|
|
2010年04〜06月 第39号 |
■労組、自然災害に対応 |
|
|
労組、自然災害に対応
ハイチやチリで最近発生した地震で、労働者の救助活動においてITFの加盟組織が重要な役割を果たした。
チリ
「労組は、自然災害にめげずに闘っている」と、ジュアン・ルイス・ビラロン。
地震の経緯
2010年2月27日、巨大地震がチリを襲い、同国の大半を壊滅させた。
震源地では、マグニチュード8.8が観測された。それは、アントファガスタ(サンチアゴから北方2,500キロメートル)からテムコ(サンチアゴから南方約1,000キロメートル)までの広い地域にわたって発生した。沿岸地域も襲われ、地震による津波が発生した。この地震による影響で多くの道路が破壊され、空港や港湾も閉鎖された。
本誌の出版時点で、700人以上が死亡し、200万人もの人々が影響を受けた、と報道されている。
より貧しい地域や町、インフラ設備の整備が遅れている地域での被害は、特に甚大である。
地震がチリの労組にもたらした影響
チリのITF加盟組織の多くが、津波の影響を受けた。入居する建物が全壊してしまった労組もあった。ロタ、コロネルにある船員労組(これらの労組は、海事連合FETRICHを通じてITFに加盟している)や、タルカワノに拠点を置く機関士労組(SIONIT)も大きな被害を受けた。当地の造船所も、倒壊や洪水に見舞われた。
特に港湾労働者は、地震の影響による生産・輸出の低下で、長期の失業状態が続くことが予想される。
地震の被害に遭った労働者を、ITF加盟労組はどのように助けたか。
船員労組は、最も被害の大きい地域で復興活動を開始するため、国際支援を要請した。ITF加盟組織や他の労組は、被害に遭った労組に財政援助を募るため、(ジュアン・ルイスがコーディネーターを務める)海事労働者協議会を通じたキャンペーンを立ち上げた。
復興活動で労組が果たした役割
労組は、復興活動で担うべき重要な役割を持っている。チリが地震国であることを考慮すると、労組は自らの活動を調整し、長期的な解決策を特定するために協力しなければならない、と同国の海事連合「COMACH」のカーメン・マヨルガは述べる。
「ITFの米州間地域事務所は、地震の被害を受けたチリの労働者とその家族に連帯を申し出た。これらの労働者の強さが、同国が受けたこの悲惨な出来事を乗り越える源となる」と、地域担当者のアントニオ・フリッツは述べた。
この危機に対する使用者の対応
使用者側の対応は様々だった。同国の船会社の大半は、情報を提供し、ボーナスを支給した。また、チリで家族と過ごすことができるよう、乗組員に離船を許可する使用者もいた。
企業も、船員の生活復興に役立てるため、船員の住む町にトラックで必要物資を運ぶ相互協力を調整した。ITFのインスペクターは、船員に絶えず情報を提供し、必要な場合は、労組が船員の家族を支援できることを知らせた。 |
|
|
事例:ラン航空
「労組は、迅速かつ積極的に対応し、その創造力とプロ意識を示した」
労組は、危機に最初に対応した組織のひとつで、労働者とその家族の支援に積極的な役割を果たした。
チリの航空労組は、緊急事態として、地震に対応した。約200人の客室乗務員とパイロットが、地震発生時にチリから離れていた。家族は、必死に外国にいる身内と連絡を取ろうとした。LAN航空は事務所が倒壊し、システムがダウンしたためにアクセスすることができず、誰がどこにいるのか、ホテルの住所・連絡先さえ分らなかった。パイロットおよび客室乗務員の役員は、合同調整本部に集まり、労働者の親族がいる場所や帰国日、可能な場合は航空機の便数に関する情報を提供するため、情報センター(CIT)を発足させた。
CITは、情報交換のために、旧式・新式両方のプラットフォームを使った。ホテルの名称や連絡先を含む客室乗務員の滞在場所を、グーグルマップで作成した。インターネットがつながる場所なら、どのコンピューターからでもアクセスできた。サイトの利用方法に関する情報は労組の公式ウェブサイトに掲載され、フェイスブックやツイッターのようなウェブサイトへの投稿によっても分るようにした。これら双方向のシステムにより、チリを離れている乗務員が互いに連絡を取り合い、世界のどこにいてもサイトを閲覧でき、連帯を維持することができた。飛行が可能で、支援することができるサンチアゴの客室乗務員とパイロットも、オンラインで、その旨を投稿した。
労組は、以前から社会的メディアのネットワークを活用してきた。緊急の場合、通信ネットワークは、世界の方々に散在する乗務員と連絡を取るための強力なツールとなった。ベテラン指導者や組織活動家が、中心的役割を担った。
労組は迅速かつ積極的に対応し、その創造力とプロ意識を示した。 |
|
|
ハイチ
1月12日に同国で発生した巨大地震の後、労組も救助活動で主要な役割を担った。
ITFに加盟する以下の労組が救助活動に参加した。
ノーチラスインターナショナル(英国船舶職員組合)、鉄道海運労組(英国、RMT)、船員国際労組(米国、SIU)、船舶職員労組(米国、AMO)、船舶機関士労組(米国、MEBA)、国際船長・航海士・パイロット労組(MM&P)。
新型揚陸艦(RFA)に乗船していたノーチラスとRMTの組合員は、政府、英国及び世界の慈善団体からの寄付を含む救援物資、並びに英国市民からの寄付金で購入した物品を運搬した。
RFAは、1月末に出帆し、国連が救援物資をハイチの中心部から離れた小さな港湾に輸送する手助けをするため、数週間留まった。
米国の組合員を乗務員とする10数隻の船舶が、公式の救助活動に参加した。その中には、ローローコンテナ船を伴った病院船「コンフォート」(USNS)、タンカー(1隻)、クレーン船(2隻)があった。外国でこれらの船舶を航行した船員の中に、SIU、AMO、MEBA、MM&Pの各労組の組合員がいた。
港湾および航空労組の組合員は、船舶及び航空機からの物資の積み降ろしを手伝った。
船員・水産・内陸水運のジョン・ウイットロー部長は、「船員は、しばしば去る者、日々にうとし、という面があり、船員の世界経済への貢献や、あって当たり前と思う食物、燃料、その他の物品が、どのように船舶によって運搬されているかについて、一般市民は分っていない。船員は、船舶の輸送能力が絶大な力を発揮することから、災害が発生したときにも、重要な役割を果たす」と述べた。
SIUは、ハイチの人々に寄付金を送りたい、との船員からの希望があったこともあり、船員のための災害給付基金を再開した。米国の船員組合も、米労働総同盟産業別組合会議(AFL-CIO)の連帯基金に寄付した。
ITFのデビット・コックロフト書記長は、労組に、国際労働組合総連合(ITUC)のハイチへの人道支援基金に協力するよう要請した。ITFはこれまで、この連帯基金を通じて1000ポンドを寄付している。
(参照.) |
|
|
|
|
|
|