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グローバルユニオン

No.22/2008
■組織活動
 
労働組合を立ち上げる

海図のない海域で、労働組合を組織する方策は?
それまで船員組合が存在しなかった4ヵ国で、船員組合の発足をITFがどのように支援したかを、国際船員組合育成プログラム(ISUDP−ITF)のマーク・デービスが報告する。
ページ末では、トルコにおける組織活動がどのように行われたかを、アフメット・デルミサールが詳細に解説する。


海事産業の労働者を保護するためには、これまで以上に、労働組合が不可欠な要素である。ITFはその活動の核心を、「グローバルな組織化」と表現している。とは言うものの、これまで船員組合が存在していなかった国に、どうすれば船員組合を立ち上げることができるのだろうか?
労働組合組織を新しく、成功裏に結成する普遍的な法則は存在しない。各国には、それぞれ独自の法的枠組みや政治的環境がある。しかし、共通のアプローチ(目的達成のための準備・手順)はある。これらは、新たな海事関係労組の結成を、マレーシア、スリランカ、チモール、トルコで成功に導いたITF-ISUDPの活動を通じて形成されたものである。
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マレーシア

1997年当時、マレーシアには約10,000人の船員がいたが、マレーシア籍船における劣悪な賃金や労働条件にも拘わらず、船員組合は存在しなかった。けれどもマレーシアには、組織活動の基盤があった。それは、ITF加盟組合協議会が活動していたこと、労組のナショナル・センターであるMTUC(マレーシア労働組合会議)の政治的影響力があったこと、さらには一部のITF加盟労組が海員組合の結成支援に積極的だったことなどである。
MTUC、マレー半島運輸労組、ポートケラン港湾労組などの支援によって、マレー半島船員組合(MSU)は1997年末までに登録手続きを完了した。企業別組合を法律で規定しているマレーシアにおいては、MSUは例外的な労働組合である。
2003年にITF加盟組合となったMSUは、約800人の船員を組合員とし、ラフィーク・ラムーがフルタイムの組織担当事務局長として活動している。ラフィークは、マレーシアにおけるITF便宜置籍船反対キャンペーンの最前線で活動してきた他、最近ではITF・FOCインスペクターとしての訓練も完了した。MSUは、マレーシア海事局とのユニークな協力関係を確立しているため、船舶に関する紛争を有利に解決することが期待されている。
新しい労働組合を立ち上げるための資金はITFが提供したが、2007年末までにはMSUが完全に財政的に自立することが予定されている。
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スリランカ

14,000人の海上労働者がおり、高度に組織された港湾労働組合があり、船舶における搾取が深刻であったにもかかわらず、マレーシアと同様、スリランカにも船員独自の労働組合は存在していなかった。ITFは以前、一般労組内に船員部門を設立しようと努力したが、不成功に終わっていた。
2005年10月、ITF加盟労組のJSSが、船員を組織することを計画した。JSSは既に港湾労働者を組織していたため、港湾の組合員は港湾に立ち入り、訪船するための「保安許可証」を所持していた。そこで、元船員の活動家であったランジャン・ペレラに、組織活動の任務が与えられた。
一般の組合員や組合の中心的メンバーとなり得る船員を集めて、2006年中に労働組合創立のためのセミナーが3回開催された。参加者が、幾つかの部門を持つ一般労組ではなく、船員独自の組合を求めていることは、明白であった。JSSは、この要望を尊重し、作業委員会を作った船員組合の規約を起草した。その結果、2006年にスリランカ船員組合(NUSS)の登録が承認された。
2007年4月、ITFはNUSSの加盟申請を承認した。JSSの支援のもとに、NUSSは現在、約1,000人の組合員を擁している。ランジャン・ペレラは、ITFインスペクターとしての訓練を受けている。
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東チモール

2000年に東チモールがインドネシアからの分離独立を果たしたとき、オーストラリア海事労組(MUA)は、最優先事項が船員労組の結成であると考えた。独立以前、豊かな資源に恵まれたチモール海の石油/天然ガス産業は、インドネシア領東チモールとオーストラリアの排他的参入権を確保するために規制されていた。しかし、オーストラリア政府は、この規制を緩和した。MUAは、この新しい国家の発展を加速するためには、石油/天然ガスによる収入の公正な分配を要求することが重要であり、そのためには、新独立国東チモールのオフショア産業労働者(石油/ガス関連労働者)の組合を、MUAの北のパートナーとして組織し、労組研修や職業訓練を実施していくことが重要であると認識した。
MUAが組織活動家のミック・キリックを2002年、首都のディリに派遣する一方、ISUDPは、海事関係労組を結成するためのMUA/ITFプロジェクトの統合・調整を行った。2003年には、現地の労働組合センター組織、KSTLの支援のもとに、チモール海事運輸労組(UMTTL)の結成総会が開催された。組織人員約80人のこの労働組合は、2004年にITF加盟組合となった。
2004年から2005年にかけて、国際労働機関(ILO)はUMTTLの組織を強化するための資金を供与した。2005年以降、スウェーデンの労働組合センターLO/TCOは、不穏な社会情勢という困難な状況のなかで、労働組合を拡大強化するための資金を提供した。この資金提供は、2009年まで継続される。
パウリノ・デコスタ書記長の運営のもとに、UMTTLの組織人員は350人に増加した。ディリの港湾における数人のUMTTL組合員の悲劇的な死亡事故の後、UMTTLは、インドネシアの専門家をジャカルタ国際コンテナ埠頭労組(SPJICT)から招いて、2007年7月、港湾労働者の職業安全と健康に関するセミナーを開いた。UMTTLは、組織活動を一段と促進するため、SPJICTとMUAの連帯支援を得ることが可能になった。
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トルコ

大半が民営化された海運産業にはトルコ国旗を掲げた1,000隻以上の船舶と約60,000人の船員がいたにもかかわらず、トルコで船員組合が活動していなかったのは意外であった。
しかしながら、2001年に、海事大学の講師や民間部門の船員組合活動家の大きなチームが、船員を代表する組織を結成する意図でITFと会ったとき、変化が始まった。2002年4月には、スウェーデンのITF加盟船員組合SeKoが、労働組合組織を育成する目的で、イスタンブールにトルコ船員連絡センターを設置するためのスポンサーとなることに同意した。
連絡センターは、労組教育や組織活動の指導を行った。これが呼び水となって、海事専門教育のカリキュラムに労働組合教育を含めることとなり、Dad-Der(海事従事者連帯組合)が結成された。
Dad-Derは、2006年にITF加盟組合となった。2006年から2007年にかけての徹底的なチーム作業により、80隻以上の船舶と約1,500人の船員をカバーする団体協約が締結された他、トルコの港湾で発生する船員の紛争に連帯と支援を提供するためのネットワークが誕生した。この新しい労組に重要な助言や政治的な支援を提供する役割を、SeKoが現在も果たしている。
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最初のステップ

国内担当者と国際担当者の所管事項を明確にする。資金・人材のギャップを埋めるために組織活動を調整し、教育計画を立案し、組織活動に着手する。国内労組の中央組織(ナショナルセンター)の役割は、その能力、組織プロジェクトへの参加意欲の大きさによって変化する。
組織担当者や教育担当者となる国内の労働組合活動家を確保する。
利用可能で有益な関連労働組合教育プログラムなどが、国内、小地域内または地域内において存在するか否かについて、情報を入手する。
他の産業部門の適切な労組との永続的な連携または指導的な関係を確立することによって、新たに発足した労組の前進を確実にする。
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夢から現実へ

ボランティアの集まりが、いかにして設立間もないトルコ海事従業員連帯組合(DAD-DER)を、仲間うちの夢物語から連帯行動を実施する力ある組織へと成長させたか、DAD-DERのアフメット・デミルサール書記長が語る。

トルコで法律が改正され、労働組合の組織化が可能になった一年後の2004年にDAD-DERは設立され、2006年にはITFに加盟した。しかし、トルコの船員の間に連帯意識を育もうと活動を開始したのは、10年も前だった。
きっかけは、海事大学の16人の同級生の集いだった。仲間が集まり、船員の組合をつくることを夢見ていたが、1980年の軍事クーデターにより、法律が組合の設立を阻む最大の要因となった。特に新しい組合の設立は、厳しく制限された。
当時、夢を語る以外にできたことと言えば、海上で問題を抱える船員を助け、彼らの訓練に全力を傾けることくらいだった。しかし、この船員の支援活動の中で、ITFとも緊密に協力するようになった。1999年から2006年までの間、たくさんの船員を援助し、連帯のネットワークを改善するなど、多くを成し遂げてきた。しかし、新たな船員たちが同じ問題を抱えている現実を見ると、状況を改善するには至らなかったわけだから、何も成果が上がってこなかったとも言える。
守れない約束は仲間や組合員にしないように心がけてきたが、2004年のDAD-DERの設立が転機になった。組合設立後は、計画をきちんと立て、ステップ・バイ・ステップで進んできた。現在では、組合員数は1,800人まで増えた。そのうち少なくとも400人が活動家で、我々と絶えず連絡を取り、現状を把握し、現場の様子について組合に連絡してくれるし、どのような行動を取ればいいか、組合に助言を求めてくる。彼らが新しい組合員を勧誘し、船主に対する要望を組合に教えてくれる。
組合の主戦力はボランティアや最前線の活動家であり、長年一緒にやってきた仲間だ。「チーム」と呼ばれている役員は、最年長が38歳と若く、エネルギッシュで、大義に身を捧げている者ばかりだ。皆、船員としての経験はかなり長く、教育水準も高い。各人が、海運業界に広いネットワークを持っている。
DAD-DERの「役員チーム」は、船員の状況を改善しようと力の限りを尽くしている。船員の権利や国際労働運動について、意識を高めるための訓練も実施している。支援と力を強化するために、できるだけ多くの活動家を育成している。重要なのは、血気盛んな若者に、大きな全体像から判断して適切な行動を取る忍耐力を学ばせることだが、一方、彼らの燃え盛る情熱の炎を消すことがあってはならない。大学講師の中にも活動家がいるのは幸運だと思う。彼らの協力なくしては、ここまでたどり着くことが不可能だった。
組合のために活動してきた仲間は、これまで何でもやってきたが、現在、組合の組織再編をしながら、よりプロフェッショナルな組織を目指している。組合の責務は、組合の運営、協約締結、訓練、訪船活動と大きく分けて4つある。
2006年11月から2007年9月の間に、DAD-DERの協約班は、約90の協約を締結した。同じ期間に、二重帳簿を2割減らすことに成功し、90隻の協約船に乗り組む部員の賃金は7割、職員の賃金は3割引き上げられた。
現在、DAD-DER /ITFナショナル協約作成のために努力しているが、これは我々にとって非常に重要な前進である。同協約により、定期的に浮上してくる問題に、より系統だった解決策を見出すことで、FOC船に乗り組むトルコ人船員の条件が改善されることを願っている。
組合の訓練班は、一連の訓練プログラムを実施している。2007年には、活動家のための組合内訓練を毎月行い、船員のための屋外セミナーを2回、協約船での現場訓練を1回、マルマラ地方でILOの港湾局規則に関する30分の説明会を1回、新しいナショナル協約に関する船主を対象としたセミナーを1回行った。
機関長をしている同僚の一人が、地元のインスペクターと活動家グループを束ねている。基準以下船が多い黒海沿岸地域に問題が頻発し、インスペクターたちは未払い賃金回収のためのストや苦情処理に、大半の時間を費やしている。2007年1月から8月の期間に、インスペクターのチームが回収した未払い賃金は80万米ドルに上る。
組合は、組合員が雇用契約にサインする前に、乗船後の状況、船舶所有者の状況、乗船中に船主が不法行為を行った場合は保護される権利を有している事などを組合員に確実に知らせるようにしている。一般的に、私たちは、組合の活動があるからこそ、ITF協約締結船だけでなく、全ての船舶に乗り組む船員の賃金や労働条件が改善されていると確信している。
現在、福祉サービスの提供は行っていないが、2008年の第一四半期中には、船員に対する福祉サービスが最も必要とされているトゥズラ地域に、小さなインターネット・カフェを開設する予定だ。
今やるべきことは、ボランティアで活動している仲間を、有給の組合職員にしていくことだ。現在、組合は、5人の役員にしか賃金を支払えていない。ボランティアの援助があったからこそ、組合の活動能力は大幅に拡大してきたが、ボランティアにも生活があるため、賃金をもらって働く必要がある。それが、長期プロジェクトの計画を立て難くしている。
組合の立ち上げから間もない頃は、ボランティアとともに活動を進めるのは容易だった。期待もそれほど大きくなかったため、どのような小さな成果であっても、「ゼロの状態」と比較すれば大きな成果と言えたからだ。しかし、今、組合は、ボランティアの熱意を失うことなく、組合をよりプロフェッショナルな組織へと成長させていかなければならない。
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