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グローバルユニオン
No.28/2014
■ITFの支援活動
 
最前線からの報告

中身のない約束

カリーニングラード港(ロシア)のITFインスペクターであるバディム・マモントフが、少人数の乗組員が船主を信用し過ぎたためにいかにだまされたかを語った。

4ヵ月間も賃金未払いが続いた後、ロシア船籍の小型船、マクス号の乗組員6人は、カリーニングラード港でドック中にストを宣言した。6人は、何か月も前から雇用主(サンクト・ぺテルブルグに本拠を置くエイリアン・シッピング社)に不満を訴えていたが、ついに我慢も限界に達したためだ。この争議は、実にありふれた分かりやすいもののように思われたが、よくあるように、複雑な事態へと発展していった。

ロシア連邦労働規則は、「雇用主が義務を果たさない場合は、従業員は同じことをする権利がある」と定める。これに基づき、私の組合、ロシア船員組合(SUR)の現地支部の弁護士は、6人を支援するための法的準備を開始した。しかし、残念なことに、最初の問い合わせの後、事態はあまり進展しなかった。
バルト海地域の文化的な中心地であるサンクトぺテルブルグは、ごまかしのうまい船主のオアシスとなっている。そこでは、船主の悪弊が、労働基準監督署から検察に至るまで、すべての法規制当局によって見逃されている。船主の実際の代理人は、サンクトぺテルブルグの検察官のすぐ近くにいるにもかかわらず、告訴人は船主の法律上の住所に問い合わせなければならない。
実際、サンクトペテルブルグの状況は、この地域の信用できる船員を供給し尽している段階に達している。(船員たちには「周旋屋(crimps)」として知られる)リクルーターは現在、アゾフ海からカスピ海の周辺まで、ウクライナの困窮した人々を勧誘して回っている。

架空のお金
マクス号の乗船中の賃金は、契約書の中で、AB船員に対するILO最低基準賃金を下回る約200ドルと明示されていた。しかし、非公式のボーナス帳簿によれば、約1700ドルがこっそり支払われていることになっている。もちろん、乗組員たちはこのボーナスを賃金の固定部分と見なしていたが、この部分が支払われていなかったのだ。
このボーナスが約束されていた証拠は、非公式の「給与情報」の書類だけである。そこには、公式の賃金額にこのボーナスがどのように加えられるのかを示す抽象的な例が記載されているだけだった。この船主に関しては、全てが契約書通りに行われていたため、給与明細書すら事前に乗組員に渡されていたのだ!
このようにして、争議はゆるやかなストへと発展した(ストといっても、直接行動というよりは、宣言に過ぎなかった)。その結果、乗組員は追加の賃金を受け取ることができたが、これらは未払い賃金総額の半分に過ぎないことが判明した。船主は船荷の引き渡し時に全額支払うことを約束する一方、未払い賃金を公式に認めることはなかった。
"抗議行動"を数時間続けた後、乗組員(船長を除く)は、次の声明文に署名した。「我々は、貴殿をもう一度信用することとし、ストを中止する。しかし、もし貴殿が再び我々を騙すことがあれば、我々はストを実施する権利を留保する」乗組員にはさらに抗議する選択肢があった。サンクトぺテルブルグやカリーニングラードの法規制当局に公式に苦情申立てを行うこともできたし、あるいは、労働組合の弁護士宛ての委任状に署名することもできた。しかし、彼らは船主を信用することに決めた。
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船員から賃金を騙し取る
腐敗した配乗代理人


ハンブルグ港のITFインスペクター、ウルフ・クリスチャンセンが、船員を騙して賃金の二重帳簿をつけていた配乗代理人との闘いについて語る。

2013年7月中旬、フィンランドのITFインスペクターから「ヘルム・キエペ号の乗組員3人が1ヵ月間、賃金を一切受け取っていないことを知らせてきた」との連絡を受けた。乗組員は、ここ数ヵ月間、1回の支払いに対して2度、受領のサインを求められていたという。

この船とは、2年前にも同じような経験をした。ハンブルグで訪船した時、3人のフィリピン人船員と話をした。彼らは6月分の賃金を受け取っていなかった。そればかりか、前の月まで、フィリピンの配乗代理人から、いつも2枚の異なる賃金計算書に署名するよう求められていた。一つは、ITF協約に則った公式の計算書で、もう一つは、実際に支払われていた非公式の計算書で、一人当たり600ドル以上低いものだった。
私は乗組員9人全員に船内会議を呼びかけたが、既に口を開いてくれていた3人だけが話す覚悟を決めていた。他の6人は、配乗代理人から圧力をかけられ、いかなる情報も提供することを恐れているのは明らかだった。この配乗代理人は、何年も前からこのドイツ船主の配乗代理業務を行い、数年前からドイツに居住していた。
私は訪船中に船主と連絡を取り、本船に関して賃金遅配の苦情が新たに申し立てられるだろうと警告した。また、2011年にもそうしたように、この配乗代理人との契約を直ちに打ち切るよう促した。いくらか交渉し、用船者にも状況が知らされた後、船主はついに、3人の船員に未払い賃金14,936ドル全額を本船が次回ハンブルグでドック入りした際に支払うことに合意した。これが7月に実現し、私の目の前で、要求金額全額が3人に支払われた。
その日のうちに彼らは下船し、船主負担でハンブルグからマニラに飛び立った。しかし、安全確保の観点から、獲得した未払い賃金の大部分を家族に送金するために、先ずハンブルグ船員クラブを訪れた。その後、私は空港まで彼らに同行した。マニラに飛び立つ前に、残りのお金を配乗代理人に奪い取られることがないようにするためだった。
この事件は、配乗代理人による度重なる不正が関係していたため、ハンブルク港湾警察に注意を喚起したところ、取調官が派遣された。この取調官は、船内で3人に未払い賃金が支払われた時に同席し、二重帳簿の状況について3人と船主から陳述書を取っていた人物だった。ハンブルグ港湾警察の捜査書類は配乗代理人の居住地の警察当局に送られた。人間を売るこの商人が、船員や自分の同郷人に対する犯罪の報いを受けることが望まれる。
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支援要請のタイミング

ITFインスペクターのロマーノ・ぺリクが、クロアチア沖で2組の乗組員を同時支援した出来事を振り返る。

2013年10月、クロアチア海域に停泊していた問題船2隻を扱った。2隻は、乗組員の困窮については、多くの点で類似していたが、一方が他方より簡単に解決できそうなことがすぐに明らかになった。
プロチェ港の4海里沖に錨泊したギリシャ船主所有のラッキー・ネッド号(セントビンセント・グラナディン籍)の乗組員の状況が深刻であることは明白だった。
10月4日に荷揚げが行われた後、船主から船長に、財政難と倒産の可能性があるため、錨地に向かうように指示があった。船長は、この時点で(残念ながら若干、遅すぎたが)ITFインスペクターに支援を求める必要性を悟った。
私は訪船し、状況を分析した。水と食料の蓄えが非常に少なく、新鮮な果物や野菜は全くなく、燃料も残り少なかった。乗組員は神経質になっており、船長は権威を失っていた。備蓄食料や103,500ドルに及ぶ未払い賃金、次に何が起こるのか分からないことに対する乗組員の不安からだった。
我々は本件を港湾当局に連絡したが、残念ながら、着岸は難しいと非公式に伝えられた。着岸には高額な費用が伴うことと、寄港スケジュールが過密なため、バースの確保が難しいことがその理由だった。
私は、船長と乗組員のストレスを少しでも和らげようと、また、本船と連絡を確保するために、彼らにSIMカードを渡した。船主に対しては、電話、e-メール、ファックスで何度も連絡を取ろうとしたが、返事はなかった。
錨泊中の最初の10日間、船主とは一切連絡が取れなかった。船内の飲料水も底をつき始め、電力停止も近づいていた。これは、その水域を航行する船舶にとっての危険も意味していた。この時点で私は連帯行動を調整し始め、食料と水70トンを乗組員に届けるとともに、本船から生ごみをタグボートで搬出させた。赤十字の代表、プロチェ市民、我が組合の組合員、港湾業務の関係者などがこれらの行動に参加した。強風雨にもかかわらず、連帯行動は無事に完了し、乗組員(うち17人がウクライナ人とパキスタン人)は非常に感謝した。

船主にとっての緊急性
ラッキー・ネッド号の問題に取り組んでいる最中に、スプリット港に停泊中のもう一隻、マイ・ローズ号からも支援要請が入った。クック諸島籍のマイ・ローズ号はタワー・シッピング社所有で、ウクライナ人、アゼルバイジャン人、グルジア人の乗組員11人が乗船していた。
乗組員は、ITFインスペクターに連絡すべきタイミングを分かっていた。本船は出航準備が整い、満船で、ラッキー・ネッド号に比べて、乗組員は大きな影響力を持っていた。
未払い賃金は1ヵ月分を下回っていたが(32,000ドル)、船内の生活条件が非常に悪いことが判明した。乗組員は汚染水を飲用し、昆虫が感染症を招いていた。食料は不十分で、書類は不正確なため、保安上のリスクにも晒されていた。
私が状況をポート・ステート・コントロール(PSC)に報告すると、PSCは衛生検査を指示した。検査は全て、よく調整された上で実施され、報告書もしっかりと作成されたため、私は船会社に本船が間もなく拘留されるだろうと警告することができた。すると、船社は直ちに交渉担当者をクロアチアに派遣した。交渉担当者は、ITFとPSCからの圧力に加え、船内に積み荷を抱えているという圧力のために、未払い賃金を全額、船内で、現金で支払うこと、7人の乗組員を希望通りに送還すること、重度の欠陥を全て是正する計画を提示すること、そのうちいくつかをその場で是正することに合意した。
マイ・ローズ号の場合は、乗組員はよく状況を把握し、団結し、適切なタイミングでITFに支援を求めた。船主は直ちに状況の深刻さを認識し、私が要求したほとんど全ての条件を受け入れた。
ラッキー・ネッド号の場合は、要求こそ類似していたものの、支援要請が本船の出港後で、積み荷もなかったため、船主にとってのリスクはずっと少なかった。また、乗組員は非常におとなしく、運命論者的で、権利意識も薄く、私の提案を受け入れることは厭わなかったが、結局のところ、船主と交渉する用意があると表明してしまった。
最終的に、ラッキー・ネッド号は40日間の錨泊の後、ギリシャのITFインスペクター、スタマテス・コウラコスの支援を受け、ギリシャのピレウスに向けて出航した。乗組員は、本船の所有権を持つギリシャの銀行から出された提案を受け入れ、出航することに同意した。彼らは1カ月分の賃金を船内で現金で受け取った。また、ギリシャ到着時に残りの賃金の支払いと航空券やその他の必要手続きを行うことを約束する誓約書も受け取った。後日、乗組員から連絡があり、約束が果たされたことと、感謝の意を告げられた。
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醜いダックリング(アヒルの子)

リバプールとイングランド北西部(英国)のITFインスペクター、トミー・モロイが、3つの港で拘留された老朽船の船主と旗国が、いかに乗組員の苦境に目をつむっていたかを語る。

ドナルド・ダックリン号と呼ばれる船がイングランド北東部のタイン港に姿を見せたとき、ディズニーランドのイメージからはかけ離れていることが直ぐに分かった。

この37,000総トンのパナマ籍船は、台湾の船会社、TMTの船舶で、この船隊の多くの船は、良くない理由で評判になっている。
ドナルド・ダックリン号は、ジブラルタルで数多くの欠陥を理由にポート・ステート・コントロール(PSC)によって133日間拘留され、2013年10月初旬に出港停止を解除された後、モロッコに寄港、モロッコからラス・パルマスへ向かうところだった。船内の食料は底をつき、フィリピン人とルーマニア人の乗組員は、生きるために、船側越しに魚釣りをしなければならない状況だった。その後、ラス・パラマスでも30以上の欠陥(賃金未払いを含む)を理由にPSCによって拘留された。
再び拘留を解除され、11月9日に、今度は英国に到着した。到着と同時に、フィリピンで大型の台風が発生し、乗組員は台風関連情報の収集と、家族と連絡を取ることを切望していた。また、ルーマニア人の一等機関士は、ラス・パルマスのPSC検査で指摘された交換部品の支給を求めたために、TMTから解雇されていた。乗組員の賃金は、ラス・パルマスで未払い賃金の清算が行われて以来、支払われていなかった。
ドナルド・ダックリン号の最初の印象は、錆だらけの大きなバケツというものだった。この印象は、乗船後にさらに強くなった。船舶そのものが驚くべき状態で、メンテナンスという概念は全く存在しないかのように見えた。
船内には15日分の食料が残っていたが、冷蔵庫が故障していたため、大部分が2日以内に腐ってしまうと思われた。
英国のPSCを管轄する海事沿岸警備局(MCA)に連絡すると、すぐに検査にやって来た。そして、本船拘留に足る十分すぎるほどの欠陥を素早く立証し、積み荷作業を中止させた。
私はTMTに書簡を送り、多くの懸念を伝えたが、返事は一切なかった。その後数週間、乗組員の状態は急速に悪化した。現地のコミュニティーが乗組員に食料と水を提供した。港湾当局は本船の電気と暖房を維持するために燃料を供給し、腐った係留索を新しいものと取り換えた。私はパナマ当局にも書簡を送ったが、乗組員リストを送るように言われただけで、その後は音沙汰なしだった。
ルーマニア大使館とフィリピン大使館にも連絡を取った。両者とも同情はしてくれたものの、乗組員の送還を支援することは断った。
TMTは結局、代理店を通じて、10月分と11月分の賃金を送金したものの、欠陥を是正するための部品や労務の提供は一切行わなかった。
そればかりか、12月中旬になると、乗組員を中国人船員に置き換えるという噂をフィリピンの配乗代理店経由で流し始めていた。英国の入国管理局とMCAは、乗組員の居住条件が適切な水準に達しない限り、また、食料、水、燃料が補給されない限り、乗組員を新たに投入しようとしても、空港で送り返されると警告した。
12月30日、パナマの船籍登録の代表者から乗組員に雇用契約書を送るよう連絡があった。これに対して、私は書簡を送り、なぜ雇用契約書が必要なのかを尋ねるとともに、問題解決のための支援を申し出た。しかし、「労働問題の調査・解決はパナマ海事局の管轄だ」というそっけない返事が返ってきただけだった。
MCAも旗国と連絡を取ったが、無駄に終わった。しかし、欠陥のある本船に対してパナマがILO海上労働条約(MLC)証書を発行していることが確認できた。
クリスマスまでに、ルーマニア人乗組員は自力で帰国するために下船し始めていた。彼らは、アムステルダムまで地元のDFDSフェリーで無料で送ってもらった。このフェリーの乗組員の多くはフィリピン人で、ドナルド・ダックリン号が英国にやって来て以来、乗組員に食料を援助し続けた。
1月初旬、ITFはフィリピン人乗組員を送還することに同意した。ある意味、彼らは幸運だったと思う。地域コミュニティーが食料を提供してくれるだけでなく、お金さえも寄付してくれる港だったため、時々、必要な物を買うために上陸することもできた。
旗国がMLC証書を発行している場合、旗国は問題に介入し、乗組員を援助する義務がある。しかし、パナマは、証拠がすべて整っているにもかかわらず、ドナルド・ダックリン号の乗組員が遺棄されていることを認めようとしなかった。
海上労働条約の意図はすばらしいが、ITFインスペクターの仕事がなくなる日がすぐにやって来るとはとても思えない。
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オイルタンカー乗組員の悪夢

インド船員組合(NUSI)のシュリ・アブドルガニ・Y・セラン書記長が拘留から解放された乗組員の帰国を歓迎

オイルタンカー、デッシュ・シャンティ号の乗組員は、イランでの26日間の拘留に耐え、2013年9月にビシャカパトナム港に戻ることができた。
インド海運公社(SCI)が所有する本船は、海洋汚染の容疑をかけられ、ペルシャ湾でイラン革命防衛隊のメンバーに検挙された。本船はイラクから原油を運搬しており、乗組員は容疑を認めるよう圧力をかけられたが、結局、本船による汚染は証明されなかった。
乗組員の拘留中、インド船員組合(NUSI)とインド海事組合(MUI)は、乗組員の解放を求めて数多くの抗議行動を実施し、国内および国際的な支援を求めた。NUSIとMUIが音頭を取り、何千人もの署名をマンモハン・シン首相に送った。シン首相は、SCI、海運省、外務省と共に我々の運動を支援してくれた。
NUSI、MUI、SCIのトップと共に、ビシャカパトナム港でデッシュ・シャンティ号を迎えることができて非常に嬉しい。拘留されている間、S・S・チーマ船長のリーダーシップの下に全乗組員が岩のように強く団結し、船員のプライド、会社の正当性、インド人としての誇りを守ることができたことを知り、非常に誇らしく思う。
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