CPSU)を通じて、差し引かれた100ドルの返還と書面による謝罪を企業側に求めているが、こう話している。「絶えず電話で話していれば、ただでさえ喉はカラカラになる。妊娠していれば、特にお腹の赤ん坊のためにも水分をたくさん取る必要がある。でもトイレに行きたくなるからあまり水を飲めないと思った。」ステラー社は後日、イワノスブスキの処遇について謝罪した。
昇進に関してはどうだろうか。業界内には、女性のチーム主任や現場監督はたくさんいるが、そこ止まりだ。コールセンターはもはや企業の一部と見なされていないため、さらに上を目指す女性は他の部署へ移り、また一から訓練を受けて昇進の機会を探っていかなければならない。
転職率が高いのも無理はない。英国とインドの両国で、転職率は年平均25〜35パーセントにも達するが、一部には、転職率が50〜60パーセントのセンターもある。退職する従業員が余りにも多いので、ケープタウンのグローバル・テレセールス社は2ヵ月ごとに大募集をかけ、その度にドイツ語が堪能な南アフリカ人を40〜50人も探さなくてはならない。さらに、一人一人に数週間の訓練を実施する必要もある。
企業は、一方で生産性を高めながら、他方では高い転職率と新人研修により利益を失いつつ、なんとかやりくりしている。従業員は外国語能力など、高度なスキルを備えていれば、交渉の際、優位に立てる。また、インドでは、アメリカのビジネスアワーに対応するため、夜間でも十分な数の従業員を勤務させる必要があり、また、若い女性の夜間勤務を奨励するため、従業員に無料で食事や交通手段を提供している。このため、結果として給与が上昇していく可能性はある。また、上昇する転職率に歯止めをかけるため、企業はコールセンター従業員の7〜9割と正規雇用契約を結んでいる。
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組合の課題

鉄道、バス、航空、クルーズ船の顧客サービスは、従来から交通運輸産業の一部と見なされ、多かれ少なかれ、運輸産業の枠組みの中で組織化が進められてきた。しかし、コールセンター業務の外注化や海外移管とともに、交通運輸産業はこれらの労働者を失うことになり、組合が何らかの策を講じなければ、やがては組合員も失うことになる。
オーストラリアでは、ナショナルセンターのACTU(オーストラリア労働組合評議会)の傘下の組合が、コールセンターで積極的な組織化を進めている。ITFに加盟するオーストラリア・サービス労組は、オーストラリアのグローバル・テレセールス・センター(ルフトハンザ航空のコールセンター)を、低賃金・低労働条件の下請け産業としてではなく、航空会社の海外子会社と認識するように長年働きかけてきた。この取り組みは今も続いている。2003年2月には、組合側が非正規社員を含む同コールセンター従業員60人に関して、大勝利を収めることができた。
組織化の面で最も大きな課題は、労働力がなかなか定着しないことだ。一人一人の労働者を見ると、コールセンターで働くのは、大抵は次の職場に転職するまでのほんの短期間だけだ。新規に人が採用されてもまたすぐに辞めていってしまう。派遣会社から派遣される契約社員の場合は、組織化や団体交渉の対象としては雇用形態が明確ではなく、新たな課題となっている。
熾烈な競争が繰り広げられる下請け市場では、契約先も変わりやすい。英国では、TSSA組合がここ4年間、鉄道の案内サービスを一部請け負っているコールセンターを組織化しようと闘ってきた。2003年、使用者のセルコがTSSA労組を組合として承認したが、2004年初めには、業務契約がセルコから、北部イングランドにコールセンターを構えるBTベントゥーラに移ってしまった。そのため、組織化の活動も、新しい職場で一から始めなくてはならなくなった。ヴェントゥーラもインドのバンガロールにコールセンターを持っており、すでに試験的プログラムを開始している。どの程度のコールセンター業務がイギリス国内に止まるのか、誰も予測がつかない状況だ。
コールセンターの急成長のもう一つの影響は、組合内のジェンダーのバランスが変化することだ。顧客サービス担当として女性の雇用が伸びている一方で、伝統的に男性がやってきた仕事は削減される傾向にある。コールセンターで積極的に組織化を推し進めれば、女性組合員の数は増えるだろう。組合の交渉内容も変化してきている。家庭との両立が可能な労働時間の確保にかつてないほど大きな重点を置く必要が出てくる。
さらに、コールセンターの所在地の問題もある。ほとんどのコールセンターがハイテク産業地域に所在しており、組合は活動をゼロから開始しなくてはならない。インドでは、コールセンター従業員の多くが自らを労働者というよりは、ハイテクのプロと認識しているため、労働組合よりプロフェッショナルな職業連合に入会することを好む傾向がある。インドのそうした職業連合とヨーロッパの組合の協力関係は始まったばかりだ。
産業の再編により、各地域で強力に組織化を進める必要性と同様に、今後国際連帯を進めていける新たな領域が浮き彫りになってきた。例えば、グローバルテレサービスのような企業の各国のコールセンター労働者が、世界共通の高い水準を勝ち取るため、合同で立ち上がることなども考えられる。
また、異なる産業に属する労組間の協力も必要になるだろう。多くの国で、コールセンターの組織化を進めているのは、金融、事務、通信などの産業の労組だ。異なる産別労組が力を合わせてコールセンターに関して合同で行動を起こせば、実りある結果を生み出すことができるだろう。既にそうした協力態勢は、オーストラリアや英国では国内レベルで見られる。国際レベルでは、ITFはUNI(金融・事務・郵便・電気通信産業の労働者のための国際産別組織)と、より緊密な協力関係を築くことを決定している。
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セリア・メイザーは現在、ITF女性部の依頼により、グローバル化が女性交運労働者にもたらす影響について研究している。
 
 
INDEX
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