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2009年7〜9月 第36号 |
■民間航空 |
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アルゼンチンの航空産業を救おう
アルゼンチンの航空労組は航空会社の再国有化を歓迎しているし、労働者は既に再国有化の恩恵を受け始めている、とガブリエル・モチョは語る。
アルゼンチン政府がアルゼンチン航空とオーストラル航空の2社を再国有化すると決断した際、アルゼンチンの航空労組はこれを賞賛した。再国有化の結果、労働者の賃金は既に引き上げられ、労働条件も改善した。航空労組は、これらの元民間航空2社各社と今年2月に新たな協約を締結した。
また、両社の女性労働者は、団体協約(CBA)上で母性に関する権利が改善したため恩恵を受けた。両社に勤める女性客室乗務員は、既に法定の権利に加え、有給の産休を保障されており、現行のCBAでは、子供が小さい国際線の客室乗務員については、居住する空港を出発地とする国内線へ割り当てる、という規定もあった。しかし、会社は、小さな子供がいる乗務員でもレイオーバー(着地国での滞在時間)が短い場合はスタンバイにあてるなどのシフトを組み、必ずしもCBAの規定を遵守していなかった。
現在、組合は、2歳以下の子供がいる乗務員のシフトを組む場合、レイオーバーを短くし、スタンバイはなくす方向で交渉を進めている。通常、子供のいる客室乗務員がスタンバイ勤務になり、フライトに就いた場合、土壇場になって育児の手配を変更しなければならなくなるため、組合のこの取り組みは、無給の育児休暇を取ることができない客室乗務員から歓迎されている。
しかし、航空会社が再国有化されたことで恩恵を受けたのは、女性客室乗務員ばかりではない。南米の航空産業の浮き沈みをまさに象徴する、長年にわたる苦難の歴史の最新局面として再国有化が訪れた。 |
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アルゼンチンの航空産業
アルゼンチン航空は、1950年に4社が合併して創立された。後にオーストラル航空がグループ会社に加わり、1980年代後半には民営化された。新自由主義的イデオロギーのもと、公共部門の役割が縮小し、それに代わり市場原理、民間企業の原理、収益性という至上目標が国の基本的な機能に勝る、という考え方が横行した。
当時、民営化の暴挙を果敢かつ公然と批判したのは航空従業員組合(APA)と他の少数の組合代表のみだった。そのような組合指導者の一人が、後にアルゼンチン航空労組(AAA)書記長になったアリシア・カストロだった。カストロは現在、ITFの執行委員を務める。
2001年、アルゼンチン航空の経営は、破産寸前まで追い込まれた。運航が3割も縮小し、債務超過に陥った。この状況下、社会の認識を高め、アルゼンチン国民を動員して、組合の闘争を支援する抗議運動に参加させることができたのは、組合の指導のもとに労働者が絶えず英雄的な闘争を続けたからに他ならない。アルゼンチン最大の都市ブエノスアイレスで、「我々はアルゼンチン航空を支援する」というスローガンが書かれたステッカーを国民が誇らしげに身につけた。
アルゼンチンでは、アルゼンチン航空とオーストラル航空の2社が航空市場を占有している。この十年の両社の年間売り上げは12億米ドルに及び、約6500万人を輸送した。両社が所有する航空機64機は、全てアルゼンチンに登録され、国内外の50都市に乗り入れている。雇用するアルゼンチン人の数は9300人で、国内航空市場のシェアは75%、国際航空市場では23%を占め、世界の名だたる大手航空会社と熾烈な競争を展開している。
こうした状況下で、アルゼンチン航空とオーストラル航空が破綻するということは、アルゼンチンの民間航空サービス自体の消滅をも意味することに他ならない。すなわち、アルゼンチン政府が策定する航空政策や航空戦略を実施するに相応しい唯一の主体が、決定的かつ修復できない形で消滅することを意味しよう。 |
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組合の反撃
航空労働者と航空労組は、アルゼンチンのフラグシップ・キャリアが破綻し、結果として雇用源が失われれば、国内、地域、世界レベルで混乱が生じることをよく認識していた。したがって、AAA、APA、商用航空上級職員組合(UPSA)などのITF加盟組合は、アルゼンチン航空とオーストラル航空を再国有化するという政府の決定を支持した。
アルゼンチン航空の所有が国に移ったことは、より思いやりのある、より統合された、より民主主義的な、より公正な国家を追求しようとする組合の闘争において画期的な出来事といえる。
AAAの書記長で、ITF民間航空部会の南米地域委員会議長も務めるリチャード・フレシアは、次のように述べた。「今日、私たちが行っている活動には、今後、付加価値が付くことだろう。再国有化は大きな変化を示しており、全ての航空労組から支持されている。この新たな局面で、我々は先駆者たちの伝説的な闘いの精神を取り戻すことになろう」
航空労組が再国有化という取り組みを支援することを確認している。それこそが、継続雇用を保障する道であり、18年ぶりにアルゼンチン国民のためにフラグシップ・キャリアを復活させ、戦略的民間航空部門を国全体のために復活させるための重要な第一歩であると信じるからだ。 |
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