2010年04〜06月 第39号 |
■青年のグローバルな組織化 |
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青年のグローバルな組織化
ITFには、熱心で活動的な青年運営委員会がある。青年の組織化について、メンバーに展望を語ってもらった。
カナダ:トラヴィス・ハリソン
トラヴィスは、バンクーバーのコースト・マウンテン・バス・カンパニーの保守部で電気技師をしている。また、カナダ自動車労組(CAW)ローカル2200の組合代表の1人でもある。
カナダの青年労働者は、特に深刻な製造業の危機による影響を受けており、ここ数年で50万人以上の労働者が解雇された。
CAWは製造業を保護し、再発展させることで、環境保護に取り組もうと積極的に活動している。グリーンエコノミー(環境対策を通じた雇用の拡大)への大規模な投資を支持しており、また労働者が全国のワーカーズ・アクション・センターを通じて再度、職業訓練を受けられるようにするための支援活動にも積極的に参加している。こうした環境においては、青年労働者が確かな情報と権限を持つようにすることが取り分け重要である。
「重要なのはコミュニケーションです」とトラヴィスは言う。「例え、悪いニュースであっても、労働者に事実を知らせます。参加し、議論に加わってもらうことで、組合活動の一端を担っている実感を持ってもらうのです」 |
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バミューダ:タミ・レイ
タミはバミューダ産業労組(BIU)・フェリー部門の職場代表だ。2009年4月に若手の操舵手となり、船隊の中で一番小さいフェリーを運転している。また、タミはバミューダ初の女性のフェリー操舵手でもある。
タミの組合は、その他多くの組合と同様、予算制約と闘っている。ほとんどの労働者が公務員であり、予算の削減による解雇の恐れがある。
「年配の労働者ほど組合活動に熱心だが、一方で青年労働者はあまり参加しようとしない」と、タミは言う。全ての労働者が団体協約の恩恵を受けているが、かといって全ての青年労働者が協約締結の趣旨を理解しているわけではない。
しかし、タミは、あえて青年労働者に歩み寄り、なぜ組合に入ることが重要なのか説明している。「恩恵を受けていれば、それがどこから来るのか知る必要があります」と伝えるのだ。
また、組合は青年労働者への取り組みを強化しており、最近、青年総会が開かれた。参加者の一人は、21歳であった。
「私たちから出向いて、実際に組合が何をしているのかを労働者に教えなければなりません。我々は組合だ、と言っても、そのままでは不十分なのです。」 |
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ノルウェー:ペール・オール・メルガード
ペールは、11年間、バス運転手をしている。ここ5年間は、専任として組合で働いている。また、ノルウェー運輸労連の青年委員会のリーダーである。
ペールの所属する組合は、現在、民営化やソーシャルダンピングの影響と闘っている。既に多くのバス路線が民営化され、組合は公営の路線を残そうと活動している。
しかし、民営化は避けられない部分もあるため、一方で新しい雇用契約の条件を、より良いものにし、民営化後も雇用が保証されるようにすることにも重点を置かなければならない。
組合に入っている労働者の内、およそ30%は青年(35歳以下)であるが、バス部門の青年は少ない。
バス運転手は働き口を見つけるための研修に高額な費用を支払わなければならず、深刻な雇用問題となっている。このため、活動家は組合員を増やす努力をしているが、組合員の新規加入を維持することも難しくなってきている。
「最も上手く組織化できるのは、我々が出向いて、労働者に語りかける時です。ある組合員は、3〜4年で300人も新規に加入させました」とペールは言う。 |
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ドイツ:マルコ・ステインボーン
マルコは現在、ドイツでも最大級のケルン市公共交通機関の経営委員会で輸送サービス部長として働いている。また以前には、実習期間中に青年労働評議会の議長も務めた。
ドイツの青年実習制度は、諸外国から高く評価されている。これは、ドイツ国内で青年層の失業率が比較的低い理由として挙げられることもあるが、青年労働者にとって、この制度は必ずしも納得のいくものではない、とマルコは語る。
実習は確かに現場研修を含むが、基本給の3分の1以下で実作業をすることにもなる。また、実習期間終了後といえども、青年労働者に雇用が保証されているわけではない。時には企業が、これら青年労働者の雇用に気が進まず、より経験のある労働者を採用しようとする。また、青年労働者は、採用に不利になるのを危惧して、組合に入ることを恐れることもある。
しかし、ver.diは強い。「組合活動家は外に出て、労働者を直接支援する必要があります」と、マルコは言う。一対一の交流が、青年労働者を組合に入れる鍵となる。
「私のモットーは、ベルトルト・ブレヒトの言葉で、『闘う者は負けるかもしれない。しかし、闘わない者は既に負けている』です。」 |
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ヨルダン:ラミ・ティサワク
ラミは、現在、ロイヤルヨルダン航空の客室乗務員として働いている。航空輸送・観光ゼネラルユニオンで、ロイヤルヨルダン青年客室乗務員を代表して、客室乗務員委員会の役員を務めている。
ラミの組合は、客室乗務員の労働条件について会社と交渉している。現在、多くの労働者が、フライトの割振りが公平ではなく、経営者との人間関係に大きく依存している、と感じている。
また、進行中のルームシェア論争についても取り組んでいる。客室乗務員にとって、フライト先でシングルルームに泊まることは贅沢ではなく、適切な睡眠を保証するために安全衛生上、不可欠なことである。
ロイヤルヨルダン航空では、現在50%前後の客室乗務員が30歳以下である。その多くは組合に入っているが、全員が積極的なわけではない。ラミは、現在、客室乗務員委員会で唯一の青年労働者だ。
ラミは、こう語る。「辛抱強くなければなりません。組合と青年労働者の間で、信頼関係を築くことが重要です。青年が熱意と希望を失ってしまっては、うまく行きません。」
また、労働者のため、ラミは熱心に組合同士で経験を共有しようとしている。「組合ごとに抱える問題は異なるかもしれないが、互いに学び合うこともできるのです。」 |
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オーストラリア:ポール・マクアリア
ポールは、オーストラリア海事組合(MUA)のシドニー支部で書記長を務めている。
景気の停滞により、オーストラリアの港湾労働者の多くが大きな被害を受けた。しかし組合は、常勤雇用労働者の時間短縮を含め、一連の対策を通じて雇用の縮小を最小限に抑えることができ、青年が多い非正規労働者の職を確保することで、危機を乗り切った。
MUAは青年労働者プログラムを強化した、とポールは言う。過激かつ進歩的な組合で、活動的な組合員の貢献もあるが、重要なのは上層部からの援助だ。
「書記局は青年労働者を支持し、出資している。精神的支援も重要だが、資金や資源がなければどうしようもない。」
全国青年年次総会や青年労働者委員会は、青年労働者の参加と活動を促進するために行われている業務の、ほんの数例である。
組合運動の参加に張り切っている青年労働者に組合は信頼を置くべきだ、とポールは言う。「参加し、係る機会を与えることで、青年労働者は世界に変化をもたらすでしょう。」 |
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