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2010年04〜06月 第39号 |
■いかに我々は成し遂げたか |
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より良い解雇手当を勝ち取る
40人以上の女性労働者が、英旅行代理店大手のトーマス・クックに立ち向かい、勝利した。
トーマス・クックが、アイルランド南部の事業を合理化すると決定したとき、英運輸事務職組合(TSSA)は、交渉を通じて組合員を支援した。労働者は、労働時間を短縮し、希望退職に応じることで、妥協する心積もりでいた。
しかし、会社は、交渉のさなか、3つの事業所を閉鎖する、と発表した。労働者は、裏切られたような気持ちになった。また、アイルランド法では、政府が、企業の負うコストのうち、法定金額の60パーセントを支払う規定があるにもかかわらず、会社が提示した退職金は、非常に低い額だ、とも感じられた。
従って、労組は、独創的なキャンペーンを開始した。労働者の一群が、「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方が、まだ易しい」と書いたプラカードを掲げて、100万長者のトーマス・クック社CEOのManny Fontenla-Novoaが通う教会に押し掛けたのだ。この主張を、より明確に伝えるため、本物のラクダを連れて行った。
TSSAは、抗議行動を決議し、満場一致の賛成を得た。しかし、この決議結果が出た日の7月31日に、同社の英国人支配人が、当日付けで路面店のうちの1店舗を閉鎖する、と発表するため、ダブリンに飛んだ。労組は、この発表は、労働者がスト行動をアピールしたことに対する反応であると確信した。
しかし、女性労働者は、店の鍵を渡すことを拒んだ。まだ希望退職に応じていなかった彼女たちは、店舗に閉じこもり、5日間、占拠した。このことが、マスコミで大きく報道された。
TSSAの地域オルグ活動家のジェシー・フェンは、「毎日、全国ニュースの見出しに出た」と述べた。
この占拠は、瞬く間にイベント化した。産休中の労働者も含め、女性労働者の全員が友達や家族、赤ちゃん、子どもを連れて参加した。労組は市民にこのことを知ってもらうため、店舗の外に仕切りを設け、旗やビラを作成した。インターネットも、労働者のメッセージを世界に伝える強力なツールとなった。労組の行動は、概ね、好意的に受け止められた。マスコミは、記事で人間的な側面を見せた。労働者の全てが女性であり、その多くが母親であるという事実が、記事の取り上げ方に大きな違いをもたらした。
占拠から5日目、会社は高等裁判所に労働者退去命令を出させ、女性を強制退去させた。これらの女性労働者は、警察の施設に1日収監された後、店舗で占拠行動を取らないことを約束するため、裁判所に出頭しなければならなかった。
会社は、店舗の閉鎖作業を進め、女性労働者は職を失った。しかし、彼女たちは、勤続年数を加味した好条件の退職条件を確保した。
フェンは、占拠が、よりよい条件を会社に提示させる圧力となった、と確信している。
フェンは、「同様に重要なことは、今回の経験が、参加した労働者に火を付けたことだ。女性労働者の多くは、組合に関与したことはないが、闘う精神はすでに持っていた。労組の活動によってその精神が収穫され、確固たるものとなった」と述べた。
そして、次のように結んだ。「アイルランドで生涯にわたる労働活動家を育てることができた。女性だけなく、参加したその友人や家族も」 |
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60秒ガイド
好条件を獲得
トーマス・クック社の労働者の行動は、軍隊式の正確さで組織されたことによって成功した。労働者は、プレス、議員へのロビー活動など、担当別にグループに分かれて行動した。店舗が常時、占拠状態にあるように名簿を作成した。
労働者は、他のグループとも重要なつながりを持った。当時ストを実施していたアイルランドの港湾労働者が、支援を申し出た。人員整理の実施で注目を集めていたベスタス社(英国)の労働者も、連携行動を取った。
女性労働者は、フェースブックグループやオンライン上の請願書を立ち上げ、国際連帯のメッセージもITFから発信された。国際的な注目と支援のメッセージが、女性労働者の志気を持続させた。 |
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