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2009年7〜9月 第36号
■海賊
 
増え続ける海賊

ソマリア沖で増え続ける海賊について、ジョン・ベインブリッジが報告する。

国際海事局(IMB)が最近発表した数字からも、海賊に関する状況が悪化していることが明確になった。特に、ソマリア沖のアデン湾における海賊の襲撃が急増したことが、数値悪化の主な原因だ。本稿執筆中の段階で、アデン湾で拘束された船舶数は17隻、人質となった船員数は292名だ。
2009年では、3月までの3ヵ月間に、世界中で102件の海賊事件が発生している。前年同期では、53件だった。
海賊の急増で、船員に対するリスクも高まっている。今年の第一四半期には、2名の船員が殺害され、9名が負傷した。「乗組員に対する暴力はエスカレートしている」と、IMBは述べている。
同時期のアデン湾およびソマリア沖の海賊発生件数は、61件だった。(前年同期では6件)。しかし、2009年1月から3月の3ヵ月間に、襲撃が成功する頻度は前3ヵ月間の3件に1件から、8件に1件へと下がっている。
ナイジェリア沖でも海賊が続発しており、7件の事件が発生した。2009年第一四半期には、未確認ではあるが、さらに13件が報告された。襲撃された船舶のほとんどが石油産業に関連が深いオフショア船で、ナイジェリア反政府軍の標的になっている。ペルー沖に錨泊中の船舶の襲撃数も4件から7件に増加した。一方、マラッカ海峡やバングラデシュ沖など、以前、海賊の温床と言われていた地域では、発生が収まってきたようだ。
以下、最近の事例を紹介する:
■4月18日、南シナ海を航行中のギリシア所有のマルタ籍船「サイダーライオン号」が6人の武装した海賊に乗り込まれ、二等航海士が人質に取られるとともに、海賊が船から引き上げる際に現金と船員の所持品が盗まれた。
■4月19日、ソマリアの海賊が、トーゴ籍船「シーホース号」を解放した。
■4月20日、マルタ籍船「アトランティカ号」が、イェメン沖30マイルのところで海賊の襲撃を逃れた。
■4月20日、パナマ籍船「ニューレジェンドオナー号」がソマリアの海賊から砲撃を受けたが、NATOのヘリコプターが到着したために難を逃れた。
■4月20日、ナイジェリアの武装グループがトルコ所有でマーシャル諸島籍の「アレイナ・マーカン号」を襲撃し、トルコ人の船長と一等機関士を誘拐したが、後に二人とも解放された。
■4月21日、ソマリアの海賊が、6ヵ月間拘束していたタンカー「ストルト・ストレングス号」と23人のフィリピン人乗組員を解放した。
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船員は、いかに自分を守るか?

アデン湾では25隻以上の艦船が主に警備を行っているが、海賊も絶えず戦術を変えて、おとり作戦や母船の使用、夜襲すらあり、成功している。EU・米国間の海軍の調整を行っている海上保安センターは、3回の襲撃に1回であった海賊による船舶への乗り込みを8回に1回に減少させたと確信しているが、広大な海域のために警備が難しいことも強調した。一方、全船舶の3割以上が海軍への連絡を行わなかったり、推奨航路を通過しなかったり、海賊に対するいかなる対策も取っていなかったと聞くと不安になる。
英国のノースウッドにあるEU海軍本部では、商船の職員がチームを作り、多くの海軍グループと協力して海賊対策を調整している。船社や旗国、解放された船員などから提供される質の高い情報が圧倒的に不足していることは明らかだ。過去15ヵ月間で、約1,300人の船員が人質に取られた。襲撃を受けた船員の数はさらに多いが、事件後の報告会や情報収集などは事実上行われていない。EU海軍本部の幕僚長は、この方面でITFと協力することを希望していると述べ、海賊対策でITFがより積極的な役割を果たすよう奨励している。EU海軍が米国海軍や北大西洋条約機構(NATO)海軍と緊密に協力していることは明らかだが、推奨航路で警備にはあたってはいないものの、自国の関係船舶の護衛にあたっているそれ以外の国の海軍ともコミュニケーションをとっている。EUの幕僚長の話では、船舶がどの国の旗を掲げていてもEUは分け隔てなく警備を行っているが、他国の海軍は必ずしもそうではないそうだ。
海賊に拿捕された船舶のうち、船員の誘拐や身代金の請求に対して保険をかけていた船はほとんどなく、一般の船舶保険で支払いが行われていることは気がかりだ。拿捕された船自体にはほとんど価値がない場合などもあり、この不況下では、5ヵ月間も拘留されたストルト・ストレングス号の例のように、船員の誘拐期間が長期化したり、船が遺棄されたりすることにつながりかねない。
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船員支援のためにITFがしてきたことは?

国際団体交渉協議会(IBF)でITFが要求したため、ソマリア沖の海賊発生高リスク海域が拡大した。IBFとは、海運関係の組合と使用者が協議する団体交渉の場である。IBF協約を締結している船舶に乗り組む船員は、高リスク海域を通航中、賃金が倍増し、死亡・障害給付も2倍になる。同高リスク海域内ではあるが、国際推奨航路からは外れた海域を通航する船舶の場合、船員はその海域へ進むことを拒否し、会社の経費で本国送還される権利を有する。
ITFが主に関心を持っているのは、船員に影響を及ぼす問題を提起することだが、しばしば、船員を守ることよりも、船舶への海賊の乗り込みを阻止することや、船を守ることに意識が集中しがちだ。このことは、海賊問題に関する国際連絡会が採用した業界のいわゆる最善の処理慣行を見ても明らかだ。ITFはこの問題を国際海事機関(IMO)の海上安全委員会へ提起することを決定し、それ以来、以下の問題に関する提案書を提出している:
■船の建造時に船員の保護をより考慮すること
■船員が人質に取られた状況への対処
■船員の家族への支援
■乗組員の事件後の報告会と教訓の収集
■解放された船員に対する支援とカウンセリング
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FOC船への影響は?

船舶に対する責任は、旗国が負っている。米国の船員が乗り組む米国籍船を海賊が襲撃した場合、旗国の米国が早急かつ効果的に対応してきた。ITFは、便宜置籍船(FOC)が海賊発生の際の責任や、船舶保護コストの負担から逃れている事実に強い懸念をもっている。海賊多発海域の推奨航路外で船舶が襲撃される頻度は、FOCの方がそれ以外の船に比べて高い。昨年の統計を見ても、自国籍船は高リスクに分類される割合が極めて低いため、船員にとってもずっと安全な船といえる。
FOCのシステムは、人質に取られた経験からトラウマを抱えている可能性のある船員を継続的に支援していく態勢を全くもたない。グローバル化し、雇用もカジュアル化した海運産業の性質上、海賊から解放された後、船員がいかなる支援を受けることも、ますます困難になっている。
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船員も武装すべきか?

ITFも含め、海運界の圧倒的多数意見は、船員を武装させても暴力がエスカレートし、状況を悪化させるだけだというものだが、最近行われた海運業界の会議では、船舶に武装した軍隊を乗船させるべきかの判断は旗国に委ねられるという考えを一部容認する風潮があることも分かった。特に、武装した兵士を乗船させることや、船員の武装に関する議論においては、マースク・アラバマ号の襲撃が例に挙げられた。
米国は、様々な選択肢を見直しており、労働組合の意見も含め、様々な意見書を現在、上院で検討していると表明した。4つのFOC国は、自国の旗を掲げる船舶に武装保安隊やガードマンを乗船させることを許可するライセンスを発行した。ITFは、船舶が破損したり、船員が負傷した場合の船長の法的な責任と保険の状況について疑問を提示している。
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船員のために、次に何をすべきか?

海運業界は人質に取られた船員が何を必要としているかにもっと焦点をあてるべきで、この方面ではまだまだやるべきことが多い。フィリピンなどの国は、国民を守る方法を積極的に模索している。海賊の問題は、短期間で解消されるものではない。海軍による警備はここ暫らくは継続されると思われるが、究極的な解決策、できれば非軍事的に船舶を保護する方法を編み出していくべきだ。数々の方策が検討されているが、ITF加盟組合がこの問題に関して真剣に議論を開始し、海運界や海軍とさらに協力していく必要がある。
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ジョン・ベインブリッジは、ITF船員部次長
ブレンダ・キルシュによる追加報告
 
 
INDEX
物故者
英国の組合指導者ジャック・ジョーンズを悼む
オピニオン
ハナフィ・ルスタンディのイランへのメッセージ:イスラム教と民主主義は矛盾しない
海賊
悪化するソマリア沖アデン湾の状況
危機に直面する資本主義
金融危機が交運労働者に及ぼす影響は?
成功への道
不安定な雇用形態の改善を求めて闘う南アフリカの路面運輸労組
ジンバブエ
困難の中で奮闘する組合の様子
イランの労働者抑圧
組合活動家、サイード・トラビアンに聞く
グローバルな組織化へ
米英共闘の勝利-ファースト・グループの組織化
HIV/エイズ
ケニア港湾労働者、エイズ政策を勝ち取る
タイ
民主主義の強化-ITFの教育活動の成果
民間航空
勝利に沸くアルゼンチン航空労組
女性交運労働者
進歩の兆し
一般
ニュース
勤労生活:バーレーンの航空ケータリング・スーパーバイザーのハッサン・ハメイド
論説:この号の特集記事
 
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