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2010年04〜06月 第39号 |
■気候変動 |
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気候変動と団体交渉
気候変動が南太平洋を襲い船員の仕事は不安定な状態に
ツバルは太平洋に浮かぶ小さな島国で、人口は1万人しかいない。他の海抜の低い太平洋の島々と同様、ツバルは気候変動の最前線にいる。ここ数カ月で2度の津波警報が出され、空港は日常的に浸水する。
この問題は、単に島民が不便であるだけに留まらない。島の交通インフラが機能しなければ経済全体が危険にさらされるのだ。
多くの島民は船員として働き、しばしばドイツが所有する便宜置籍船に乗る。
会社にとって、これらの船員は、他の伝統的な海運国の船員よりも、雇うための費用がかかる。なぜなら、ツバルの船員が乗下船する際、不定期の飛行機便を待つための追加的な費用や日数が発生するからだ。
ITFは、ツバル(そして近隣で同様の問題が起こっているキリバス)経済における船員の特異な状況を強く認識している。移動にかかる追加的なコストは、適切に再設定された賃金体系(下記「便宜置籍(FOC)船について」参照)で会社側の収支に合う。
しかし、労働供給の状況は、極めて不安定である。ドイツの船主は、雇用を維持しているが、それは部分的には、島民にとっての経済的重要性を認識しているからである。
空港がもっと頻繁に浸水するようになると、船員が島を出て乗船することは、さらに難しくなる。これが常に続けば、会社はツバルの島民を雇わなくなるという現実的な恐怖に直面することになる。
「ツバルに空港は1つしかなく、もし、そこが浸水すれば、毎週火曜と木曜の定期便が止まる」と、ツバル海外船員組合のフェプアリ・キティセニ書記長は言う。「浸水により、船員が島を出られなければ、船会社は苛立ち、ツバルから別の国の船員に替えてしまう。」
また一方で、こうした状況から、船員にとって、賃金と労働環境の交渉が格段に難しくなっている。船主が雇用の主導権を握っており、船員が要求することは難しい。 |
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職場での課題
気候変動の影響が深刻化するにしたがって、組合は今後さらに対応を迫られるだろう。
今のところ、組合は、主に変化のみに焦点を当てた対応を取っている。労働者の雇用への影響は、気候変動による産業の変化と捉えられるべきだ、という考え方である。だが、さらに詳細に見ていくと、いくつかの難しい問題が浮かび上がってくる。
そのためITFは、運輸労組の視点から気候変動を調査するための作業部会を設置した。また、2010年のメキシコでの世界大会では、第1回目の気候変動総会が開かれる予定である。さらにITFは、組合の対応に向けて情報を提供するための調査を委託した。
「気候変動は、運輸労組全体の課題だ」とITF教育部長のアラナ・デイヴは言う。「組合が事前に対応することで、労働者が将来に影響を及ぼす可能性が広がるだろう。」 |
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気候変動政策の推進
気候変動の議論をするのは組合だけではない。しかし、組合の影響力を行使して、政府へのロビー活動や労働者の教育など、いい影響を与えることができる。
例えば、ツバルでは、殊にその経済的重要性から、政府はインフラを保護する責任がある。そのためITFは、新たな労働者の組織化、組合の強化、政府に責任を全うするよう呼び掛けることを組合に促している。
他の国では、企業再編やアウトソーシング、今も続く経済危機の影響といった直近の問題に比べ、気候変動はまだ先の問題だ、と感じる組合もいるかもしれない。
しかし、どこの運輸労働者であろうと、いずれは気候変動の影響を受けることになる。組合の検討が早ければ早いほど、この厄介な問題も対処しやすくなるだろう。
ツバルの島民には、もう時間の余裕がない。この逆境でも、会社が雇い続けてくれることを祈るだけである。そして他の組合も、意外に早く、その状況に直面することになるかもしれない。 |
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ITFは、8月4日に、メキシコシティーで気候変動総会を開催します。詳細は、下記のメールアドレスまでお問い合わせください。
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便宜置籍(FOC)船について
海運産業におけるITF加盟組合は、FOC船(船主の国籍と無関係の船籍を掲げる船舶)で働く船員にも適用可能な最低限の水準を確立する目的で、一連の政策を作り上げてきた。FOC船は、実際には国籍がないため、一国の船員組合では手に負えない。このような船舶には、国籍に関係なく、全ての乗組員に賃金と労働条件を規定する標準労働協約を、ITFは適用してる。
FOC船の詳細について: |
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