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2005年1〜3月 第18号
■勤労生活
 
マースク闘争

3人のコンテナトラック運転手、ギレルモ・ペレス、セオドア・ウィリアムズズ、ポール・バラムの苦悩

ノア・オレン著

全米トラック運転手組合(チームスターズ)は2004年10月、APモラー・マースク(デンマークに本社を置く世界最大規模の海運・コンテナターミナル会社)のコンテナ輸送に携わるトラック運転手の弾圧に抗議するためにデンマークに代表団を派遣した。
デンマークのITF加盟組織、SIDから招聘を受けたチームスターズ代表団は、現地労組指導者、浦田誠ITF内陸運輸部長、デンマークの国会議員、マスコミなどと会談したほか、マースク・シーランドとAPMターミナルの親会社、APモーラー・マースクの幹部とも会合を持った。
この会合でマースク幹部は、米国で組合活動家が弾圧を受けることに反対を表明し、運転手の組合活動権を認めるとともに彼らの不満について調査することで合意した。しかし、自営運転手の団体交渉権に関しては合意に達することができなかった。チームスターズは米国でのフォローアップ会合の開催を希望している。
チームスターズ代表団に加わった3人の運転手に話を聞いた。
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不当解雇が生活苦の始まり

ポール・バラムの信用支払記録は2002年4月まで何の問題もなかった。しかし、組合活動を理由にマースクの子会社、HUDDに解雇されて以来、ポールは妻と一緒に破産聴聞会にたびたび出席することになった。自宅、自家用車2台、友人に助けてもらって購入したトラック1台が差し押さえられた。
2000年、ポールは仕事に必要な機材を購入し、HUDDで働き始めた。その後すぐに、チームスターズの活動家としてオルグに従事するようになり、チラシやポスターを配布したり、港湾運転手と接触して意識啓発を行ったりしていた。これらの活動を通じて、インターモーダル(複合一環輸送)設備の安全が十分でないこと、コンテナを受け取るまでの待ち時間が長いこと、ガソリン代高騰による追加料金の問題など、トラック運転手の間には共通の懸案事項が多数存在することが判明した。
その年の12月、ポールは第1回目の警告を受けることとなる。組合活動を続ければ、「求職者リストに名を連ねることになるぞ」と。そして2002年4月、新車登録をしようとしたところ、他のトラックに唾を吐いたとの理由で解雇された。妻のキャサリンの妊娠がちょうど判明した頃だった。
翌週、ポールは解雇を不服とし、会社側に対して、唾など吐いていないこと、複数の証人がいることなどを訴えると、会社側は解雇の本当の理由はトラックがリースに出されたために仕事が少なくなったからだと告げた。ポールが新人の運転手よりも先に解雇されたのはなぜかと問いただすと、「君はチームスターズ寄りだから。運転手を組織しようとする者はいらない」との答えが返ってきた。
ローン返済は滞り、ポールはすぐに新車のトラックを失った。別の会社で、会社所有の古いトラックを運転する仕事を見つけたものの、さらに借金は膨らみ、大きなストレスを抱えるようになっていった。6月、妻のキャサリンはお腹の赤ちゃんを流産してしまった。2週間後、ポールは仕事中に事故に遭い、脊髄を圧迫され、8ヵ月以上、働くことができなくなった。収入を閉ざされ、労災補償もなく、貯金も底をつき、日々の食事にも事欠く生活が始まった。
さらに悪いことに、最近、乳がんの化学療法を終えたばかりのキャサリンは、もう子供は産むことはできないと医者に告げられた。
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抗議行動で職務停止

セオドア・ウィリアムズズは17年間、ヒューストン港でコンテナトラック運転手をしてきた。ここ4年間はマースクのトラック部門子会社、ブリッジ・ターミナル・トランスポート(BTT)で働いている。約1年前、会社側から組合のチラシやポスターを配布するのを止め、既に貼ってあるものを剥がすように言われた。2000年にはトラックのバンバーに貼ってあった組合のステッカーを剥がすことを拒否したために4人の運転手が解雇されている。
「この業界は常に組合のオルグ活動を敵視していた」とウィリアムズは言う。
トラック運賃は非常に安いため、会社側は賃上げにつながるいかなる動きにも敵対的姿勢をとり続けてきた。賃上げ、ディスパッチャー(配車係)による嫌がらせ、インターモーダル設備の改善、ガソリン代高騰に伴う運賃値上げの問題、無報酬の待ち時間の問題などを会社側と話し合おうとしても、会社側は何の反応も示さなかった。
2004年1月、2月、3月と、運転手は会社側にこれらの問題を訴え続けたが何の進展もなかったため、堪忍袋の緒を切らしたウィリアムズらは2004年5月10日に抗議のストに出た。
翌日、ウィリアムズらがノースカロライナの会社事務所を訪れると、副社長が出てきて、運転手の問題について認識していなかった述べ、事態を解決するために職場に戻るように促した。同時に、最小限の賃上げとガソリン代高騰に伴う2%の運賃値上げを約束した。
しかしこれで問題が完全に解決したわけではなく、ウィリアムズらは2004年6月末にさらに抗議行動に出ることとなった。そしてついに、賃上げと運賃値上げを勝ち取った。
ウィリアムズらが職場に戻ると、ターミナル・マネージャーはウィリアムズに職務停止を言い渡した。抗議行動に参加したことがその理由だ。会社側は運転手のオルグ活動や労働条件改善運動に依然として敵対的な姿勢を隠さず、ヒューストン(テキサス州)の運転手の勤労意欲を低下させている。そればかりか、会社側は給与書類を作成するのが常に遅く、支払いが2〜3週間遅れることも稀ではない。
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待ち時間は無報酬

ギレルモ・ペレスの1日は朝5時にその日最初のコンテナをピックアップするところから始まる。ペレスは主にマイアミ港のマースクAPMユニバーサル・ターミナルのコンテナを運送しているが、ターミナルのゲートに到着してから書類のチェックを受けるのに1時間以上待たされることも稀ではない。
トレーラー・インターチェンジを経て、シャーシ置き場に進み、欠陥のない、あるいは少なくとも欠陥が露骨でないシャーシを探す。欠陥車しか見つからない場合は、それを整備工場に運び、修繕を待つ。
その後、シャーシにコンテナを積載するための列に並ぶ。冷凍コンテナの場合は発電機をつけるために、また別の列に並ばなければならない。これら一連のターミナルでの作業および待ち時間はペレスの仕事に不可欠な要素で、数時間かかることもあるが無報酬だ。
これに加え、過積載でタイヤがパンクする恐れもある。発電機や冷凍コンテナはかなり重く、10万ポンド(約45トン)を超えることもある。これは高速道路通行車両の重量制限をはるかに上回る数字だ。警察に呼び止められたり、路上で重量測定を受けたりするのを避けるため、会社はペレスに脇道を通るように指示している。ペレスよりもトラックの方が大事なのだ。ペレスはトラックが横転し、他の通行車両をつぶしてしまうのではと心配している。
運がよければ1日に3本のコンテナを輸送し(1本につき50ドル)、午後9時30分には家に帰ることができる。3本運べば150ドルになるが、そこからトラック代、ガス代、通行料、保険料などを差し引くと、ほとんど手元に残らない。妻と娘を養うために、ペレスはコンテナ輸送の仕事を終えた後、一定期間、生鮮食品を運ぶアルバイトをしている。ペレスの労働時間は週80時間を超えるが、健康保険や年金にも加入できず、有給休暇もない。
ペレスと同じような状況の運転手がマイアミには1,700人もいる。マイアミの海上コンテナ輸送会社はマースクの子会社、ユニバーサル・マリタイム・サービス・コーポレーション(UMSC)とPOMTOCの2つのターミナルの貨物を扱っている。マイアミのトラック会社にマースクの直接の子会社はないが、毎日、何百人もの運転手がマースクのコンテナを運んでいる。
6月末にマイアミのコンテナトラック運転手が労働条件の改善を求めて抗議行動を起こしたが、これは、運転手の代表が経営側と何度も顔を合わせ、運転手側の苦情を訴え、そして無視されるという事態が再三繰り返された後に、平和的に行われたものだった。この抗議行動を24時間監視していた警察は、暴力行為や威嚇行為はいっさいなかった報告しているが、UMSCは裁判書類の中で今後一切の抗議行動の禁止を求めている。
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ノア・オレンは全米トラック運転手組合(チームスターズ)の公共政策コーディネーター。
 
 
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