2010年04〜06月 第39号 |
■ラン航空での組織化 |
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ラン航空での組織化
成功への道のり
南米で、航空労働者をターゲットにした組織化キャンペーンが成果を上げている。プロジェクトが軌道に乗る過程をプロジェクトコーディネーターのディナ・フェラーが語る。 |
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綿密な計画
ラン航空の組織化プロジェクトは、2006年に始まった。私は、プロジェクトコーディネーターとして顧問のテレサ・コンロウと共に、明確な戦略を練り上げている。ラン航空との団体交渉に影響を与えるため、同社の民間航空スタッフの労働条件を改善して組合を強化することが目標だ。
このプロジェクトが対象としているのは、チリ、アルゼンチン、ペルー、エクアドルや、将来ラン航空のネットワークに入る可能性のある国においてラン航空グループの労働者を組織化しているITF加盟組合である。
我々は、組合活動家と組合員がセミナーを通じて組織化の手法を学ぶべきだと考えた。また、確実に女性航空労働者がセミナーに参加し、組合組織者として成長するようにした。 |
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組織化チーム内の信頼を強化
我々のアプローチの仕方は、誠実に、きちんと説明し、透明性を持つことだ。そのためには、労働者のところに行って話しかける前に、先ず、組織化チーム内で信頼を築くことから始める必要があった。こういう仕事は一人でできるものではなく、チーム内で互いに助け合えるということを知らなければならない。
アルゼンチンでは、航空労組の客室乗務員(元ラン航空労働者と2人の匿名ラン航空労働者を含む)が、組織化委員会を結成してラン航空の客室乗務員と接触するために、計画に加わった。我々は、ラン航空労働者を組織化することの重要性について説明した。さもなければ他の企業においても労働条件を下げられてしまうからである。こうしてチームができ、開始準備が整った。 |
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労働者と出会う
ソーシャルメディアは組織化にとても便利で、フェイスブックやツイッターといったサイトを活用している。例えばフェイスブックにはプロフィール欄に写真を載せられるので、話す相手を判別するのにとても役立つ。だがほとんどの場合、長年培われてきたマンツーマンで労働者と対話する。生身の人間同士の交流に勝る技術はない。また客室乗務員以上に上手く客室乗務員に話しかけ、組織化できる者もいない。自分自身で問題を理解しているからだ。
最終的に8人のラン・アルゼンチン航空の労働者が組合承認のため公に働けることになり、そのお陰でさらに多くの労働者と接触し、組織化委員会を拡大することができた。 |
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一対一の組織化
組織化は常に困難である。興味を持ってもらうために多くのレクリエーションをする必要があった。パーティーやバーベキューをしたり、サッカー大会を開いた。長くゆっくりした過程である。組合に入るか分からない労働者と電話で何時間も話し、励まし、異論に答えた。そうして1人ずつ味方にしていったのだ。 |
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子どものいる親への配慮
育児は組織化戦略の中でとても重要なポイントである。我々の目標の1つは女性を組織化し、リーダーとして育てることである。そこでラン・アルゼンチン航空の組織化キャンペーンでは、会議中に託児所を設けている。女性が子どもを連れてこられるように構内での禁煙を強化し、また組合事務所に子どもの描いた絵を展示する場所を設けた。母親だけでなく、全ての親が対象であり、組合の一部であるということを感じてもらいたい。 |
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労働者を味方にする
私がラン航空でパーサーとして働き始めた当時、「組合」は禁句とされていた。組合に入ろうとすれば、経営陣から処罰される危険があった。また、労働者自身も組合に興味がなく、仕事に満足している、と言っていた。企業の流した反組合メッセージを信じ、おとなしくしていたのだ。未だに組合への圧力や間違った情報はあるが、今は以前よりも大っぴらに話せるようになっている。
組織化は現在も進行中であり、目覚ましい進歩を遂げた今もなお課題は多く残っている。さらに多くのラン航空客室乗務員と接触し、関係を築き、ラン航空の労使関係の歴史と複雑さについて情報を共有している。
我々は先んじて労働者から承認と信頼を得た。全ての業績の中で、これは何にも増して誇れることだと感じている。ラン航空が、チリ、ペルー、エクアドル、アルゼンチンのどこで運航しようとも、我々は同じ組合に属する兄弟姉妹である。南米のラン航空組合ネットワークの一員であることを誇りに思う。 |
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ラン航空の概要
ラン航空は1929年、チリ政府により、国内の航空輸送を目的に設立された。
国営企業としての発足から60年後の1989年に民営化が始まり、1994年に会社の99%が株主に所有されて民営化が完了した。
ラン航空は、広範な地域ネットワークを確立し、ペルー、エクアドル、アルゼンチンで旅客輸送を、ブラジルとメキシコで貨物輸送を展開した。
ラン航空は、南米での格安航空会社の成功の象徴となった。しかし残念なことに、その成功が労働者には還元されていない。
会社は、反組合の方針を取り続けている。組合との交渉を避け、御用組合や団体交渉対策委員会を作った。組合のリーダー達は圧力を受け、解雇すると脅されている。一方で、組合に入っていない労働者は、賞金、ボーナス、メダルなどの報酬が与えられている。 |
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これまでのキャンペーンの成果
エクアドル:ラン航空労働者の最初の組合は、エクアドルの労働省によって承認された。ヒメナ・ロペスが書記長を務め、グアヤキル(エクアドル)に拠点を置く予定のこの客室乗務員組合にとって、これは組合が認識されるための第一歩である。また、エクアドルの航空会社で結成された最初の組合である。
チリ:飛行時間の上限や最低限の休憩時間などの労働条件について定めた新しい法律により、ラン航空の客室乗務員とパイロットは恩恵を受けている。組合はITFなどから国際的に情報を収集することができ、それをもとに政府にロビー活動を行い、上記法律の通過に助力した。就業規則の変更は、チリ籍の航空機で働く全ての職員の労働条件を向上させるだろう。また、ある整備士の組合役員が解雇されたことを受け、反組合法反対キャンペーンも進行中である。
ペルー:ペルーの組合をまとめる連合、FEDATAペルーは、それまで組織化されていなかった労働者を代表する新しい組合や、歴史のある確立された組合も加盟している。連合には、パイロット、運航管理者、客室乗務員、整備士、グランドスタッフや航空管制官が参加しており、組織を強化し、組合間で戦術を学んで共有することで、全ての労働者に貢献している。
アルゼンチン:ラン航空でのプロジェクトを通じて、アルゼンチンの客室乗務員、パイロット、そしてグランドスタッフの組合が団結することができた。2009年11月にはラン航空の組合の合同ストライキにより、ラン航空労働者全体の大幅な賃金値上げを勝ち取った。 |
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