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グローバルユニオン

2005年1〜3月 第18号
■荷役を取り戻せ
 
荷役を取り戻せ

荷役は訓練を受けた港湾労働者が行うべきだが、荷役をするように言いつけられる船員が後を絶たないとエロール・カベッチは言う。

船員による荷役が増え、これまで港湾労働者と船員が培ってきた相互支援と連帯の精神が揺るがされている。船員による荷役は港湾労働者と船員の双方に雇用権、福祉、職場の安全衛生などの面での課題を提示している。
港湾労働と荷役に関する国際法は存在しないが、伝統的にも荷役は港湾労働者の仕事であると理解されてきた。この伝統は、国内法規によっても擁護されてきた。国際的には、1979年の(港湾)労働安全衛生に関するILO152号条約と1973年の港湾労働に関するILO137号条約の2つの条約がある。
137号条約の3−2項には、「登録港湾労働者が荷役を優先的に行う」と記されている。しかし、条約は各国が批准しなければ実施されない。現在、ILO152号条約と137号条約を批准しているのは、それぞれわずか22ヵ国と25ヵ国にすぎない。ITFのユニフォーム協約には、船員に荷役を要求したり、荷役をするよう説得したりしてはならないと記す条項が含まれている。
しかし、既存の協約や規則から現状を判断することはできない。実際、規制緩和のプロセスは進んでおり、例えば、港湾局が未組織労働者や日雇い労働者を使うと決定する可能性がある。厳しい環境の中、新しく開発が進む港や、特に民間のターミナルは、船会社をひきつけるため、労働コストをさらに削減する選択をするかもしれない。そして、その影響の一つが、船員による荷役の増加だ。
あるAB船員がこう報告している。「運航時間が短いため、自分たちでラッシングもアンラッシングも行う。自分の知る限り、職員は荷役手数料を受け取っていて、自分らも貨物1個につき、1ドルを受け取っている。最初の数ヵ月はきつかったが、そのうちに慣れてきた。先月は荷役で400ドルも稼いだ。一船に積まれる貨物は400個くらいなので、荷役はほんの6〜8時間で終わる。ラッシング時間は通常の勤務時間には含まれない。その他、これまで通り保守作業や当直の仕事も行っている」
この報告からも分かるように、船員は通常、荷役作業のための追加手当をもらっている。一般的なレートは、ラッシングは貨物1個につき、1ドル、アンラッシングは1個につき50セントで、そこからいろいろ差し引かれ、最終的に船員は月500ドルくらいを荷役作業で稼ぐことができる。こうした手当は、通常、給料明細には「臨時手当」として記入されている。船員は荷役手当を通常の賃金と別に受け取っているため、荷役作業時間は勤務時間として数えられない。ある意味では、船員が荷役作業を下請けしているとも言える。
長時間労働と様々な弊害にもかかわらず、臨時収入を得られるため、荷役を喜んでやる船員もいる。また、職員は船員による荷役を継続するよう奨励金を受け取っているし、船主にとっても儲かる慣行なため、船員には常に荷役をやれというプレッシャーがかかる。
船員が荷役を行えば、港での滞留時間も短縮される。例えば、船員は船が港に入る前にアンラッシングを開始することができる。最近行われたあるインタビューで、ある船会社のシニア・マネージャーは、自社の船では船員に荷役をさせているが、船員に払う荷役手当は港湾労働者を使う場合と同等だと語った。彼は、船員に荷役をやらせることの利点は港湾作業のスピードアップだと強調した。船員なら、必要な時にいつでも荷役させることができる。
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日雇い労働

もちろん、船員に荷役をさせている企業ばかりではない。船員による荷役は近海のRo-Ro船やコンテナ船によく見られる。一部の港湾(特にフランス)では許可されていないが、船員による荷役は欧州全土で一般的に行われている。港湾労働者や船員より安価な派遣労働者を連れてきて荷役をやらせる企業もある。英国では、日雇いの港湾労働者は一般的に最低賃金しか稼げない。
コンテナ船やRo-Ro船は特に港での処理時間が短く、荷役をやらされると、船員は上陸できなくなってしまう。これは深刻な福祉問題だ。船員はこれまで以上に船に閉じ込められることになる。最近、船員国際研究センター(SIRC)が行った船員の仕事と私生活のバランスに関する研究から、この何年かで「上陸」の考え方が変化してきたことが分かる。近頃では、多くの船員が一番近い公衆電話に行って電話をかけることを「上陸」と考えている。
船員は非常に弱い立場にあり、手当をもらえない場合にも、荷役を拒否するのが難しいと感じている。別のAB船員が次のように述べている。
「X港(自国の港)からY港に寄航し、Z港に向かう船で、X港で2,800個の貨物を積み込んだ。ラッシングもアンラッシングも自分たちで行った。時には食事休憩だけをはさんで連続28時間働くこともある。ラッシングをしても特別手当はもらえない。現状を受け入れるしかない。文句を言えば、マニラの配乗代理店は私を次の船には乗せてくれないだろう。旅券も、船員登録書も、船員訓練資格証も全て代理店が持っている。これらの書類を預けなければ、休暇手当をもらえない。代理店は、船員が勝手に他の会社に移るのを防ぐため、これらの書類を管理している。こんな状況でも、船員はこの代理店から仕事をもらいたいと考えている」
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安全衛生の問題

しかし、長期的に見て荷役作業は健康を害すると考える船員は多い。また別のAB船員は「月に荷役手当を500ドルも受け取っているが、仕事はとてもきつい。もらった金は全部、将来医者に払う治療費になるだろう」と言っている。
しかし、あるポートチャプレン(港湾牧師)が述べるように、プレッシャ−をかけて船員に荷役をやらせることは、もっと深刻な結果を招きかねない。
「ここでも死亡事故が発生してしまった。船員は大きなプレッシャ−を抱えているため、間違いや手順の省略が起きることもある。今回の死亡事故も起こるべくして起きた。事件の一週間後、船が港に帰ってきた時、私は仲間の船員の死を目の当たりにしたAB船員のカウンセリングを行わなければならなかった。この船員は、『常に大きなプレッシャ−があった。コンテナのラッシングを終了したらすぐに船を海に出す準備をしなければならなかったため、2人で相談してリスクを犯した。仲間の死の原因となったのは、最後から2本目のコンテナだった』と述べた。彼らは、これまで常にコンテナを積み込みながらラッシングも行っていた。港に入るたびに生命をリスクに晒していたのだ」
この船員が何故そんなリスクを犯したと思うかと聞かれた時、ポートチャプレンはこう即答した。「出航スケジュールを守るためだ。遅れれば罰せられる」
新技術、規制緩和、日雇い労働者の導入、新ターミナルの出現、港湾開発、港湾オペレーター間の熾烈な競争など、あらゆる要素が伝統的な港湾労働者を難しい立場に追い立てている。
船員や日雇い労働者によるセルフハンドリング(自家荷役)は、各国政府、船会社、港湾局、船員などから広く許容されている。しかし、もちろん、港湾労働者はこれを認めてはいない。リサーチに基づくデータから、船員の福祉と安全衛生のためにも、荷役はやはり訓練を受け、経験豊富な登録港湾労働者に任すべきことが明らかになった。
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エロール・カベッチは、カーディフ(英国ウェールズ州)の船員国際研究センターの主任研究員。この記事は、ミッション・トゥー・シーフェアラーズの新聞「ザ・シー」に掲載された。
ロッテルダム港まで海の安全に背を向けるのか

フランク・レイ

世界の他の港湾に続き、オランダのロッテルダム港も入港する船に乗船する船員にラッシングやアンラッシング作業をさせる計画をしている。ロッテルダム港湾局は、伝統的にこの作業を行ってきた港湾労働者のラッシング班による荷役を制限しようとしている。しかし、コンテナ船はこの規定から例外として外されている。コンテナ船は大型で、乗船する船員の負担も比較的少ないことを考えると、これは奇妙な措置だ。
ITFは、陸ベースで、きちんとした訓練を受けた登録ラッシング班が、あらゆる船のラッシングおよびアンラッシング作業を行うべきだと確信している。
一般に船員の中でも特に少人数で近海を運航している小型船の乗組員は、休憩時間も短く、疲労しがちだ。船を最大限に活用するため、個々の船員の担当業務もどんどん増えていく。港での処理時間の短縮化や新たな保安規制の導入により、船員が上陸を制限されたり、港の船員福祉施設を利用できなくなったりしている。同時に、保安関係の肉体仕事や事務仕事も増えた。
しかも、疲労それ自体が深刻な安全問題でもある。船員が超過勤務をせずに済むように、十分な乗組員を配乗するべきだ。一旦、船が港に入港すると、乗組員は港湾局職員、税関職員、入管職員、旗国検査官(サーベイヤー)、船級検査官、PSC検査官、船食(船員に食料品を売る)などに応対する必要がある。2004年のISPS(国際船舶および港湾施設保安)コードの導入により、職員、部員とも、船が港湾での保安規則に違反していないか確認する責任を負うようになった。そのため、ギャングウェイに新たに特別の見張りを立てる必要が出てきた。
欧州には、欧州連合(EU)加盟国の港に入港する船の船員の労働時間を規定する特別欧州指令(1999/95/EC)がある。上述のあらゆる保安関係の追加業務に加え、ロッテルダム港に入る船員にラッシングやアンラッシングまでやらせようという議論が現在進行中だ。営利を最優先し、安全を二の次にするこのような考えにITFは強く反対する。
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フランク・レイはITFの港湾部長。
 
 
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