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2009年1〜3月 第34号 |
■路面運輸 |
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国際連帯を支えに弾圧と闘うトルコ労組
トルコの組合活動家が不当に逮捕された時、ITFはキャンペーンを展開して彼らを解放した。当時の状況を振り返り、この運動の秘訣を浦田誠が報告する。
■「ITFが助けてくれなければ、終身刑になっていただろう」
(Tumtisアンカラ支部長、フセイン・ババイージット)
■「仲間の組合員が攻撃されているのを見たら、国際連帯がどんなに大きな力かを思い出し、進んで支援して欲しい」
2007年11月20日、警察が計17人の組合員を、「犯罪組織を設立しようと画策した」かどで拘留した。Tumtis(テュムティス)労組が、トルコのトラック輸送大手、ホロツ貨物社の労働者を組織しようとしていたのが真相だ。会社はこれが気に入らず、地方政府に圧力をかけたため、警察がすぐに介入してきた。組合員の携帯電話は盗聴され、活動家の尾行も始まった。
トルコでは、組合は多くの課題を抱えている。団体交渉の許可を獲得するまでに踏まなければならない手続きは、煩雑を極める。ほとんどの場合、団体交渉権を完全に行使することは不可能だ。最終判断は労働・社会保障大臣が下すことになるが、法律上は15日かかるはずのプロセスに、4〜5ヶ月かかることもある。団体交渉権を獲得しようとする組合が法廷闘争に巻き込まれることも多く、そうなると交渉権獲得のプロセスは2年、あるいはそれ以上に伸びることもある。
労働者が組合に入ったり、辞めたりする場合にも、公正証書を獲得する必要があり、そのコストもばかにならない。それは、労働者が自ら選択した労働組合に加入する自由を大きく制限する責務といえる。労働組合は、職場で労働者の50%を超える支持を得ないと設立できない。それゆえ、組合に加入する労働者にとって、それが障害になることは驚くに当たらない。それにも関わらず、Tumtisはその闘争心と未組織を組織化しようとする熱意のため、トルコでは広く尊敬を集める組合である。
会社が定期的に反撃してくるため、労働者の組織化は常に困難だった。しかし、地元の組合指導者が逮捕されるという事態は前代未聞だった。7人が投獄され、拘留された17人のうち、15人が起訴された。投獄された組合役員を家族が訪問することは週一回に制限された。弁護士の場合、1ヶ月に一度しか面会は許可されなかった。
Tumtisからの支援要請を受け、ITFがまず取った行動は、首相を含むトルコ当局に抗議文を送付することだった。続いてITF書記局は、路面運輸部会のITF加盟組合に連帯行動を呼びかけた。トルコ当局への抗議を強める中、ITFはTumtisと連絡を取り、次の行動について話し合った。効果的なコミュニケーションを取る上で言葉の障壁はあったが、航空労組のHava-Is(ハバイス労組)の仲間がITFとTumtisの電話会議を通訳してくれた。
ITFは、オンライン抗議文の送付ページをウェブ上に作成し、そのページからトルコ政府に抗議メールを送付できるようにした。Tumtisは、6月初旬に予定されている第一回審問に、ITFから代表者を送ってもらえないかと提案した。その1週間前、ウェブベースで組合関係のニュースを配信している「レイバースタート」には、オンライン抗議文の送付ページを創設してくれるよう頼んでいた。これにより、数日のうちに少なくとも数千通の抗議文が送られることになる、とITFは確信していた。
一方で、Tumtisは、ドイツの組合やNGOと長年築き上げてきた草の根レベルの友好関係を活用し、これもうまくいった。投獄中の労働者の即時解放を求める数千人分の署名が、すぐに集まったからだ。首相官邸は、ITFとその加盟組合とドイツのTumtis支援者が展開したこの署名活動に対する警戒心を強め、アンカラの主任検察官に対し、第一回審問が行われる前に組合の代表者に会って、組合側の意見を聞くように指示した。
審問は、2008年6月6日に国家安全保障裁判所で行われた。トルコのナショナルセンター、Turk-Isの加盟労組も、Tumtisへの連帯を表明した。300人以上の組合員や支援者、海外から駆けつけた代表団が、審問を直前に控えてデモ行進をした。法廷では、逮捕以来200日ぶりに投獄中の組合指導者が同僚と感動の対面を果たした。
審問は丸一日かかった。最後に、判事は、組合の弁護士以外の全員に、部屋を出るよう命じた。その後間もなく、全員が釈放された、との報告がなされた。審問は続くが、組合活動は自由に再開できる。再び集会が開かれ、集会参加者は、解放された組合指導者と弁護士を讃えた。Tumtisの委員長は、海外から応援に駆けつけた国際代表団に謝辞を述べた。
振り返ると、この抗議運動が成功した理由は、いくつかある。第一に、もっとも重要なことだが、ITFが繰り返し言っているように、単に抗議文を送るだけでも大きな意味がある。ITF加盟組合の多くが抗議文を送ってくれるなら、なおさら望ましい。しかし、鉄は熱いうちに打つのが得策である。対応が遅れれば遅れるほど、連帯行動を呼びかけるのにも時間がかかる。Tumtisは、しっかりとした組織であり、現指導部と活動家が協力して争議の解決にあたった。この運動に成功することで、使用者から労働者が攻撃された際の先例を示すことができると認識し、国内外で支援を得るためにあらゆる手段を活用した。ドイツの友誼組合が、特に積極的に活動してくれた。ITFは逮捕された組合活動家の釈放を求める活動の展開を決定し、それが連帯行動を高揚させ、レイバースタートなどもこれに賛同した。
粘り強く活動を続けたことが、トルコ政府にも強い抗議の声として届いた。政府も隠れ場所がないことを悟ったのだ。これは、欧州連合に加入しようと必死になっている国に対しては効果的であった。第一回目の審問に海外からの応援団を参加させる戦略が旨くいかなかった場合、ITFはTumtis代表者をブリュッセルの欧州議会に招き、さらに本件をILOの結社の自由委員会に提訴するつもりでいた。
今回は、そこまですることもなく、労働界はしかるべき勝利を祝うことができた。グローバルな連帯の連鎖に、新たな連帯を加えることができたと確信している。 |
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浦田誠はITF内陸運輸部会の部長 |
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