2010年04〜06月 第39号 |
■船員の権利 |
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船員は、自らの権利を守るために闘わなければならない。
ITFが海事労働条約の新たな指針を打ち出すことに伴い、これまで勝ち取ってきた権利を振り返り、今後の成すべきことを確認する。
国際労働機関(ILO)の海事労働条約(MLC)2006または船員の権利章典と呼ばれる文書が、労働条件に与える実質的な利益を、船員はまもなく実感するであろう。
ITFのジョン・ウィットロー船員部長は、「この条約は、海事産業を改善するための絶好の機会であり、その手段ともなる。」と語った。「我々は、条約上の船員の権利について、問題ごとに、一行ごとに、闘いを続けてきた。今度は、権利が認められない場合には苦情を申し立てることによって、船員がこの条約を活用することを希望している」と述べた。 |
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なぜ、MLCは重要なのか?
この条約は、世界の船員の職場における包括的権利と保護を規定している。最も重要な点は、その船舶の船籍国が条約に調印していない場合でも、当該船舶に対する総合的な強制実施システムを、この条約が具備していることである。 |
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MLCは、いつ発効するのか?
MLC-2006は、世界の船腹量(総トン数)の33%以上を所有するILO加盟国30カ国以上が批准したのち、12カ月を経過した時点で発効することになっている。
総トン数は、すでに満たしている。現時点でMLCの批准手続きを完了したのは8カ国で、他の国も続く見込みである。 |
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この条約において、ITFとその加盟組織が果たした役割
ITFは、MLCに関して開かれた全ての交渉に深くかかわってきた。
ILO条約の歴史において、MLCの作成は非常に革新的な作業である。通常の条約に比べ、非常に詳細な内容となっている。
ウィットロー船員部長は、「我々は、条約の順守と実施に長い時間を費やしたが、可能な限り最善のものができたと考えている。国際海域または異なる国家に属する港湾間に就航する500総トンを超える全ての船舶は、海事労働証明書を所持しなければならない。これは、世界の船舶の大半が、証明書の所持を必要とすることを意味している。
国際的な労働基準について、初めて定期検査が行われることになる。また、証明書を持たない船舶でさえも検査することが可能となった。
さらにウィットロー船員部長は、「これらの権利は、関係諸国の政府によって我々に与えられたものではなく、我々が闘争によって、これらを勝ち取ったのである。容易に獲得したものではない。多くの労働組合が団結して闘った結果、この権利憲章を手にすることができたのである。また、労働組合は、最低限の社会的基準と労働者の権利を改善するために闘った。それゆえ、現行の諸権利を引き下げる手段として、MLCを利用させることはできない」と述べた。 |
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ITFは、船員に何を実行してもらいたいのか?
船主がMLCの規定を遵守しない場合は、船員が苦情を提起し、立ち上がって闘うよう、我々は求めている。
反労組条項、賃金不払い、二重帳簿などが船員から報告された場合は、この条約に基づいて、初めて港湾国検査(PSC)の対象となることとなった。適切に活用することができれば、この条約は、適正な労働条件確保のための闘いにおいて、強力な武器となりうる。 |
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ITFが船員の権利のためにしてきたことは何か?
ITFによるMLC関連の活動は、現在も続いている。我々は各国の船員労組とともに、条約の批准を促進するためのロビー活動に努力している。この条約が広範な諸国の批准を得られる兆候がある。
我々は、ITFインスペクターの訓練を実施しているほか、簡略化されたガイドラインとデータ表の作成にあたっている。船員の権利の行使について鍵を握っているのは船員である。
ウィットロー船員部長は、「この条約の成功の目安となるのは、究極的には、この条約が現場の人々にどのような影響を与えるのか、この条約が現実の世界において何を達成できるのか、にかかっている」と述べた。 |
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MLCの要約
海事労働条約(MLC)は、ITFとITF加盟組合が闘い取った、船員の権利章典である。
MLCは、基本的権利と職場における保護を船員に提供する。
MLCは、船員の権利を次のように規定している。
・安全で安定した職場
・公正な雇用条件
・妥当な生活環境および労働条件
・医療、健康保護および福祉などの社会的保護
MLCは広範な執行システムを備えているが、このシステムが機能するためには、船員が問題を報告する必要がある。 |
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