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2005年1〜3月 第18号
■バス運転手の憂鬱
 
バス運転手の憂鬱

フランスでは長い間、バス運転手はトラック運転手よりも楽だと考えられていた。しかし今は違う、とクリストフ・シクレは語る。

長時間労働、低賃金、仕事の多様さ・きつさ、不安定雇用、パートタイム契約、車両の老朽化とそれに伴う危険、下請け業者の多用、訓練不足・・・。バス運転手の仕事は地獄そのものだ。
業界団体から委託を受けた独立系コンサルタント会社、エボリアンスが最近、バス運転手に関するデータを公表した。それによると、過去15年間の賃金上昇率はたった15%、運転手の3割が45歳以上、50歳に達する前に運転非適格を宣告される人が2割、従業員数50人未満で労働組合を認知していないバス会社が5割、運転手の約半数がパートタイムという状況だ。
クーリエ・ブルトン社(本社サンマロ)のバス運転手、セルジュ・ガウデは7年間、長距離トラックを運転していたが、家族とより多くの時間を過ごすためにバス会社に転職した。
正社員として働き始めてもう12年になるが、手取りの給料は物価スライド制の最低賃金を若干上回る程度だ。
「運転手(兼車掌)が人間らしい生活を送るためには1時間あたり2〜3ユーロの賃上げが必要」と、クーリエ・ブルトンの「労働者の力」(FO)職場委員を務めるガウデは言う。
現在、公共サービスが大手民間企業の標的にされている。最初にねらわれたのが給水・水処理業務だ。水道料金は上がり、労働条件も悪化していった。そして次に狙われているのが旅客輸送だ。
旅客輸送といっても、スクールバス、市バス、都市間・長距離バス、国内観光バス、国際観光バスと、実に幅広い。これら5つの全く異なる業務を一人の運転手が1日にいくつもこなしているのだ。例えば、午前中にスクールバスを運転し、お昼になると市バスか長距離バスを、午後には国内観光バスを、夕方には再びスクールバスを運転する、とガウデは説明する。
「時には夜の10〜11時まで働くこともあるし、1日に5〜6台のバスを運転することもある」とガウデは言う。
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多国籍企業による買収

現在、3つの大手企業グループが業界を席巻している。ベオリア・エンバイロメント(ヴィベンディの一部門)、ケオリ(SCNFの子会社。SCNFはヴィベンディとイギリスの年金基金が一部所有。)、トランスデブ(預金供託金庫の一部)の3グループだ。
業界最大手はベオリアだ。ベオリア・グループ労使協議会FO代表およびコネックス社(ベオリアの運輸部門)FO職場委員のマーメド・マーランは次のように説明する。
「ベオリアは廃棄物処理、電力、水道、交通運輸の4部門に進出しており、ヴィベンディ・グループのドル箱会社だ。同グループの交通運輸部門がコネックスで、本社はナンテール(フランス北部)にある。旅客輸送が主体だ」
コネックスの総従業員数は5万5千人(22ヵ国)。その95%が地方自治体の公共交通に従事している。例えば、パリ市交通局(RATP)はリュエーユ−ラセーユ−サンクルー路線をコネックスに委託している。驚くには値しないが、コネックスの運転手の月給が1,400ユーロなのに対し、RATPの月給は1,600〜1,800ユーロだ。ボルドー市、ナンシー市、サンジェルマン・アン・リイエ市もコネックスの網にひっかかった自治体だ。
「中小企業に比べればコネックスの給料は悪くない。最近のストで2%の賃上げと75ユーロの臨時手当を勝ち取った」とマーランは説明する。
「民間の大手が中小企業を10社単位で買収したり、下請けとして使ったりしている。従業員の給料や福利厚生を削減し、運賃を引き下げ、入札で指名されやすいようにしているのだ。パリ郊外は地獄だ。運転手には腰痛がつきものだが、今や胃痛まで抱えている。ストレスが原因だ。さらに、交通渋滞で運行スケジュールが遅れると、休憩時間まで減らされてしまう」
一方、地方が天国というわけではない。「ケオリ・グループに属するクーリエ・ブルトンは比較的大手で、従業員150人のうち、110人が運転手だ。この業界では珍しく組織率も高い。運転手50人がFOに加盟している。2001年以来、10.58%の賃上げを維持できたのも、この組織率のおかげだ。しかし、中小企業では賃上げなどない。長時間労働を受け入れ、法律に違反して運転記録をごまかせば、内緒で手当てをもらえるくらいだ」とガウデは説明する。
ユーロの導入で日用品価格が15%も上昇したことを考えれば、インフレ率程度の賃上げでは済まない。
さらに事態を悪化させているのは、引退した警察官が多数、この業界で働いていることだ。「彼らは小遣い稼ぎに働いているだけなので、賃上げ要求の意識などない。農家も同じだ。彼らも、生活の足しにするためにスクールバスを運転している」とガウデは語る。
今日、EU域内の市場開放でグループ間の競争が激化している。イギリスのバス会社はフランス西部の市場獲得に必死だ。賃金や安全対策費を切り詰めて、低価格での入札を目指している。ポーランド人なら月給800〜900ユーロで喜んで運転するだろうし、リトアニア人なら600〜700ユーロ(フランス人の半分)でも十分満足だろう。
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行政の怠慢

町、区、郡、州の議会予算には当然、制約がある。従って、入札が実施されると、最も安い価格を提示した企業が選ばれるのが常だ。これが、あらゆる社会的側面、つまり賃金、運転手や乗客の安全、フレキシブルな時間という意味での最も安い価格を意味することは明らかであり、市民の福祉に関心を寄せるべき議員にとっては、本来、由々しき事態であるはずだ。
地方議会とバス業者との契約期間が短縮されているのも偶然の出来事ではない。業者間の競争を高めるために、例えば、長距離部門では10年から6年に、都市交通部門では10年から5年に契約期間が短縮されている。
自治体は業者の監督も怠っている。請負業者が団体協約に違反して、協約を下回る賃金しか支払わないことはよくあるし、車両の老朽化(20年を超えるものも珍しくない)もほったらかしにされている。現在、2002年10月以降に製造された旅客輸送車両にはシートベルトの設置が義務付けられているが、フランスで車齢2年未満の車両は少なく、シートベルトが付いていたとしても人間工学的にふさわしくない場合が多いと運転手は不平をもらしている。
さらに深刻なのは、バス車両に転覆バーが設置されていないことだ。もし転覆したら、乗客を中に閉じ込めたままぺしゃんこになってしまう。
ガウデは昨年発生した不幸な事故を思い出しながら次のように語った。
「レンヌ郊外のバス会社Mのある路線にはバス停が30ヵ所もある。運転手は朝4時から働き始め、1日の運転時間は10〜11時間、時には15時間になることもある。ある日の午前7時、疲れきった運転手が事故を起こし、乗客6人と共に亡くなった。その後、このM社はどうなったか?今でもスクールバスを運行し続けているのだ。議会は何もしないし、議員から非難の声も上がらない。M社は今や何のルールも守らなくなった」
入札価格が全ての現在の慣行のせいで、この業界で働く6万人以上の労働者(運転手3万7千人を含む)だけでなく、何百万人もの乗客の命をもが危険にさらされている。
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無報酬の空虚な時間

2002年4月18日にパートタイム労働を後押しする行政命令が発効した。
この行政命令には労働時間の年換算に関する規定が含まれ、運転手の待機時間は労働時間とみなされないとされている。
「サンマロ−カンカル路線は、復路に入る前に4時間もつぶさなければならないのに、カンカルには何の設備もない。休憩所もなければ、カフェもトイレもシャワーもない。私はいつも墓地の裏で時間をつぶすのだが、冬場はとても憂鬱な気分になる」とガウデは言う。
午前中にスクールバスの運転を終えた後に市バスや長距離バスの乗務のない運転手にも同じことが言える。暇をもてあますだけで、一銭の稼ぎにもならない。これに対して会社側は「待ち時間に別の仕事ができるのだから、賃金を支払う理由などない」と主張している。
しかし、自宅から遠く離れた車庫や村の広場で待機中に、定期的に仕事を見つけることは困難だ。FOは現在、待機時間中も通常レートで賃金が支払われるようにするための闘いを続けている。ますます激しくなる公共部門への攻撃を跳ね返すために。
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クリストフ・シクレは在フランスのフリーランスのジャーナリスト。この記事はFOの機関誌「労働者の力」に掲載されたもの。
危ないぞスクールバス

独立系コンサルタント会社、エボリアンスによると・・・

「スクールバスの運転手はあらゆることを求められる。彼らの仕事は運転手の中で最も危険と考える組合もある」
スクールバスの運転手はしっかりした研修も受けさせてもらえず、車両は廃車寸前で、シートベルトもほとんど付いていない、子どもたちの行儀は悪くなる一方。
最近は、安全運転に集中する代わりに、子どもたちの監督もしなければならない。「30〜40分間、あるいは1時間、30〜40人の子どもを席に座らせてみなさい。しかも、その間ずっとシートベルトを着用させていなければならないんだから」と運転手は口を揃える。
昨年、Sauveterre-de-Guyenne・タルゴン間を運行するスクールバス内で、5年生の子どもが着席を拒否して運転手に2回注意されると、運転手に駆け寄って頭突きを食らわすという事件が発生した。
スクールバスの運転手は監督者の同乗を求めているが、州教育当局はしっかりした安全対策をとろうとしない。
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