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2005年1〜3月 第18号
■走り続けて
 
走り続けて

過少投資と自由化が一般鉄道員に意味するものは何か?鉄道改革が日常的にもたらす影響についてエディー・ディクソンが解説する。

公共資産を民間部門に移行することを目的とし、現在、世界銀行やIMF(国際通貨基金)が推進しているプログラムの導入により、プログラム実施以前に比べ、鉄道労働者の少なくとも4割が削減されてきた。1987年には日本の国鉄が民営化され、アルゼンチンも1989年に同様の民営化政策の憂き目を経験した。その他20ヵ国あまりがこの流れに続いた。このプロセスにより、ある国は望んで、ある国は迫られてやむなく、鉄道システムの所有権を手放し、鉄道の財政支援から身を引くことになった。
世界中で、雇用確保、十分な職員の配置、サポート、労働時間、研修、手当、団体交渉権などは全て、サービスの中止や支線の閉鎖をもたらしたのと同じ経済的圧力に影響されることになった。これにより、鉄道関連のあらゆる仕事の基本的部分が直接的影響を受けた。
鉄道労働者が変化に直面したのはこれが初めてではない。鉄道の歴史と同じだけ、鉄道を動かす労働者の生活に影響を及ぼす技術革新、社会的発展の歴史もある。技術革新だけでも、何世代にもわたる鉄道労働者と鉄道労組に大きな課題を投げかけてきた。その結果、必然的に必要とされる労働者数の削減につながっていった。
少なくとも技術革新のプロセスにおいては、労働者は平等に再研修を受けることができ、技術革新が特定の仕事に影響を与えた場合には、代替業務を提示された。
過少投資はしかし、より長期にわたる、より危険な政治的プロセスと考えられ、昨今の政府の鉄道からの離脱で頂点に達した。現在、「生産性要件を満たすのにちょうど足る労働力」という政策のもとに、社会的な側面への配慮はほとんど影を潜めてしまった。
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停滞へ

20世紀半ばの蒸気機関車からディーゼル車、電車への変遷は、機関士や火夫にとって十分衝撃的なものだった。しかし、変化はそれだけに止まらなかった。新規の車両投資が控えられ、保守対応が当たり前となったため、エンジンや車両製造の技術力にもプレッシャーがかかるようになった。
電気機械に続き、電気信号システム、近代的音声通信システムが開発され、雇用は削減され、必要とされるスキルにも変化が生じていった。保線業務は今後もきつい仕事であることは変わりないが、鉄道の拡張段階が終わり、投資が縮小し始めると、高い技術力をもつ労働者も、線路の更新というよりは、既存の線路のつぎはぎ修繕が主な仕事になっていることに気づいた。
鉄道を長距離公共輸送として位置づける考え方は、陸上輸送の発達とともに多くの国で衰退していき、市民に鉄道よりも自動車を使わせることが主な政策課題となっていった。鉄道への投資不足により、鉄道は徐々に衰退の途をたどり、鉄道の遅れなどの問題とあいまって、一般市民が鉄道に無関心になり、非難の声を上げるようになった。独自のスキルを有した「ファミリー」のような鉄道労働者は財政的にも社会的にも脅かされることとなった。
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新たな現実

それでは今日再編が進む鉄道産業で働く労働者の生活はどのようなものだろうか?鉄道産業において全ての業務を遂行させるには依然として高い技術力を持つ、意識の高い労働力が必要とされるが、鉄道労働者は自身の役割をどのようにとらえているのだろうか?
多くの加盟組合が仕事に対する満足度が低下し、安全に対する懸念は高まり、昇進の見込みは少なくなった(特に保線、車両、運行ごとに鉄道システムが細分化されている場合)と報告している。鉄道システムが互いに競合する下請企業へと細分化されるに伴い、労働者は一貫したシステムの中で昇格したり、より良い雇用機会を求めることができなくなってしまった。
最も大きな影響を受けたのは、保線作業員だ。以前は肉体的にそれ程きつくない他の鉄道業務へ異動することも選択肢として可能だったが、今ではその選択肢も消滅した。底辺からスタートし、昇進の階段をトップまで上っていくことは、業務細分化により不可能となった。外注が増え、正規雇用が少なくなった。「新しい上司は鉄道の経験が全くない」こともあると加盟組合は報告書の中で不満を述べている。細分化が労働者の保護、サービス提供、安全基準の上で最も破滅的な影響を及ぼしていることは明らかだ。雇用規模は必要最低限のサービスに見合ったものでなければならないとする財政論議によって、労働者の雇用機会は奪われてきた。
車庫や駅は閉鎖され、旅客部門の人員は削られ、保守作業班の人数も最低限まで減らされ、何年もかけて築いてきた安全慣行が無視され、車両工場は閉鎖されたり安価で下請けに出されたり、仕事のやり方も絶え間なく変化し、シフト制の見直しも常に行われている。多くの労働者が効率を高める必要性は認めているが、同時に、高い安全基準や安定雇用の維持、公共サービスの提供を求めている。しかし、これは両方とも、所有形態のいかんにかかわらず、新事業者に対する直接的な挑戦となるものだ。
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社会的側面

規模縮小の過程でありがちなのが、年金給付、住宅手当、特別休暇手当、交通費補助の廃止・削減など、福利厚生への攻撃だ。これらの福利厚生を守り抜いてきた組合もあるが、鉄道という特殊産業で、郊外の隔離された車庫などで生きてきた人々にとって、職を失うことはこの上ない苦しみとなる。
今日、長い間給料を支払われていない労働者もいる。また、労働条件の低い新規採用者が「祖父の時代」の労働条件で働くベテランと肩を並べて仕事をすることもある。「労働条件の買戻し」などを通じて雇用の権利を失った労働者もいる。
その他、技術力の低い労働者などは、自分たちの仕事が下請けに出され、組合が下請先の使用者と協約を締結できなかったり、下請先の社員を組織することを法律で禁止されたりするため、組合員でなくなってしまうこともある。こういった転換期に組合は数少ない選択肢の中でつらい決定を迫られてきた。スト権すら認められていない国も未だに存在する。
このような困難の中、鉄道労働者は労働組合主義と組合の活動を支持し続けてきた。また、鉄道労働者に対する社会の認識が下がったと感じる労働者も多い。しかし、鉄道労働者はあくまで鉄道の交通手段としての地位と生き残りをかけて、また自らの生き残りをかけて闘うつもりだ。
しかし、現在、組合の生き残りにばかり集中する組合も多い。厳しい経済的状況から、所有形態のいかんにかかわらず、鉄道労働者の団体協約締結は今後も厳しさを増していくだろう。
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協約交渉の障壁

市場原理思考の企業における雇用形態の変化と、鉄道が道路輸送という手ごわい相手と競争しなくてはならないという近代社会の性質上、協約交渉にも限界がある。
これまで使用者は単一の鉄道会社だったが、細分化され、複数の使用者が関わるようになると、状況はさらに悪化する。組合は新しい使用者に雇用される組合員を組織化する法的権利を失うどころか、組合員とのコミュニケーションもままならなくなり、複数の使用者から協約を確保することも極めて困難になる。細分化は直接、組織人員の低下、組合収入の低下につながり、組合の交渉コスト増をもたらす。
鉄道運営から手を引く一方で、各国政府はこれまで鉄道労組を守ってきた労使関係法を弱めようとしている。多くの組合にとって、今日ほど厳しい時代はない。
数十年にわたる鉄道改革を経て、組合参加を増やす、鉄道構造の説明責任追及、安全第一という組合の要求事項が、今ほど一般市民や政府の理解と認識を得られたことは、団体交渉の歴史上ない。
それにも関わらず、各国政府や世界銀行やIMF(国際通貨基金)などの(選良によらない)高官らは自分らの政策が鉄道公共サービスを破壊していることにまだ気づいていないようだ。
鉄道労組は生き残りのために闘いながら、一方で、今後も鉄道構造の「自由化」という誤解を導く名づけをされた今日最大の課題と闘っていかなくてはならない。
鉄道労組の議論の中心は常に過去ではなく未来だ。鉄道の構造いかんに関わらず、労働者の利益が第一だ。鉄道の利用者や鉄道システムを支える労働者のための改善がなされたことが実証されていないため、これほど多くの鉄道労働者の生活を一変させた鉄道再編プロセスに対する労働者の支持を取り付けることは難しい。組合は、今後も先頭に立って鉄道運行業者の社会的責任を追及していく。
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エディー・ディクソンはITF内陸運輸副部長
加盟組合の経験

鉄道の再編は雇用機会、労使交渉、年金などにどう影響したのか?

ボツワナ
2000年には2,000人いた従業員が2004年には1,193人まで減少した。ボツワナ−ザンビア間の路線開通の採算性調査が行われ、新たな雇用創出に期待が寄せられたが、さらなる鉄道再編により、多くの失業を生むだろう。年金の使用者負担率が18パーセントから14パーセントに低下した。(BRWU(ボツワナ鉄道労組)、クリストファー・ピケーン)

ケニア
再編により雇用は創出されなかった。それどころか、IMFや世界銀行から課された要件を満たすため、雇用が削減された。失業した鉄道員は故郷に帰り、一部はインフォーマル労働に従事している。年金の面では特に変化は見られていない。(ケニア鉄道労組(RWU)、ジョン・カウンガ/フランシス・オーレリ)

マラウィ
一部、再就職した鉄道員がいたが、新卒の採用はほとんどない。労働力は削減され、失業した鉄道員のうち、別の職に就くことができたのはほんの一握りだ。年金の面では特に変化は見られない。(中東アフリカ鉄道労組(CEARWU)、ゴマーニ・ヌグルウェ)

日本
国鉄改革を通じ、約7万人の社員が自らの意志に反して鉄道の職場を離れていった。鉄道改革時には早期退職や公的部門への転職などの措置が取られた。好景気にも支えられ、一部を除き、離職者の雇用は概ね確保された。国鉄時代は42万人いた職員数は、JRになり約18万人に減少している。JR発足後は新規事業の展開など、鉄道以外の分野を中心に雇用を拡大している部門もあるが、正社員以外の形態での雇用が主体である。
各JR会社ごとに労使関係の状況は異なる。複数の組合が並存するという事情もあり、経営に対して必ずしも十分な影響力を持ち得ているとは言えない。
(JR連合、荻山市朗)

ブラジル
大量解雇により、従業員数が大幅に削減された。新技術の導入、駅の閉鎖、路線の停止、ワンマン運転の導入、外注化などがその原因だ。新規の雇用機会はなく、会社は従業員を解雇し、代わりに失業者を低賃金で雇用し始めた。
元鉄道員の多くがスキルを生かす職に就くことができず、インフォーマル労働に従事している。再編後も年金や社会保障の条件は変わらないと事業譲渡契約には書かれているが、これに関してまだ何の行動も起こしていない。(ブラジル鉄道労組(FNTF、ヘリオ・デ・ソウザ・レガート・デ・アンドラーデ)

ウクライナ
労働者が団結しなければ、再編の速度やその結果に影響を及ぼすことはできない。ウクライナでは基本的に失業率が高く、国民は社会的にも保護されていないという事実が背景にある。そのため、労働者は自分の仕事を守ろうとし、使用者に無条件に従ってしまう。鉄道には国際金融機関をはじめ、周辺地域の資本家も注目しているため、問題がさらに複雑化している。(ウクライナ機関士組合、セメン・カリコフ)
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2004年3月にITFが行った鉄道の再編に関する調査に対し、加盟組合から寄せられた報告からの抜粋
 
 
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