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2005年1〜3月 第18号
■勤労生活
 
労働の尊厳

ラクシミ・マハラジャ、テンポ運転手、カトマンズ

サンガム・トリパシィによるインタビュー

インタビューから数ヵ月たった2005年3月、ラクシミ・マハラジャはネパール運輸労組(NETWON)の50人の女性テンポ・ドライバーの一人として、国際女性日の記念イベントに参加しようとしていた。ネパールでは2月に国王がクーデター(5ページのニュースを参照)を起こし、指令を発令した結果、組合は記念式典や集会を行うのにも警察から許可を得なければならなくなった。
国際女性日のイベントについては最初、許可が下りていたが、3月8日の国際女性日を明日に控えた7日の夕刻になり、突然許可が取り消された。ネパールで民主主義が停止されて以降、顕著になった労働組合の権利剥奪の一例だ。しかし、市民の勤労生活は通常どおり続けなければならない。
カトマンズのビール病院前は人通りの多い広場だ。広場の一角には、公共交通の待合所があり、旅客テンポの長い列が出来ている。テンポの運転手は、甲高い声で客引きをし、乗客にすばやくテンポに乗り込むよう指示している。
待合所にいてまず気づくのは、女性のテンポ・ドライバーが多いということだ。取材に訪れた私たち一行は、ラクシミ・マハラジャに挨拶し、第14ルートを運行する彼女のテンポに乗り込んだ。女性テンポ運転手は75人いて、そのうちの18人が第14ルートを運行している。
環境汚染の少ないいわゆる「サファ・テンポ」は電気駆動の3輪車で、5年ほど前にカトマンズに導入された。ディーゼルエンジン車両による公害が警戒を要するレベルまで悪化したためだ。
けたたましい音を立て、テンポを運転しながら、ラクシミは彼女の朝5時に始まるという典型的な一日の様子を話してくれた。家の掃除、洗濯、子供と夫の食事の用意を済ませてから、6時30分までにテンポの停車場へ向かう。
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生計を立てる

乗客の一人が次の角を曲がった辺りで止まって欲しいとラクシミに頼む。この客は10ルピーの支払いに1,000ルピー札を差し出し、990ルピーのおつりをせがんだ。その場では細かいお金を出すように穏やかに客に論したラクシミだが、他の客に押し付ければいいだろうと言って汚れた札やちぎれた札を差し出してくる乗客に、ふと不満がこぼれる。
「口論になると、乗客は決まって、女は家で料理をして子供の面倒を見ていればいいんだ。なぜ男と競争したがる?」などと言ってくる。こういう男性客に対しては、ラクシミも容赦しない。皮肉のひとつも言ってやることにしている。
テンポは最大11人乗りだ。「男性の運転手は、運賃を稼ごうと定員以上に乗客を詰め込もうとする」とラクシミ。運転手が一日の終わりに契約関係を結んでいる事業者に支払う金額は1,200ルピー(約16.7米ドル)だ。「大抵、手元に残るのは150から200ルピー(約2〜2.7米ドル)だ。その他に事業者から毎月4,000ルピー(約55.55米ドル)の固定給を受け取っている。
「充電業者」と呼ばれる事業者は、テンポの充電を行うだけでなく、様々に所有者の異なるテンポ25台から40台も運営し、男女の運転手を雇っている。運転手の多くが、テンポの本当の所有者を知らない。
テンポが赤信号で停止しかかると、2人の乗客が降りる準備を始めた。
「まだ降りないでください。警察にライセンスを取り上げられてしまいますから」とラクシミは乗客に頼んだ。「信号のところで乗客を降ろしたため、50から100ルピーの罰金を何度も警官に取られた」とラクシミは言う。
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未来への希望

ラクシミが帰宅するのは夜8時。それから家族の食事の仕度をし、次の日に着ていける様に子供の制服を洗濯する。夕食は9時半から。全部片付くと、ラクシミはラジオに耳を傾ける。「ラジオに耳を傾けるこの1時間足らずが私だけの自由な時間。リラックスして人生や家族の将来について考える」とラクシミは言う。
クーデターが起きる少し前、組合はカトマンズで40人の女性テンポ運転手を対象に組合意識向上プログラムを1日かけて行い、40人全員が組合へ加入してくれることを期待していた。一方、組合は、警察や交通局の役人による嫌がらせや駐車の問題を解決するための会合をもとうと計画していた。しかし、この記事を執筆中の現在、組合の自由がいつ十分に回復され、これらのプロジェクトがいつ実現するか、めどが立っていない。
組合事務所の近くでラクシミはテンポを止めた。私たち一行が別れの挨拶をしようとした時、ラクシミは事務所に掲げられた「労働者の尊厳を尊重しよう」と書かれた横断幕を指差した。
「この言葉にいつも元気づけられています。いつの日か、皆がこの言葉を信じられるようになる日が来ることを願っています」そう言うと、ラクシミはギアを変え、勢いよく走り去っていった。この時はまだ、暫くたってその言葉がどれほど痛烈な皮肉になるのか、彼女も知る由はなかった。
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