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No.28/2014 |
■漁船員 |
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漁船員のディーセントな労働に向けて
世界で最も立場の弱い労働者のより良い将来への希望がやっと見えてくるかもしれない、と水産業界で労働条件を改善するためのITF/IUF(国際食品労連)共同キャンペーンのリーダーを務めるリズ・ブラックショーは述べる。
公海で働く漁船員の仕事は、地球上で最も危険な仕事といえる。嵐や強風といった自然界の危険と、劣悪な労働条件を押し付ける多くの不法・無規制・無節操な雇用主が存在するからだ。しかし、その他にも水産関係の職業で無規制かつ危険なものは多く、水産業に特有の課題は多い。
漁業は、最終的に小売店に並べられる水産物につながる長い鎖の始まりの地点だ。
「漁獲から販売まで」のサプライチェーンでは、魚の捕獲から加工、運搬、販売に至るまで、世界中で何百万人もが働いている。
漁船員を雇う企業のほとんどが、缶詰工場や加工施設など、陸上で働く労働者も雇用している。だから、海と陸の水産労働者が共通の懸案について力を合わせることは道理にかなっている。これが、ITFがIUF(国際食品労連)と合同でキャンペーンを展開してきたそもそもの理由だ。漁船員を組織し、その権利のために闘おうと合同の「漁獲から販売までプログラム」を立ち上げたことで、今、二つの国際産別組織は労働者のための前進を勝ち取る上で、以前より有利な立場にあると認識している。
現下の喫緊の目標は、漁船員のための最低安全基準とディーセントな労働条件を確保するために、できるだけ多くの国が国際労働機関(ILO)第188号条約を批准することだ。この条約は、8つの沿岸国を含む10ヵ国以上が公式に支持を宣言しない限り、発効しない。海事組合の多くが批准を働きかけるために運動を展開しているだけでなく、より多くの漁船員を組織するために努力している。
漁船員が直面する不安定な立場は、彼らの歴史的な状況によってある程度は説明できる。これまで漁船員が船員と見なされたことは決してなかった。結果的に彼らは、船員に適用される国内の雇用法からも、また船員の利益を代表する労働組合が行う多くの取り組みからも保護されないまま放置されてきた。
しかし、水産業界で働く男女を保護する必要性に気づき始めた国が増えている。非常に早い段階で批准したアルゼンチンとボスニア・ヘルツェゴビナに続き、モロッコと南アが2013年末に188号条約を批准した。批准と条約の最低基準の実施をスピードアップするために最近、国際会議が開催されたが、その会場でさらに8ヵ国が批准を促進していると表明した。
ITFは、漁船員にも雇用基準が適用されるべきだとこれまで何十年も主張してきた。ITF加盟組合が今後も運動を継続すると思われるため、当然、この目標は間もなく実現できるに違いない。
漁船で働く船員も海上労働条約で保護される、との思い違いが依然として存在する。漁船員は海上労働条約では保護されない。ILO第188号条約が履行されるまでは、海事法以外で漁船員に適用される法律といえば、漁業が行われている国の法律だけであり、これは公海での操業には適用されない。
ITFは、188号条約批准キャンペーンだけではなく、漁船員の労働生活の改善を支援するために多くの国が行っている極めて重要な課題を支援している。パプア・ニューギニア、フィリピン、インドネシア、チリ、ペルー、南アフリカ、ナミビア、マダガスカルのような国々や欧州の至る所で、大きな前進が見られる。漁船員の雇用形態を規制し、安全、生活、労働条件面で最低基準を設置することに注力している。同時に、アルゼンチン、アイスランド、ノルウェーなどで設置された高い水準に追いつくべく、他の国も労働基準のさらなる改善を目指して交渉している。
こうした取り組みを行う場合、漁船に乗船している漁船員と船員が積極的に組合に加入することが不可欠である。そうして初めて、組合は188号条約の批准、漁船員のための職業安全衛生の改善、そして少なくとも最低労働条件を設置するために政府にロビー活動がやりやすくなる。
www.itfglobal.org/en/transport-sectors/fisheries/ |
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