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グローバルユニオン

No.22/2008
■短信
 
船員の賃金

国際交渉協議会(IBF)
賃金引上げに合意


国際交渉協議会(IBF)において、大幅な賃金引き上げと重要な契約条項の改定が合意され、7万人の船員が恩恵を受けることになった。
2007年9月、船主を束ねる合同交渉グループ(JNG)とITF代表がロンドンで交渉し、2008年1月1日から実施される船員の賃金と労働条件の改定に合意した。IBF協約は、全世界の3,500隻を超える船舶に乗組む、あらゆる国籍の約7万人の船員に適用される。
合意内容には、8%の賃金引き上げと、海事労働条約(MLC)に沿った契約条項の改定が含まれている。MLCへの完全適合を目指して雇用契約を改定したことは大きな功績であり、IBF協約が海運産業の最新かつ最善の労働基準を遵守する最前線に位置することを示すものである。
ITFのスポークスパーソンを務めたブライアン・オレルは、今交渉のもう一つの大きな成果として、先進経済国の部員基金設置に特に満足しいると述べた。同基金の設立により、過去20年間で雇用機会が大きく縮小してきた伝統的海運国の船員の雇用拡大が促進されることになるだろう。「この基金の設立により、IBFが既存の問題に対して画期的な解決策を提供し、あらゆる海運関係者に資する全体的水準の引き上げに貢献できることが証明された」と、オレルは述べている。
一方、JNG側のスポークスパーソン、イアン・シャーウッドは、「IBFで合意された施策の中には、船主団体にも魅力的なものが多数ある。IBF協約を、より効果的かつ、より柔軟に実施することに合意できたことは、特に重要であり、最も歓迎すべき点だ」と、述べた。
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ITFの行動要請

消息不明船の解明に協力を


ITFは、2007年6月にセイシェルに向けてドバイを出港した後、消息を絶ったとされる船に関して、10月に協力を呼びかけた。この船には、14人の船員が乗組んでいた。
セント・ビンセント・グレナディーン籍で、アラブ首長国連邦に拠点を置くザンベジ海運が運航する「リーフ・アザリア号」は、6月18日にドバイを出港した。代理店が最後に本船と連絡が取れたのは7月24日で、その際、本船はソマリア沖にいた。この船にはタンザニア人8人と、ビルマ人、インド人、パキスタン人が2人ずつ乗船していた。
ITFは、加盟組織であるパキスタン商船職員組合の懸念表明を受け、海運会社と連絡を取り、「情報開示と協力」を呼びかけた。さらに、乗組員の家族に伝えるために、行方不明船の捜索に関する更なる情報を求めた。
ITFアクション・ユニットのフィンレイ・マッキントッシュは、「まだ多くの質問に対して回答を得ていないので、会社側に情報を求めている。行方不明の乗組員の家族は、何が起きたのか分らずに心配している。乗組員がどこにいるのか、捜索のために何がなされるべきかが、目下の最重要事項である」と、語った。
今までのところ、船が沈没したとか、海賊の襲撃にあったとかを示唆するような証拠は無い。
さらに、二隻目の行方不明船が、パキスタン商船職員組合から報告されている。パナマ船籍でインフィニティ・マリン・サービス社(在ドバイ)所有の「インフィニティ・マリン1号」で、23人の乗組員が乗船していたと思われる。
パキスタン商船職員組合のシェイク・モハマド・イクバル書記長は、「これら便宜置籍船の所有者は、何の情報も提供しようとしない。彼らは、何が起こったのかを解明して行方不明船員の家族を支援するよりも、保険金の支払いを心配しているように見える」と、語っている。
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米国における交渉

フィリピン人乗組員の未払い賃金4万ドルを確保


米国の船員労組(SIU)に所属する複数のITFインスペクターは、サフマリン・テキサス号に乗組む8人のフィリピン人船員のために約4万ドルの未払い賃金を確保した。18,030重量トンのサフマリン・テキサス号は1987年の建造で、ギリシャのピレウスにあるスイス・マリン社に所有されている。
本船はITF協約を締結していたが、乗組員には本来のITF賃金表によるものではなく、フィリピンの賃金が支払われていた。

通常の査察活動

ヒューストン港で通常の査察を行っていたシュエ・トン・アウンITFインスペクターは、この違いに気付いた。本船がボルチモア港へ向かうことになっていたため、彼はボルチモア港のアーサー・ペティパスITFインスペクターに、本船へ行って船長や会社と交渉するよう提案した。
ペティパスは交渉を行い、8人のフィリピン人乗組員が未払い賃金、27,548ドルを受け取ることになった。さらに、この内の2人は前の航海から乗船していたため、当該期間中の未払い分として、12,889ドルを追加支給された。
サフマリン・テキサス号は、乗組員への支払いを行うため、ヒューストン港に戻ることを認められた。
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FOCキャンペーン

ITF承認協約が適用されていない便宜置籍船(FOC)の所有者


船主国籍 ITF協約非適用
船舶数
タイドウォーター米国 270
朝鮮民主主義人民共和国政府北朝鮮 161
アーキロドン海外建設アラブ首長国連邦 106
シーコー・ホールディングス米国 77
オファー・ブラザース・グループイスラエル 66
リックマーズ・リードレイドイツ 66
ペーター・ドール・スキファーツKGドイツ 63
トランスオーシャン米国 62
ベルンハルト・シュルテ・グループドイツ 59
大阪商船三井船舶(Mitsui-OSK)日本 56
ミャンマー人民共和国政府ビルマ 54
ブルボン・グループフランス 54
中国外洋海運グループ中国 52
エゴン・オルデンドルフKGドイツ 51
中華人民共和国政府中国 49
スミット・インターナショナルオランダ 49
カーニバル米国 46
ラスカリディス海運ギリシャ 46
ラムナルコ・グループアラブ首長国連邦 44
ヤンデヌルNVベルギー 42

(出所:ITF、2007)
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未払い賃金

遺棄船員の未払い賃金を獲得

スペインのサンタンデル港で遺棄された船員25人が、未払い賃金を獲得した。
パナマ籍貨物船「ミューガング1号」の乗組員は、ITFとスペインの2つの加盟組合、ELA-hainbatおよびCCOO支部の介入により、2006年10月までさかのぼって未払い賃金を獲得した。新しい船主が、船員側の要求する9月11日までの賃金満額−18万7千ユーロ(26万4千ドル)を支払った。
24人の船員はカメルーンとガーナに送還され、船長は送還前に、サンタンデルの船員センターで医師の治療を受けている。
「船員が本船で受けてきたひどい扱いを、これで少しでも緩和できればと願っている」と、ITFインスペクターのモハメド・アラチェディは語った。
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海賊

ITF、ソマリア沖の海賊対策を支援

ITFは、ソマリア沖を航行する船舶を悩ましてきた海賊事件や武装強盗事件に対処する動きを支援している。
ITFは、ソマリアの海岸近くで発生する海賊事件や武装強盗事件を国連安全保障理事会に持ち込むための提案を全面的に支持している。この提案は国際海事機関(IMO)の事務局長から出され、ロンドンで6月25〜29日に開催された第98回IMO理事会で支持された。これが、海賊行為や武装強盗事件を取り締まるための、ソマリア連邦暫定政府に対する要請につながることが望まれる。これには、乗組員の生命を危険にさらす海賊行為や武装強盗事件に対応する船舶が、ソマリア領海に入ることを認める措置も含まれている。この提案は、特に、ソマリアに対して人道支援を行っている船舶を対象としている。
ソマリアでは最近、不安定な状況が続き、船舶への新たな攻撃が頻発するようになっており、報告される事例もうなぎのぼりである。
ITF船員部長のジョン・ウイットローは、「ITFは、IMOのこうした取り組みを歓迎し、IMO理事会においても、この提案を支持した。船員が攻撃され、身代金の支払いを目的とした捕虜にされるような事態が二度と起こらないよう、緊急措置が採られることを望む」と、コメントしている。
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漁船員

難問を抱えた乗組員のための勝利

ITFは、漁業統合条約を採択した国際労働機関(ILO)での票決を、心から歓迎している。これは、ITFとその加盟組合が、長年にわたって運動してきたものである。
投票は、2007年6月に行われたが、賛成437票に対し、反対2票、棄権22票であった。
ITF船員部長のジョン・ウィットローは、「2年前、ILO漁業条約は、技術的問題で採択されなかった。定足数に1票足りなかったのである。それ以来、ITFは、責任ある使用者や関係政府との対話を通じ、漁船員の保護のために努力を倍加してきた。この票決は、漁船乗組員に人間らしい仕事を実現し、漁業部門の国際的な最低基準を設定する大きな一歩である。さらにまた、違法・未報告・無規制漁業(IUU漁業)を規制し、漁船で行われている最悪の虐待を予防することにもつながる。しかし、取り組みがここで終わってしまってはならない。我々は、条約が批准され、実施されることを確保し、働く場において漁船乗組員の状況が実際に変化していくようにしなければならない」と語っている。
6月初め、ITFのデビッド・コックロフト書記長はILO総会で発言し、ILO漁業統合条約を支持し、次のように述べた。
「漁船員にとって、この条約は不可欠である。漁業は地球上で最も危険な産業で、しかも労働条件は最も劣悪なものの一つとなっている。漁船乗組員が組織化を進めようとしたところ、彼らを海に投げ込んだ船主の例さえ報告されている」
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リバプール港での行動

同一船主の所有船舶5隻に、賃金全額支払われる


筆者:トミー・マロイ(英国リバプール港のITFインスペクター)

ギリシャのメリーヴィル・マリタイム社は、昨年、リバプール港で大いに歓迎されたが、乗組員の権利を満たすための支払いが完了するまでは出港できないことを知った。
2007年に私が最初に査察を行ったこの会社の船舶は、スマート号だった。乗組員の主張する未払い賃金は、合計46,000ドルであったが、船主は大して抵抗することもなく支払いに応じた。船内に雇用契約書がなかったため、私は乗組員全員のITFの雇用契約書を作成した。その当時、船内にあったのは、船主が同意したITFの賃金スケールよりも、大幅に低いものであった。
数ヶ月後、リバプールに入港したエヴァンゲリストリア号でも、同様な問題が明らかになった。このときは、16万ドルが払い戻された。
次に入港したのはプリンセス1号で、訪船した私は会社のポートキャプテンに出迎えられた。私の査察に対応するため、彼はギリシャから飛来してきていた。この時は、他の船と異なり、全ての書類がITF協約の要件通りに作成されていた。大きな問題ではなかったが、2人のデッキボーイと2人のメスボーイが21歳以上(1人は30歳代)だったので、それぞれ、甲板員とメスルーム・スチュワードに昇進させて、新しいITF雇用契約書を作成した。この結果、1人のメスルーム・スチュワードに支払うべき差額は約3,000ドルと計算されたが、その他の3人は数日前に乗船したばかりだった。
さらに数日後、私はレニュアール号に訪船した。この時も私を出迎えたのは同じポートキャプテンで、全ての書類が規定通りにそろっていることを確かめるためにリバプールに飛来してきていた。ところが、時間外労働が正しく記録されていないばかりか、協約に基づいて支払われていないことを、私は発見した。私が計算した未払い賃金は、13,504ドルであった。乗組員の大半が数日前に賃金の清算を済まして下船していなかったら、この金額は大幅に増加していただろう。会社は、未払い賃金を直ちに支払う手配をした。
このポートキャプテンによれば、会社の船があと2隻、リバプール港に4月中に入る予定であった。彼は、イースターの休日を家族と過ごすことを強く望んでいたが、リバプールに再度、飛来する必要があることは、ほぼ確実だった。
イースターの数日後に、メリーベル号がリバプール港に入った。私がギャングウェーに着いたとき、ポートキャプテンは、全てが完璧で何の問題も発見できないだろう、と保証した。
残念ながら、会社が乗組員の正当な賃金を組織的にだまし取っている事実を裏付ける証拠が、本船から提供されていた。私は、支払い総額89,000ドルの2006年12月31日付け全乗組員賃金支払いリストを入手していた。これは、会社が支払っている金額とITF協約に基づいて支払うべき金額との差額であった。各乗組員が受け取った金額に署名しており、賃金支払いリストの末尾には、未払い賃金が一切ないことを確認する乗組員の宣誓があった。さらに、総額53,000ドルの3月31日付けの同様な支払いリストがあり、これにも全乗組員が受け取りの署名をしていた。
私はポートキャプテンに、賃金計算書に示されている金額を乗組員が受け取ったことも、1月、2月、3月分の賃金計算書が正真正銘の帳簿であることも信じていない、と通告した。ポートキャプテンは、もし乗組員の1人でも計算書の金額を受け取っていないことを私が発見できたら、全額を支払う、と言った。この時点で、私が既に本物の賃金計算書を一式、手に入れていたことを、彼は知らなかった。私が、この計算書を彼に示しながら、フィリピン人乗組員を一人ずつ呼び入れたとき、彼らは勇敢にも受け取っていない賃金について受領の署名をさせられたことを証言した。この結果、ポートキャプテンは、私の計算した未払い賃金の支払いに同意する他なかった。未払い分の合計は、96,000ドルに達した。
今のところ、この会社はリバプール港で、約一年の間に30万ドルを超える支払いを自社船に行っている。しかし、彼らが支払ったのは、既に締結した協約に基づいて支払うべき金額であって、それ以上の金額は1円も負担してはいないのである。
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海上での負傷

支援の手以上のもの


一人のフィリピン人船員が海上での事故により船員職業の喪失に直面したが、ITFの機敏な介入によって、彼は的確な治療を受けることができた。
ギリシャ船の操機手であったフェデリコ・アロガンテは、2007年2月、ハンブルグのITFインスペクター、ウルフ・クリスチャンセンに、事故のため船員職業に二度と戻れないのではないかと深刻に悩んでいることを連絡してきた。
4週間前、ロシアのプリモルスクに入港中、彼は機関室で作業していて梯子から転落し、左手に負傷した。彼は、プリモルスクの病院に運ばれ、手をギプスで固定された。
4週間後、本船がハンブルグのドライ・ドックに到着したとき、この36歳の船員は検査を受けるために病院に送られた。ハンブルグの医者たちは、アロガンテがロシアの病院で受けた治療が誤っていることに気付いた。彼の左手は、ギプスで固定するのではなく、手術すべきだった。この影響で、彼の左手の動きは、既に限定されていた。
「アロガンテさんは、将来、船員として就労する能力が失われるのではないかと深刻に悩んで、ハンブルグのITF事務所に連絡し、支援を求めてきたのです」と、クリスチャンセンは説明している。
ITFは、アロガンテを市内の労災事故専門病院に移送するよう、ハンブルグ総合病院の医師たちに要請した。医師たちも、彼が乗り組んでいたプロポンティス号の船長も、この移送に同意した。ITFは、ハンブルグの本船代理店にも、この移送計画を通知した。
「アロガンテさんが病院で、いくつかの検査を受ける間、私は彼に付き添っていました。彼は手の傷害の専門医による検査を受けた結果、専門医は手の機能を永久的に失わないようにするためには、手術が必要であると判断しました」と、クリスチャンセンは述べている。
アロガンテの手術は成功し、約2ヶ月半の間、病院において左手の機能回復訓練を含む治療を受けた。「彼の仲間の乗組員や船員ミッションや私自身が、アロガンテさんを定期的に見舞いました。ギリシャの船主は、彼の妻が数週間、ハンブルグに滞在できるよう手配しました」と、クリスチャンセンは語っている。
長期にわたる病院の治療の後、アロガンテの手は機能を回復し、船員としての職業を続けていけるであろう、と医師たちは楽観視している。アロガンテは、フィリピンの病院でさらに治療を続けるため5月に本国へ送還されたが、彼の手に埋め込まれた金属板を除去するため、2007年末にはハンブルグの病院に戻る。
アロガンテは、5月にハンブルグを離れる前、ITFに一枚のカードを送ってきた。「貴方が私を援助するために費やした全ての時間に、心からの感謝を申し上げます」と、彼はクリスチャンセンに伝えた。「貴方は私の第2の人生の一部であり、私のヒーローです。私と私の家族全員は、心から感謝を申し上げます」。
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福利

東南アジアのプロジェクト、開始


船員の福利施設を大幅に拡大するプロジェクトが、東南アジアで開始されることになった。
2007年9月に国際船員福利委員会(ICSW)がシンガポールで開催した会議で、船員福利組織の代表者たちが、この計画に支持を表明した。事業の一環として、この地域の船員福利施設を調査、更新、拡大するために、4年分の資金を供与する。
基調演説を行ったシンガポールBWシッピングのデリック・アトキンソンは、東南アジア船員のほとんどが、船員福利団体と全く接触していないことを示す資料を提出した。ビルマ人船員二人も、同様の体験を語った。船員国際調査センター(SIRC)も、港湾における船員福利サービスに関する最近の報告書の中で、このような実態を立証している。
船主、組合、宗教団体、港湾当局、政府は、この事業を開始するために、東南アジア福利委員会を設立する予定だ。これは既に、東欧、アフリカ、南米で実施されているものに倣ったもので、ITF船員トラストからの資金供与を得て、ICSWの監督の下で実施される。ITF船員トラストのトム・ホーマーは、「他の地域では、このような事業が、船員にとって最も重要なニーズにあわせたサービス・施設のネットワーク作りに役立っている。東南アジアでも、同じような成果が生まれるものと確信している」と、語った。
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漁船員

海上の「悲惨な死」に抗議


ITFは、タイの漁船団に乗っていた39人のビルマ人漁船員の死に関する声明の中で、移民労働者への容赦ない搾取を非難した。これらの漁船員は、新鮮な食べ物も飲み物も与えられずに、75日間も放置されていた。船主と船長は、漁船員の遺体を船から投げ捨てるよう指示した、とも伝えられている。
インドネシア海域の6隻のトロール船で働いていた漁船員の恐ろしい死に関して、2007年4月に開催されたITF水産委員会が出した声明は、重大な懸念を表明した。これら漁船員には、許可証が更新されるまでの間、食糧などの補給品が全く与えられていなかった。
生存者と死亡した漁船員の遺族は、正当な裁きを求めて、3月26日に訴訟を起こした。
生存者の一人であるソー・モーは、タイのマハチャイ裁判所で、「食糧も野菜もなく、あるのは匂う米だけだった。私の近くにも死体があった。怖かったけれど、どうしていいか分らなかった。とても弱っていて、歩くことも出来なかったので、自分も死ぬかもしれないと思った」と、話した。
ITFは声明の中で、「裁判所の審理により、現代の奴隷労働の実態が暴露され、刑事罰が下ることを望む。加えてITF水産委員会は、インドネシア政府に対し、自国水域で、今後、このような驚くべき人権侵害が行われることのないよう、予防措置を取ることを要請する。またタイ当局に対しては、移民労働者に対する容赦の無い搾取行為に関与した自国民を、しかるべく処罰するよう要請する」と、断言した。
また、声明は、インドネシアのテュアルで、タイ籍の漁船から旅券も無い状態で下船させられた後、引き続き困難な状況に置かれているビルマ人漁船員の窮状にも言及している。その地域に住み着いたとしても、難民の地位を与えられていないので、地元の公安当局や移民担当官からのゆすりなどに遭遇しやすい。それゆえ、インドネシア政府が彼らに対し、難民の地位を与えるよう、ITFは要請している。
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トルコでのストライキ

賃金支払われるまで、船主は乗船できず


トルコのトゥズラ港でスカイ・シー号の乗組員(上の写真)が行ったストライキは、現地のITF加盟組合Dad-Derの支援によって2006年11月に勝利した後、解除された。12人の乗組員のうち、10人がストライキに参加し、50,612ドルの払い戻しを受け取った。
乗組員は、5ヶ月間も賃金の支払いを受けていなかった。特に乗組員のうちの2人は、9ヶ月間も賃金が未払いとなっていた。Dad-Derは、10月に乗組員から支援の要請を受けた。本船は、鉄くずを積んできており、着岸を待っていた。
当初、船主は解決に向けて協力することを拒否していた。そのため、船長と機関長を除く乗組員は、Dad-Derの助言に従って、錨地から港内への移動を拒否した。乗組員は、舷梯を引き上げ、ITF以外は何人たりとも乗船を認めない、と宣言した。実際、船主は、乗船を試みたが、追い払われてしまった。
Dad-Derは、船主と代理店に対し、一週間以内に支払いが行われなければ、本船は拘留されるだろう、と警告した。この結果、代理店は、数日中に全額を支払う、と連絡してきた。
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ITFへの要請

機関室の煤煙を吸ったフィリピン人船員が発病


ドイツのハンブルグ港に入港中のギリシャ船主が所有するエヴァンジェリア号のフィリピン人船員が、2007年8月に悲惨な船内環境への対応について、ITFの支援を求めてきた。
乗組員の大半が医師による健康検査を必要としている他、一部の乗組員は、船内、とりわけ機関室の不健康な状況を理由に、本国送還を求めていた。これに加えて、この船主は、ITF/PNO(全ギリシャ船員連盟)協約を締結していたにも拘わらず、この協約に規定された賃金を支払っていなかったのである。しかも、全ての乗組員が、ITF協約の規定に基づく乗船契約書を持っていなかった。
ギリシャのヘラス・マリン社は、2007年2月、この船舶をマルタで買ったが、その2ヶ月後には機関室でいくつかの故障が始まった。排気管の不完全なシールのため、機関室には常に煙が漂っていた。乗組員は、エヴェンジェリア号がハンブルグ港に着くまで、4ヶ月にわたって、この煙を吸っていた。乗組員らは、ITF事務所に、次のように連絡してきた。「本船の主機関の運転中は、排気管から一酸化炭素を含む大量の排気ガスが漏れ出しているため、機関部員は呼吸困難を感じています」
ITFは直ちに、ハンブルグ港のPSC当局と港湾保健当局に、本船の非健康的な状態を通報した。直前の寄港地、アムステルダム港のPSC当局からの報告に基づいて、既にハンブルグ港のPSC当局によって拘留される予定となっていたエヴェンジェリア号からは、さらに40件もの欠陥が発見された。ITFが警鐘を鳴らした翌朝、港湾保健当局は本船を訪れ、大部分の乗組員の健康検査を実施した。その結果、保健当局は「乗組員は煤煙にさらされたため、咳、喉の炎症、黒色の喀痰、胸部の痛みなどが見られ、医師の検診が必要である」と勧告した。乗組員のうち4人は、就労に不適格であると医師によって診断され、船主の経費負担でハンブルグからマニラに送還された。
ITFインスペクターのウルフ・クリスチャンセンは、この他にも治療が必要な乗組員がいたと指摘し、次のように述べた。「大半の乗組員は、明らかに健康検査を希望していなかったのです。多分、彼らは健康検査の結果、就労に適さないと診断され、本国に送還されることを恐れていたのです」
荷揚げを終了したエヴェンジェリア号は、ハンブルグ港で拘留され、機関室の大規模な修理を実施した。その後のPSC当局による完工検査によって、機関室に排気ガスが漏れていないことが確認された。
本船のハンブルグ入港期間中に港湾保健当局は、乗組員の健康チェックを2回、実施した。
ハンブルグ入港中のエヴァンジェリア号の乗組員が、現行のITF労働協約に基づく賃金を支給されていないことが判明したため、ITFは船主に対し、本船がハンブルグにいる間に、未払い賃金を支払うよう求めた。
数回の話し合いの後、船主は要求を受け入れ、ITFの請求金額がハンブルグの船主代理店の銀行口座に振り込まれ、本船に運ばれてきた。2007年の6月分と7月分の未払い賃金総額28,336ドルが、ハンブルグで各乗組員に支払われた。
ITFは、さらに今後、現行のITF/PNO協約に基づいて賃金を支給するよう要求し、船長はITFの雇用契約書を作成して各乗組員に配布することを約束した。
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海事政策

欧州の「失われた機会」


ITFの欧州地域組織である欧州運輸労連(ETF)は、EUの海事政策案が船員に影響を与える重要な問題を扱っていない、と批判している。
2007年10月10日に欧州委員会(EC)が採択した、「青書」として知られるEU総合海事政策は、EUの船員が直面している深刻な雇用危機への対応が全く不十分で、雇用に及ぼす競争の影響を低減させる対策を講じずに、規制緩和を推進し、自主規制を大幅に認めるものだ、とETFは主張している。
一方、一定のEU社会指令から船員を除外する根拠を見直す過程で、社会パートナーとの協議を行う動きについては歓迎した。しかし、EU諸国の旗を掲げる船に乗り組む船員が居住地や国籍により差別されている問題や、便宜置籍船(FOC)と基準以下船が船員に及ぼす影響に言及していない等、未解決の問題が残されている点に懸念を表明した。
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米国

一時上陸の規制緩和に努力


米国商船委員会は、主な海事コードに定める国の義務に則り、船員の上陸許可の取得が、より簡単に行えるよう、米国政府に対して勧告した。
商船人事問題諮問委員会は、2007年4月、船員が上陸許可を取りやすくなるよう、いくつかの勧告を行った。組合代表や、教会牧師を通じて船員の個人的な面倒を見てきたアポストルシップ・オブ・シーを含むシアトルでの会議の参加者は、牧師や組合代表の訪船が、もっと簡単に行える必要性を強調した。
勧告は、ITFの報告、「アクセスの拒否」に含まれている情報を基に作られ、船員の一時上陸を容易にするためになされるべき国の義務は、国際海事機関(IMO)の国際船舶・港湾施設安全コード(ISPS)に述べられている、と指摘している。
勧告は、ISPSコードの主要な側面について見直しを進め、その上で船主や運航責任者に対し、船舶で働く人や船員にとって一時上陸が得やすく、船員福祉団体や労組の代表などの訪船者とも会い易くなるよう、仕組みの改善を求めている。また、もう1つの勧告は、船員の一時上陸や訪船者へのアクセス改善手続きを盛り込めなかった「施設安全計画」を承認しないよう、米国沿岸警備隊に求めている。
会議に参加したITFコーディネーターのジェフ・エンジェルスは、「米国の沿岸警備隊が、今回の勧告を考慮してくれることを願っている。船員の一時上陸の権利が維持され、診療所など陸上福祉関連施設を利用することが容易になることは基本である」と、語った。
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欧州

北欧の行動週間
改善の継続を目指す


北欧で運航されている船舶の基準以下の労働条件をターゲットにした、ITFの1週間に及ぶ行動は圧倒的に成功し、船員の生活によい影響が継続するものと見込まれている。
2007年6月8日に終了したITF行動週間中、ITFインスペクター、港湾労働者組合、船員組合は、船内での人間らしい条件を維持することを目指し、便宜置籍船と自国籍船の査察を行った。行動週間に参加したのは、ベルギー、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、ラトビア、リトアニア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ロシア、スウェーデン、英国である。
主な成功例には、ドイツにおける12件の新たな協約締結が含まれ、ハンブルグでCMA CGMイグアク号(リベリア船籍)やMSCブレーメン号(リベリア船籍)がボイコットされたように、その多くは行動を起こすことにより達成された。フランスのシェルブールでは連帯行動も実施され、ノルマンディー号がバリケードで封鎖されたが、アイリッシュ・フェリー社とケルティック・リンク社が団体交渉協約について話合いを開始することに合意したため、バリケードは解除された。
一方、ポーランドでは、組合とパナマ籍船エレニK号の船主の間でITF協約に関する協議が行われ、コロンビア・シップマネージメント社が、ケープ・フルマー号(マーシャル船籍)に関するITF団体協約を締結することを約束した。
ITF海事コーディネーターのスティーブ・コットンは行動週間を、「今までにないこと」と評価した。彼は、「ヨーロッパ中で何百隻もの船舶が査察され、安全、未払い賃金、劣悪な労働条件などの問題が取り上げられた。港湾労働者、組合、そして国境を超えた仲間から支援を得ることが出来た。この行動週間は、実施された週を遥かに超えた継続的な効果をもたらしている」と、コメントした。
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荷役

船員の荷役を非難


ITFは、2007年5月に、オーストラリアのケンブラ港で港湾労働者が行うべき作業に船員が使われたことに対し、怒りを表明した。
イタリア所有でマルタ船籍のバラ積み船「ケイポ・ノリ号」で、乗組員が本船クレーンを使っての石膏の荷揚げ作業を指示されたことから、地元や国際的な労組から抗議を浴びる結果となった。カナダ・スティームシップ・ライン(CSL)がチャーターしたケイポ・ノリ号は、オーストラリア籍でオーストラリア人を乗組ませた船の代わりにケンブラ港に初めて寄港したもので、本船荷役ができる船ではなかった。
本船に適用されているITF承認協約に文字通り違反して、フィリピン人乗組員に対し本船の装置を使って揚げ荷するよう指示が出された。ITF承認協約は、本船の乗組員も他の者も、地元の港湾労組の事前の承諾なしに荷役作業を命じられることはない、と定めている。ITF加盟のオーストラリア海事労組(MUA)組合員が、伝統的に荷役作業を行っている。本船には、地元のITFインスペクターが乗組員に接触することを拒否した、という別の協約違反もあった。
組合を支援するために地域でピケが張られ、ケンブラ港の労働者への連帯メッセージがオーストラリア全土から寄せられた。この事件は、オーストラリア港湾の働き甲斐のある人間らしい労働条件に、更に攻撃が加わる前触れではないか、と懸念されていた。
「世界中のITF加盟組合は、この事件に驚いている。港湾労働者は、船員の権利を支援する極めて重要な役割を負っている一方で、働き甲斐のある人間らしい仕事と安全に対する権利も有している。ITFは、港湾労働者と船員の公正な取り扱いを求めて闘うMUAとケンブラ港の地域社会を、全面的に支援している」と、ITF書記長のデビッド・コックロフトは語った。
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APモラー/マースク

対話を歓迎


デンマークのコペンハーゲンで開かれていたデンマークの巨大海運会社APモラー/マースク社と22カ国のITF加盟労組の会議が、2007年4月に終了した。この会議について、「会社とそこで働く労働者の双方の利益となることを望む旅の第一歩」と、ITFは表現している。
2日間にわたって開催されたこの会議は、デンマークの労組3Fが主催し、32の労組の代表が出席した。APモラー/マースク社のクヌート・ポントピダン先任副社長は、この会議において挨拶し、会議終了後の記者会見にも出席した。
会議後に行われた記者会見でITFのランドール・ハワード会長は、「グローバル経済の時代には、内部の連携をより効果的に図ることと、労働者にも会社にも利益となる対話を始める用意があるAPモラー/マースクのような主要企業と建設的な関係を構築することが、労働組合には必要である。」と、コメントした。
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便宜置籍船(FOC)と基準以下船に対するITFキャンペーン

2007年の数字と実績


2007年にITFインスペクターが訪れた船は、9,545隻であった。平均すると、年間を通じて、1時間当たり1隻以上となる。
査察は、世界中の657港湾で実施された。
ITFのFOCキャンペーン活動によって、2007年中に回収された船員の未払い賃金と補償金の合計は、1660万ドルを超える。
ITFが実施した査察の82%は便宜置籍船であったが、過去に劣悪な実績を残した船も特別査察の対象となった。(FOCリスト参照)
世界43カ国の港湾で、120人のITFインスペクターが活動している。
2007年中に、ITF加盟の船員労組とFOC乗組員は、FOCキャンペーンの支援を受けて、世界4大陸の21カ国で争議行動を実施した。
2007年にITF団体協約の適用を受けた船員数は、209,950人であった(2006年は193,325人)。
2007年にITF協約が適用された便宜置籍船は、合計9,105隻であった(2006年は8,161隻)。
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エストニア

船が拘留された後、648,236ドルが二人の乗組員に配分された

筆者:ヤヌス・クイフ(タリン港のITFインスペクター)

2006年7月、マルタ籍船アイシス号の船員から、未払い賃金の苦情を受けた。私は、エストニアのヤニフェルド海運に連絡し、未払い賃金と会社の責任について知らせた。会社は、所有船の一隻を売却して乗組員の未払い賃金を支払いたい、と回答してきた。
しかし、何も変わらなかった。2006年の8月から10月にかけて、私はさらに未払い賃金についての苦情を受けた。この船が売却され、ノルディック・シッピング・グループが新しい船主となったことを知ったのは、10月になってからだった。その後、この船社は、マルタ船籍のフィオナ号に適用するITF承認協約をフランスで締結し、エストニアに住む乗組員の家族に賃金の未払い分を支払った。2006年10月までの未払い賃金総額は、97,161ドルであった。
我々は、フィオナ号とアイシス号の乗組員に会った。船主の代表、オレグ・バラバノフは、所有権と2006年10月4日以降の未払い賃金の支払いについて、我々に知らせてきた。
2006年11月には、バラバノフとのミーティングを数回、開いた。我々は乗組員の未払い賃金の支払いスケジュールについて合意し、覚書に調印した。未払い賃金と支払いに関する覚書について、銀行にも報告した。
しかし、11月末に我々が銀行から得た情報によれば、バラバノフが船を買い取るための資金は、まだ銀行に入金されていない、とのことであった。我々は直ちに、フィオナ号を差し押さえるよう、弁護士に依頼した。
こうしてフィオナ号は、2006年12月15日、11人の船員の未払い賃金、約10万ドルの担保として差し押さえられた。3日後にはアイシス号も、27人の乗組員の未払い賃金、約15万ドルのために差し押さえられた。
我々は、これらの件を裁判所に提訴し、2007年1月18日、裁判所は我々に有利な決定を下した。
これらの船は競売にかけられ、4月23日にアイシス号、6月4日にはフィオナ号がエヴィア海運に売却された。2007年6月までの未払い賃金が計算され乗組員に支払われたが、その総額はアイシス号が333,966ドル、フィオナ号が314,270ドルであった。
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