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グローバルユニオン
No.28/2014
■海賊
 
海賊
アフリカの東から西へ


ギニア湾での海賊襲撃が問題の多かったアデン湾を上回っていることが最近の報告から分かっている。アデン湾では今も継続的に国際パトロールが行われている。アフリカ大陸の東西両岸周辺の海域は商船と乗組員にとって危険な水域であることに変わりはないことははっきりしている。

ソマリア
船員への攻撃は減ってはいるものの、依然多い。ソマリアやアデン湾周辺海域を航行する船の乗組員は、最近、その辺りでは海賊の襲撃が減っていることを受け、少しは安堵できるかもしれない。海賊事件の減少は主に世界各国の海軍が監視を行ってきたことに起因しているが、依然、大きな脅威が残っていることは間違いない。
2013年1月1日から6月末までの間に、国際海事局はソマリアの海賊による8件の襲撃事件を記録した。うち2件はハイジャック事件で、食糧や燃料が切れ、海賊が遺棄した船を三度目に別の海賊がハイジャックしようとした件もあった。その際には計34名の船員が人質に取られたと報道された。
2012年にソマリアの海賊から銃撃を受けた船舶には計851名の船員が乗っていたが、そのうち349名が人質に取られた。

今も続く脅威:主な事実
「母船」を利用することで、海賊の手の届く地理的な範囲と力が拡大した。
襲撃はケニア、タンザニア、セイシェル、マダガスカル、モザンビークを超えてインド洋、アラビア海、オマーン湾周辺、インド西岸沖、西モルディブまで広がっている。
より大きな資源を得たソマリアの海賊は、襲撃のために近づいた船舶にどれくらいの防衛措置が取られているかを査定できるようになっている。
2013年6月末時点で、依然、4隻に乗り組む様々な国籍の船員57名が身代金目的でソマリアの海賊に人質に取られたままだ。
それとは別に11名が陸上で拘束されており、うち7名の船員は2010年9月から、4名は2010年4月から捉えられている。
2012年にソマリアの海賊に人質に取られた約600名の船員の平均拘束期間は約11ヶ月だった。

最近の襲撃減少の成果
最近、襲撃が減少しているのは、疑わしい小型ボートに対して軍が活発に活動していることと、その他にも陸上ベースで海賊対策が取られており、船舶に武装警備員を乗船させるケースも増えているからだ。
海軍も極めて重要な役割を果たしてきた。2013年前半にハイジャックされた2隻の船では、海賊が人質をソマリアに連れ帰る前に、海軍が船を奪還することができた。

警備体制が厳重化するとともに海賊が狂暴化
ソマリア沖での最近の襲撃により、船主は警備員の配乗を再検討せざるを得なくなった。海賊が標的とする船舶とより本格的な銃撃戦に出る構えを強めつつあるからだ。

アイスバーグ号の乗組員、2週間後に解放
2012年のクリスマス直前、アイスバーグ号の乗組員は13日に及ぶ闘いの末、解放された。
解放されるまでに船員1名が既に自殺しており、もう1名が行方不明になっていた。残りの乗組員も精神的な支援と治療が必要だった。チーフオフィサーの耳は切り落とされ、もう1名の乗組員は虐待を受けたため、脊椎の手術が必要だった。

ビッグマウス、ベルギーのおとり捜査で拘束
2013年10月、おとり捜査でソマリア海賊の首謀者とされる男が逮捕された。彼の偉業についてドキュメンタリーを作りたいとする映画製作者になりすました捜査員の誘いをこの首謀者が受けたからだ。
アフウェインの名で知られるモハメド・アブディ・ハッサン(通称ビッグマウス)は別の容疑者モハメドMA(通称ティーシー)と思われる男とともにブリュッセルの空港に到着した際、拘留された。ニューヨークタイムズはハッサンを海賊ビジネスに新たな「洗練度」を吹き込み、あたかもウォールストリートのベンチャー企業か何かのようにベンチャーキャピタルから資金を調達したと描写した。この海賊ビジネスを支援してきた疑いをもたれているティーシーはハイマン・アンド・ヒーブスの元統治者だ。
モハメド・アブディ・ハッサンは、ベルギー船舶のポンペリ号、武器を積載したウクライナの船舶ファイナ号、サウジのスーパータンカーで200万バレルもの原油を運搬していたシリウス・スター号を含め、2008年から2012年末までに起きたハイジャック事件の責任者と疑われている。シリウス・スター号の乗組員は600万米ドルの身代金支払いの後、解放された。
ソマリアの海賊ネットワークは政府や軍の高官まで広がっていると考えられている。国際逮捕状を出しても犯人逮捕につながらないことが明確になったため、検察はベルギーの覆面捜査官を活用することにしたと語った。

西アフリカ
つのる脅威
西アフリカ周辺で海賊が増えており、ソマリアでの事件を上回るまでになっている。2012年に計966人の船員が西アフリカ周辺海域で襲撃されたが、ソマリア海域では851人だった。
ギニア湾でも暴力の度合いが増し、問題がエスカレートしている。海賊は活動範囲を西アフリカ諸国の海岸線の先にまで広げている。

心配になる統計
2012年、国際海事局はギニア湾周辺での海賊発生件数(未遂を含む)を58件と報告した。2011年の48件から増えていた。そのうち、10件では船舶がハイジャックされ、乗組員207名が人質に取られたが、うち5名は最終的に殺害された。2012年に発生した58件のうち、少なくとも37件で銃火器が使用された。
2013年の上半期だけでも、未遂事件も含む商船に対する海賊発生件数は31件だった。タンカーのピクシス・デルタ号がナイジェリアのラゴスで襲撃された際に、乗り組んでいた警備員が海賊を撃退したが、悲劇的にもその時の銃撃戦で船員1名が命を落とした。これは武装警備員が乗り組んでいた船舶で船員が死亡した初めてのケースだった。

石油へのリスク
ナイジェリア当局と海賊が共謀しているため、タンカーから盗まれたはずの貨物が最終的に絶えず供給の浮き沈みに悩まされているナイジェリアのガソリンスタンドに行きつくことになるとタンカー業界の大物は確信している。英ファイナンシャルタイムズ紙が報道したように、石油の窃盗が儲かる巨大ビジネスに成長し、たくさんのコネをもつナイジェリアの政府高官や警備員などもこれに関わっている。
船舶への大規模な燃料補給が増えたのは、身代金目的の誘拐件数が増加したのとちょうど同時期だった。最近では、人質が取られるのは大抵、船舶への燃料補給の際だ。海賊が燃料を積み替える間、海賊に襲われた船舶は海賊が掌握した別の船舶のところに運ばれるか、売却のため別の場所に運ばれるかするため、燃料補給が数日に及ぶこともある。

襲撃を減らす取り組み
ナイジェリア海軍は洋上でのプレゼンスを大幅に上げ、海賊対策の取り組みを強化している。2013年8月、ナイジェリア海軍が一連の銃撃戦の結果、18名の海賊を殺害し、5名を逮捕した。
また、西部・中央アフリカにおける船舶に対する海賊および武装強盗の抑制と違法な海事行動に関する新たな行動規範もでき、2013年6月に調印もなされた。
しかし、フリゲート艦やコルベット艦、航空機による監視能力を備えているのはナイジェリア一国に限られる。海賊はこれまでは成功するために自らの戦術を状況に適合させることができてきた。そのため、ナイジェリアに隣接する他の国は自国の海岸線を守る能力が比較的低いため、より海賊の標的となりやすくなる。この地域の国々が一丸となって問題に対処することが不可欠だ。それなくしては、今後も海賊は成功し続けるだろう。
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西アフリカの海賊について知っておくべき10か条

グレイページ(海事専門情報・調査・危機管理会社)情報部長 ジム・メインストーン

1. 西アフリカでは様々な形態の海事犯罪が見られるが、海賊事件として認識されるのは次の二つのみ:すなわち、「貨物窃盗目的の船のハイジャック」と「身代金目的の船員の誘拐」だ。
2. 貨物窃盗目的のハイジャックは昔からベニン湾、特に、ラゴス、コトヌー、ロメなどの地域で集中的に発生してきたが、さらに西へ、また東南へと拡大している兆候が見られる。
3. 身代金目的の誘拐は元来、ニジェールデルタの南のボニー湾で集中的に発生していたが、カメルーン沖などの他の地域でも船員の誘拐が発生し出した。
4. 身代金目的の誘拐は貨物窃盗目的の船舶のハイジャック(2010年12月以降)やソマリアで海賊が急増する(2007年末以降)前から存在してきた。やや洗練度の低い海賊事件であり、ニジェールデルタの戦闘員から転身した暴力団が関わっている場合が典型的だ。静止船や低速船のリスクが最も高い。
5. 貨物を盗む目的で船をハイジャックする海賊は特にナイジェリアなどの西アフリカの闇市で簡単に販売できる石油製品を積載するタンカーを標的にする傾向が強い。標的になりやすいのはガソリン、ディーゼル油、航空燃料で、典型的なケースでは、1メートルトン(MT)あたり約1,000米ドルの価値がある石油製品3,000から8,000メートルトンが盗まれる。海賊自体は氷山の一角で、より洗練された犯罪ネットワークはナイジェリアを拠点に海運の専門知識を有し、非合法の軽量船舶を使って盗んだ石油を貯蔵、輸送し、マネーロンダリングも行っている。
6. 貨物窃盗目的のハイジャックの場合、海賊とその背後にいる組織犯罪ネットワークは標的にする船舶の名前や位置、積載する貨物の種類などの特別な情報を入手できる。一部ケースでは、現地で船舶間貨物油積み替え(STS)などのタンカー業務に携わる人間が汚職に手を染め、特別な情報を海賊に流すこともある。海賊は通常、夜間や漂泊中、STS業務の最中など、船舶が最も攻撃に弱い時に船を襲撃する。海賊ははしごや鉤のついた木の棒などを使って船にアクセスし、その木の棒を使って即席で張った弱いレザーワイヤーを伝って船を離れる。
7. 西アフリカの海賊はソマリアの海賊とは異なる。例えば、ベニン湾でSTS作業中のタンカーが晒される脅威と、インド洋で同様の作業を行うタンカーが晒される脅威は異なるため、適切な対策も異なる。したがって、西アフリカを航行する船の船長は自分の船がどういう脅威に晒されやすいのか、船の運航の性質上、どのような弱点があるのか、リスクを実際に減らすための対策は何かなどについて熟知している必要がある。
8. 西アフリカで発生する海賊行為の中には、海事犯罪が変形したものもある。例えば、初めから船を襲い、貨物を盗むことを目的に犯罪者がハイジャックを行ったりする。また、もともと乗組員とともに詐欺や闇市に関わっていた犯罪者によって船がハイジャックされるケースもある。
9. 西アフリカでは武装警備員を乗船させるという選択肢も限られており、インド洋の場合と比べると、この選択肢は不確実だ。武装警備員を乗り組ませると決定すれば、船主は様々な要素を検討する必要が出てくる。乗船させることが適切なのか、合法的なのか、保険はどうするのか、旗国の問題、無防備な船舶や乗組員、委託する警備会社の質など、きりがない。現実問題として、この地域で調達した警備員の信頼性と能力には懸念が残る。さらに、武装警備員の大半が最終的には警官か海軍士官にならざるを得ないことを考慮すると、万一、何等かの事態が発生し、当該国が訴訟を行う論拠があると判断した場合、船主や船舶、乗組員に対して関係国が取り得る可能性のある行動について懸念が残る。(例えば、乗組員が武装警備員に負傷を負わせた、あるいはその逆の場合など)
10. 脅威が発生した際に、そのことを地元の警備隊に知らせることも、インド洋やアデン湾で問題が発生した際にソマリアの海賊対策を取っている海軍に連絡を取る場合と比較すると、困難なケースが多い。船長や警備員が地元の警備隊に連絡を取ったにも関わらず、うちの哨戒艇にはそこまでの航続距離がないとか、巡視船や巡回機を「借りる」ための料金を請求してきたりするなど、地元の警備隊に支援する意欲がなかったり、支援能力がないケースさえあった。
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救命ボートの安全

救命ボートを巡る大混乱

救命ボートが死を招くこともあるのだろうか?救命ボートの進水システムが場合によっては船員に死をもたらすことがあるのか?ITFの元常任IMO代表で、海運救命ボートグループのメンバー、ジョン・ベンブリッジが状況を解説する。

1980年3月27日、ノルウェーの大陸棚で働く海底油田掘削労働者の洋上ホテルの役割を果たしていた半潜水式リグのアレクサンダー・L・キーランド号が崩壊し、123名の命が失われた。大惨事の主な原因は、比較的訓練経験の浅い労働者がダビッド式救命ボートと、当時ほとんどの救命ボートに設置されていたオフロード離脱フックの操作を誤った事だった。
ダビッド・システムにより、救命ボートを船の側面上空に振り出し、あおり止めを使いながら着水することができる。しかし、悲劇的にもその日、アレクサンダー・L・キーランド号から振り出された4隻の救命ボートのうち、降下ケーブルから乗組員が離脱できたのはわずか一隻だった。
国際海事機関(IMO)は緊急事態として、この問題を検討し、海面で離脱可能なオンロード離脱フックを装備することを義務付ける法律を導入した。しかし、この新システムにもそれなりの難点がある。これまでの比較的シンプルで堅牢なフックに代わり、より洗練されたフックが必要であるだけでなく、保守や操作もより正確に行う必要があるからだ。
2001年、3つの旗国が過去5年間に新救命ボートシステムで避難訓練を実施した際に16件の事故が発生しているとIMOに提起した。これらの事故の大半で乗組員が負傷し、一部、死亡したケースもある。こうした懸念を裏付ける証拠が海運界の様々なところから上がってきたため、IMO海上安全委員会は「救命ボート事故の防止」を新たな懸案事項に追加した。
救命ボートメーカーや大抵の旗国の最初の反応は、乗組員の訓練不足と保守不備が最も大きな原因だろうというものだった。しかし、それを裏づける証拠がない。事故の報告から、多くの事故が熟練船員の乗り組むかなり新しい船で発生していることが判明している。また、これらの事故について国際的に記録が取られておらず、メーカーが自社の機器の欠陥を確実に認識し、修正できるようにするため、メーカーにフィードバックできるメカニズムも存在しない。
海運界の調査から、救命ボートのオンロード離脱フックには80種類もの設計が存在することが判明した。中には、あまりに設計が複雑で操作や保守が全く不可能なものすらある。また、部品の供給業者が非常に多いが、相互に互換性のない部品を作っていることも多く、最終的な部品の組み立ては造船所に任されている。標準的な設計や操作手順もなく、同じ船社の同型船が完全に異なる救命ボートを備えていることすらある。究極的には人的要因も事故の一因であり、十分な研修が必要であることは否めないが、オンロード離脱フックの多くが絶対的に安全なわけではなく、フックの設計上の欠陥が事故の主な原因であることは明白に思われる。本件に関する議論が長らく行われてきた中、ITFは救命ボートについての研修や避難訓練、保守作業にあたって、船員の命が危険にさらされるべきではないと一貫して主張し続けてきた。これからも、救命ボートを上げ下げする際、あらゆる安全面での懸念が払拭されるまで、船員を乗せるべきではないと訴えていく。
現在、ITFの常任IMO代表を務めるブランコ・ベルランはこう語る。「もちろん、事故を受けて救命ボートの設計を改善しようと努めることは理に適っているが、いわゆる「救命」のための機器が死をもたらす物になってしまっているという事実がある。避難訓練の際、船員は深刻なリスクにさらされている。一貫したアプローチが取られていないことも、様々なメカニズムが入り乱れる結果を生んでいる。問題がきちんと解決するまで、船員を危険から守るための保護措置が導入されるべきだ」
全ての船員にとって救命ボートが安全なものとなるよう、法律を明確化する必要がある。この数十年間、様々な指示や命令が船長に発せられ、混乱をきたしてきた。この問題に対応するための取り組みは今でも続いている。海運界救命ボート・グループ(ILG)は、船主から船舶管理会社、保険会社、船級協会、ITFなどの船員の代表まで、海運界のあらゆる関係者を代表し、市場に出回っているオンロード離脱フックの徹底的な検討と評価を行っており、成功している。これにより廃止された不適切な設計のフックも多く、また新基準に合致するための設計変更も多く実施された。
船員の安全を最優先することを念頭に、ILGは現在も未解決の問題に取り組み、数々の提案を行っている。例えば、二次安全システムの設置、設計と操作の標準化、サービス提供者に世界的な標準化を求める新たな保守要件の設置などを提案してきた。最終的には現行の技術を完全に捨て、船舶や石油掘削リグでの事故の際の船員の脱出と生存に関して全く新しいアプローチを取ることになるかもしれない。しかし、変化を受け入れる海運業界のペースを考えると、この先何十年もかかりそうだ。当面の対応として、船員は救命ボートが人命を救うのではなく、脅かす存在になる状況を許容してはならない。
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