2010年04〜06月 第39号 |
■国際ドライバーのための国際的な組合加盟 |
|
|
国際ドライバーのための国際加盟
国際ドライバーは、大半の時間を自宅から離れて過ごす。国際ドライバーが労組の支援を本当に必要とするとき、われわれが連絡を取るには、どうすればいいか。ピープ・ピーターソンが、国境をまたぐ組合員の加盟の必要性について寄稿した。
国際ドライバーの組織化
世界の他の地域と同様、欧州のドライバーは労組に入りたがらない。エストニア、ラトビア、リトアニアの交通運輸労組が、駐車場で国際ドライバーに話しかけた時、多くの反対意見が出たので、そのことは承知している。
国際ドライバーは、自分たちが外国にいるときに、労組がどうやって支援を提供できるのか、強く疑っている。また、この3つの小さな国々で、別々に活動している労組が、労働条件に変化をもたらし得るのかどうかについても、懐疑的である。欧州の国際貨物市場は、完全に解放されている。共通市場の全域に適用される規則は、労働条件、休憩時間、訓練の問題を除いて、そう多くはない。
これらの労働者を組織するためには、新しいアプローチが必要である。それが、国境を越えた国際加盟である。 |
|
|
国境を越えた国際加盟は、どのように機能するか?
国境を越えた加盟計画は、持続可能である必要がある。このプロジェクトを管理可能かつ魅力あるものにするためには、特別な国際加盟カードが必要である。
東欧のドライバーには、明らかにコスト高となるだろう。しかし、新規および旧加盟国両方の加盟組合員数を増加すれば、必要な活動資金を集めることができる。ドライバーが、ポーランドでの加入を決めようが、オランダでの加入を決めようが、それは重要ではない。ドライバーは、自分の職場や責任ある職場代表に近い労組に加入することを望むものと思われる。
また、国境を越えた組合員に提供する用意がある支援についても、明確にすべきだ。煩雑な書類手続きは最小限に抑え、国際通貨取引費用を節約するため、支援のレベルには、例えば高等裁判所での法的代理人のような高いサービスは除外すべきである。貧困国の労組にとっては、先進国の労組のように、高い法定費用を払うことは困難だろう。機能する連帯保険制度があれば、この問題を再検討することができる。 |
|
|
ドライバーのための緊急資金
ドライバーが、食糧を買うお金や帰国するためのお金がないまま、外国で身動き取れない状態になったときに備え、特別緊急準備金を創設すべきだ。後で使用者に返還請求できる場合もあるが、準備金によって、ドライバーの困難に迅速に対応することができる。
労組がこの資金を拠出すべきではなく、国際路面運輸使用者協会(IRY)が、欧州ドライバーのための共済金融資金を創設することを提案する。このようなケースはまれなので、あまり高額とはならないはずだ。我々の共通の利益は、トラック産業のイメージを良くすることである。そして、労働者に対し、もっと適切に処遇するよう、使用者を動機づけることである。 |
|
|
国境を越えた国際加盟は、労組にどのようなメリットをもたらすか?
ドライバー間で共通の組織や強い結束が生まれれば、我々の行動力も高まり、全てのドライバーに適正賃金を確保するための他の手段についても検討するきっかけとなる。
昨年秋、国境を越えた国際加盟の提案について意見を募ったところ、多くの好意的な意見が寄せられた。労働者と労組は、このようなシステムは、これまでずっと必要とされてきた、と述べた。ドライバーは、緊急支援がいつでも近くで受けられると思えば、欧州全域の強い労組に仲間入りすることを真剣に考えるだろう。そうなれば我々全員にとって良いことだ。 |
|
|
ピープ・ピーターソンは、エストニア交通運輸労組の委員長で、ITF役員 |
|
ITFは、国際加盟についてどう思うか?
国際加盟という考え方は、ITFにとって目新しいことではない。ITFの便宜置籍船(FOC)キャンペーンは50年間続いているが、同じようなモデルに基づいた活動である。
労組にとって欧州連合の拡大は、貿易および労働者の移動のための開かれた国境を意味する。交通運輸事業者は、欧州全域を比較的自由に移動している。賃金や雇用条件の変化は、ソーシャルダンピングの原因となった。既成の労組は加入者数を減らし、他の経済国からの代替ドライバーの多くは未組織である。
労組は、地域ベースで導入されている労働法に対して、地域の対応を再検討する必要がある。ドライバーが故国を離れているときに必要な支援をすることは、労組にとって、適切な組織とコスト回収プロセスを見つけなければならない圧力となる。
加盟組合が募集や支援活動の課題についての地域的解決策を見いだせるよう、ITFはサポートしている。諸地域の法律、交通運輸労働者の自由な移動、未組織労働者の増加などの問題に取り組まなければならない。各国の労組が生き残りのために闘っている場合は、何らかの統合や国境を越えた協力が必要となる。 |
|
|
行動する労組
労使紛争の日記 レイニア・ストロー
2009年7月15日、12台のトラックの封鎖は、ドライバー側と使用者側の協約締結で終結した。このことは、特に驚くことではない、唯一つのことを除いては。エストニアのドライバーが、エストニア企業のトラックの封鎖を、オランダで実行したのだ。
この出来事は、国境をまたいで仕事をするというドライバーの仕事の性質に起因する、ドライバーが直面する問題のいくつかを物語っている。
同月12日、トラックドライバーたちは、使用者からユトレヒト近くの駐車場に呼び出された。会社は、トラックをエストニアに返すので、新規のドライバーと交替し、トラックは乗り捨てるように、と命じた。はっきりとは断定できなかったが、ドラバーたちは解雇されたようだった。
ドライバーたちは、仕事中の費用に充てるために支給された給料の前借分しか受け取っていないことに気付いた。賃金の大半は、ドライバーたちが申告した銀行口座に振り込まれていなかった。ドライバーたちは、賃金を受け取るまでトラックは乗り捨てない、と言って、トラックの封鎖を開始した。
ドライバーたちは、ウェスト・ライン社で働いていた。同社は、C.Van Heezik社(オランダ・ユトレヒト)と業務契約を結んでいた。ドライバーたちの業務の大半は、C.Van Heezik社向けのものであった。契約の上では、ドライバーたちは、ウェスト・ライン社とのみ雇用関係を持ち、C.Van Heezik社とは関係なかった。
7月14日、C.Van Heezik社の代表が到着した。同代表は、自らのトラックに新しい12人のドライバーを乗せてきた。トラックを封鎖していたドライバーたちは困ってしまった。お金はないし、賃金支払いの保証もない、エストニアに無事に帰国する交通手段もない。12人の代替ドライバーはトラックを引き継ごうと待ち構えている。使用者に圧力をかけられる手段は、トラックの封鎖だけだった。
私は、できるだけ会社の代表と交渉しようとした。その際、ドライバーたちの誰かが立ち会うようにした。最終的に、代表は折れてきた。もう疲れてきたし、この状況を終わらせたい、と語った。私は、代表に渡すため、ドライバーたちのリストを作り、各ドライバーに希望する賃金を尋ねた。ドライバーたちは皆、10.000クローネを即時に、各自の口座に振り込むことと、振り込み証明書を各自にファックスで送信するよう、要求した。
私は事務所に戻り、代表とドライバーたちが署名する小さな契約書を作成した。また、支払い証明書をドライバーたちに渡した。ドライバーたちは、それを見て、エストニアの銀行からのもので、問題ない、と判断した。一方、C.Van Heezik社は、一泊するホテルと翌朝乗るバスを予約した。ドライバーたちがトラックの封鎖を解いたのは、その後であった。
2日後、我々は、支払証明書に偽造された形跡があることを発見した。その時点で、賃金は1クローネもドライバーたちの口座に振り込まれていなかった。
その日の朝、私は、エストニアの交通運輸労組(ETTA)のピープ・ピーターソンに連絡した。C.Van Heezik社はエストニアを拠点とするドライバーともトラブルがあったのでピーターソンも同社と連絡を取ろうとしていたが、なかなか連絡が取れなかったようだった。ピーターは、ドライバーがエストニアに帰国したら自分が引き継ぐ、と約束した。支払証明書が偽造されたらしいということで、書類は全て、ETTAへ送られた。労組は賃金を取り戻すため、法的措置を検討し、現在、その手続きが進められている。
これは、路面運輸労働者が、いかに海運産業の労働者と似通っているかを示す1つの例である。つまり、パナマ船籍の船舶をオランダの会社が所有していて、英国、オランダの航海士やウクライナ、フィリピン、インドの乗組員が働いているような状況だ。
企業が海外に進出すれば、労働者も追随する。労組も国際ネットワークを持てば、うまく機能するようだ。連絡も容易に取れるし、人々の反応も早い。上記のような事件では、そういったことが不可欠な要素となる。
この事件の結末は失望させられるものだったが、前向きなこともいくつかある。それは、労働者が、労組の行動の結果、労組が必要であることを確信できたことと、今後、期待できる新たな活動を確認できたことである。 |
|
|
|