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グローバルユニオン

2005年7〜9月 第20号
■船員第一
 
船員第一

国際海事機関(IMO)のエフティミオス・E・ミトロプロス事務局長が、IMOの活動にとって人的要因(ヒューマン・エレメント)がいかに重要かを説明する

海運が国際貿易で重要な役割を果たしていることは言うまでもない。大量の原材料、部品、製品、燃料、食糧を長距離にわたってコスト効率の良い方法で輸送するには海運しかない。よって、船舶および船舶を運航する船員は、今日のグローバル経済になくてはならない存在だ。
国際海事機関(IMO)−船舶の安全・保安および船舶による海洋汚染の防止を管轄する国連の専門機関−が人的要因を活動の中心に据えている理由もここにある。
ストレス、疲労、仕事量、訓練基準、安全、保安、環境保護など、船員にとって大事な問題は全てIMOの委員会や小委員会で最重要課題として扱われている。また、国際基準の策定、特に船舶の運航要件や勧告の見直しは、関連委員会の専門家が「人的要因」を考慮しながら行っている。
例えば、海運のような国際的な産業では当然求められる、用語の簡略化・統一の他にも、使いやすさ、使用時の安全性、重要な安全機能の調和、運用・技術マニュアルの明確さ・分かりやすさ・最新性などにも細心の注意が払われている。
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基準の重要性

一方、船主側も安全かつ効率的な運航のためには、適当な資格を所持するだけでなく、必要な職業水準や技術能力を実際に持っている船員を雇う方が得であることをはっきりと認識している。この点からも、海運産業の人材に必要な基準を確保させることを目的とする「船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約(改正STCW条約)」は、近年のIMOの活動の中で最も重要なものの一つだ。
95年に全面改訂されたSTCW条約は、知識の習得だけでなく、実際の能力の発揮に重点を置いている。この条約はトレーナーや船員に大きな影響を与えているだけでなく、より長期的には、海難事故の犠牲者数にも影響を及ぼしている。実際、海運産業の安全や環境保護の実績は、STCW条約の採択以降、改善され続けている。確かに、その原因の一部は技術の向上にあるのかもしれない。しかし、事故原因の8割がヒューマン・エラー(人的要因)とされる中で、船員の技術力や彼らの献身が実績改善に果たした役割は大きい。
人的要因に関連する、もう1つのIMOの重要な活動に「国際安全管理(ISM)コード」の導入がある。名称からも分かるように、このコードは安全管理、特に船内および社内の安全文化の形成に経営者が全面的かつ積極的な役割を果たす責任について規定したものである。経営者を安全のチェーンの中にしっかりと組み込み、船内で何かが起こった場合に、船長だけに全面的な責任を負わせるのではなく、当該企業の取締役会にまで責任を負わせようとするものだ。
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船員不足問題

IMOは他の業界関係者と同じく、将来予測される船員不足の問題を非常に懸念している。国際、地域、および国内レベルで実施された数々の調査で、この問題を放置した場合の影響の大きさが指摘されているように、船員不足問題は手がつけられなくなる前に対処しなければならない問題だ。現在、故意でない海洋汚染事故にも刑事罰を課そうとする動きが見られるが、このような動きはさまざまな職業を検討する若者から見た、船員という職業の魅力を低下させるものだ。
船員がこのような状況に直面した場合に公正な処遇を受けられるようにするためのガイドラインをILOと共同で策定すべきだという提案を受け、IMOは本件に対する取り組みを開始した。難しい問題ではあるが、楽観視できる要素もある。ことの本質が複雑かつデリケートであるにもかかわらず、今日、国際的なレベルでプラスの動きが見られるからだ。本年1月に開かれた「海上事故の際の船員の公正処遇に関するIMO・ILO合同特別専門家作業部会」第1回会合では、海上事故にかかわった船員が公正な処遇を受け、権利を侵害されないようにするために、できるだけ早くガイドラインを策定すべきことが確認された。また、本件に関する決議案も採択され、2005年11月のIMO会議とILO理事会に提出されることになっている。
適切な資格を持つ、有能な船員を世界的に確保するためには、船員という職業がしかるべき人材にとって魅力的な存在でなければならない。それはつまり、船員の労働条件を少なくとも他産業と同レベルにする必要性を意味する。労働力の質が海の安全や海洋環境にもたらす影響を考えればなおさらだ。
船員の訓練、福利、給与、労働条件といった細部にまで関心を払い、船員を確保するための綿密かつ強力なキャンペーンを展開すれば、今日の国際的・競争的労働市場の中で、船員という職業の魅力を大幅にアップさせることは可能なはずだ。
現代の複雑な船舶の運航には、船長から甲板員まで全ての乗組員が必要な技術を所有していることが求められる。与えられた資格が保障する技術を実際に所有していることが求められるのだ。ここで問題になるのが、海技免状の不正入手だ。これは実に深刻な問題だ。もともと遂行能力のない仕事を与えられれば、他の乗組員の命や海洋環境を危険にさらすことになるからだ。
海技免状は信頼でき、その有効性が証明できるものでなければならない。従って、海技免状をめぐる不正慣行の追放は緊急の課題だ。IMOはこの問題に関する調査を実施したほか、関連の小委員会が一連の回状を通じて訓練機関、海運当局、船主に助言を与えている。船員自身も不正の海技免状を目にした場合は当局の目に留まるように最大限の努力をしてほしい。
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保安強化と権利保護

2001年の同時多発テロを初めとして、世界各地でテロ事件が発生したことを受け、IMOは他の国連機関と一緒に海上保安対策に取り組むこととなった。この取り組みの基本は、船舶、企業、港湾に具体的な責任を負わせ、責任の連鎖をつくりだすとともに、訓練を通じて全関係者に職務上必要な技術を身につけさせることである。船員は2004年7月1日に発効した「船舶と港湾施設の保安のための国際コード(ISPSコード)」でも中心的な役割を担っている。
新たな保安体制を実施する上で重要なのは、保安のニーズと海運貿易促進のニーズとのバランスを保つことである。犯罪者やテロリストが船員のふりをして船舶や港湾に立ち入ることができないように保安規定を強化する必要がある一方、保安強化の結果、船員が不当に不利益を被る(例えば上陸を拒否されるなど)ことがないように、適切なバランスを保つ必要があるのだ。
保安違反を防ぐためには、船員の不断の警戒と協力に強く依存するしかない。彼らのサポートと全面的なコミットメントがなければ、ISPSコードが狙う保安体制を実現することは不可能だ。従って、彼らが「自分たちの仕事が十分評価されていない」と感じるようなことがあってはならない。
今日、港湾での荷役速度が速まっているが、これはつまり、船舶の寄港時間が短くなり、船員へのプレッシャーも高まっていることを意味している。安全、効率、そして保安上の観点からも、船員が次の航海に出る前に十分くつろぎ、体力を回復する機会を与えられることは大切なことだ。よって、船員の上陸機会は不必要に制限されるべきではない。
IMO等の活動の結果、船舶の設計、建造、設備、運航、配乗は、かつてないほどに厳格に行われるようになった。しかしながら、毎年、余りにも多くの船員が海難事故で負傷したり、命を落としたりしている。残念ながら、彼らのことは記録に残されないまま、親友や家族以外にはすぐに忘れられてしまうことが多い。
1998年、IMOは発足50周年を記念して、ITFの資金協力により、船員のための基金を発足させた。この基金は、船員の果たす重要な役割やIMOの活動の意義を訴えるためにIMO本部前に建設された船員記念碑等に使われている。われわれの政策目標(ミッション・ステートメント)である「安全で安定した効率的な海運ときれいな海」の達成は、船員の貢献なくしては不可能だということは決して忘れてはなるまい。
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