2009年7〜9月 第36号 |
■イランの労働者抑圧 |
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逆風に負けず
投獄、殴打、脅迫…。イランの組合活動家、サイード・トラビアンが抑圧的な政権下での組合活動について語る。
2005年以来、テヘランバス労組(Sherkat-e Vahed)は、イランの首都、テヘラン周辺でバス運転手を組織してきた。1983年に強制解散させられた後、再結成を果たしたが、役員や組合員が投獄されるなど、その活動は多大な犠牲を伴っている。ITFの運動の対象となっているマンスール・オサンルーは、獄中の拷問により、健康状態が深刻に悪化しているにもかかわらず、未だに釈放されていない。しかし、テヘランバス労組は、イラン政府の抑圧政策に抵抗し、組合員のために活動を続けている。
テヘランバス労組の活動家、サイード・トラビアンに、イランの組合運動の課題について聞いた。 |
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■組合活動家は抑圧をどのように感じているか?恐怖を感じずに活動を続けることはできるか?
歴史的に、労働者は不安や恐怖に直面しながら、闘争を続けてきた。そして、闘争には常に抑圧が伴っていた。種々の障害を過度に懸念し、恐怖におののいてしまっていたなら、我々がこれまでやってきたことは、決してできなかっただろう。テヘランバス労組の活動家は、ここ4年間の闘争の中で、多大な犠牲を払ってきた。
投獄、脅迫、排除、社会権の侵害等、多くの困難に直面しながらも、テヘランバス労組は、組合認知や解雇された労働者の職場復帰、不正な法律の撤廃、人間らしい生活を送る機会を求めて、闘い続けてきた。我々に対する抑圧は、我々が選んだ道を突き進む決意を一層固くしただけだ。全ての活動家が表明しているように、権利獲得を達成するまで、我々は闘い続ける。 |
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■労働者の権利獲得の闘いがやりやすくなるために、イランで何が起こることを望むか?
我々の望みは、我々の闘争と成果の中に表れている。毎日、我々の目標の実現を目にしている。10年前に我々が望んでいたことは、女性や青年労働者などが我々の闘争に加わり、真の活動家が出現し、我々の闘争の先頭に立ってくれることだった。今、我々が望んでいるのは、政府の役人が労働運動の存在を直視し、抑圧はうまくいかないということを認めることだ。政府がやり方を変え、国際労働法を遵守し始めることを望む。
労働者の問題意識が高まり、独立的な労働組合が設立され、それらの組合の連合が結成されるなどして、既存の障害を排除することができれば、人間らしい生活水準を確保できる社会に向けて、動きだすことができるだろう。 |
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■国際連帯はどのように役立ったか?
ここ10年間、ITFや国際労働組合総連合(ITUC)等の国際労働者組織の支援は、なくてはならない存在だった。国際連帯のおかげで、政府はもはや労働運動を自由に弾圧することができなくなっている。世界中の我々の仲間が政府の行動を監視していることに気付いているし、自身の行動を国際組織に釈明しなければならない立場に立たされている。我々の闘争を国際社会に認識させる上で、ITFが重要な役割を果たしてきた。
力強い国際支援のおかげで、我々は、様々な苦難にもかかわらず、自ら信じる道をひるむことなく歩み続けることができた。我々が法的権利を獲得するまで、この支援が続くことを願っている。世界の仲間たちの精神的・物質的な支援がなければ、我々の闘争は別の方向に向かっていたかもしれず、現在の形には到達しなかっただろう。 |
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■世界の交通運輸労組へのメッセージは?どのような支援を望んでいるか?
政府の違法行為に対する懲罰を求めていく。また、国が労働者に対して、物質的な補償であれ、謝罪であれ、何らかの補償をすることを求めていく。我々に向けられた違法行為の責任者への懲罰も求めていく。世界の活動家や労働者組織、特に、交通運輸の仲間たちの多大な支援に感謝している。
このような支援がなければ、我々の運動は悲惨な結果に終っていたに違いない。これからも、我々が目標を達成するまで、引き続き力強い支援をお願いしたい。世界の仲間たちが、我々の状況をそれぞれの国の社会に知らせ、イラン政府に圧力をかける適切な方法を見つけてほしい。イラン籍の貨物船の荷役を拒否したインドネシアの仲間たちのように。 |
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イランと労働組合
イランの労働運動を取り巻く環境は、ますます困難になっている。民営化、職場における差別、安全基準の欠如といった問題に加え、労働者は、最小限の権利と資源しか与えられず、生産性向上の圧力をかけられている。適切な賃金規制もない。そして、これらの傾向は、新自由主義政策が幅を利かすようになったここ数年、ますます顕著になっている。政府が形式的に労働者の利益を代表するために設立したイスラム労働委員会(ILC)は、労働者の権利促進に邁進することはなく、政府の新自由主義政策に強くコミットしている。
対抗勢力のいない「労働者の家」による支配が、テヘランバス労組復活のきっかけの一つだった。労働者は政府の全面的な支持を受ける使用者を相手に、一致団結して闘うことの重要性に気付き、活動家らが労働運動の基本原則や権利獲得戦略に関するワークショップを開催した。「労働者の家」に対抗するこのような活動が、新自由主義に反対する独立的な労働組合の設立につながった。一方、「労働者の家」は、テヘランバス労組の組合員や活動家を厳しく監視し始めた。このようにして、テヘランバス労組を取り巻く環境はますます厳しくなっていった。
労働組合の指導者は、産業にかかわりなく、弾圧されている。不当に投獄された者も多い。今年初めに、女性活動家2人がメーデーの祝賀行事に参加しただけで、当局から激しく批難された。国際労働界は、イラン当局による労働者の権利に対する抑圧を強く批難している。 |
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