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グローバルユニオン

No.22/2008
■特集記事
 
恥辱のカジノ船

メキシコ湾内に係留されていたカジノ船の乗組員は、船主が不正な取引のあげくに、この船の運航を放棄したため、船内に取り残されてしまった。アナ・リリア・ペレスが報告する。

米国の共同企業体、フィエスタ・クルーズ・ラインが所有するフィエスタ・カジノ号は、メキシコで運航される、この種の船としては最初のものだった。しかし、燃料、飲料水、食料もない船内に乗組員が取り残された後、この船はメキシコ湾で錆びるにまかされている。
国際海事機関(IMO)によって廃船とされたこの船に残された、主としてメキシコ人からなる15人の乗組員と米国人のエディー・ナルシソ・ゴメス船長は、メキシコ官僚の汚職と船主による船体放棄の被害者である。
この状況は、フィエスタ・クルーズ・ラインとその子会社、トライデント・ゲーム開発社、MHDエンタープライズLLC社、MHDメキシカーナ社に対して、乗組員が苦情を申し立てたことによって発生した。乗組員は、数ヶ月にわたり賃金を受け取っていなかった。この船が裁判所による運航差し止め命令の対象となったため、本船が移動することも、乗組員が下船することもできなくなった。
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現代の海賊

2年前にフィエスタ・カジノ号がメキシコ領海に到着して以来、この船は汚職の網の目にはまり込んでいた。
当時の内務大臣はフィエスタ・クルーズ・ラインに対して、このカジノ船をメキシコの領海内で運航するための免許を与えると約束していた。ところが、2005年8月、MHD社が、本船をメキシコ湾岸沖に到着させた際、運輸通信当局(SCT)が発給した書類と商船所管当局(DGMM)が発給した航行許可証を提示したところ、これらは偽造書類であることが発覚した。フアレス港の港長は、関係書類が偽物であるにもかかわらず、コスメル港とプラヤ・デル・カルメン港まで航行することを認め、そこでカジノ船としての運航をスタートさせた。
この時点で船主は、フィリピン人を主体とする乗組員に対し、数ヶ月にわたって賃金、燃料、飲料水、食糧などを供給していなかった、とメキシコのエンリケ・ロサノITFインスペクターは述べている。そのうえ、外国人であるとの理由で、彼らの上陸は認められなかった。ITFの圧力によって、2006年1月、船主は乗組員の未払い賃金を支払ったが、その金額は81,000ドル以上になった。
ところが、3ヶ月後に船長が下船すると、状況は一段と悪くなった。通商法や国際条約が港長の介入を規定しているにもかかわらず、港長は本船の問題に介入することを拒否した。そこで、ITFが再び手を差し伸べた結果、乗組員は下船することができた。フィエスタ・カジノ号は、ユカタン州のプログレソ港に移動し、そこで非合法に入渠が認められ、メキシコ人船員を雇い入れた。
2006年8月、港長は本船がベラクルスに入港することを許可した。フィエスタ・カジノ号は船籍をパナマからベリーズに変更し、サクリフィシオ島沖に錨を下ろし、秘密のカジノとして営業を開始した。本船は、メキシコに到着してから12,000海里を移動していた。
4週間にわたって、海上カジノは、州政府やSCT当局などの「特別ゲスト」のために営業した。同じ会社が所有する280人乗りの高速フェリー「キジバト号」が、賭博客の海上輸送を行った。2006年10月14日、船長が休みの日に、キジバト号は座礁してしまった。
15分も経たないうちにメキシコ海軍の小型ボートが駆けつけ、「特別ゲスト」を救出していった。ところが、高速フェリーの乗組員(機関士2人、操舵手1人、その他の船員5人)は、15日間にわたって、食糧も、飲料水も、寝る所もない船内に置き去りにされた。
操舵手のカルロス・アナヤは、次のように述べた。「船主は、乗組員を人道に反して遺棄し、運命に任せてしまいました。私たちは、何もなく、椅子で寝ました。彼らは、時々、食料と水を持ってきただけで、ほとんど何もしてくれませんでした」
高速フェリーがドラマチックな事故を起こしたため、州政府はベラクルス沖にカジノ船が存在することを認めざるを得なくなった。商船局のライムンド・マタ・コントレラス次長は、ゴメス船長に対し、早急に船を放棄するよう督促した。こうして乗組員は上陸し、州政府はフェリーを民間埠頭へ移動させた。州知事は、フィエスタ・カジノ号を塗り直すよう命じ、州政府の権限を使って船籍登録をベリーズ船籍に変更し、船名も変更した。本船は、今では、プライベートなイベントに利用されている。
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遺棄された乗組員

2007年2月22日、船舶代理店のロハス・ベラ商会は、MHDメキシカーナ社の代理として行動することを拒否した。座礁したフェリーの乗組員を含むフィエスタ・カジノ号乗組員15人は遺棄され、修理のためガルフ海軍工場(TNG)に係留された本船に、運命をあずけることになった。
ゴメス船長は港長に援助を求めたが、介入は不可能であると告げられた。港湾当局の怠慢が乗組員の問題を増大させた、と船長は主張している。5月4日、船員たちは、裁判が開始されるまで、本船を差し押さえることについて、メキシコ連邦仲裁評議会から承認を得た。この予防的措置のために、船員たちは大きな犠牲を払わねばならなかった。すなわち、彼らは上陸することを諦めねばならなかった。上陸すれば、「本船を放棄した」と見なされ、結果的に数ヶ月分の賃金を失う可能性があったからである。
ようやく船を離れることができるようになった6月15日まで、彼らは労働組合から差し入れられるパンと清涼飲料水以外、照明も食料もない船内で生き延びなければならなかった。
このような困難にもかかわらず、1986年にノルウェーで建造されたかつての豪華船のカーペットや照明器具類やバーの設備などを維持管理するために、乗組員は懸命に働いた。フィエスタ・カジノ号は、2004年までフロリダ沖でカジノ船として運航されていたが、この頃は、既に、全くの廃船になっていた。
船長は、本船の現状を、次のように語った。「私たちがこの地で経験した日々は、昨日も、それ以前も、不安と苦悩と心配に満ちています。時速80キロの暴風が、我々の船にまともに吹き付けました。本船は3月14日以来、停電したままです。2006年11月以降は、一滴の燃料も補給されていないのです。飲料水も食料も全くなくなりました。その上、賃金は何か月も受け取っていません。港長に本船の状況を知らせましたが、何の反応もありません。TNG(ガルフ海軍工場)と港長は、船舶と港湾施設に関する国際保安コードを無視しており、明らかに、このコードに違反しています。」
エンリケ・ロサノは、SCT当局者の無責任さを非難し、「SCTの怠慢と不作為は、彼らが共犯者であることを示しています」と、述べている。
フィエスタ・クルーズ・ライン社での7年を含めて、30年の経験を持つゴメス船長は、「わが国の大使館も、私の援助要請を無視しました」と語っている。彼は2月にフロリダに帰ろうとしたが、出発の2日前になって、パスポートを移民局の係官に取り上げられてしまった。ゴメス船長は、本船の紛争が連邦政府と州政府関係者の汚職に絡み、問題を一層紛糾させる結果になった、と言う。
「全く恥ずかしい、恥さらしのカジノ船だ」と、彼は言っている。
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筆者のアナ・リリア・ペレスは、メキシコの不正調査月刊誌「コントラリネア」のジャーナリスト。本記事は、コントラリネア誌に掲載された記事の要約である。エディー・ゴメス船長は、その後、マイアミに送還された。
エンチャンテド・カプリ号(IMO番号:7359474)の元乗組員全員へのお知らせ

ITFは、エンチャンテド・カプリ号に関する米国での訴訟によって徴収された、関係する元乗組員のための清算金を保管しています。2000年から2001年にかけて、エンチャンテド・カプリ号に乗船し、賃金の未払いがある元乗組員は、清算金を受け取る権利を確認する必要があるため、直ちにITFに連絡してください。

連絡先は下記の通り:
Head of Action Unit
ITF
ITF House
49-60 Borough Road
London SE1 1DR
United Kingdom
Tel: +44(0)207 403 2733
Fax: +44(0)207 357 7871
Email: mail@itf.org.uk
Internet: www.itfglobal.org
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最初に採るべき行動は、先ず、現地のITF代表に連絡することです。このITFシーフェアラーズ・ブルテンに記載されている住所と電話番号等を参照してください。何らかの行動を採る前に、現地の助言を必ず得てください。
一部の国においては、船舶の乗組員によるストライキが、違法行為となることもあります。そのような場合には、現地のITF加盟組合の代表が、状況を説明します。
多くの国において、労使紛争での勝利の鍵を握るのは、ストライキ行動です。この場合にも、現地の助言に基づいて行動する必要があることは言うまでもありません。多くの国で、船員には、航行中を除き、入港中のストライキ権が法律上、認められています。
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