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2009年7〜9月 第36号 |
■勤労生活 |
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労働者の教育と能力向上こそが前進の鍵
航空ケータリング・スーパーバイザーを務めるハッサン・ハメイドが、バーレーンにおける労働組合運動について語る。
サンガム・トリパシィ
バーレーン空港サービス(BAS)労組の書記長を務める36歳のハッサン・アブドゥル・ハメイドの仕事は、BASのケータリング・スーパーバイザーだ。BASは、管制官、貨物スタッフ、エンジニア、ケータリングスタッフ、グランドハンドリングスタッフなど、バーレーン空港で約2,000人を雇用している。ハメイドには、妻2人と3人の子供がいる。
ハメイドの典型的な一日は朝6時、出勤途中に子供たちを学校まで送ることから始まる。「午前9時まではその日のフライトに出される食事トレーをチェックする」とハメイドは言う。30分間の休憩の後、社員食堂へ入ると、そこでハメイドの組合活動家魂が頭をもたげる。「病気休暇、スーパーバイザーの態度、社則の解釈の仕方などに関する個人的な苦情を扱うことが大半だ。組合に加入することが可能とされている労働者1,700人のうち、BAS労組は1,115人を組織する。お茶を飲みに食堂に来ても、常に組合員と話をしたり、彼らの話を聞いたりしているため、お茶が冷めてしまう毎日だが、これが楽しい」とハメイドは語る。
ハメイドが組合活動に目覚めたのは、2006年のことだ。同僚とともに、50%の賃上げを求める従業員の署名を1,000筆以上集めた。会社は、3%の賃上げを提案していた。「ストを打つと脅しをかけた。経営者や大臣にも会った。戦略がうまく行った」とハメイドは語っている。会社はコンサルタントを雇い、10%の賃上げを14ヵ月前に遡って実施する合意書に署名した。「バーレーンでは、過去に遡って賃上げを達成した組合はこれまでなかった。それからというもの、前進あるのみだった」とハメイドは述べる。
午後12時30分からのランチタイムにまた組合員と話をし、彼らの抱える問題について議論する。「私一人が組合なのではなく、皆が団結して初めて事が動くのだということを組合員に理解させるのに多大な時間がかかる。やる気の醸成は、時間のかかる長い道のりだ」
バーレーンには空港や航空産業の様々な部門を組織する組合が6つもある事実を、ハメイドは嘆く。「だが、6つの組合が会って話をすることは滅多にない。組合活動家のやる気なんてその程度だ。労働者を責めることはできない」
午後3時30分がハメイドの帰宅時間だが、帰宅前に少なくとも30分は駐車場で労働者と話をする。ハメイドは2004年に設立されたBAS労組の上部団体、バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)でも活発に活動している。「GFBTUの情報教育委員も務めているので、少なくとも仕事の後、週に1回はGFBTUの事務所に顔を出すようにしている」とハメイド。
また、労働問題や組合問題を扱った週刊誌「アル・ビラード」に一面記事を定期的に寄稿している。
ハメイドの家族も組合の活動に参加している。長女が組合の会議の議事録作成を手伝うこともある。長女は組合運動について色々と質問してくる。ハメイドは組合の活動から完全に離れる時間も作っている。「土曜日は完全に家族サービスに努める」とハメイドは言う。
ITFの教育セミナーに参加できたことを感謝しつつ、まだまだ学ぶことは多いと言う。今後について、「セミナーで学んだ知識のほんの一部でも組合員に伝えることができれば、労働者の権利について能力が開化したことを組合員も感じるだろう」とハメイドは語る。また、ハメイドは、GFBTUとバーレーン政府が労働者に恩恵をもたらす協定を結ぶこと、GFBTUがさらに運動を進め、労働法の改善が図られること、バーレーン政府がILO87号条約と98条約を批准することを願って止まない。
2005年に当時の国際自由労連(現在の国際労働組合総連合(ITUC))が実施した労働組合権に関する調査において、バーレーンは「労働組合権の根強い侵害が存在し、暗澹たる状況の中東では唯一の救い」と描写された。2006年、選出されて間もないガルフ航空労組の委員長が解雇された際、ICFTUがこれを批判したため、労働運動に参加したことを理由に従業員を解雇することを禁じる法律にバーレーン国王が署名するに至った。こうした改善は見られたが、まだまだ前進は図れるはずだ。その日まで、ハメイドは組合員を支援し続けるだろう。 |
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